行動変容を伴う医療機器プログラム(本文及び別紙) 

ガイドラインID 2022-HN-PR-041
発出年月日 2022-06-09
発出番号 令 和 4 年 6 月 9 日付薬 生 機 審 発 0609第 1 号
WG名 行動変容を伴う医療機器プログラム 審査 WG
制度名 次世代医療機器・再生医療等製品評価指標(審査ガイドライン)
製品区分 プログラム・AI
分野

行動変容プログラム

GL日本語版ファイル

2022-HN-PR-041 行動変容を伴う医療機器プログラム(本文及び別紙)

英文タイトル
GL英語版ファイル

GL:イントロ・スコープ

1. はじめに
近年、Internet of Things(IoT)技術の発展に伴い、スマートフォン等を利用し、個々の患者の行動や思考のパターンに応じて情報を提供することで、従来と異なる習慣づけやアウトカムをもたらす医療機器プログラムの開発が活発に進められている。行動変容の手段としては、心理的アプローチ(認知行動療法ほか)、運動療法や栄養指導等が挙げられる。我が国においては、超高齢化社会に向けた健康寿命の延伸や国内医療機器産業の活性化等が国家的戦略として提唱されており、このような行動変容を伴う医療機器プログラムの効果や新規産業としての発展が期待されている。
現在開発中の行動変容を伴う医療機器プログラムとしては、糖尿病、高血圧、非アルコール性脂肪肝炎、アルコール健康障害等の生活習慣病、がん、睡眠障害、認知症等の患者に適用する製品が挙げられる。しかし、心理療法等を用いて行動変容を促す医療機器プログラムは新しい分野の製品であり、その開発においては、表示する情報の内容のみでなく、情報を表示するタイミングや方法、文化的背景も有効性に影響する可能性が示唆されており 1)、有効性・安全性に関わる因子の特定が困難である。また、その評価に際しては、既存治療等の併用療法の有無、比較対照の設定方法、治療効果の発現時期と持続性を見込んだ評価期間、再介入時の有効性、ユーザインターフェースにカスタマイズ機能を搭載した場合の振れ幅等を考慮する必要がある。承認申請においては、有効性・安全性を示す事項を承認申請書に記載するが、上述の理由から記載すべき事項が明確に定まっているわけではない。また、評価結果から導かれる使用目的又は効果の範囲にも注意が必要である。さらに市販後もソフトウエアアップデートや製品改良に伴う変更手続き、患者データ等の取り扱い等にも留意する必要がある。
米国Food and Drug Administration(FDA)は「医療機器ソフトウェア機能及びモバイル医療アプリケーションに関する指針(2019)」等、各種の関連ガイダンスを発行しており、ドイツでは 2019年の法改正により低リスクの医療機器プログラムを対象としたファストトラック制度を制定し、既に20品目※を仮保険償還の対象にする等、海外では医療機器プログラムの早期実用化を支援する行政的施策が講じられつつある。(※2021年9月現在)
そこで本評価指標では、当該分野の適切な発展に寄与することを目的として、我が国固有の医療環境を考慮した上で、行動変容を伴う医療機器プログラムに求められる安全性、有効性に関する評価の留意点を、ユーザビリティ等の因子を考慮しつつ取りまとめた。

GL:本体

2. 用語の定義
本評価指標における用語の定義は、以下のとおりとする。

(1) 患者等
当該製品を治療目的で使用する患者や、自身の疾病予防のために使用する健常者

(2) 医療者
医師、歯科医師、薬剤師、看護師、臨床工学技士、リハビリテーション職、保健師、心理士等

(3) 一次予防
生活習慣を改善して健康を増進し、生活習慣病等の発症を予防すること。発症前の健常者に対して、疾病の原因と考えられる要素の除去や忌避に努め、健康の増進を図って疾病の発生を防ぐ等の予防措置を講じること。

(4) 二次予防
疾病の早期発見、早期治療を行うことにより、疾病の重篤化を防ぐこと。発症した患者を可能な限り早期に発見し、早期治療を行い、疾病の進行を抑え、重篤化しないように努めること。

