半月板修復再建用医療機器

ガイドラインID 2024-HN-DE-051
発出年月日 2024-11-29
発出番号 医薬機審発1129 第2号令和6年11月29日
WG名 半月板修復再建用医療機器 審査WG
制度名 次世代医療機器・再生医療等製品評価指標(審査ガイドライン)
製品区分 医療機器
分野

医療機器

GL日本語版ファイル

2024-HN-DE-051-半月板修復再建用医療機器

英文タイトル
GL英語版ファイル

GL:イントロ・スコープ

1. はじめに
半月板は膝関節内の大腿骨と脛骨の間の間隙に介在する、線維軟骨を主成分とする弾力性のある組織であり、膝に加わる荷重の衝撃吸収や関節の安定化、円滑な動きの誘導等の重要な機能を果たす。外力により半月板が損傷し、損傷部が関節間隙に挟まったり、ずれたりする際に痛みや引っ掛かりといった症状が出現し、諸動作の障害の原因となる。その治療法として、薬剤の投与や関節内注射、リハビリテーション等の保存的治療もあるが、機械的障害を伴い、手術を要する場合も多い。
手術を行う場合は、可動性を有する損傷部を切除する半月板切除術か、損傷部を縫合により修復する半月板縫合術のいずれかが選択される。切除術に伴う術後の変形性関節症の進行や機能的予後の不良が明らかになってきていることから、可能な限り半月板組織の温存を図ることの重要性が強調されてきている。しかし、半月板は組織内の血行が乏しく、半月板内部にある細胞の治癒能も低いため、その自己修復・治癒能に限界がある。従って、縫合による治癒が望み難い部位や形態の損傷に対しては、部分切除術が選択されるが、切除術には前述したような問題点があることから、手術によって喪失した半月板機能を再建する目的で、欠損部への半月板移植術も試みられてきている。
半月板切除後の欠損に対する同種半月板を用いた全半月板移植術については、1980年代の初期の報告以来、海外では、臨床経験が積み重ねられ、治療成績向上のための適応、術式の改善や最適化が行われてきている。現時点の実臨床では、新鮮凍結保存半月板が用いられることが多く、変形や進行した軟骨障害のない例では、長期経過においても良好な成績が報告されている。しかし我が国においては、同種半月板組織の入手は困難であり、臨床での使用には限界がある。
一方、半月板移植術における人工材料や生体材料の開発や使用についても、1990年代以降、様々な材料が試みられ、中には、長期の臨床成績が報告されている製品も存在する。我が国でも、半月板部分切除後の欠損部への移植材料として、いくつかの人工材料が開発され、臨床試験も行われている。そこで本評価指標では、半月板修復再建用医療機器に関する非臨床試験、および臨床試験における評価の留意点を取りまとめた。

2. 本評価指標の対象
本評価指標は、半月板欠損部に移植され、移植後は、自家組織侵入の足場(スキャフォールド)となり徐々に組織に置換されるタイプの、半月板修復再建用医療機器を対象とし、培養細胞などを用いた再生医療等製品は対象としない。また、移植された医療材料が自家組織による置換や吸収を受けることなく、そのまま機能し続ける製品は、本評価指標の対象外とするが、臨床試験における留意事項等、可能な部分を活用することを妨げるものではない。

3. 評価指標の位置づけ
本評価指標は、技術開発が著しい半月板修復再建用医療機器を対象とすると共に、半月板の治療を取巻く状況も日々変化していることを勘案し、現時点で重要と考えられる事項を示したものである。今後の技術革新や医療現場での知見の集積等を踏まえて改訂されていくべきものであり、承認申請内容に対して、拘束力を持つものではない。本評価指標が対象とする製品の評価にあたっては、個別の製品の特性を十分に理解した上で、科学的な合理性を背景にして、柔軟に対応する必要がある。本評価指標の他、必要に応じて国内外のその他の関連ガイドライン等も参考にすることが望ましい。

