包括的高度慢性下肢虚血治療用医療機器の臨床評価

ガイドラインID 2025-HN-DE-053
発出年月日 2025-06-09
発出番号 令和7年6月9日 医薬機審発0609第1号
WG名 包括的高度慢性下肢虚血用医療機器 審査WG
制度名 次世代医療機器・再生医療等製品評価指標(審査ガイドライン)
製品区分 医療機器
分野

医療機器

GL日本語版ファイル

2025-HN-DE-053 包括的高度慢性下肢虚血治療用医療機器の臨床評価

英文タイトル
GL英語版ファイル

GL:イントロ・スコープ

1.はじめに
生活習慣の変化、急激な高齢化に伴い下肢閉塞性動脈疾患(LEAD:Low extremity artery disease)は経年的に増加してきており、今後 20 年間でさらに 30%から 50%の増加が見込まれると報告されている。欧米では虚血性心疾患が減少傾向であるという報告とは極めて対照的である。この LEAD の下肢の予後は総じて良好であるものの、包括的高度慢性下肢虚血(CLTI: chronic limb-threatening ischemia)に陥ると下肢のみならず生命予後も極めて不良であり、特に透析患者において顕著である。下肢の切断は生活の質に影響するのみならず、介護を含めた家族の負担増加にもつながる。今後も疾病構造の変化は持続すると考えられているため、国民医療、国民の生活の質向上の観点からも救肢は重要な課題といえる。
本疾患において血行再建術が救肢のために重要な役割を担い、自家静脈を用いた外科バイパス術ならびにカテーテル治療は確立された治療戦略となっている 1)。しかし、カテーテル治療の血管開存性は満足できるものではないため、血管開存性向上を目指す医療機器の開発は下肢救肢率の向上、潰瘍治癒期間の短縮につながると考えられている。このため医療ニーズは高く、有効な医療機器が開発されれば患者のみならず患者家族、医療経済上においても有益と考えられる。血行再建術の主たる目的は創傷治癒であるが、血管開存性が創傷治癒と同義ではないことにも留意が必要である。このため、治療用医療機器の有効性評価は複雑であり困難を極める。そこで、平成 25 年 5 月に次世代医療機器評価指標として「重症下肢虚血疾患治療用医療機器の臨床評価に関する評価指標」が発出され、臨床試験において留意すべき事項が定められた。
しかし、この評価指標が定められてから 10 年以上が経過し、この間に多くの臨床研究が実施され、新たな概念や分類が報告された。いわゆる重症下肢虚血に加え下肢切断のリスクを有する糖尿病足病変などの症例を包含し、CLTI と称されることとなった。WIfI 分類による患肢の重症度評価も提唱された 2)。このため、医療機器の評価においても新たな考え方を導入する必要性に迫られている。実際、この 10 年間で多くの臨床研究が行われてきたが、主要評価項目は試験によって異なっており一貫した成績も得られていない。そこで、臨床的必要性が高い血行再建医療機器について、有効性、安全性評価に関する必要事項及び臨床試験に際して留意すべき事項を定めた。

2.本評価指標の対象
本評価指標は、LEAD による CLTI に対する血行再建治療のための医療機器を対象とする。したがって、CLTI に対する薬物治療、創傷治癒促進のための医療機器は対象としない。血管新生療法の際に用いられる医療機器は広義には含まれるが、下肢動脈血管に直接介入する医療機器ではないため対象には該当しない。しかし、対象の選択、創傷治癒評価の観点において本評価指標は参考になりえると考える。開発する医療機器が本評価指標の対象に該当するか判断が難しい場合には、必要に応じて医薬品医療機器総合機構(PMDA)の相談制度を利用することが推奨される。

3.本評価指標の位置づけ
本評価指標は、現時点で重要と考えられる事項を示したものである。今後の技術革新や知見の集積などを踏まえて改訂されるべきものであり、医療機器の製造販売承認申請内容に対して拘束力を持つものではない。本評価指標が対象とする医療機器の評価にあたっては、個別の製品の特性を十分理解した上で、科学的な合理性を背景にして、柔軟に対応する必要がある。