(5) 三次予防
発症後、必要な治療を受け、機能の維持・回復を図るとともに、再発や合併症の発症を予防すること。疾病が進行した後、後遺症治療、再発防止、残存機能の回復・維持、リハビリテーション、社会復帰等の対策を講じ、実行すること。

(6) 心理療法
対話等の言語的又は非言語的な交流と介入により、認知や情緒、行動等の心理的側面に変容を
もたらし、症状や苦痛を改善・緩和する治療法を指す。精神療法とほぼ同義で用いている。

(7) 認知行動療法、認知療法、行動療法
認知行動療法とは、認知的偏りや非適応的行動を検証し、認知再構成法等の認知的アプローチ、行動活性化や曝露療法等の行動的アプローチによって認知や行動の修正を行い、気分の改善や具体的な問題の解決、対処能力の向上や再獲得を図る治療法を指す。
認知行動療法は、歴史的な変遷の下、異なった理論体系を背景にした認知療法と行動療法の要素が融合した治療法である。認知療法とは、認知理論に基づく認知的側面への介入により変容を促す治療法である。行動療法とは、学習理論に基づいた行動の分析や制御の促進によって精神状態を変化させる治療法である。

(8) 行動変容
疾病の予防・治療等を支援するために、個々の患者等の情報を処理し、得られた結果をその患者等に応じた適切な情報として提示するなど、患者由来の情報を活用した心理療法等により介入
し、日常の生活習慣を含めた行動を変化させることで、臨床的に意義のある効果をもたらすこと。

(9) 主観的評価本評価指標において「主観的評価」とは、被験者の状態に関して被験者自身又は代理者による回答を記すことによる評価、又は被験者の回答に基づく医療者の評価、さらには医療者が被験者を観察した評価である。同じ主観的評価の範疇であるが、医学的な専門性を持たない被験者や代理者が記した評価と、医療者の評価とはその特性が異なることに留意する必要がある。一方、「客観的評価」とは、被験者や評価者の判断の影響を受けない、定量的な検査結果等を用いた評価である。

(10) シャムアプリ
一般に盲検性を確保することを目的に用いられ、医薬品でいうプラセボ薬に相当するソフトウエア。

3. 本評価指標の対象
本評価指標は、「医師の指導の下で使用され、個々の患者等に応じて情報提供することで患者等の行動変容を促す医療機器プログラム」を対象とする。非医療機器であるヘルスケア製品に相当する製品は本評価指標の対象外であるが、一次予防を目的とした製品のうち、医療機器に該当する製品は対象となり得る。一方、二次予防及び三次予防については、疾病の徴候の検出や疾病の進行の抑制、機能の維持等、診断、治療の側面があるため医療機器に該当し、本評価指標の対象となり得るものと考えられる。なお、患者等の行動変容を伴わずに治療効果を発揮することを意図する製品及び診断のみに基づき行動変容を伴わず受診勧奨を行うプログラムは本評価指標の対象外とする。
その他の機能を有する医療機器プログラムや、行動変容を伴う医療機器プログラムの機能を含む有体物の場合は、プログラムの該当する部分について本評価指標を参照することを推奨する。なお、医療機器プログラムの該当性の判断については、「プログラムの医療機器該当性に関するガイドラインについて」2)を参照の上、厚生労働省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課又は医薬品医療機器総合機構審査マネジメント部SaMD一元的相談窓口に相談することが望ましい。その他にも、厚生労働省が公開している「医療機器プログラム事例データベース」も参考となる
3)。

4. 評価指標の位置づけ
本評価指標は、技術開発が著しいデジタル技術を対象とするとともに、行動変容を伴う医療機器プログラムを取巻く状況も日々変化していることを勘案し、現時点で重要と考えられる事項を示したものである。今後の技術革新や医療現場での知見の集積等を踏まえて改訂されていくべきものであり、承認申請内容に対して、拘束力を持つものではない。本評価指標が対象とする製品の評価にあたっては、個別の製品の特性を十分に理解した上で、科学的な合理性を背景にして、柔軟に対応する必要がある。本評価指標の他、国内外のその他の関連ガイドライン等も参考にすること。

