54 補助人工心臓用の経皮的エネルギー伝送システム 開発ガイドライン2023(手引き)

ガイドラインID 2023-E-DE-059
発出年月日
発出番号
WG名 経皮的エネルギー伝送システム 開発 WG
制度名 医療機器等開発ガイドライン策定事業(開発ガイドライン)
製品区分 医療機器
分野

医療機器

GL日本語版ファイル

2023-E-DE-059 補助人工心臓用の経皮的エネルギー伝送システム 開発ガイドライン2023(手引き)

附属書H 補助人工心臓用の経皮的エネルギー伝送システム開発ガイドライン2023(手引き)

英文タイトル
GL英語版ファイル

GL:イントロ・スコープ

1. 序文
1.1. 背景
半導体技術の発展とともに急速にコンピュータ、携帯電話などの電気電子機器技術が発達し、性能の向上のみならず、機器の小型化、電力効率化に関しても目覚ましい技術的進歩が見られる。それに伴い、医療機器に関してもペースメーカや体内植え込み型補助人工心臓などの体内植え込み機器等の研究開発、実用化が進んできた。体内植え込み機器の主なエネルギー源は電力であり、体内に長期間植え込み可能で定期的に充放電が行えるエネルギー密度の高い二次電池の開発も並行して行われている。しかし、駆動に数 W〜20W 程度の電力が必要な補助人工心臓などの体内植え込み機器においては未だに患者皮膚を貫通する電力伝送ラインによる有線電力伝送に頼っている。
有線電力伝送では皮膚貫通部での感染症防止が医学的に重要な課題となっている。その抜本的対策として、また対象患者の QOL の向上や再入院・治療費軽減の観点からも電力伝送無線化(非接触給電化)が望まれており、経皮的エネルギー伝送システム(TETS: Transcutaneous Energy Transmission System)の研究が進められているとともに、海外では臨床実験も始まっている。一方、無線電力伝送では交流電磁界を介して電力を伝送するが、電磁界の生体への影響、安全対策に関しては未だ研究中、検討中である。体外に設置または存在する携帯電話や IH 調理器のような機器を対象に総務省の電波防護指針や国際非電離放射線防護委員会(International Commission on Non-Ionizing Radiation Protection: ICNIRP)によりばく露限度値等が定められているが、一般公衆へのばく露や職業的なばく露を想定したものであり、生体に影響を及ぼすと考えられる値のしきい値から、安全係数(低減係数)を含んでいるものとなっている。
このような背景のもと、平成 29 年 8 月 9 日に厚生労働省医薬・生活衛生局より薬生機審発0809 第 7 号「植え込み型医療機器への非接触給電システムに関する評価ガイドライン」[1] (以下、TETS 評価ガイドライン(2017))が公表された。TETS 評価ガイドライン(2017)は体内に植え込まれた医療機器に対する非接触給電装置の開発に関する指標を提示するとともに、安全性を確保するための評価指標を作成することを目的としたもので、小電力の体内植え込み医療機器開発に関しては良く適合する評価ガイドラインである。しかし、TETS 評価ガイドライン(2017)では非接触給電可能な磁界強度範囲を ICNIRP の定めるガイドラインの公衆ばく露値に対する参考レベルに依っているため、給電電力が大きくなるとその要求を満足することが難しくなる。大電力の給電を必要とする、国内外で開発中の補助人工心臓用の TETS の発生電磁界への適用は現実的ではない。
1.2. 本ガイドラインの目的
本ガイドラインは、最大 20W 程度の電力伝送を必要とする補助人工心臓のための TETS の設計及び型式試験のための指針を示すことを目的とする。

2. 適用範囲
2.1. スコープ
本ガイドラインは、以下の全てに合致する TETS を対象とする。
1) 補助人工心臓システムへの非接触給電を目的とする TETS。
2) 数 W〜20W 程度の電力伝送を行う TETS。
3) エネルギー伝送方式としては電磁誘導方式、磁界共鳴方式とする。
- 電磁誘導方式は、結合係数 k が大きい近距離のコイル間を、高効率で伝送する方式とする。
- 磁界共鳴方式は、結合係数 k が小さい離れたコイル間で、コイルの質または共振の鋭さを表す Q 値を大きくし伝送する方式とする。
4) 伝送周波数帯域は電磁誘導方式、磁界共鳴方式双方を考慮し、60kHz〜15MHz とする。

2.2. 想定する利用者
本ガイドラインは、補助人工心臓に適用する TETS を開発する技術者及びその安全及び関連法規への適合性を評価する者を想定する利用者とする。読者は高周波技術、医用電気安全、電磁障害等に関する工学的知識を有していることが望ましい。
本ガイドラインは補助人工心臓に適用する TETS を想定している。他の用途の TETS については、医学的要求と技術的事項を適切に読み替えることで本ガイドラインを参考にすることができる。
2.3. 本ガイドラインの必須文書
1) IEC 60601-1 Medical electrical equipment – Part 1: General requirements for basic safety and essential performance [2] (JIS T 0601-1 医用電気機器−第 1 部:基礎安全及び 基本性能に関する一般要求事項)
2) ISO 14708-1 Implants for surgery — Active implantable medical devices — Part 1: General requirements for safety, marking and for information to be provided by the manufacturer [3]
3) 体内埋め込み型能動型機器分野(高機能人工心臓システム)開発ガイドライン(以下、人工心臓システム開発ガイドライン)[4]
4) 植え込み型医療機器への非接触給電システムに関する評価ガイドライン(平成 29 年 8 月 9 日付 薬生機審発 0809 第 7 号別添)[1]
これらについては、原則的にその時点での最新版を開発に適用することが望ましいが、規制上の要求は旧版に準拠している場合もあるので、必要に応じて規制当局と協議する。
注釈: 2022 年 2 月時点では、IEC 60601-1 は 2020 年版、JIS T 0601-1 は 2017 年版、ISO 14708-1 は 2014 年版が最新である。人工心臓システム開発ガイドラインは 2022 年度に改定の見込みである。

2.4. 本ガイドラインの構成
4章: 補助人工心臓システム用の TETS の開発において適用すべき文書を示す。
5章: 本ガイドラインが TETS 評価ガイドライン(2017)の例外事項として推奨する事項及び本ガイドラインが追加的に推奨する事項を示す。
なお、伝送周波数帯域及び5章で扱う事項については、附属書 A〜F にて解説している。

GL:本体

3. 用語及び定義
本ガイドラインで定義する以下の用語のほか、IEC 60601-1 (JIS T 0601-1)、人工心臓システム開発ガイドライン及び TETS 評価ガイドライン(2017)の用語を適用する。
3.1.
経皮的エネルギー伝送システム(TETS: Transcutaneous Energy Transmission System) 交流磁界を用いて数 W から数十 W の電力を、皮膚を介して植え込み型医療機器(補助人工心臓など)へ非接触給電を行うシステム
注釈:TETS は体外設置バッテリー、直流電源・AC-DC コンバータ、インバータなどを含む体外回路、送電コイルと受信電コイル(経皮トランス)、整流平滑回路などを含む体内回路からなる。体外回路と送電コイルは体外に設置され、受電コイルと体内回路は体内に植え込まれる。
3.2.
高周波患者漏れ電流 (high frequency patient leakage current) 数 10kHz~数 100MHz 帯も含む患者漏れ電流
注釈:IEC 60601-1 の患者漏れ電流は 1MHz 以下を対象としているが、商用周波数である 50~60Hz とその高調波が主であり、1MHz 以上を規制しているガイドライン等の文書は存在しない。本ガイドラインでは、1MHz 以上の患者漏れ電流も対象としている。

本ガイドラインで使用する略語
- TETS: Transcutaneous Energy Transmission System: 経皮的エネルギー伝送システム
   CISPR: Comité international spécial des perturbations radioélectriques: 国際無線障害特別委員会
- ICNIRP: International Commission on Non-Ionizing Radiation Protection: 国際非電離放射線防護委員会
- SAR: specific absorption rate: 比吸収率
- MD: measurement device: 測定用器具

4. 一般的検討事項
補助人工心臓に用いる TETS には、第5章で述べる事項を除き、TETS 評価ガイドライン(2017)を適用する。
TETS の体外側の部分には JIS T 0601-1 及びその副通則を、体内側の部分には ISO 14708-1 を適用する。

5. 追加的検討事項
5.1. 熱作用
TETS の熱作用は、組織放散電力許容しきい値と局所平均 SAR 値から判断し、以下のとおり評価する。
- 回路システムの電力損失に起因する発熱特性は、人工心臓システム開発ガイドラインに準拠すること。
- インバータ、経皮トランスから発生する高調波を含めた交流磁界による局所平均 SAR 値は、2020 年版 ICNIRP ガイドライン[5]の職業環境下における局所ばく露の基本制限(10g 組織あたり 10W/kg)を満たすこと。