GL:本体

4.臨床試験の施設基準
CLTI の治療においては、患者背景や血管病変、創傷因子だけでなく、創傷管理、栄養管理、透析治療といった、多診療科・多職種による治療が臨床成績に影響する。したがって、必要に応じて、医療機関における多診療科・多職種による連携状態を考慮した上で臨床試験施設を選定することが望ましい。

5.CLTI の評価
CLTI の患者集団は生活環境、病変など様々な要因において多様性に富んでいるため、治療に用いる医療機器の評価においては、治療対象の決定や治療成績の評価にあたり本疾患の予後及び治療成績を規定する要因を考慮することが必要である。治療成績を規定する要因は患者背景、血管病変、創傷の 3 因子に大別される。しかし、これまでは創傷全体像を示す重症度分類がなく、臨床の現場では個々の因子を勘案し個々の医師が総合的に判断を行ってきた。そのような中、CLTI の評価指標として新たに WIfI 分類が提唱された 1, 2)。WIfI 分類は治療成績の推測、予後判定に有用であり、治療効果の判定にも用いることができる。

(1)WIfI 分類
WIfI 分類は、患肢を創(W:wound)、虚血(I:ischemia)、感染(fI:foot infection)の 3 項目で点数化し、CLTI 患者患肢の重症度を包括的に評価する指標である。WIfI 分類による評価は、患肢の重症度のみならず、治療戦略の決定や予後の推定にも有益であることが示されており、これを用いてステージングすることが望ましい。なお、糖尿病患者、透析患者の血管は石灰化病変が多く ankle pressure (AP) や ankle-brachial index (ABI) は真の値よりも高値を示すことが多い。このため、本
邦では WIfI 分類における ischemia grade 評価において皮膚灌流圧(SPP:skin perfusion pressure)値の利用が提唱されており 1)、本評価指標においても虚血評価に SPP 測定値を用いることを推奨する。


W: wound grading

文献 3、Table 3.2 を改変(Elsevier から許諾取得済み)
図省略

I: ischemia grading

  ABI AP         TP、TcPO2 SPP
grade0 ≧0.80 >100 mmHg    ≧60 mmHg ≧50 mmHg
grade1 0.60~0.79 70~100 mmHg 40~59 mmHg 40~49 mmHg
grade2 0.40~0.59 50~70 mmHg 30~39 mmHg 30~39 mmHg
grade3 ≦0.39 <50 mmHg <30 mmHg <30 mmHg

ABI:ankle-brachial index(足関節上腕血圧比)
AP:ankle pressure(足関節血圧)
TP:toe pressure(足趾血圧)
TcPO2:transcutaneous oxygen tension(経皮酸素分圧)
SPP:skin perfusion pressure(皮膚灌流圧)


fI: foot infection grading
grade0 感染の徴候なし
grade1 下記の少なくとも 2 つの兆候を有する限局性感染
・局所の腫脹や硬結
・潰瘍周囲の発赤>0.5~≦2 cm
・局所の圧痛や痛み
・局所の熱感
・膿汁の排泄(濃い濁った白色または血性混じりの浸出液)
grade2 広範な局所感染(発赤>2 cm)あるいは皮膚・皮下より深部の構造物を巻き込む感染(膿瘍、骨髄炎、敗血症性関節炎、筋膜炎)で全身性の炎症兆候(下記を伴わないもの)
grade3 局所感染を伴う全身感染兆候で、下記兆候の 2 つ以上を保有して
SIRS の兆候を有するもの
・体温>38 ℃または<36 ℃
・心拍数>90 回/分
・呼吸数>20 回/分または PaCO2<32 mmHg
・白血球数>12,000 または<4,000 cells/mm3 または 10%を超える幼若球の出現
SIRS:systemic inflammatory response syndrome(全身性炎症反応症候群)