5. 評価にあたって留意すべき事項
(1) 基本的事項
1) 設計開発の経緯、品目の仕様、開発機器の原理(アルゴリズムを含む)、対象疾患、使用目的又は効果、類似品の国内外での使用状況、使用場所、使用方法等を明らかにすること。具体例を以下に列挙する。
① 対象疾患、想定される使用者の範囲とその要件
 対象とする疾患やその重篤度等
 使用者については、患者等若しくは医療者又はその両者の別
 使用者の要件及び使用に適さない患者又は医療者
② 使用目的又は効果
 予防(二次予防、三次予防)、治療等の別
③ 臨床的位置づけ
 開発コンセプト(当該疾患の治療の中で、本品が介入し解決する課題及びその達成手段)
 介入内容、介入する治療段階及び介入頻度
 既存治療法等(薬物療法、心理療法、ガイドラインに基づいた個々の患者に応じた医療的指導、患者教育等のいずれか又はこれらの組み合わせ)との併用(上乗せ)、補完・代替
(置き換え)、又は新規治療アプローチの別
 上記項目も考慮した上での現状の診療・治療法と製品との差分
④ 使用方法
 医療機器プログラムの提供方法
 患者等に提供されるセンサ等プログラム以外の機器又は医療者用に提供されるプログラム及び機器の有無
 患者等に提示される情報と医療者に提示される情報の内容
 医療者の関与方法
 操作マニュアル等の文書化とその内容(故障時の対応を含む)
⑤ 原理
行動変容を促すシナリオ、指示の決定フローチャートや判断基準等、有効性・安全性に影響する要素や根拠の詳細、根拠とする診療ガイドライン等
⑥ プラットフォームの OS、製造業者により開発されたソフトウェア部品以外の使用するアプリケーションンソフトウェア及びソフトウェア部品
⑦ 共存するその他のソフトウェアとの干渉の有無
⑧ モバイル機器やセンサ等、併用する機器の要件

2)行動変容を伴う医療機器プログラムについては、以下の事項を参考として、有効性・安全性に影響する項目を明示する必要がある。それぞれの項目について、具体的なデータ又はその他の科学的根拠等をもって明らかにすること。
① 提示される心理療法等の根拠
 これまでに有効性について検証されたことのない新規手法が含まれる場合
その手法を用いることの適切性について説明すること。何らかの文献報告がある場合にはそれも提示すること。
 標準治療や治療ガイドラインに基づく場合
標準治療や治療ガイドラインに基づく場合であってもサロゲートエンドポイントを使用して評価する際は、その適切性を示すこと。臨床的な位置づけが確立していないパラメータを使用する場合は、その適切性の科学的根拠を明示すること。
 検証的臨床試験で有効性が確認されている場合
疾患ガイドラインには記載されていないものの、既に当該疾患領域で認知されている方法や、有効性についての検証試験が行われている場合は、その文献情報を提示すること。
② 患者等の行動変容を促す機能の仕様
 ユーザインターフェース
 出力するメッセージの表現
 提示する情報の選択や表示のアルゴリズム
③ 開発時に当該製品の機能設計・性能評価・検証等に用いられたデータ
開発時に当該製品の機能設計・性能評価・検証等に用いられたデータについて説明すること。製品の目的に合致しない、偏った対象者、網羅性に欠ける方法で収集されたデータ等を用いた場合は、汎化性に欠けるプログラムとなる可能性があることに留意すること。

(2) 非臨床試験に関する事項
「行動変容を伴う医療機器プログラム」の安全性等について、以下の事項を参考として評価すること。なお、本評価指標では、製品に含まれるセンサ等の有体物については言及しないが、認証基準等も参考に、別途適切に評価する必要がある。
1) プログラム部分の評価
意図したとおりにプログラムが動作することを評価すること。
2) 安全性に関する評価
開発機器の特性を踏まえて、適切に評価すること。
① 品質マネジメント、リスクマネジメント 4)
ソフトウェアライフサイクルプロセス 5, 6)について評価すること。
② サイバーセキュリティ 7)8)
開発機器の特性に応じて、想定されるサイバーリスクを明確化し、最新のセキュリティ基準・規格に応じた適切な対策が講じられていることが望ましい。
③ 個人情報保護 9)
臨床情報を取得する機器にあっては、その取得する範囲と目的を特定し、必要に応じ適切な患者同意取得等の対応をこと。また、必要な個人情報保護の対策が講じられていること。臨床情報を保存する機能を有する機器にあっては、情報の保管や廃棄の際の取り扱いについても考慮されていることが望ましい。
④ 情報セキュリティ 10)
患者等のデータを保管するためにサーバーやクラウド等を利用する場合は、最新の技術に照らし合わせ、適切な対策がなされていることを確認すること。また、情報取扱についての社内ルールを規定し徹底すること。また、市販後の脅威の監視と対応体制を明記されていることが望ましい。