GL:本体

4. 評価にあたって留意すべき事項
(1) 非臨床試験に関する事項
1) 機械的特性試験
① 圧縮特性評価
円柱又は直方体形状の試料を用いて、材料試験機等により圧縮試験を実施し、圧縮弾性率を用いて材料の圧縮特性を評価すること。試験速度は、臨床使用環境を考慮した条件で数種類、設定することが望ましい。生体内における吸水の影響を考慮するため、湿潤前条件の他に、生理食塩水等を十分に吸水させた試料を用いて試験を行うことが望ましい。また、生体内を模した環境で試験を実施することが望ましい。例えば、37℃に調整した生理食塩水中で試験を行うことが考えられる。試験環境の影響がないことが示される場合は、室温、空気中で実施してもよい。材料に異方性が認められる場合は、使用状況を考慮して、荷重方向を決定すること。可能な場合は、破断まで試験を実施し、圧縮強度、圧縮破断ひずみ、破断面観察等により評価することが望ましい。
② 引張特性評価
ダンベル状に加工した試験片等を用いて、材料試験機等により引張試験を実施し、引張弾性率を用いて材料の引張特性を評価すること。試験速度は、臨床使用環境を考慮した条件で数種類、設定することが望ましい。生体内における吸水の影響を考慮するため、湿潤前条件の他に、生理食塩水等を十分に吸水させた試料を用いて試験を行うことが望ましい。また、可能な限り、生体内を模した環境で試験を実施することが望ましい。試験環境の影響がないことが示される場合は、室温、空気中で実施してもよい。材料に異方性が認められる場合は、使用状況を考慮して、荷重方向を決定すること。可能な場合は、破断まで試験を実施し、引張強度、引張破断ひずみ、破断面観察等により評価することが望ましい。
③ 微細構造評価
特に多孔体構造の製品においては、気孔径、気孔率等が性能へ与える影響が大きいことから、マイクロX線断層撮影装置(マイクロCT)、走査型電子顕微鏡(SEM)等を用いて、微細構造の状
態を特定するとともに、可能な限り、気孔径や気孔率等を特定することが望ましい。
④ 含水率評価
湿潤時の飽和状態になるまでの経時変化を明らかにすること。
⑤ 耐久性評価
組織と置き換わるまでの期間を考慮し、移植後の特性回復が起こると想定されるまでの期間を考慮し圧縮荷重や引張荷重を繰り返し加え、疲労特性を評価することが望ましい。試験は、生体内を模した環境で実施することが望ましい。周波数は、試験装置や試験試料の変形が設定した試験条件に追従可能で、環境温度が設定範囲に収まる範囲で加速してもよい。材料に異方性が認められる場合は、使用状況を考慮して、荷重方向を決定すること。試験後に圧縮試験や引張試験を破断まで行い、弾性率、強度、破断面観察により、繰り返し負荷による特性変化について評価することが望ましい。
⑥ 動的粘弾性特性評価
円柱形状等の試料を用いて、動的粘弾性試験機等により動的粘弾性試験を実施し、貯蔵弾性率、損失弾性率、損失係数等を求め、動的粘弾性の評価を行うことが望ましい。試験速度は、臨床使用環境を考慮した条件で数種類、設定することが望ましい。生体内における吸水の影響を考慮するため、生理食塩水等を十分に吸水させた試料を用い、生体内を模した環境で試験を実施することが望ましい。例えば、37℃に調整した生理食塩水中で試験を行うことが考えられる。試験環境の影響がないことが示される場合は、室温、空気中で実施してもよい。材料に異方性が認められる場合は、使用状況を考慮して、荷重方向を決定すること。
⑦ 埋植後サンプルの特性評価(インデンテーション試験)
動物実験等で生体内移植され、その後に取り出された材料等、あるいは物性が部位依存的に変化し、均一な試験片が得られない材料等に対しては、特性を取得したい箇所に球状圧子を押しこみ、荷重ー変形関係を求めるインデンテーション試験にて埋植前サンプルとの特性比較を行うことが望ましい。インデンテーション専用の試験機や圧縮試験機、動的粘弾性試験機等を用い、押し込み深さを数mm程度とするマクロスケールの試験と、原子間力顕微鏡やナノインデンテーション試験機を用い、押し込み深さを数μm 程度とするミクロスケールの試験が考えられ、実施について検討することも考えられる。マクロスケール試験では材料全体の特性が反映されやすく、ミクロスケール試験では材料表面の特性が反映されやすいことに留意する必要がある。評価項目としては、弾性率、剛性等が考えられる。試験速度は、臨床使用環境を考慮した条件で数種類、設定することが望ましい。また、試験では生体内における吸水の影響を考慮するため、埋植前のサンプルにおいては、生理食塩水等を十分に吸水させた試料を用い、生体内を模した環境で試験を実施することが望ましい。例えば、37℃に調整した生理食塩水中で試験を行うことが考えられる。試験環境の影響がないことが示される場合は、室温、空気中で実施してもよい。材料に異方性が認められる場合は、使用状況を考慮して、荷重方向を決定すること。