5.2. 刺激作用
TETS の刺激作用は、インバータ、経皮トランスから発生する高調波を含めた交流磁界が、 ICNIRP 低周波ガイドライン[6]における、職業環境下における基本制限(3kHz~10MHz において、2.7×10-4×f(V/m)、f は周波数(Hz))を満たすこと。
5.3. 漏れ電流(商用周波数帯)
TETS を AC100~250V の電源を用いて動作させる場合に相当する商用周波数の患者漏れ電流試験については、1kΩの抵抗を用いて送電コイルから患者の体に流れ込む商用周波数帯の患者漏れ電流を測定する。この場合は、TETS の体外側の装置は IEC 60601-1 の BF 型装着部扱いとなり、100µA が制限値として適用される。TETS の場合は、数 100kHz と数 MHz の高調波も多く含むため、MD を用いて商用周波数の患者漏れ電流を測定すると、50/60Hz の他に、フィルタで減衰仕切れなかった数 100kHz 以上の波形が重畳される。本重畳波形は現在のフィルタでは技術的に消去することが困難であるため、商用周波数の患者漏れ電流と重なる場合、オシロスコープなどで波形を観測すると商用周波数の患者漏れ電流と分別することが困難である。このため、商用周波数の患者漏れ電流を測定する場合は 50/60Hz 以上の周波数を高い減衰率で遮断できるフィルタを介してから電圧計等の測定機器で測定する。
また、TETS の体内側の装置は、心臓に直接電気的に繋がるため、IEC 60601-1 の CF 機器扱いになる。しかしながら、体内側の装置が、商用周波数の電源と直接つながることはないため、ここでは対象外となる。
漏れ電流の測定において、経皮トランスのコイル間距離や伝送電力などによって測定値が変化する可能性がある。実使用で想定される条件の中でも、漏れ電流が最も大きくなるに条件において測定を行うことが求められる。

5.4. 高周波漏れ電流
TETS には、患者の体に流れる商用周波数以外の高周波患者漏れ電流が存在する[7,8]。患者に直接触れる送電コイル等は、0.9 (w/v)%の NaCl 水溶液と人体と等価インピーダンスを持つ無誘導抵抗を介して接地に向かって流れる漏れ電流を測定し、測定値がTETS の適用周波数範囲の 60kHz 以上で下記を超えないようにする。
(周波数[Hz] / 10000) [mA] (60kHz < f < 100kHz ) ・・・・・(1)
10 [mA] (100kHz < f )
式(1)は生体の刺激作用の感度[2]から考慮された傾きである。100kHz 以上において 10mA を制限値としている理由は、生体の熱作用を考慮したためである[2]。ただし、熱作用や刺激作用を起こさないことが十分に確かめられた場合は、10mA を越える患者漏れ電流も許容することもある。人体等価抵抗に用いる抵抗値は、使用周波数や接地状況に応じて 20~200Ω の範囲で変動するため、測定や数値解析を行って決めることが望ましい[9,10,11,12]。
高周波漏れ電流の測定において、経皮トランスのコイル間距離や伝送電力などによって測定値が変化する。実使用で想定される条件の中でも、患者漏れ電流が最も大きくなるに条件において測定を行うことが求められる。
TETS の高周波患者漏れ電流測定を行う際の測定器は、TETS の伝送周波数の 50 倍程度まで、測定器が対応しているかを確かめること[7,8]。

5.5. イミュニティ
TETS の実用化にあたり、TETS が電磁的干渉を他の機器から受けることを最小限にすることが必要で、電磁的干渉の評価を行うことが求められる。実際に使用される環境では様々な周波数や強度の電磁波にさらされており、干渉を評価する適切な試験レベルや基準の選定は難しいのが現状である。参考となる規格として、能動植え込み型医療機器に対する ISO 14708 シリーズや ISO 14117 があるが、多くの医用電気機器が採用している EMC 規格である IEC 60601-1-2 を適用する。

5.6. エミッション
TETS の放射妨害波は、原則的には CISPR11[13](Group 2、Class B)を満たすことが望ましい。具体的には、下記の2つを満足する必要がある。
・ 周波数 0.15~30MHz においては、磁界により限度値が定められており、測定距離 3m の位置の磁界(準せん頭値)が、39~3dBµA/m(周波数の対数に従って、次の値まで線形で減少)を満たすことが求められている。
・ 周波数 0.03~1GHz においては、電界により限度値が定められており、測定距離10m の位置の電界(準せん頭値)が、30~50dBµV/m(詳細は CISPR11 規格[13]参照)を満たすことが求められる。
ただし、TETS は磁界エネルギーで伝送を行っているため、磁界においては、上記の限度値を満たすことは容易ではない。

5.7. その他、TETS の開発において、特に配慮が必要な点
(1) 伝送周波数
TETS の場合は、大きな磁界を近距離で人体に照射するため、刺激作用が発生する可能性がある。15W 程度の伝送を想定した場合は、300 kHz 以下は ICNIRP の規制値を超える刺激作用が生じ、周波数が低いほどこの作用が大きいとの報告があり[14]、使用できる下限周波数が制限される。一方、伝送周波数が高すぎる場合も、熱作用が生じやすいという報告もあるため[14]、上限周波数も制限される可能性がある。また、コイルや TETS の各回路は、周波数が高いほど損失が増加するため、コイルや回路の発熱も増大し、共振も不安定になりやすい。このため、TETS の伝送周波数は、実使用を考慮するとある範囲内に限定されてしまう。これ以外に、他の無線通信で使っていない周波数帯であることも、伝送周波数を決める際には考慮する必要がある。
(2) 測定時の伝送条件
漏れ電流や、放射妨害波などを測定する際に、送電コイルと受電コイルの間の距離や伝送電力などが変わると測定値も大きく変化する。実使用で想定される条件の中でも、患者漏れ電流が最も大きくなるに条件において測定を行うことが求められる。
また、患者漏れ電流の測定の際に用いる人体等価抵抗は 200Ωとしているが、これは人が大地に両足で直立している状態の胸から両足間の抵抗(400kHz の場合)の解析値を示している[10,11]。人体の接地状況によっては、さらに低い抵抗値になることも考えられる [12]。一般に想定される使用条件を設定し、それに合わせた人体等価抵抗を用いて患者漏れ電流の測定を行うことが望ましい。
(3) 測定機器
高周波患者漏れ電流には、TETS の伝送周波数に加え、数 10~数 100 倍の高調波も含まれる。このため、オシロスコープ等の測定機器の帯域が十分でない場合は、測定結果が実際よりも小さな値として観測されてしまうため、帯域が伝送周波数よりも十分に高いものを用いる必要がある。ここでは、最低限必要な帯域として、伝送周波数の 50 倍としている。
(4) 放射妨害波
TETS の経皮トランスから放射される放射磁界は、あらゆる検討が国内外で行われてきているが、現段階では CISPR11 の規制値を満足しているものはない(体外結合型経皮電力伝送システムを除く)[15]。一方、CISPR11 で放射磁界が規制されている電気自動車のワイヤレス充電システムでは、電波法において放射磁界規制値の緩和が認められている(ただし、国内限定)[16]。よって、TETS の放射磁界においても、緩和措置の検討の議論が必要と考えられる。

GL:付属資料

附属書 A 基本性能(周波数・結合係数等)について
今日までに開発されている TETS には、電磁誘導方式と磁界共鳴方式がある。電磁誘導方式の TETS はすでに完全人工心臓や補助人工心臓で臨床試験されている。磁界共鳴方式は、 2006 年に MIT の研究グループが提案し、電気自動車搭載蓄電池の非接触充電などに期待されている方式で、令和元年度経皮的エネルギー伝送システム開発 WG 報告書[17]にあるようにワシントン州立大学と MIT の共同研究グループや Thoratec 社(現 Abbott 社)などが人工心臓用 TETS 用に研究開発を進めている。
今後の TETS の発展と実用化を考え、電磁誘導方式と磁界共鳴方式の両方式の TETS に対応し、伝送周波数や結合係数、伝送効率などの基本性能を統一的に扱うことを検討した。
両者は二つのコイル間に生じる誘導起電力により電力伝送を行うものであるが、その主たる違いはエネルギー伝送距離にあり、誘導方式はコイル間距離最大 10cm 程度で電力伝送するのに対し、磁界共鳴方式は数 m 程度のコイル間距離で電力伝送を行う。電磁誘導方式と磁界共鳴方式のエネルギー伝送部の主たるハードウェアに違いなく、両者の違いはエネルギー伝送に関わるコイル間の結合係数 k と電力伝送周波数 f にある。
理論的に電磁誘導方式と磁界共鳴方式の電力伝送では、結合係数 k と共振の大きさ Q 値の積 kQ 値が同じであれば、コイル間伝送効率は等しい。
図 A.1 に TETS の等価電気回路を示す。電磁誘導方式も磁界共鳴方式も電気的等価回路は同じである。ここで電力伝送角周波数 ω、一次側コイルの自己インダクタンス L1 とその内部抵抗 R1、二次側コイルの自己インダクタンス L2 とその内部抵抗 R2、相互インダクタンス
M、負荷抵抗 RL とする。
一次側 Q 値を Q1、二次側の Q 値を Q2 とすると、
式省略
図A1 エネルギー伝送系の等価回路 
図省略

であり、 m = QQkf 21 と定義すると、最大伝送効率 ηmax は、
式省略

となる[18]。ここで、モデルを簡単化し、TETS の一次側コイルと二次側コイルの自己イン
ダクタンスを L、相互インダクタンス M、コイル間結合係数k、それぞれのコイルの内部
抵抗を R とすると、
式省略

となり、最大伝送効率 ηmax は、
式省略

となる。結合係数 k をパラメータに Q と最大伝送効率 ηmax の関係をグラフ化すると図 A.2
となる。

図 A.2 結合係数 k と共振の強さ Q とコイル間伝送効率の関係
図省略

図 A.2 の簡略化モデルの結果では、結合係数k が 0.1 以上は概ね電磁誘導方式によるエネルギー伝送システムであるのに対し、結合係数 k が 0.1 未満が磁界共鳴方式によるエネルギー伝送システムとなる。
結合係数 k が 0.1 以上の電磁誘導方式の場合、Q 値が変わっても、すなわち伝送周波数が変わっても伝送効率は大きく変化しない。一方、結合係数 k が小さい磁界共鳴方式の場合、伝送効率は Q 値、すなわち伝送周波数に依存し、伝送周波数を高くすることで効率的にエネルギーを伝送することができる。
以上より、TETS の基本性能を、電気回路の理論面より、以下のように整理する。