(3) 臨床評価に関する事項
1) 臨床試験(治験)の必要性の考え方
臨床評価に関する資料の必要性については、個々の医療機器プログラムの特性、非臨床で評価できる範囲等を基に総合的に判断されることから、医薬品医療機器総合機構の対面助言を活用することが望ましい。11-13)
現時点において、行動変容を伴う医療機器プログラムを対象とした承認基準は存在しない。また、行動変容を伴う医療機器プログラムについては、承認前例が限られるとともに、その有効性・安全性を非臨床試験のみで評価することが難しいため、臨床試験成績に関する資料の必要性が高いと考えられる。

2) 臨床試験(治験)のデザイン
臨床試験の実施にあたっては、5(1)2)③項「臨床的位置づけ」に基づき、まずは二重盲検ランダム化比較試験の実施要否について検討すること。また、優越性又は非劣性の検証を選択した理由の適切性について確認すること。
対照群の設定にあたっては標準治療、既存の行動変容を伴う医療機器プログラム、シャムアプリ等の要否を適切に検討し、臨床的有効性のエビデンスを構築すること。また、効果の持続性について評価する必要がある場合は適切に観察期間を設けること。
評価項目の設定については、可能な限り広く認知された標準的な客観的指標を用いること。対象とする疾患等、行動変容を伴う医療機器プログラムの臨床的位置づけによっては、主観的指標
14, 15)を用いざるを得ない場合があるが、その際は評価すべき内容に応じて可能な限り信頼性・妥当性が検証されている、又は当該診療領域において標準的に広く受け入れられている適切な指標を選択すること。選択した主観的指標を用いて評価する際は、治験全体のデータの質を向上させるために適切なトレーニングや回答方法の説明等を実施し意図したデータを収集するとともに、得られた成績の正確性、再現性、妥当性等について注意深く検討する必要がある。可能であれば、副次評価項目等として客観的な指標を用いて評価することが望ましい。
試験デザインについては、個々の医療機器プログラムの特性を十分に検討した上で、症例数、実施期間、対照群及び行動変容のアウトカムの特性を考慮した有効性の指標となる臨床的意義がある変化量等を設定すること。
シャムアプリを使用する場合には、パイロットスタディー等でシャムアプリの盲検性が適切に評価されていることが理想である。その結果等から、二重盲検ランダム化比較試験の実施可能性やシャムアプリの効果量の影響等についても考慮すること。盲検性を保ちつつ効果のないシャムアプリを作成することには困難を伴うことが考えられ、二重盲検ランダム化比較試験の実施自体が難しいことも想定される。この場合は可能な限り、ホーソン効果等といった患者の心理的な影響を受け難い評価方法及び評価項目を選択すること。主観的指標を使用する場合は、臨床的位置づけに立ち戻り、副次評価項目も含めた試験デザイン全体として評価することも考えられる。これらの事項を含めた具体的な試験プロトコルについては、PMDAの相談を活用して検討することを推奨する。