2) 動物試験
動物試験の目的は、製品(医療材料)が生体内に移植された際の生体の反応を観察、評価することによって、生体内での周囲組織との癒合や治癒過程、および機能評価から、提案された治療の有効性と安全性(リスク)に関する評価を行うことである。ここで得られた結果が臨床試験という次の段階にすすむ基礎となる。
① 動物種の選択
動物試験に使用する動物種は、実験の目的に応じて、適切に選択すること。動物とヒトでは、半月板組織の治癒や成長過程、製品への荷重負荷等が異なること及び年齢の違いによる影響が想定されるため、留意すること。ラットやウサギの半月板の生物学的特性はヒトとは異なる、という報告があり、また評価のための試料のサイズを確保するためにも大動物の使用が望ましい。
② 実験群の設定
臨床での使用法を模擬した実験群を設定すること。対照群としては、半月板修復再建用医療機器を用いず切除のみを行う切除群を設定することが考えられるが、さらに、関節切開のみを行う
シャム群や、切除後同種移植といった他の治療選択肢を対照群に加えることも考えられる。
③ 手術方法
臨床では関節鏡視下での手術が想定される製品であっても、動物試験では大きさや設備の面で鏡視下手術が困難な場合が想定される。過去の報告でも、関節切開した直視下での手術が多く、この点は許容されるものと考えられる。ただし、動物試験の結果を臨床試験のプロトコール等へ反映させる際には、動物試験の手術モデルと実臨床での手術との差異について、十分に考慮する必要がある。
なお、関節内の環境での自家組織との癒合や成熟過程を観察するために、半月板の血行の乏しい部位に円柱状(もしくは長方形)の欠損を作成し、そこに半月板修復再建用医療機器を移植した実験群と移植しない対照群を用いて比較する動物試験モデルがある。臨床での手術とは異なる術式であるが、これは以前から確立された半月板組織治癒の実験モデルであり、半月板修復再建用医療機器の治癒能に関し、臨床試験への移行の基礎となるデータを提供するものとなり得る。
④ 成績評価法
半月板修復再建用医療機器周囲の異物反応を含む組織反応に対する肉眼的及び組織学的評価を行うこと。また、半月板修復再建用医療機器移植術の目的は、切除によって術後二次的に生じる軟骨の変性や損傷の軽減であることから、関節軟骨の肉眼的及び組織学的評価も行うこと。これらの観察による評価は、可能な限り定量的に行われることが望ましい。例えば、関節軟骨変性・障害の定量的な組織学的評価においては、Mankinらが提案したスコアリングシステムが考えられる。さらに、可能であれば核磁気共鳴画像法(MRI)による半月板の形状や位置、実質内の信号変化の観察、CTを用いた半月板形態評価、免疫組織化学検査によるコラーゲンタイプ解析、基質成分の生化学的解析、力学試験による力学的特性の評価、血液や関節液の検査等を行うことが望ましい。
⑤ 試料数及び観察期間
試料数は、実験の目的や結果のばらつきを考慮して、適切に設定すること。これまでの報告では一般的に、個々の評価期間の各群のサンプル数は5~10であり、また術後評価までの期間としては、術後早期の反応や治癒過程を観察する場合は1~3ヶ月、その後の経過での反応や成熟過程を評価する場合は6~12ヶ月の期間が設定されている。ただし、半月板修復再建用医療機器が自家組織に置き換わるためには、長期間を要するという報告もあることから、製品の特性に応じて、1年以上の経過観察結果もあることが望ましい。
⑥ 動物実験で実証すべき事項動物試験では、以下の項目について実証すること。実験モデル(手術法、部位など)に応じた解析を行うこと。
イ) 安全性 周囲組織に、問題となるようなレベルの異物反応や免疫反応を惹起しないこと。
関節内の環境で半月板修復再建用医療機器の破損や摩耗が生じないこと。
ロ) 治癒能
半月板修復再建用医療機器が周囲の自家組織と癒合し、新生組織の侵入により自家再生組織に置き換わっていくこと。
移植後の治癒・成熟過程を経て、正常半月板に類似した組織所見や生物学的特性を獲得すること。
ハ) 有効性、機能 治癒・成熟過程を経て、半月板としての形態や位置が再現できていること。 製品の吸収・変形を経時的に確認し、製品コンセプトが成立していること。
正常半月板組織に類似した生物学的特性、及び力学的特性を獲得していること。
切除群に比べて術後の関節軟骨の変性が軽減できること(軟骨保護効果の確認)。