1) 電磁誘導方式と磁界共鳴方式
エネルギー伝送には、電磁誘導方式と磁界共鳴方式があるが、ハードウェアの構成は共通であり、基本原理は同じと考え、TETS を対象に以下のように整理できる。
- 電磁誘導方式 → 結合係数 k を主眼においた電力伝送
(伝送距離:数センチ程度以内)
- 磁界共鳴方式 → 結合係数 k が低い距離で Q を大きくすることで伝送
(伝送距離:10cm から 1m 程度)

2) エネルギー伝送周波数
電磁誘導方式では、コイル間の結合係数が大きい状態でエネルギー伝送する場合、周波数は低くても伝送可能である。実際、Baxter Novacor 社や Leviticus Cardio 社のベルト型コイ
ル方式 TETS はコイル間結合係数が大きいためエネルギー伝送周波数は 100kHz 程度である。
磁界共鳴方式では、コイル間距離が離れ、コイル間結合係数 k が小さくとも MHz オーダーまで周波数を上げれば必要電力を高効率に伝送可能である。Washington 大学の Free-D システムでは、伝送周波数を 10MHz として、コイル間距離 10cm で 73%、1m で 55%の伝送効率で、最大 40W のエネルギー伝送を行うことができる。この報告では 10MHz であったが、13.56MHz が ISM 周波数として認められていることから考えると、13.56MHz を用いる TETS が登場する可能性もある。
Leviticus Cardio 社のベルト型コイル方式 TETS は、コイル間距離の変化に伴う結合係数の変化に追従し最適な伝送周波数に自動的に同調させるオートチューニング機構を内蔵している。特に磁界共鳴方式で、コイル間距離が大きく変化する場合、オートチューニング機構を搭載するほうが好ましいと考える。エネルギー伝送周波数はオートチューニング機構による周波数の振れ幅も考慮し設定するのが望ましい。
また、体内伝送用ではないが、日本では自動車へのワイヤレス電力伝送においては、79 k
~90 kHz を用いることが決められており、この周波数帯の TETS が登場する可能性もある。
これらの現状を鑑みると、TETS に使用するエネルギー伝送周波数は 60kHz~15MHz 程度とするのが妥当と考えられる。

3) AC-AC 伝送効率(コイル間伝送効率)
コイル間伝送効率(AC-AC)の指標は、電磁誘導方式と磁界共鳴方式を統一的に扱うのであれば、kQ 積とするのが最近の潮流である。また、体外、体内の両方のコイルが皮膚に近接する電磁誘導方式と、体内側コイルは皮膚に近接するが体外側コイルは必ずしも皮膚に近接しない磁界共鳴方式では、求められる AC―AC 伝送効率は異なると考えられ、一つの数字をもって要求仕様を定めることは難しい。
- 電磁誘導方式の場合、体外、体内の両方のコイルが皮膚に直接に触れるため、火傷を生じないよう発熱を抑える意味で、伝送コイルでのエネルギー損失の最小化が必要で、
AC-AC 間伝送効率は 90%以上が望ましい。
- 磁界共鳴方式の場合、損失の多くは体外のエネルギー送信コイルで生じる。そのエネルギー送信コイルを衣服の上など皮膚から離した場所に設置でき、直接的な火傷を回避できるのであれば、ある程度の損失は許容可能と考えられる。
4) DC-DC 伝送効率
DC-DC 伝送効率は、送信側回路、受信側回路の消費電力を含めた効率で、システム全体のエネルギー伝送効率を表すもので、経皮的エネルギーシステムとしての性能評価指標となる。
- 電磁誘導方式では、現在に開発されている TETS の多くで、80%以上を達成している。
- 磁界共鳴方式の場合、火傷などが生じない限り、携帯する体外電池の容量がある程度に大きくなるかもしれないが、利便性とのバランスでメリットがあれば、Washington 大学の Free-D システムのように DC-DC 伝送効率が 40~50%程度であっても許容されると考える。

附属書 B 熱作用
B.1 熱作用の工学的側面
TETS 評価ガイドライン(2017)に基づき、機器開発に必要な工学的側面から「熱作用」について、以下に示す。

1) TETS の主な発熱源は、直流電源・AC-DC コンバータや体内回路のインバータ、経皮トランスの発する交流磁界が体表、体内組織に誘起する渦電流のジュール損と体内回路の整流平滑回路、DC-DC コンバータなどの電力損失である。これらによる発生熱は、体表面に設置される機器では体表面組織の低温火傷や周囲組織の熱障害を起こさず、体内に植え込まれる機器では体内の機器表面に接する組織に重篤な損傷を与えないことが要求される。
2) TETS の発熱特性は、TETS 評価ガイドライン(2017)では ISO 14708-1 に基づき、「埋め込み医療機器の表面温度は体温(37℃)から温度上昇 2℃以内の 39℃以下」としているが、米国 Cleveland Clinic Foundation の実験報告によれば、体内機器との組織接触面での熱放散電力密度が 0.04W/cm2 以下で機器表面での温度上昇が 4℃を超えなければ、組織の壊死は起こらないという[19]。熱放散電力密度のしきい値 0.04W/cm2 に関しては TET 回路系の体内植え込み位置を考慮して動物実験等を行い再評価することが望ましい。
3) 最大 20W の電力を伝送する TETS の熱発生に対しては、ISO 14708-1 の適用は実用化の観点から厳しく、それゆえに発熱特性は、人工心臓システム開発ガイドラインに準拠し、「発熱が周囲組織に障害を及ぼさないこと、特に埋め込まれた部位における隣接組織への影響を考慮し、機器表面での局所的な組織障害が発生しないこと」が望ましい。
4) TETS のインバータと経皮トランスからの交流磁界は、体表、体内組織に渦電流を誘起し、ジュール損による発熱を引き起こす。本発熱は上記 1) で述べた電力損失の一部であり、最終的には 2) 、3) に従うものであるが、高周波エネルギー伝送においては注目される項目であるため、この発熱特性について、以下に述べる。
5) 一般に、ヒトが電磁波(遠方界)や電磁界(近傍界)にばく露されると体内に侵入電界による電流が流れ、これが周波数に応じて異なった生体作用を引き起こす。体内の誘起電流は、10MHz 以下の周波数では筋肉や末梢神経、中枢神経を直接刺激するが、 100kHz 以上ではジュール損による熱発生を伴い、組織温度を上昇させ、熱ストレスを与える。前者は電流の「刺激作用」、後者は電流の「熱作用」とよばれる。以下、後者について述べる。
6) 電磁波や電磁界のばく露でもたらされる熱作用は、SAR を尺度として評価される。生体組織の電磁界ばく露で生ずる誘起電界(実効値)を E[V/m]、導電率をσ [S/m]、密度を ρ[kg/m3]とすれば、SAR[W/kg]=σE2/ρとあらわされる。1998年版ICNIRPガイドライン
[20]においては、電磁波(遠方界)ばく露で生ずる全吸収電力を体重で除した「全身平均 SAR」(注 1)(0.4W/kg)と電磁界(近傍界)ばく露による 10g 組織あたりの吸収電力を平均した「局所平均 SAR」(注 2) (10W/kg)を「基本制限」とよび、基本制限を引き起こすばく露電磁界は「参考レベル」としている。これらの「基本制限」と「参考レベル」は、「職業ばく露」の安全性評価の尺度に用いられ、「公衆ばく露」には安全係数(今日では低減係数とよばれ、基本制限は 5 倍、参考レベルでは√5 倍)を設けて規制している。なお、ばく露電磁界が参考レベルを満たせば、基本制限は満たされるとしている。2020 年版 ICNIRP[5]の基本制限を下表に示す。

表 B.1 2020 ICNIRP Guidelines
Basic restrictions for electromagnetic field exposure from 100 kHz to 300 GHz,
for averaging intervals ≥6 min.

表省略

Note:
1. “NA” signifies “not applicable” and does not need to be taken into account when determining compliance.
2. Whole-body average SAR is to be averaged over 30 min.
3. Local SAR and Sab exposures are to be averaged over 6 min.
4. Local SAR is to be averaged over a 10-g cubic mass.
5. Local Sab is to be averaged over a square 4-cm2 surface area of the body. Above 30 GHz, an additional constraint is imposed, such that exposure averaged over a square 1-cm2 surface area of the body is restricted to two times that of the 4-cm2 restriction.