3) 臨床成績に影響する事項 ① 人種や文化的背景の影響
海外における使用実績や、臨床試験成績がある製品であっても、行動変容を伴う医療機器プログラムにおいては、人種差のみならず、宗教、道徳観、生活環境等の文化的背景が有効性に影響し得ることを考慮し、必要に応じて国内において臨床試験を実施すること。また、世代の違いによる影響や、地域性の影響についても評価することが望ましい。
② 開発時期や臨床試験が実施された年代の影響
評価された時代背景が有効性・安全性へ与える影響について評価すること。例えば、10年前に開発された製品を承認申請する場合や、疾患ガイドライン等が改訂された場合は、性能に及ぼす影響の有無、当該機器の臨床的位置づけについて再評価する必要がある。
③ 患者アドヒアランスへの影響
行動変容を伴う医療機器プログラムは、継続的に使用することで効果を発揮するものもあると考えられることから、使用継続率に影響し得る要素も、当該機器の臨床成績に影響する可能性があることに留意すること。例えば、以下のような項目が挙げられる。
 フォントや背景色等、グラフィカルなユーザインターフェース
 出力するメッセージの表現
 方言やキャラクター等、嗜好に依存する事項
④ ユーザインターフェースのカスタマイゼ-ション
患者等がカスタマイズ等できる仕様を含む場合はその範囲を明らかにするとともに、その影響について評価すること。
⑤ 第三者との比較や交信の取扱い
医療機器プログラム上で患者等が他の患者等と交信したり、達成状況等を比較したりする機能を含む場合は、その有効性だけでなく、安全性や適切性についても検討すること。ピアサポートは、属する集団によって有効性・安全性に差が生じ得ることも留意すること。
⑥ 既存治療終了後の延長効果と開発機器の効果の区別
当該医療機器プログラムの臨床的位置づけによっては、既存療法を完了、中止等した際の延長
効果を考慮した上で、標榜する有効性が適切に評価されていることを示すこと。

4)安全性に関わる留意事項臨床上許容できないハザードが存在し得る製品に関しては、確実なアウトカムとリスク評価が必要となる。適応対象となる患者等に対し、不適切な介入(例えば、高齢者に対する過度の運動、食事制限がある患者等に対する不適切な食事指導等)によるリスクについて検討し、製品の仕様や注意喚起の方法等も踏まえたリスクアセスメントを実施することが重要である。例えば、うつ病や糖尿病では不適切な情報介入が行われると、自殺企図の悪化や低血糖発作の惹起といった生命に関わる事態を招く可能性がある。このように介入によってもたらされ得る効果が重大な生命リスクに直結する疾患もあるため、対象とする疾病だけでなく関連する合併症等を含めて検討すること。

6. 市販後に留意すべき事項
本評価指標は、承認審査に係る留意事項を取りまとめるものであるが、承認後に予見される医療機器プログラム特有の課題について、付言する。
1) 一部変更承認申請・軽微変更届出の取扱い
医療機器プログラムでは、プラットフォームのOSやセンサを含めた併用機器の更新又は改良が必要となる場合がある。変更手続きについては、平成29年7月31日付け薬生機審発0731第5号厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課長通知「医療機器の一部変更に伴う軽微変更手続き等の取扱いについて」16)を参照の上、適切に対応すること(別添参照)。

2) 一部変更承認申請の必要性の判断
有効性・安全性に影響する変更がある場合は一部変更承認申請を行う必要がある。有効性・安全性に影響する事項は製品毎に異なることから、開発段階から何がその医療機器プログラムの有効性を規定する因子かについて検討、把握しておく必要がある。判断に悩む場合は、適宜PMDAに相談することを推奨する。
なお、5(1)3)①項「提示される心理療法等の根拠」として用いた診療ガイドライン等に変更があった場合には、当該医療機器プログラムの有効性・安全性への影響を検討して判断すること。

3) 変更計画確認手続制度(Improvement Design within Approval for Timely Evaluation and
Notice, IDATEN)について
市販後に当該機器の性能向上が可能となる場合も考え得る。連続的又は高頻度の改良を計画する場合は、当該制度 17-18)の利用についても検討する選択肢がある。

4) 臨床評価が必要な変更の範囲
診療ガイドライン等の更新に伴い新たな臨床評価を必要とする変更を行う場合は、5(3)1)項「臨床試験(治験)の必要性の考え方」に準じて臨床試験を実施すること。変更目的や変更内容に応じて、必要なデータパッケージは初回申請時と異なることもある。