(2) 臨床評価に関する事項
1) 臨床試験(治験)のデザイン
臨床試験を行うにあたっては、半月板修復再建術の臨床的意義や術式、用いる医療機器の特性を考慮したうえで、対象となる損傷のタイプ、部位やサイズも含めた手術適応(選択や除外基準)や試験のデザインを決める必要がある。
また半月板損傷は、若年者(40歳未満)の外傷による断裂と、中高齢者(40歳以上)の半月板変性による断裂で、病態が異なることが明らかになっている。そのため、適応患者の年齢範囲を考慮して臨床試験対象者の年齢層を設定、評価することが不可欠である。
① 若年者を対象とする場合の留意事項
若年者を対象とした臨床試験における対象患者は、損傷の形態、部位、血行などから、半月板の縫合術では治癒率が低いと考えられる症例を対象とすることが望ましい。具体的には、バケツ柄状断裂、横断裂、水平断裂、無血行領域まで進展した断裂、変性を伴った断裂などが考えられる。製品が想定する適応に応じて、適切に対象となる症例を選択すること。円板状半月板断裂に適応する場合は、他の成績と分けて評価することが望ましい。
臨床上、前十字靭帯(ACL)再建術、骨切り術や軟骨修復術を併用する症例もあると想定されるが、このような症例との併用も適応とするならば、併用する症例を臨床試験の対象とし、併用しない半月板単独損傷の症例と分けて評価すること。
対照群の設定に関して、切除群は長期では臨床成績に差が出るが、短期では逆に成績が良い可能性がある。半月板切除と同時に半月板修復再建用医療機器を移植する場合のコントロールとして採用できる。ただし5年以上の観察期間があれば変形性膝関節症(Knee Osteoarthritis:膝 OA)進行により成績が悪化することは知られているが、実際に切除群の長期の成績を要求するのは現実的ではないことが問題点である。
縫合群は一番現実的と考える。問題点としては縫合困難な症例に対する医療機器としての評価を行う場合には、論理的には対象群として許容できるかの整合性を明らかにすることが必要である。
保存治療群は半月板修復再建用医療機器の評価として、運動療法等の保存的治療を対照群として設定する場合も考えられる。本法を対照群として設定し半月板修復再建用医療機器の有効性を評価する場合には、臨床試験において介入(半月板修復再建用医療機器の使用)が運動療法単独と比較して上乗せ効果があることを示す必要があり、本来は介入群においても対照群と同じく運動療法を行うように設計すべきである。但し介入群では製品が安定化するまでの関節固定や荷重制限がある点で、対象群(運動療法)と異なることが問題点である。
単群試験での外部対照については、近年の半月板損傷に対する試験の集積は著しく進歩しており、また、環境の異なる国や施設にて行われた過去のエビデンスを引用することによる差異は無視できないと考える。従って、本件において外部対照を設けることは望ましくない。
リハビリテーションも臨床成績に影響することから、各群のリハビリテーションは統一すること。リハビリテーションのプロトコールとしては、半月板縫合術におけるリハビリテーションのプロトコールを基本とするのが適当であると考えられるが、製品の特徴に応じて内容を検討すること。
② 中高齢者を対象とする場合の留意事項
中高齢者においては、半月板損傷や逸脱による半月板機能異常が、膝OAの発症や進行過程に極めて重要な役割を担うことが明らかになっていることから、半月板損傷は、膝OAの発症及び進行過程の一部として発生しており、膝OAの早期の変化が潜在的に存在しているものと認識する必要がある。従って、少なくとも単純X線で、膝OAの重症度をKellgren-Lawrence(K/L)分類を用いて評価し、K/L分類グレード1以下までに制限することが望ましい。膝OAを対象とする場合は、膝OAに対する効果を検討する別途の臨床試験を設定すること。
また、靭帯再建術や膝周囲骨切り術が、半月板損傷に対する手術と併用される症例もあると想定される。これらの手術は、膝OAにも大きく影響することから、このような術式との併用も適応とする場合は、併用する術式を臨床試験の対照とし、併用しない半月板単独損傷の症例と分けて臨床試験を計画及び実施のうえ評価すること。
中高年者では、単純X線による評価上の膝OAの有無にかかわらず、膝OA早期の病態として半月板損傷が発生していくことが明らかになってきている。そして、膝OAにおいては歩行などの移動時の膝痛が重要な臨床症状であるが、半月板損傷がキャッチングやロッキングを招いている場合を除いては、半月板損傷は膝OAに伴う膝痛への関与は弱いことが明らかになっている。さらに、単純X線上の膝OAの有無にかかわらず、中高年者の半月板損傷に対する半月板部分切除術の効果は限定的であり、場合によっては膝OAの進行リスクを高める可能性も危惧されるため臨床上推奨されない。従って、中高年者を対象とする場合、対照群に半月板部分切除術を設定することは推奨できず、半月板縫合術、もしくは保存的治療例を設定することが望ましい。また、中高年者では膝OA変化の一つとして半月板逸脱も高率に発生していることも明らかになっていることから、MRIによる半月板の評価にあたっては、損傷に加え逸脱についても評価することが重要である。
半月板縫合術は、半月板温存の重要性の理解の高まりとともに、近年医療機器の質と量の向上と技術の向上が進んでいる。従って、半月板損傷に対する新規医療機器や材料に対する対照群として半月板縫合術を設定することは適している。対照群を縫合術とする場合、半月板損傷の部位と損傷パターンを両群間にて揃えることが重要である。
対照群を保存療法とする場合には、リハビリテーションの専門家が介入した運動療法プログラムが標準的である。膝OAに対するリハビリテーションを含む運動療法は、確固たるエビデンスを有した確立された治療法のひとつである。したがって、このリハビリテーションを含む運動療法を対照群として半月板修復再建用医療機器群の有効性を評価する設定とする場合には、介入
(半月板修復再建用医療機器群)が運動療法単独と比較して上乗せ効果があることを示す必要があり、本来は臨床試験の介入群(半月板修復再建用医療機器群)においても対照群(非介入群)と同じく運動療法を行うように設計すべきである。但し介入群では製品が安定化するまでの関節固定や荷重制限がある点で、対象群(運動療法)と異なることが問題点である。
単群試験での外部対照については、近年の半月板損傷に対する試験の集積は著しく進歩しており、また、環境の異なる国や施設にて行われた過去のエビデンスを引用することによる差異は無
視できないと考える。従って、本件において外部対照を設けることは望ましくない。