7) ICNIRP ガイドラインは、健常者の電磁波や電磁界ばく露からの防護を目的とした指針であり、医療機器類を植え込んだ患者ばく露には適用外であるが、TETS 評価ガイドライン(2017)では、数 W 以下の伝送電力の小さい非接触給電装置を対象とし、電磁界のばく露環境下での患者への影響を最小限にとどめるために、ICNIRP ガイドラインの公衆ばく露制限内でのエネルギー伝送を主眼としている。最大 20W の電力を伝送する TETS においては、公衆ばく露制限内での実用化は難しく、それゆえに職業ばく露制限内のエネルギー伝送を対象とする。
8) TETS のインバータと経皮トランスが発する交流磁界のばく露形態は、いわゆる全身の電磁波(遠方界)ばく露ではなく、波源が体表面に近く局所的な電磁界(近傍界)ばく露に相当する。TETS の伝送電力は数 W から数十 W(最大 20W)と TETS 評価ガイドライン(2017)の対象機器の伝送電力に比して比較的高いが、距離減衰の大きい近傍磁界の局所ばく露で生ずる全身平均 SAR は ICNIRP の基本制限(職業環境:0.4W/kg)を超えることはない(小児に対しては、必要な伝送電力は成人に比して小さく、したがって、磁界レベルが低下するため、体重が軽くても局所ばく露による全身平均 SAR は基本制限を下回る)。TETS を植え込んだ患者の長期間使用を考慮すれば、局所ばく露の発熱による周囲組織や内部組織の重篤な障害を避けることが必須であり、それゆえに熱作用は、ICNIRP ガイドラインの職業ばく露に対する局所平均 SAR で評価することが妥当である。
9) 局所平均 SAR は、動物実験に基づく全身平均 SAR とは異なり、生物学的な根拠はないが、2020 年版 ICNIRP ガイドライン[5]では、組織温度上昇の観点から科学的根拠を与えている。このガイドラインによれば、過度な局所ばく露で41℃を超えて43℃に達すると痛みと熱傷を引き起こすので、2020 年版ガイドラインでは、41℃以上の局所温度をもたらす電磁界ばく露を潜在的に有害としている。
10) 数分から 30 分の電磁波や電磁界ばく露で生ずる生体組織の正常温度からの温度上昇が 33–36℃の組織(上腕、前腕、太腿、脚、…:タイプ 1 と定義、四肢に相当)では 5℃ を、38.5℃以下の組織(頭部、眼部、腹部、背中、胸部、…:タイプ2 と定義、四肢以外の組織)では 2℃をそれぞれ局所ばく露の運用しきい値(operational threshold)とよんでいる。
11) 100kHz から 6GHz の電磁界に対しては、局所ばく露で運用しきい値の上昇温度を引き起こす局所平均 SAR(6 分間の時間平均値)を 10g 組織あたり 20W/kg とし、基本制限としては、職業ばく露では低減係数を 2 倍とした 10W/kg、一般公衆ばく露では低減係数を 10 倍とした 2W/kg が用いられる(1998 年版 ICNIRP ガイドライン[20]と同じ)。
12) TETS の交流磁界による熱作用は、2020 年版 ICNIRP 職業ばく露の基本制限 10W/kg で評価すれば、TETS が植え込まれるタイプ 2 組織内の温度上昇は 2℃を下回るので、回路システムの電力損による組織温度の上昇を相加しても、体表面からの熱放散や体内の血流効果で組織損傷を受けることはない。なお、局所ばく露の 20W/kg で熱作用を評価するときは、タイプ 2 組織の最大の温度上昇は運用しきい値(2℃)に達するが、体表面でボーラスの配備や能動的な冷却を施せば、植え込み機器からの発熱を加算しても、体内組織に重篤な障害を与える可能性は小さいと考える。

注1: 電磁波曝露で生ずる生体影響は、全身平均 SAR が一定レベル(閾値)を超えると現れ、閾値以下では曝露の蓄積効果はないとされる。この考えは、電離放射線に対する急性効果(非確率的影響)のそれに類似し、微弱電磁波の人体に及ぼす晩発効果(確率的影響)はないという仮説に基づく [21,22]。げっ歯類の小動物を用いた電波曝露実験によれば、4~8W/kg の全身平均 SAR は可逆的な行動変容を起こすことが確認され、最小値の 4W/kg が電磁界曝露の生体閾値とされた[23]。この閾値に基づき、世界に先駆けて、米国規格協会(ANSI: American National Standards Institute)は電波の安全基準[24]を公表した。総務省電波防護指針[25,26]や IEEE 安全基準[27]においても、安全係数を 10 倍とした 0.4W/kg、安全係数を 50 倍とした 0.08W/kg がそれぞれ職業環境、一般公衆環境の基本制限として使用されている。なお、1-2W/kg の全身平均 SAR は、人体の基礎代謝を考慮すれば、深部組織に 1℃の温度上昇を引き起こし、0.4W/kg では 0.2-0.4℃と推定される[25]。
注2: そもそも局所平均 SAR 値には生物学的な根拠がない。人体モデルを用いた全身平均 SAR の理論解析や数値計算に関する膨大な研究論文が精査され、人体モデル内の最大 SAR 値は全身平均 SAR 値の 20 倍を超えないと判断された[21]。したがって、当時は、職業環境の局所平均 SAR は 1g 組織あたり 8W/kg、一般公衆環境では 1g 組織あたり 1.6W/kg とされたが、1998 年版 ICNIRP[20]では職業環境では 10g 組織あたり 10W/kg、一般公衆環境では 2W/kg を採用した。なお、10g 組織局所平均 SAR は、IEEE/ICES (International Committee on Electromagnetic Safety)、総務省電波防護指針で採用されているも、米国連邦通信委員会(FCC: Federal Communications Commission)の電波防護規制 FCC92-326 では、局所平均 SAR 値として、職業環境の局所平均 SAR は 1g 組織あたり 8W/kg、一般公衆環境では 1g 組織あたり 1.6W/kg を依然として使用し続けている。

B.2 熱作用の医学的側面
TETS が植え込まれて電力電送が行われた際に、TETS からの発熱が周囲組織に様々な影響を与えることとなる。TETS の臨床使用にあたっては、生体の修復力によって修復できない程度以上の重大な障害を引き起こさないことが極めて重要な点となる。その検討においては、熱放散量の最大値と平均値、植え込まれる体内位置と周辺組織の状況、表面温度の値と経時的変化、血管新生や線維組織被覆化等の周辺組織の経時的変化など様々な要因によって影響を受けることが予想されるため、各々の要因について考慮する必要がある。そのため、植え込み型人工心臓や TETS の体内植込を念頭に置いて、その際に想定される発熱の影響についていくつかの生理学的な検討が行われてきた。それらのうち、代表的な研究報告には以下のようなものがある。ただし、体内機器の熱放散による周辺組織への影響に関しては、十分な追試が行われていないのが現状であり、これらの知見を参考にしつつ、注意深く開発を進めていく必要がある。
1) 熱源植え込みによる発熱量と体温変化の関係、またその経時的変化について[28]
11 頭の牛を用いて、0.04W/cm2、0.06W/cm2、0.08W/cm2 の発熱円盤を肺および筋肉近傍に 7 週間植え込んだ。体温からの上昇温度は、最初は 0.08、0.06、0.04W/cm2 でそれぞれ6.4±0.6℃、4.5±0.2℃、1.8±0.5℃であったが、2週間後にはそれぞれ5.5±0.6℃、3.4± 0.2℃、1.8±0.2℃に、7 週間後には 3.7±1.2℃、2.8±0.1℃、0.8℃に低下した。また、3 例の完全植え込み型人工心臓の装着動物では、11.1±0.5W の放熱量に対して 15 日間で 1℃のコンスタントな表面温度の低下を認め、これは熱放散実験の 0.08W/cm2 放熱時と類似する結果であった。
本検討によって、生体が許容できる植え込み発熱体の発熱量に関する知見が蓄積されたと共に、周辺組織の変化によってその温度変化は可逆的であることも明らかにされた。
2) 熱源植え込みによる体温変化の安全限界とその部位による違い、またその機序について[19]
25 頭の牛に、0.04W/cm2、0.06W/cm2、0.08W/cm2 の発熱円盤を肺および筋肉近傍に最長 7 週間植え込み、発熱体から 1、3、7mm の部位の温度を継続的に計測した。その結果、組織学的に安全な上限温度は 43℃または体温+4℃と判断された。肺と筋肉では顕著な温度差があり、肺のほうが熱放散は良好であった。0.08W/cm2 の発熱で、肺では表面の初期温度は 45.3±0.9℃で組織障害や壊死像を示さなかったのに対して、筋肉では表面の初期温度は 42.8±2.2℃で、2 週間では表面からの距離 18.1mm で、また 4 週間では 3.0mm で壊死像を認めた。しかしながら、7 週間後にはこの壊死像はなくなり、完全に繊維組織で置き換えられていた。表面温度の漸減と新生血管の増加は、慢性加熱に対する血流増加による組織の適応を示唆していた。また、組織修復細胞におけるヒートショック蛋白の発現は、細胞レベルでの加熱への適応を示唆していた。つまり、体温変化の安全限界は周辺組織の熱放散によって違うことが明らかとなった。さらに、一度壊死に陥った組織も血流増加によって熱放散能を変化させて組織学的適応を示すことも明らかとなった。
3) 熱源植え込みによる安全限界に関する組織学的検討と、それによって導かれる血管新生と血管内皮生存の温度しきい値について[29]
発熱円盤を植え込んで初期温度 40〜46℃で加熱。初期温度 45.3±2.2℃では隣接組織の壊死像を認めたが、7 週間後には壊死像は消失し、温度も 41.8±0.5℃に低下した。0.08W/cm2 の発熱部位の隣接筋肉組織を 2、4、7 週間後に切り出して観察したところ、2、4 週間では壊死像が見られたが、7 週間後までには高度の新生毛細血管を伴う繊維組織によってカプセル化された。毛細血管の最前線の温度は 41.7±0.9℃であり、これが血管新生と血管内皮生存のしきい値であると考えられた。
4) 補助人工心臓を植え込んだ場合に発生する発熱量を、生体は受け入れ得るかについて [30]
モータ駆動補助人工心臓の体内埋め込み時の発熱について、ヒツジを用いた急性動物実験で検討した。皮下脂肪中に埋め込み、アクチュエータの損失 5.2W の時、アクチュエータ表面温度 41℃、アクチュエータに近接した脂肪組織で 39.5℃で、また皮下脂肪と皮膚を剥離して作った空間に埋め込んだ場合には、アクチュエータの損失 5.4W に対し最高 40.5℃ に至ったものの 39.2℃で平衡し、生体に対し安全領域内の温度にとどまった。
5) TAH を植え込んだ場合に発生する発熱量を、生体は受け入れ得るかについて[31]
Electrohydraulic Totally Implantable Artificial Heart のモック回路での熱拡散実験では、20W の入力中 10W が血流中に、残りの 10W がデバイスから周囲に放散された。仔牛 62kg を用いた 10 日間の動物実験では、入力 18±2W、心拍出量 6〜7L/min で、エネルギーコンバーター(アクチュエータ)の表面温度は 42〜44℃、被覆外部では 39〜41℃であった。デバイスに接触する組織観察では、壁側胸膜 1mm、臓側胸膜 2〜3mm の肥厚が見られたが、慢性炎症像は見られるものの壊死像は見られなかった。
6) TETS による人工心臓駆動時に発生する発熱が生体に及ぼす影響について[32]
Electrohydraulic Totally Implantable Artificial Heart のアーチ型 TETS について、成山羊を用いて 124 日間のエネルギー伝送実験を行った。その結果、体内コイル表面温度、アーチ部皮膚温度とも、Electrohydraulic Totally Implantable Artificial Heart 駆動時、20W 伝送時、
40W 伝送時を通じて常時体温+4℃の範囲にあり、生体にとって十分許容範囲であった。