GL:付属資料

参考資料
1) 令和2年度 次世代医療機器・再生医療等製品評価指標作成事業 行動変容を伴う医療機器プログラムに関する調査研究班報告書 令和3年3月
2) 令和3年3月31日付け薬生機審発0331第1号・薬生監麻発0331第15号厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課長・監視指導・麻薬対策課長通知「プログラムの医療機器該当性に関するガイドラインについて」
3) 厚生労働省ホームページ「医療機器プログラムについて」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000179749_00004.html
4) ISO 14971:2019 Medical devices ― Application of risk management to medical devices / JIS T 14971:2020 医療機器-リスクマネジメントの医療機器への適用
5) IEC 62304:2006/Amd 1:2015 Medical device software ― Software life cycle processes
6) JIS T 2304:2017 医療機器ソフトウェア―ソフトウェアライフサイクルプロセス
7) 令和3年12月24日付け薬生機審発1224第1号・薬生安発1224第1号厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課長・医薬安全対策課長通知「医療機器のサイバーセキュリティの確保及び徹底に係る手引書について」
8) 令和2年5月13日付け薬生機審発0513第1号・薬生安発0513第1号厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課長・医薬安全対策課長通知「国際医療機器規制当局フォーラム
(IMDRF)による医療機器サイバーセキュリティの原則及び実践に関するガイダンスの公表について(周知依頼)」
9) 「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」第一版、平成28年11 月(令和3年10月一部改正) 個人情報保護委員会
10) 「医療情報を取り扱う情報システム・サービスの提供事業者における安全管理ガイドライン」令和2年8月 総務省・経済産業省
11) 平成17年2月16日付け薬食機発第0216001号 厚生労働省医薬食品局審査管理課医療機器審査管理室長通知「医療機器の製造販売承認申請に際し留意すべき事項について」
12) 平成20年8月4日付け薬食機発第0804001号 厚生労働省医薬食品局審査管理課医療機器審査管理室長通知「医療機器に関する臨床試験データの必要な範囲等について」
13) 平成29年11月17日付け薬生機審発1117第1号・薬生安発1117第1号厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課長・医薬安全対策課長通知「医療機器の「臨床試験の試験成績に関する資料」の提出が必要な範囲等に係る取扱い(市販前・市販後を通じた取組みを踏まえた対応)について」
14) 治験におけるPatient Reported Outcomes ~臨床開発担当者のためのPRO利用の手引き~
2016年6月 日本製薬工業協会 データサイエンス部会 タスクフォース7
15) Guidance for Indutry Patient-reported outcome measures: use in medical product development to support labeling claims, 2009年12月 FDA
16) 平成29年7月31日付け薬生機審発0731第5号 厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課長通知「医療機器の一部変更に伴う軽微変更手続き等の取扱いについて」
17) 令和2年8月31日付け薬生機審発0831第14号 厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課長通知「医療機器の変更計画の確認申請の取扱いについて」
18) 令和2年10月30日付け厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課事務連絡「医療機器の変更計画の確認申請に関する質疑応答集(Q&A)について」

別添
市販後変更手続き及び変更計画確認手続制度(IDATEN)の留意点

変更計画確認手続制度(IDATEN)14-15)を利用する場合や市販後に一部変更承認申請・軽微変更届出を行う場合は、以下の事項を参考として、必要な情報を記載するとともに、適切な評価を行うこと。
① 市販後の収集データに基づいた改良
市販後に収集したデータを解析し、当該機器の性能変更に用いる場合には、改良モデルの開発時に使用するデータの品質と同様に、収集されたデータの適切性、過学習の可能性を考慮すること。
なお、改良時に使用するデータについては、利用目的に応じて患者等の同意が必要となる場合がある。特に、市販後のデータ収集においては、当該機器に患者自身が入力した情報や自動取得されたバイタルデータ等を収集して利用するため、患者個人の情報を含むデータの利用となることが想定される。したがって、同意の要否については、個人情報保護法の取扱いを十分に確認の上、対応すること。
② OSのアップデート及び併用機器の更新に伴う変更
プラットフォームのOSやセンサを含めた併用機器の更新又は改良が開発機器の有効性・安全性に及ぼす影響ついて評価すること。なお、それらの更新に伴って当該機器が正常に作動するために行った変更は一部変更承認申請を要しない。
③ 疾患ガイドラインの更新に伴う変更
標準治療や併用治療等が更新される可能性を踏まえて、当該プログラムの位置づけ、標準療法との関係性について明確化しておき、ガイドラインの変更に伴う当該プログラムの有効性・安全性への影響を検討し、必要に応じてプログラムの改修を行うこと。この改修が臨床アウトカムに影響を及ぼす場合は一部変更承認申請をすること。
④ 有効性に影響するアルゴリズム自体の変更
新旧アルゴリズムの相違点を明示した上で、アルゴリズムの改良が当該機器の有効性・安全性に及ぼす影響を明らかにすること。医療機器プログラムにおいては、プログラムの全容を明示することは難しいこともあるが、有効性・安全性に影響する要素が明確化されていることが望ましい。