2) 臨床評価
① 評価項目
半月板は膝関節の構成体のひとつであり、半月板損傷は膝関節機能の低下を生ずることになる。単独の半月板損傷の場合もあるが、靭帯損傷や軟骨損傷と合併損傷の場合も多い。他の膝関節構成体の異常に起因する症状と分離することは容易ではないことから、半月板に対する介入の結果を評価するには膝機能全般として評価することが妥当と考えられる。
従って、臨床評価には、国内外において一般的に用いられている、膝関節疾患や障害に対して汎用的に使用できる膝関節機能の評価法を用いること。また、国外で開発された評価法の場合は、日本語での検証がなされていることが望ましい。この他に、患者立脚型評価法(patient reported outcome measures、PROMs)であること、半月板治療での使用実績があること、Minimal clinically
important difference(MCID)の指標が存在すること、Patient-acceptable symptomatic state (PASS)の指標が存在することなども考慮に入れ、臨床評価に使用する指標を選択することが望ましい。
以上の観点から、主要評価項目としては、International knee documentations committee Subjective knee evaluation form(IKDC-SKF)と、Knee Injury and Osteoarthritis Outcome
Score(KOOS)のいずれか、又は両者の実施が望ましい。
また、副次評価項目として、Tegner scaleや、疼痛についてのVisual analog scale(VAS)、
Patient’s global assessment(PGA)等の評価法も考えられる。併せて、画像等を用いた半月板の構造評価も必要である。また、半月板修復の目的の一つが膝
OAの進行抑制であることを鑑みると、軟骨等の構造評価も必要である。
② 評価期間
有効性及び安全性について、少なくとも、術後1年以上の観察を行うこと。安全性の観点から、製品の吸収性等も考慮して、より長期の観察を要する場合もある。膝関節に施行される手術では、術後1年から2年にかけて症状・機能等の改善を認める場合が多いことから、有効性についても術後2年以上の観察が望ましい。また、安全性及び有効性の観点から、画像等を用いた構造評価も術後2年以上の評価が望ましい。
③ 単純X線を用いた評価
膝関節裂隙の狭小化、下肢アライメントの変化、変形性膝関節症の程度などを評価するために、経時的に膝関節及び下肢全長の単純X線撮影を行うことが望ましい。評価においては、定量的・半定量的な評価が可能な条件で撮影すること。
④ 関節鏡を用いた評価
関節鏡を用いた評価は、侵襲性が高い評価法であることから、全例を対象とした評価項目として必須とまでは言えない。ただし、併用術として施行された十字靭帯再建術や膝周囲骨切り術で使用された内固定材の除去術を行う際に関節鏡を用いた評価が実施される場合や、何らかの理由で関節鏡による追加処置が必要となる場合には、関節鏡を用いた評価が行われることが望ましい。再鏡視による評価を実施する場合は、中央化や複数の外部評価者による画像・動画解析の実施も考慮すること。
⑤ MRIを用いた評価
MRIを用いた経時的評価を行う場合は、撮像条件や断面を術前・術後で統一する必要がある。また半月板の欠損や連続性の有無、半月板の逸脱、膝関節軟骨の状態、軟骨下骨の骨髄浮腫等を評価可能な条件で撮像することが望ましい。評価においては、3 次元画像解析ソフトウェアを利用した半月板の体積や逸脱の定量的評価も考慮してよいが、画質、画像解析装置及びセグメンテーション等のソフトウェア使用者の習熟度及び評価方法について以下の事項に留意することを推奨する。
i. 3次元画像解析ソフトウェアの選択
検者内・検者間信頼性が高く、半月板の体積や状態等を正確に評価することが可能なソフトウェアを選択すること。
ii. 画質
品質が担保されない医用画像データを使用することで、解析結果の妥当性を損なう可能性がある。3次元画像解析ソフトウェアに入力する医用画像データに求められる仕様及び品質を明確にすること。仕様については、撮影用装置の要件、解像度、推奨する撮像条件等を考えること。
iii. 画像セグメンテーション
半月板の欠損や連続性の有無、半月板の逸脱、膝関節軟骨の状態、軟骨下骨の骨髄浮腫等を評価するうえで関心領域が占める割合や境界設定の条件を明確にすること。
iv. ソフトウェア使用者・解析者の習熟度
3次元画像解析ソフトウェアの使用者及び画像を検討し効果を確認する解析者(ただ
し、ソフトウェア使用者と解析者が同一人物の場合もあり得る)のレベルを高い水準に維持することが望ましい。検者内・検者間信頼性などを指標とすることも考慮すること。 v. 評価方法
3次元画像解析における評価の客観性が担保されるよう、評価部門の中央化や外部評価者による画像解析の実施などソフトウェア使用者及び解析者バイアスを低減するための対策を考慮すること。