附属書 C 刺激作用
機器開発に必要な工学的側面から「刺激作用」について、以下に示す。
1) TETS では、特に経皮トランスからの交流磁界により、体内組織に誘導される電界が、組織の刺激作用を生じさせないことが要求される。
2) TETS の刺激作用に基づく電磁界については、装着者ならびに周囲の健常者に対しては、ICNIRP の低周波ガイドラインが定める一般公衆の磁界の参考レベル以内とすることをTETS 評価ガイドライン(2017)では推奨されている。
3) 以下に、TETS の経皮トランスからの交流磁界により、体内組織に誘導される電界について述べる。
4) 一般に、ヒトが変動磁界にばく露されると、電磁誘導作用により体内に電界(誘導電界)が生じる。これが周波数に応じて異なった生体作用を引き起こすが、10MHz 以下の周波数では筋肉や末梢神経、中枢神経を直接刺激する。これは、「刺激作用」とよばれる。
5) 磁界のばく露でもたらされる刺激作用は、体内誘導電界を尺度として評価される。
ICNIRP の低周波ガイドラインにおいては、体内誘導電界で表された限度値を「基本制限」とよび、基本制限を引き起こすばく露磁界(一様磁界ばく露を仮定)は「参考レベル」としている。これらの「基本制限」と「参考レベル」は、「職業ばく露」の安全性評価の尺度に用いられ、「公衆ばく露」には安全係数(今日では低減係数とよばれ、1kHz 以上の周波数に対し、基本制限では 1)を設けている。なお、ばく露磁界が参考レベルを満たせば、基本制限は満たされるとしている。ICNIRP 低周波ガイドラインの基本制限を表 C.1 に示す。
6) ICNIRP ガイドラインは、健常者の電磁界ばく露からの防護を目的とした指針であり、医療機器類を植え込んだ患者ばく露には適用外であるが、TETS 評価ガイドライン (2017)では、数 W 以下の伝送電力の小さい非接触給電装置を対象とし、電磁界のばく露環境下での患者への影響を最小限にとどめるために、ICNIRP ガイドラインの公衆ばく露制限内でのエネルギー伝送を主眼としている。最大 20W の電力を伝送する TETS においては、公衆ばく露制限内での実用化は難しく、それゆえに職業ばく露制限内のエネルギー伝送を対象とする。
7) TETS のインバータと経皮トランスが発する交流磁界のばく露形態は、発生源が体表面に近く、局所的な磁界ばく露に相当する。ICNIRP は、このようなばく露に対し、体内誘導電界の計算を行い基本制限と比較することが現実的な手法との見解を示している [6]。TETS の伝送電力は数 W から数十 W(最大 20W)と TETS 評価ガイドライン(2017) の対象機器の伝送電力に比して比較的高いが、距離減衰の大きい近傍磁界の局所ばく露で生ずる誘導電界は ICNIRP の基本制限(職業環境:3kHz~10MHz において、2.7×10-4×f(V/m)、f は周波数(Hz))以下となることが報告されている[14]。TETS を植え込んだ患者の、局所ばく露による神経刺激を回避することが必須であり、それゆえに刺激作用は、ICNIRP ガイドラインの職業ばく露に対する誘導電界で評価することが妥当である。

表 C.1 Basic restrictions in ICNIRP guidelines for low frequencies [6]
表省略

附属書 D 漏れ電流
1) IEC 60601-1において、医療機器の漏れ電流の測定方法および規制値が示されている。しかしながら、IEC 60601-1 において、患者漏れ電流は商用周波数(50/60Hz)とその高調波(1kHz~1MHz 以下)を対象としており、1MHz 以上を対象としていない。また、人体の手から足に向かって、漏れ電流が流れる場合の測定法を基本としており、胸部などから両足や背部に流れる場合の測定法については、定義がない。さらに、 20W 程度の比較的大きな電力を電磁気的に授受し、かつ、社会生活の中で日常的に用いることができる医療機器を対象とした漏れ電流規格は存在しない。IEC 60601-1の患者漏れ電流の記載は、商用周波数とその高調波が中心であり、TETS で用いる 60k~ 15MHz の周波数を用いる機器については、書かれていない。TETS の場合は、一般的に 1MHz 以上の高調波を多く含む。よって、患者漏れ電流の測定においては 1MHz 以下で使用できる「IEC 60601-1 の MD(Measurement device)」を使った測定は適さない。
1MHz 以上に高調波が全くなく、漏れ電流が 10mA 以下の場合のみ、MD を使った測定も可能になる場合があると考えられる。
2) MD の低域フィルタの減衰率は、生体の刺激作用の感度に沿って設計されているため、1 kHz を遮断周波数とし、-20 dB/decade の傾きと決められている(IEC 60601-1[2]の 8.7.4.4 に描かれている図の周波数特性)。この傾きは、穏やかである。しかし、TETS の場合は、数 100kHz と数 MHz の高調波も多く含むため、MD を用いて商用周波数の患者漏れ電流を測定すると、50/60Hz の他に、フィルタで減衰仕切れなかった数 100kHz 以上の波形が重畳される。50/60Hz の電圧波形の振幅よりも、数 100kHz 以上の電圧波形の振幅の方がとても大きいため、オシロスコープなどで重なった時間領域の波形から 50/60Hz の成分のみを観察・測定することは、周波数領域で波形を見ない限り難しい。このため、5.3 の商用周波数の漏れ電流を測定する際には、人体等価抵抗に 1kΩの抵抗を用い、減衰率の大きい低域フィルタを介して、時間領域の波形を電圧計で測定することとした。この場合の減衰率の大きい低域フィルタとは、商用周波数の電圧波形が見える程度にまで減衰できれば良く、完全に無くすことを意味していない。
3) 患者漏れ電流の制限値について考えると、生体の刺激作用と熱作用を両方考える必要がある。周波数とともに、生体が感知する電流は増加するが、この周波数に対する増加の割合は、IEC 60601-1[2]の 8.7.3 に描かれている図の周波数特性の逆数として読み取ることができる。ここから考えると、患者漏れ電流の刺激作用の電流制限値は、60kHz 以上の範囲においては、本文 5.4 節の式(1)のように考えることができる。一方、周波数によらず 10mA を超えると熱作用が現れることが IEC 60601-1[2]の付属書 A の8.7.3 に書かれている。ここから、60kHz<f<100kHz の範囲は式(1)が、100kHz 以上においては 10mA が制限値となる(f は周波数)。
4) IEC 60601-1 によると、1kHz 以上の周波数を含んでいる漏れ電流が 10mA を超える可能性がある場合は、「(人体等価抵抗)を 1kΩ の抵抗で代用して、漏れ電流を測定し、測定値を 10mA 以下にすること」という規制がある。しかしながら、これをそのまま用いると、60kHz の場合も、10mA まで許容されることになり、IEC 60601-1[2]の 8.7.3 に描かれている生体の刺激作用を考慮した曲線を無視することになり(6mA が刺激作用を考慮した値なので、4mA を無視したことになる)、刺激作用を受ける可能性がある。このため、ここでは刺激作用の制限値を越えないようにするため、式(1)のように規制値を設定した。
5) IEC 60601-1 においては、人体等価抵抗は 1kΩ の抵抗としているが、上述したように商用周波数(50/60Hz)の電流を対象としている。電流が流れる経路も、手から足を基本としている。そのため60k~15MHzの周波数帯域の電流を対象としているTETSでは 1kΩ の人体等価抵抗が高すぎることになる。TETS では、装着部が足裏、臀部、臀部と足裏の並列接続などと状況により変わり、電流経路が大きく変化することからも、人体等価抵抗が一般的に 1kΩ よりも低くなる。よって、人体等価抵抗は、状況に応じて測定や数値解析することが望ましい。使用周波数が 300k-5MHz である電気メスでは、人体等価抵抗として 200Ω が用いられる。周波数や接触部位が近い TETS でも、人体等価抵抗として 200Ω または 200Ω 以下の抵抗を用いるのが望ましい。更に、大地に寝ている場合などは、抵抗は低下し[12]、患者漏れ電流も増加するため、姿勢に応じた検討も行い、人体等価抵抗が低い場合の見積りを行うべきである。