引用関連規格

国内関連GL

海外関連GL

WG開始年月

2021-03-01

WG終了年月

2022-04-01

WGメンバー

令和2年度
座 長:佐久間一郎 東京大学 大学院工学系研究科 医療福祉工学開発評価研究センター 教授

委 員(五十音順):
岸 暁子 東京大学大学院工学系研究科バイオエンジニリング専攻 個別化保健医療講座 特任助教
佐竹晃太 株式会社 CureApp 代表取締役社長
鈴木孝司 公益財団法人医療機器センター 医療機器産業研究所 調査研究室 室長
田村雄一 国際医療福祉大学 医学部 循環器内科 教授

厚生労働省:
河野典厚 医薬・生活衛生局 医療機器審査管理課長
大原 拓 医薬・生活衛生局 医療機器審査管理課 課長補佐
            再生医療等製品審査管理室長
立野陽子 医薬・生活衛生局 医療機器審査管理課 先進医療機器審査調整官
村上まどか 医薬・生活衛生局 医療機器審査管理課 革新的製品審査調整官
池上貴啓 医薬・生活衛生局 監視指導・麻薬対策課 主査
米本遼一 医薬・生活衛生局 監視指導・麻薬対策課 主査
小林奉文 医薬・生活衛生局 監視指導・麻薬対策課 薬事監視第一係長
福永雅樹 医薬・生活衛生局 監視指導・麻薬対策課
宮下正也 医薬・生活衛生局 監視指導・麻薬対策課

独立行政法人 医薬品医療機器総合機構:
石井健介 医療機器審査第一部 部長
岡﨑 譲 医療機器審査第一部 審査役
相澤浩一 医療機器審査第一部 審査役
井田尚子 医療機器審査第一部 審査役補佐
冨安亜矢子 医療機器審査第一部 審査専門員
田村敦史 医療機器審査第二部 部長
清川千秋 医療機器審査第二部 審査専門員
古森亜矢 医療機器審査第二部 テクニカルエキスパート
小野寺陽一 医療機器調査・基準部 部長
水上良明 医療機器調査・基準部 医療機器基準課 課長
今川邦樹 医療機器調査・基準部 医療機器基準課 基準専門員

国立医薬品食品衛生研究所(事務局):
蓜島由二 医療機器部 部長
岡本吉弘 医療機器部 性能評価室 室長
迫田秀行 医療機器部 第二室 主任研究官

オブザーバー:
廣瀨大也 経済産業省 商務情報政策局 商務・サービスグループ ヘルスケア産業課 医療・福祉機器産業室長
加藤二子 経済産業省 商務情報政策局 商務・サービスグループ ヘルスケア産業課 医療・福祉機器産業室 室長補佐
古谷俊介 経済産業省 商務情報政策局 商務・サービスグループ ヘルスケア産業課 医療・福祉機器産業室 室長補佐
藤原崇志 経済産業省 商務情報政策局 商務・サービスグループ ヘルスケア産業課 医療・福祉機器産業室 室長補佐
新倉奈々 経済産業省 商務情報政策局 商務・サービスグループ ヘルスケア産業課 医療・福祉機器産業室
鎮西清行 国立研究開発法人 産業技術総合研究所 健康工学研究部門 副研究部門長
矢野貴久 日本医療研究開発機構医療機器・ヘルスケア事業部 医療機器研究開発課 課長
近藤昌夫 大阪大学大学院 薬学研究科 附属創薬センター 教授
古川 浩 一般社団法人 日本画像医療システム工業会 シニアリサーチャー(医療機器規制)
鹿妻洋之 一般社団法人 電子情報技術産業協会 ヘルスケアインダストリ部会 ヘルスケア IT 研究会 主査