GL:付属資料

引用関連規格

国内関連GL

海外関連GL

WG開始年月

2022-07-01

WG終了年月

2024-03-01

WGメンバー

令和3年度次世代医療機器・再生医療等製品評価指標検討会(厚生労働省)/医療機器開発ガイドライン評価検討委員会(経済産業省)合同検討会

半月板修復再建用医療機器審査ワーキンググループ委員名簿

座長:吉矢晋一   西宮回生病院 顧問 兵庫医科大学 名誉教授
副座長:眞島任史  日本医科大学大学院医学研究科 整形外科学教授 日本医科大学医学部 整形外科 主任教授

委員(五十音順):
石島旨章   順天堂大学医学部 整形外科 主任教授
佐粧孝久   千葉大学予防医学センター運動器等疾患学 教授
藤江裕道   東京都立大学システムデザイン学部 機械システム工学科 教授
古松毅之   岡山大学病院 整形外科 講師

厚生労働省:
中山智紀   医薬・生活衛生局医療機器審査管理課長
西川玄希   医薬・生活衛生局医療機器審査管理課 主査
黒澤壮平   医薬・生活衛生局医療機器審査管理課 主査

独立行政法人 医薬品医療機器総合機構:
矢花直幸   医療機器審査第二部 部長
奥田大樹   医療機器審査第二部 審査役
横山敬正   医療機器審査第二部 主任専門員
椎名俊介   医療機器審査第二部 審査専門員
井上円加   新薬審査第四部 審査専門員(臨床医学担当)
小野寺陽一  医療機器調査・基準部 部長
郭  宜   医療機器調査・基準部 医療機器基準課長