附属書 E イミュニティ
IEC 60601-1-2 は 2014 年版の Ed.4 に 2020 年 9 月に発行された Amendment 1 を合わせたものが 2022 年現在の最新版であり[33]、Amendment 1 にて近接磁界試験が新たに追加されている。この試験は数 cm の至近距離での影響を模擬するもので、IEC 60601-1-2 を審議している国際委員会(SC 62A/MT 23)の要求により、新たに 2017 年に発行された IEC 61000-4-39 が試験規格である。対象周波数範囲は 9kHz~13.56MHz で、IH 調理器や RFID 機器、EAS(電子商品監視)、スポンジ検出システム(Sponge detector)などに近接する影響評価が目的であり、TETS においても確認しておくべき項目と考える。TETS は病院などの専門的医療施設環境だけでなく在宅医療環境でも使用されるものなので、在宅医療環境向けに設定された試験レベルへの適用が望ましい。
イミュニティ判定基準およびその確認手段、動作モードなどはリスクマネジメントに基づいて決めなければならない。TETS は誤作動を起こすと装着者の生命に影響を与えてしまう装置なので、十分な検討が望まれる。
IEC 60601-1-2 Ed.4 および Amendment 1 の試験レベルは表 E.1 の通り。詳細は規格書を参照[33]。

表 E.1 イミュニティの試験レベル
表省略

附属書 F エミッション
F.1 放射妨害波
1) TETS の中でも、特に経皮トランスは磁界を用いて電力伝送を行うため、周囲に伝送周波数およびその高調波の磁界が放射される、この磁界が周辺の機器に誤動作を及ぼさないことが要求される。
2) TETS の場合は、伝送周波数として、数 100kHz を使うことが多く、磁界の発生が大きくなる傾向にあるため、磁界のほうが問題になることが多いが、電界の規制値も満たす必要がある。
3) 電気自動車用のワイヤレス電力伝送は 85kHz の伝送周波数を用いており、電波法において放射妨害波の制限値が大幅に緩和された[16]。85kHz においては、72.5dB(測定距離 10m)まで許容されている、しかしながら、これは電波法に限定された緩和であり、国際規格 CISPR11 において緩和は行われていない。TETS の場合は、国際的に利用できるようにする必要があり、国際規格に準ずるべきである。
4) 図 F.1 に、電気自動車用ワイヤレス電力伝送の場合の放射磁界強度の規制値を示す[16]。 TETS の放射磁界値を、電気自動車用ワイヤレス電力伝送の場合と同じ測定距離(10m)に換算して比較している。 85kHz においては、従来の CISPR11 規制値から 50dB 以上の緩和を受けていることがわかる。一方、TETS の場合の測定結果は、10m に換算すると約 28dBµA/m に相当し、20dB 近い緩和を行うだけで、規格を満足できることがわかる。
5) TETS の経皮トランスから放射される放射磁界(最大値)の測定例を示す[34,35]と、15W(出力電圧 24V、伝送周波数約 400kHz)を負荷が受電した場合において、 59.21dBµA/m(測定距離 3m)であった。400kHz の規制値である 32.3dBµA/m に達するには、95.5%減少させる必要があることがわかる。次に、磁界を打ち消すために、2 つの経皮トランスを用いて半分ずつ電力を送り、片方の経皮トランスの位相を逆相にし、磁界を低減させる方法を検討した。その結果、磁界は 44.91dBµA/m まで低下したが、対策前の値に対する減少割合は 80.7%であり、規制値を満足しなかった。CISPR11 の規制値を満たすためには大幅な磁界低減が見込まれる画期的な低減対策が求められる。
6) 電気自動車と同じように、電波法に対して放射磁界の緩和を得るのであれば、使用する地域において通信妨害などを起こさないことも考慮する必要がある。

図 F.1 電気自動車用ワイヤレス電力伝送の放射磁界強度の規制値
図省略

F.2 伝導妨害波
1) TETS は、体外バッテリーから電力供給する場合以外に、コンセントから電力を得る場合がある。直流電源(AC/DC コンバータ)を介して、直流に変換したのちに、インバータ回路、送受信コイル(経皮トランス)、整流平滑回路、コントローラ、人工心臓の順に電力伝送が行われる。
2) TETS のインバータ回路は 60k~15MHz のスイッチングを行っている。この周波数を基本波とする伝導性妨害波がコンセントを介して電源側に伝わり、無線障害の原因となる可能性がある。
3) 放射妨害波同様、IEC 60601-1-2 において、CISPR11 を満たすことが求められている。TETS は家庭環境で用いる医療機器であるため、伝導妨害波(Group 2、Class B)規格を満たす必要がある。
4) 伝導妨害波の対策を講じる場合、接地漏れ電流の限度値は国際規格 IEC 60601-1 に準ずるべきである。
F.3 その他
1) 放射妨害波によるシステム自身の自己障害
TETS を便宜上、体外システム、経皮トランス、体内システムと3つに分けて考えた場合において経皮トランスから放射される妨害波が体内システムを誤動作させると安全性に対して直接の問題となる。また経皮トランスから放射される妨害波が体外システムを誤動作させたり、体内外のシステム間の通信が障害されると運転情報が得られなかったり、運転条件の変更ができない等トータルのシステムとして成立しない。さらに体外システムの誤動作により運転条件が書き換わったりする場合は、直接の安全性に影響することも考えられる。
IEC 60601-1-2 ではそれぞれの機器が定められたエミッションとイミュニティを満たせば相互機器間の動作が障害されないという事を担保する事を企図しているが、それらは前提条件を想定しており、例えば携帯電話では距離 30cm の近接妨害波であり、RFID では距離はゼロだが周波数は固定となっている磁界イミュニティ等である。これらの前提条件は TETS システムと残念ながら一致しない。
以上から TETS において 3 つのサブシステム間の干渉により障害が発生しない事を担保するためには、放射妨害波とイミュニティの規格適合だけでは十分とは言えず実際に使用する環境を模擬し体内外システムの誤動作と通信障害が起きないことを確認する必要がある。この時、考え得る最悪の条件で実施することが求められている。例えばコイルの中心を意図的に外したり、入浴時にコイルを取り外すことを模擬したりするなどして漏えい磁界が大きくなるような条件を選択する事等である。以上の内容を、現物を使用して確認することは最低必要になる。合わせて妨害波の強度を意図的に大きくするようなシミュレーションテストを実施することが望ましい。しかしながら現時点でそのような試験規格は存在しない。
以上の内容を植え込み型人工心臓に当てはめて考えると以下の事に配慮する必要がある。
- 血液ポンプが止まらずに動作している事。
- 血液ポンプが設定どおりの回転数で動作している事。
- 通信が正常で血液ポンプの回転数や電力が正しくモニタリング出来る事
- 体外システム及び通信が正常で血液ポンプの回転数変更が正しく実施できる事
- 体外システムが正常で正しく電力伝送出来ている事

2) 放射妨害波による不整脈デバイスの障害
TETS の主要なアプリケーションである植え込み型人工心臓では、しばしばペースメーカや ICD 等の不整脈デバイスと併用されることが想定され、これらを誤動作させないことが必要となる。
不整脈デバイスでは電磁波に対する耐性の確認は ISO 14117 に適合させることを求められており、その規格の範囲の入力であれば影響を受けないということは確認されている。ここで一般的な医療機器が適合を求められている IEC 60601-1-2 ついては適合を求められておらず、ISO 14117 の規格適合をもって不整脈デバイスが障害されないことを担保できる水準にはない。試験規格は不整脈デバイスに一定の入力をした場合の反応で確認しているので、距離によって入力が変わる装置同士を一律の試験で担保するのは難しい。実機での確認や、机上で検討しファントムを使ってどのぐらいの距離や位置ならば入力強度がいくらになるのかを把握して、植え込み時にその要件を充足させるような配置とする事が望ましい。現実問題としては不整脈デバイスの障害を起こさない様に他のデバイスを出来るだけ離して配置すると言う事が臨床現場では行われている。

附属書 G 経皮的エネルギー伝送システムの体内植込部発熱による影響に関する基礎的試験

1. 目的
経皮的エネルギー伝送システムの体内植込部(一次コイル部、AC-DC 変換回路:DC-DC コンバータを含む)で生じる発熱による影響に関する基礎的知見を得るために、経皮的エネルギー伝送システムの体内植込部を模擬した発熱体を動物の体内に植込み,発熱による影響に関する基礎的試験を行う。
2. 方法
2.1. 体内植込用発熱体と体内植込用白金測温抵抗体の製作
体内植込用発熱体は加熱を行うためのニクロム線を渦上に巻き、それを銅円板で上下から挟み、防水かつ生体内への植込を考慮し全体を生体適合のシリコーンで覆った構造とする。
また、白金測温抵抗体を銅円板とシリコーンの間に設置し、発熱体内部の温度測定を可能とする。発熱体周辺の体温を計測するために白金測温抵抗体を直径 5 mm のシリコーンチューブ内に封入した体内植込用白金測温抵抗体を製作する。
2.2. 実験システム
実験系は体内植込用発熱体、白金測温抵抗体、データロガー、安定化電源にて構成する。体内植込用発熱体を動物に対して植込み、安定化電源にて一定電流を流した体内植込用発熱体、及び発熱体コントロール(通電なし)の内部温度、周囲の体温、及び対照体温をデータロガーにて同時計測する。