令和3年度
座 長:佐久間一郎 東京大学大学院工学系研究科付属医療福祉工学開発評価研究センター
         バイオエンジニアリング専攻 教授
委 員(五十音順):
菊地俊暁 慶應義塾大学医学部 精神・神経科学教室 専任講師
後藤 励 慶應義塾大学大学院 経営管理研究科/健康マネジメント研究科 教授
鈴木孝司 公益財団法人医療機器センター 認証事業部 審査役
田村雄一 国際医療福祉大学三田病院 心臓血管センター(肺高血圧症センター)
国際医療福祉大学医学部 循環器内科学 教授

厚生労働省:
関野秀人 医薬・生活衛生局医療機器審査管理課長
高畑正浩 医薬・生活衛生局医療機器審査管理課 課長補佐
福田悠平 医薬・生活衛生局医療機器審査管理課 プログラム医療機器審査管理室長
立野陽子 医薬・生活衛生局医療機器審査管理課 先進医療機器審査調整官
安増孝太 医薬・生活衛生局医療機器審査管理課 医療機器審査調整官
村上まどか 医薬・生活衛生局医療機器審査管理課 革新的製品審査調整官
三宅晴子 医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課 危害情報管理専門官
小林奉文 医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課 薬事監視第一係長
福永雅樹 医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課 係員

独立行政法人 医薬品医療機器総合機構:
岡崎 譲 プログラム医療機器審査室長
加藤健太郎 プログラム医療機器審査室 審査専門員
小志戸前葉月 プログラム医療機器審査室 審査専門員
江面崇智 プログラム医療機器審査室 審査専門員
古森亜矢 プログラム医療機器審査室 テクニカルエキスパート
片山 宏 医療機器審査第一部 主任専門員(審査相談・臨床医学担当)
小野寺陽一 医療機器調査・基準部長
郭 宜 医療機器調査・基準部 医療機器基準課長
今川邦樹 医療機器調査・基準部 医療機器基準課 基準専門員

国立医薬品食品衛生研究所(審査 WG 事務局):
蓜島由二 医療機器部長
岡本吉弘 医療機器部 性能評価室長
迫田秀行 医療機器部 第二室 主任研究官

経済産業省 商務情報政策局 商務・サービスグループ(オブザーバー):
廣瀨大也 ヘルスケア産業課 医療・福祉機器産業室長
岡崎健一 ヘルスケア産業課 医療・福祉機器産業室 室長補佐(総括)
加藤二子 ヘルスケア産業課 医療・福祉機器産業室 室長補佐
小関義彦 ヘルスケア産業課 医療・福祉機器産業室 室長補佐
藤原崇志 ヘルスケア産業課 医療・福祉機器産業室 室長補佐
新倉奈々 ヘルスケア産業課 医療・福祉機器産業室 係員

オブザーバー(五十音順):
新木和孝 日本医療研究開発機構 医療機器・ヘルスケア事業部 医療機器研究開発課 主幹
交久瀬善隆 日本医療研究開発機構 医療機器・ヘルスケア事業部 医療機器研究開発課 主幹
栗原宏之 日本医療研究開発機構 創薬戦略部 規制科学推進課 課長代理
河野 健 日本医療研究開発機構 創薬事業部 規制科学推進課 課長
近藤昌夫 大阪大学大学院 薬学研究科 附属創薬センター 教授
鈴木友理子 日本医療研究開発機構 医療機器・ヘルスケア事業部 ヘルスケア研究開発課 課長
鎮西清行 産業技術総合研究所 健康医工学研究部門 副研究部門長
峯田浩司 日本医療研究開発機構 医療機器・ヘルスケア事業部 医療機器研究開発課 主査
山際康基 日本医療研究開発機構 創薬事業部 規制科学推進課 主査
湯浅浩司 日本医療研究開発機構 医療機器・ヘルスケア事業部 医療機器研究開発課 課長

報告書(PDF)

H2年度報告書
2022-HN-PR-041-R2-報告書

H3年度報告書
2022-HN-PR-041-R3-報告書

報告書要旨(最新年)

承認済み製品(日本)

承認済み製品(海外)

製品開発状況

Horizon Scanning Report