国立医薬品食品衛生研究所(審査WG事務局):
山本栄一   医療機器部長
岡本吉弘   医療機器部 性能評価室長
迫田秀行   医療機器部 第二室 主任研究官

経済産業省 商務情報政策局 商務・サービスグループ(オブザーバー):
加納二子   ヘルスケア産業課 医療・福祉機器産業室 室長補佐
重藤 元   ヘルスケア産業課 医療・福祉機器産業室 室長補佐
伴 知晃   ヘルスケア産業課 医療・福祉機器産業室 係長
仲條麻美   ヘルスケア産業課 医療・福祉機器産業室 係長

日本医療研究開発機構(オブザーバー):
友安弓子   医療機器・ヘルスケア事業部 医療機器研究開発課 課長代理
新木和孝   医療機器・ヘルスケア事業部 医療機器研究開発課 主幹
交久瀬善隆  医療機器・ヘルスケア事業部 医療機器研究開発課 主幹
桜井智也   医療機器・ヘルスケア事業部 医療機器研究開発課 主幹
森内将貴   医療機器・ヘルスケア事業部 医療機器研究開発課 主査
河野 健   創薬事業部 規制科学推進課 課長
栗原宏之   創薬事業部 規制科学推進課 調査役
堀切陽介   創薬事業部 規制科学推進課 主幹
大浦由樹子  創薬事業部 規制科学推進課 主幹

令和5年度次世代医療機器・再生医療等製品評価指標検討事業
半月板修復再建用医療機器審査ワーキンググループ
委員名簿

座 長:吉矢晋一  西宮回生病院 顧問 兵庫医科大学 名誉教授
副座長:眞島任史 日本医科大学大学院医学研究科 整形外科学 教授 日本医科大学医学部 整形外科 主任教授

委 員(五十音順):
石島旨章   順天堂大学医学部 整形外科学講座 主任教授       
佐粧孝久   千葉大学予防医学センター 運動器疼痛疾患学 教授
藤江裕道    東京都立大学システムデザイン学部 機械システム工学科 教授
古松毅之    岡山大学病院 整形外科 講師

厚生労働省:  
中山智紀   医薬局医療機器審査管理課 課長   
井上大輔   医薬局医療機器審査管理課 再生医療等製品審査管理室長   
黒澤壮平   医薬局医療機器審査管理課 主査   
大場崇史   医薬局医療機器審査管理課

独立行政法人 医薬品医療機器総合機構:
矢花直幸   医療機器審査第二部 部長
奥田大樹   医療機器審査第二部 審査役
横山敬正   医療機器審査第二部 主任専門員
窪田文佳   医療機器審査第二部 審査専門員
井上円加   新薬審査第四部 審査専門員(臨床医学担当)
小川将仁   医療機器調査・基準部 部長
郭  宜   医療機器調査・基準部 医療機器基準課 課長

国立医薬品食品衛生研究所(審査WG事務局):
山本栄一   医療機器部 部長
岡本吉弘   医療機器部 性能評価室長
迫田秀行   医療機器部 第二室 主任研究官

経済産業省 商務情報政策局 商務・サービスグループ(オブザーバー):
松本麻子   ヘルスケア産業課 医療・福祉機器産業室 室長補佐
十河 友   ヘルスケア産業課 医療・福祉機器産業室 室長補佐
仲條麻美   ヘルスケア産業課 医療・福祉機器産業室 係長
山根史帆里  ヘルスケア産業課 医療・福祉機器産業室 係長
浦 綾夏   ヘルスケア産業課 医療・福祉機器産業室 係員
幸寺玲奈   生物化学産業課 室長補佐

産業技術総合研究所(オブザーバー)
安永茉由   健康医工学研究部門 主任研究員

日本医療研究開発機構(オブザーバー):
桜井智也   医療機器・ヘルスケア事業部 医療機器研究開発課 主幹
森内将貴   医療機器・ヘルスケア事業部 医療機器研究開発課 主査
多田 稔   創薬事業部 規制科学推進課 課長
栗原宏之   創薬事業部 規制科学推進課 調査役
堀切陽介   創薬事業部 規制科学推進課 主幹

報告書(PDF)

2024-HN-DE-051-R4-報告書

2024-HN-DE-051-R5-報告書

報告書要旨(最新年)

承認済み製品(日本)

承認済み製品(海外)

製品開発状況

Horizon Scanning Report