各計測系の計測精度を以下に示す。
白金測温抵抗体(岡崎製作所、白金薄膜抵抗素子 F16040) 許容差:37 ℃にて±0.16 ℃、39℃〜41℃にて±0.17 データロガー(KEYSIGHT、DAQ973A) 精度:±0.05 ℃

2.3. 動物試験方法
①成羊に対して、全身麻酔、人工呼吸のもとに体内植込用発熱体、発熱体コントロール(通電なし)及び測温抵抗体の留置を行う。
②外腹斜筋の筋層内に発熱体を留置する。発熱体コントロール(通電なし)を背部に留置する。発熱体及び発熱体コントロール(通電なし)内部の体外側および体内側の温度を測定する。発熱体に付属するケーブルは創外に導き固定する。
➂測温抵抗体を発熱体及び発熱体コントロール(通電なし)の周囲に留置し、周囲の体温を測定する。測温抵抗体ケーブルは創外に導き固定する。
④発熱体から離れた背部に測温抵抗体を留置して、対照体温を測定する。
⑤室温測定用測温抵抗体を設置し測定する。また、湿度を計測する。
⑥全身麻酔から覚醒、人工呼吸からの離脱を行う。その後、発熱体に対する通電を開始する。動物 1 と動物 2 については、単位面積当たりの入力電力は、0.04 W/cm2(右側)、
0.02 W/cm2(左側)とする。動物 3 については、単位面積当たりの入力電力は、0.01 W/cm2(左右両側)とする。発熱体の温度上昇が顕著な場合、及び動物の臨床的状態を観察し必要な場合には入力電力の低減、または実験の中止等の対応を行うこととする。
⑦各種データの測定、記録を行う。2 週間経過後、犠死として、留置した発熱体、発熱体コントロール(通電なし)、及び測温抵抗体を抜去する。病理解剖および解析を行う。

3. 結果
3.1. 体内植込用白金測温抵抗体と体内植込用発熱体
図 G.1 に製作した体内植込用白金測温抵抗体の外観を示す。体内植込用白金測温抵抗体は外径 5 mm のシリコーンチューブ先端に設置され、先端より防水のためにシリコーンが注入されている。

図 G.1 製作した体内植込用白金測温抵抗体
図省略

図 G.2 に製作した体内植込用発熱体の外観を示す。表 G.1 に体内植込用発熱体の仕様を示す。また、単位面積当たりの入力電力と体内植込用発熱体への入力電流、入力電力の関係を表 G.2 に示す。

図 G.2 体内植込用発熱体
図省略

表 G.1 体内植込用発熱体の各抵抗値、寸法
表省略

表 G.2 単位面積当たりの入力電力と体内植込用発熱体への入力電流、入力電力の関係
表省略

3.2. 動物試験
<動物試験1>
外腹斜筋の筋層内に発熱体 No.5(右側)、No.6(左側)を留置した。体表側、体内側の測温抵抗体は発熱体から 5 mm 離れた位置に、頭側、尾側の測温抵抗体は発熱体から 10 mm 離れた位置に留置した(図 G.3)。背部に発熱体コントロール(通電なし)No.3 を留置した。対照体温計測のため、測温抵抗体T5 を留置した。

図 G.3 発熱体と測温抵抗体の植込位置
図省略

・計測データ
1) 発熱体 No.5
時間は計測開始からの時間を示す(以下同様)。計測開始 15 分後から通電を開始した。計測開始 5 時間 21 分後、発熱体内部の温度上昇から発熱体 No.5 の入力電力を 0.04 W/cm2 から 0.03W/cm2 に変更した。発熱体 No.5 内部の温度、発熱体周囲の体温、対照体温を図 G.4 に示す。発熱体周囲の体温 T9、T7、T1、T3 は、対照体温 T5 と比較し、図 G.4 に示す程度の温度差で経過した。急性期を除き、時間経過に伴う明らかな変化は認めなかった。

図 G.4 発熱体 No.5 内部の温度、発熱体周囲の体温、対照体温
図省略

開始時の入力電力は 0.04 W/cm2 とし、5 時間 21 分から 0.03 W/cm2 に変更、
T7 は 307 時間 10 分から断線により測定不可

2) 発熱体 No.6
計測開始 15 分後から通電を開始した。入力電力は 0.02 W/cm2 とした。発熱体 No.6 内部の温度、発熱体周囲の体温、対照体温を図 G.5 に示す。発熱体周囲の体温 T2、T8、T4、T6 は、対照体温 T5 と比較し、図 G.5 に示す程度の温度差で経過した。急性期を除き、時間経過に伴う明らかな変化は認めなかった。

図省略

図 G.5 発熱体 No.6 内部の温度、発熱体周囲の体温、対照体温入力電力は 0.02 W/cm2 3)発熱体コントロール(通電なし)No.3
発熱体コントロール(通電なし)No.3 の内部温度の変化を図 G.6 に示す。
その内部温度は対照体温 T5 と比較し、図 G.6 に示す程度の温度差で経過した。

図省略

図 G.6 発熱体コントロール(通電なし)No.3 内部の温度、対照体温4)室温計測データ(図 G.7)、湿度計測データ(図 G.8)
室温は概ね一定で推移した。湿度は朝の実験室清掃に伴う定期的な変化を除き概ね安定して推移した。

図 G.7 室温
図省略

図 G.8 湿度
図省略

・試験中の動物の状態
動物の全身状態には特記すべき臨床所見は観察されなかった。

・肉眼病理所見
発熱体コントロール(通電なし)No.3 は結合組織により被包されていた。
発熱体 No.5 及び No.6 はとも浮腫性の結合組織により被包され、被包組織内部には血性液体貯留を認めた。本所見は、発熱体 No.6(0.02W/cm2)周囲に比較して発熱体 No.5
(0.03W/cm2)周囲においてより顕著である傾向にあった。

・組織病理所見
発熱体コントロール(通電なし)No.3 周囲には膠原線維による結合組織が形成されていた。
発熱体 No.5(0.03W/cm2)周囲には線維芽細胞を主体とする肉芽組織による被包組織が形成され、その一部に壊死を認めた。被包組織の周囲には筋壊死および脂肪壊死が観察された。
発熱体 No.6(0.02W/cm2)周囲には線維芽細胞を主体とする肉芽組織による被包組織が形成され、その一部に壊死を認めた。被包組織の周囲には筋壊死および脂肪壊死が観察された。

・培養検査
発熱体周囲に形成された被包組織内の培養検査は、発熱体 No.5 側及び発熱体 No.6 側ともに陰性であった。


<動物試験2>
外腹斜筋の筋層内に発熱体 No.4(右側)、No.7(左側)を留置した。体表側、体内側の測温抵抗体は発熱体から 5 mm 離れた位置に、頭側、尾側の測温抵抗体は発熱体から 10 mm 離れた位置に留置した(図 G.9)。背部に発熱体コントロール(通電なし)No.8 を留置した。対照体温計測のため、測温抵抗体 T13 を留置した。

図省略

発熱体 No.4(右側):入力電力:0.04→0.03 W/cm2
測温抵抗体:・発熱体内部温度 体表側:No.4.Front (F)、体内側:No.4.Back (B)
・体温 頭側:T14、尾側:T11、体内側:T12、体表側:T18

図省略

発熱体 No.7(左側):入力電力:0.02 W/cm2
測温抵抗体:・発熱体内部温度 体表側:No.7.Front (F)、体内側:No.7.Back (B)
・体温 頭側:T15、尾側:T17、体内側:T10、体表側:T16


図 G.9 発熱体と測温抵抗体の植込位置

・計測データ
1) 右側・発熱体 No.4
時間は計測開始からの時間を示す(以下同様)。計測開始 15 分後から通電を開始した。計測開始から 3 時間 56 分後、発熱体内部の温度上昇から発熱体 No.4 の入力電力 0.04 W/cm2 から 0.03W/cm2 に変更した。発熱体 No.4内部の温度、発熱体周囲の温度、対照体温を図 G.10 に示す。発熱体周囲の体温 T14、T11、T18、T12 は、対照体温 T13 と比較し、図 G.10 に示す程度の温度差で経過した。急性期を除き、時間経過に伴う明らかな変化は認めなかった。

図省略

図 G.10 発熱体 No.4 内部の温度、発熱体周囲の温度、対照体温

開始時の入力電力は 0.04 W/cm2 とし、3 時間 56 分から 0.03 W/cm2 に変更、
T11 は 244 時間 24 分から、No.4.B は終了直前に断線により測定不可


2) 左側・発熱体 No.7
計測開始 15 分後から通電を開始した。入力電力は 0.02 W/cm2 とした。発熱体 No.7 内部の温度、発熱体周囲の体温、対照体温を図 G.11 に示す。発熱体周囲の体温 T15、T17、T16、 T10 は、対照体温 T13 と比較し、図 G.11 に示す程度の温度差で経過した。急性期を除き、時間経過に伴う明らかな変化は認めなかった。

図省略

図 G.11 発熱体 No.7 内部の温度、発熱体周囲の温度、対照体温
入力電力は 0.02 W/cm2、No.7.B は 262 時間 14 分から、
No.7.F は 308 時間 24 分から断線により測定不可3)発熱体コントロール(通電なし)No.8
発熱体コントロール(通電なし)No.8 の内部温度の変化を図 G.12 に示す。
その内部温度は対照体温 T13 と比較し、図 G.12 に示す程度の温度差で経過した。

図省略

図 G.12 発熱体コントロール(通電なし)No.8 内部の温度、対照体温4)室温計測データ(図 G.13)、湿度計測データ(図 G.14)
室温は概ね一定で推移した。湿度は朝の実験室清掃に伴う定期的な変化を除き概ね安定して推移した。実験室に設置されている湿度計測定値および動物 1、3 における測定結果に比較して低値となった。この湿度計測は、機器周囲に設置した防御カバーシートに覆われている内部において行ったために、低値となったと推察された。

図 G.13 室温
図省略

図 G.14 湿度(機器周辺に設置した防御カバーシート内部)
図省略

・試験中の動物の状態
動物の全身状態には特記すべき臨床所見は観察されなかった。

・肉眼病理所見
発熱体コントロール(通電なし)No.8 は結合組織により被包されていた。
発熱体 No.4 及び No.7 はとも浮腫性の結合組織により被包され、被包組織内部には血性液体貯留を認めた。本所見は、発熱体 No.7(0.02W/cm2)周囲に比較して発熱体 No.4
(0.03W/cm2)周囲においてより顕著である傾向にあった。

・組織病理所見
発熱体コントロール(通電なし)No.8 周囲には膠原線維による結合組織が形成されていた。
発熱体 No.4(0.03W/cm2)周囲には線維芽細胞を主体とする肉芽組織による被包組織が形成され、その一部に壊死を認めた。被包組織の周囲には筋壊死および脂肪壊死が観察された。
発熱体 No.7(0.02W/cm2)周囲には線維芽細胞を主体とする肉芽組織による被包組織が形成され、その一部に壊死を認めた。被包組織の周囲には筋壊死および脂肪壊死が観察された。

・培養検査
発熱体周囲に形成された被包組織内の培養検査は、発熱体 No.4 側及び発熱体 No.7 側ともに陰性であった。

<動物試験3>
外腹斜筋の筋層内に発熱体 No.14(右側)、No.9(左側)を留置した。体表側、体内側の測温抵抗体は発熱体から 5 mm 離れた位置に、頭側、尾側の測温抵抗体は発熱体から 10 mm 離れた位置に留置した(図 G.15)。背部に発熱体コントロール(通電なし)No.10 を留置した。
対照体温計測のため、測温抵抗体T21 を留置した。

図省略

発熱体 No.14(右側):入力電力:0.01 W/cm2
測温抵抗体:・発熱体内部温度 体表側:No.14.Front (F)、体内側:No.14.Back (B)
・体温 頭側:T20、尾側:T23、体内側:T22、体表側:T19

図省略

発熱体 No.9(左側):入力電力:0.01 W/cm2
測温抵抗体:・発熱体内部温度 体表側:No.9.Front (F)、体内側:No.9.Back (B)

・体温 頭側:T25、尾側:T27、体内側:T26、体表側:T24


図 G.15 発熱体と測温抵抗体の植込位置

・計測データ
1) 発熱体 No.14
時間は計測開始からの時間を示す(以下同様)。計測開始 59 分後から加熱を開始した。入力電力は 0.01 W/cm2 とした。発熱体 No.5 内部の温度、発熱体周囲の温度、対照体温を図 G.16 に示す。発熱体周囲の体温 T20、T23、T19、T22 は、対照体温 T21 と比較し、図 G.16 に示す程度の温度差で経過した。急性期を除き、時間経過に伴う明らかな変化は認めなかった。

図省略

図 G.16 発熱体 No.14 内部の温度、発熱体周囲の温度、対照体温入力電力は 0.01 W/cm2、No.14.F は留置時点から、
No14.B は 256 時間 6 分から断線により測定不可

2) 発熱体 No.9
計測開始 59 分後から加熱を開始した。入力電力は 0.01 W/cm2 とした。発熱体 No.9 内部の温度、発熱体周囲の温度、対照体温を図 G.17 に示す。発熱体周囲の体温 T25、T27、T24、 T26 は、対照体温 T21 と比較し、図 G.17 に示す程度の温度差で経過した。急性期を除き、時間経過に伴う明らかな変化は認めなかった。

図省略

図 G.17 発熱体 No.9 内部の温度、発熱体周囲の温度、対照体温
入力電力は 0.01 W/cm2、 No.9.B は 196 時間 26 分から、
T24 は 237 時間 6 分から断線により測定不可

3) 発熱体コントロール(通電なし)No.10 発熱体コントロール(通電なし)No.10 の内部温度の変化を図 G.18 に示す。
その内部温度は対照体温 T21 と比較し、図 G.18 に示す程度の温度差で経過した。

図省略
図 G.18 発熱体コントロール(通電なし)No.10 内部の温度、対照体温
No.10.B は留置時点から測定不可

4) 室温計測データ(図 G.19)、湿度計測データ(図 G.20)
室温は概ね一定で推移した。湿度は朝の実験室清掃に伴う定期的な変化を除き概ね安定して推移した。

図省略

図 G.19 室温
図省略

図 G.20 湿度
図省略

・試験中の動物の状態
動物の全身状態には特記すべき臨床所見は観察されなかった。

・肉眼病理所見
発熱体コントロール(通電なし)No.10 は結合組織により被包されていた。
発熱体 No.14(0.01W/cm2)は浮腫性の結合組織により被包されていた。被包組織内部には血性液体貯留を認めた。
発熱体 No.9(0.01W/cm2)は浮腫性の結合組織により被包されていた。

・組織病理所見
発熱体コントロール(通電なし)No.10 周囲には膠原線維による結合組織が形成されていた。
発熱体 No.14(0.01W/cm2)周囲には線維芽細胞を主体とする肉芽組織による被包組織が形成され、その一部に壊死を認めた。被包組織の周囲には筋壊死および脂肪壊死が観察された。細菌感染、好中球及び多核巨細胞浸潤を認めた。
発熱体 No.9(0.01W/cm2)周囲には線維芽細胞を主体とする肉芽組織による被包組織が形成され、その一部に壊死を認めた。被包組織の周囲には筋壊死および脂肪壊死が観察された。

・培養検査
発熱体周囲に形成された被包組織内の培養検査は、発熱体 No.14 側では Coagulase negative Staphylococcus 陽性であった。発熱体 No.9 側では陰性であった。

※附属書Hは「GL日本語版ファイル」欄参照

引用関連規格

参考文献

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座長 増澤 徹   茨城大学 工学部 工学部長茨城大学大学院 理工学研究科 研究科長茨城大学 機械システム工学領域 教授日本人工臓器学会推薦
岡本 英治 東海大学 生物部生物学科 教授日本生体医工学会推薦
小林 信治 株式会社サンメディカル技術研究所 取締役
柴 建次   東京理科大学 先進工学部 電子システム工学科 准教授日本人工臓器学会推薦
巽 英介   国立循環器病研究センター オープンイノベーションセンター 副センター長日本人工臓器学会推薦
中田 和成 一般財団法人 ふくしま医療機器産業推進機構ふくしま医療機器開発支援センター安全性評価部 電気物性分析試験グループ 課長
西村 隆   愛媛大学大学院 医学系研究科 心臓血管・呼吸器外科学 准教授日本人工臓器学会推薦
藤原 修   名古屋工業大学 プロジェクト教授/名誉教授電気通信大学 産学官連携センター 客員教授電気学会電磁環境技術委員会推薦
山崎 健一 一般財団法人電力中央研究所 電力技術研究所
         サージ・電磁気現象領域 領域リーダー/副研究参事電気学会電磁環境技術委員会推薦

国内関連GL

海外関連GL

WG開始年月

2022-05-01

WG終了年月

WGメンバー

令和 3 年度 経皮的エネルギー伝送システム 開発 WG 委員名簿
令和 3 年度開発 WG の体制構築にあたっては、日本人工臓器学会、電気学会電磁環境
技術委員会、日本生体医工学会から開発 WG 委員を推挙していただき、関係企業等を加
えて委員体制を構築した。
(※は座長、五十音順、敬称略)

氏 名 所 属
岡本 英治   東海大学 生物部生物学科 教授
        日本生体医工学会推薦
小林 信治   株式会社サンメディカル技術研究所 取締役
柴 建次    東京理科大学 先進工学部 電子システム工学科 准教授
        日本人工臓器学会推薦
巽 英介    国立循環器病研究センター
       オープンイノベーションセンター 副センター長
        日本人工臓器学会推薦
中田 和成   一般財団法人 ふくしま医療機器産業推進機構
        ふくしま医療機器開発支援センター
        安全性評価部 電気物性分析試験グループ 課長
西村 隆    愛媛大学大学院 医学系研究科 心臓血管・呼吸器外科学 准教授
        日本人工臓器学会推薦
藤原 修    名古屋工業大学 プロジェクト教授/名誉教授
        電気通信大学 産学官連携センター 客員教授
        電気学会電磁環境技術委員会推薦
※増澤 徹   茨城大学 工学部 工学部長
        茨城大学大学院 理工学研究科 研究科長
        茨城大学 機械システム工学領域 教授
        日本人工臓器学会推薦
山崎 健一   一般財団法人電力中央研究所 電力技術研究所
        サージ・電磁気現象領域 領域リーダー/副研究参事
        電気学会電磁環境技術委員会推薦

開発 WG 事務局
西田 正浩   産業技術総合研究所 健康医工学研究部門 研究グループ長

報告書(PDF)

2023-E-DE-059-R3-報告書

報告書要旨(最新年)

承認済み製品(日本)

承認済み製品(海外)

製品開発状況

Horizon Scanning Report