予測 1 年後大切断リスクに基づく米国血管外科学会臨床的下肢ステージ
図省略

(2) 患者背景の評価
創傷治癒の成績には、下肢の血管病変、創傷の症度に加えて患者背景が大きく影響する。また、血行再建術の成否にかかわらず予後が不良である患者群、治療に協力的でない患者も治験の対象として相応しくない。このため、症例選択において以下の患者背景が考慮されるべきである。
1) 透析例の成績は非透析例に比し不良であるが、国内においては、血行再建術施行例の約半数が透析例であることを鑑みると透析例を除外することは適当ではない。また、透析の質によって透析例の予後が異なることがわかっており、透析の種類、実施頻度、日常生活動作(ADL: activities of daily living)などにより評価し、症例を選択する。
2) 治療前に歩行困難な症例では、治療後も歩行が困難である場合が多いことが報告されている。
そのため、患者の ADL を評価した上で治験に組み入れるか検討する。
3) 以下のような患者は治験の対象として相応しくない。
低栄養が示唆される患者:栄養状態は創傷の治癒に影響し、アルブミン値が参考になる。また、低 BMI(18 未満)は長期間の低栄養が示唆され、予後不良を示唆する指標であり治験対象に適さない。
管理されていない心不全など全身の循環不全が確認される患者:治癒の遅延につながるため治験対象に適さない。
高用量のステロイド内服例を有する患者:創傷治癒の遷延化および易感染性に関係するため治験対象に適さない。
主たる病態が血管炎など動脈硬化症以外の患者:治療用医療機器の有効性評価に適さない。
4) 治療中断歴がある症例やアドヒアランスが不良な患者は治験の対象として相応しくない。

(3) 対象血管の決定
CLTI は多血管領域、多発病変を特徴とするため責任病変をいかに同定するかが重要である。とくに、膝下の血管病変に対する介入試験では、治療血管と創傷との関係が明白と考えられる症例の選択が理想である。
1) 血管病変の解剖学的複雑性は GLASS 分類(global anatomic staging system)で評価するこ
とが推奨される。加えて、angiosome の direct、indirect(側副血行路の有無)は参考となる。
2) 足関節以遠の血管は IM GLASS 分類を用い、pedal arch の血管病変、その末梢の血管病変を評価する。Pedal arch 形成がなく、その末梢に血管がない症例(病変分類 P2、いわゆる nooption 症例)は創傷の治癒が極めて不良である 1, 2)。臨床試験の対象決定においては、血管内治療に関する以下の事項についても考慮する必要がある。

図省略

(ア) 大腿動脈、腸骨動脈との複合病変の場合は inflow に相当する病変の治療が先行して実施されていること。
(イ) 創傷のない Rutherford クラス 4 の症例においては治療と症状の関係を明白にするため単一血管病変拡張例に限定する。
(ウ) Rutherford クラス 5 の症例では複数血管の治療を可能とするが、治療用医療機器は最も救肢に重要と考えられる血管病変部位に限定する。あわせて患肢としても評価する。
(エ) 同一血管内の複数病変は同一医療機器での治療が望ましい。
FP grade と IP grade の組み合わせによる GLASS stage

図省略

(4)足病変の評価について
1) 標準的な創傷管理について
足病の標準治療は日本フットケア・足病医学会編集の「重症化予防のための足病診療ガイドライン」に詳細に説明されているが 4)、本評価指標では当該ガイドラインの第 2 章を参照する形で、本項において CLTI の標準的創傷管理を概説する。具体的には、骨・軟部組織の壊死・骨髄炎、褥瘡、胼胝下潰瘍、熱傷、靴擦れ、創周囲炎などの創傷が対象となる。
CLTI の創傷管理は、創の評価、治療、免荷に分けて考えることができる。
CLTI は虚血による壊死と感染が主病態である。創は大きさと潰瘍の深さについて評価する。感染については、熱発を伴うなど全身症状があるかないか、発赤の領域がどこまでか、壊死性軟部組織感染症、蜂窩織炎などの鑑別を行う。感染が足部変形による胼胝形成から胼胝下潰瘍、神経障害に由来する外傷による病態にも留意する。
虚血が認められた場合には、できるだけ早期に血行再建術を行う。虚血と感染の両者を認めた場合には、症例ごとに検討が必要である。感染が軽度であれば血行再建術を優先し、足部の腫脹や発赤などを認める感染ならば、切開などの外科的処置後に血行再建術を行う。血行再建術後に感染が増悪することもあるので、その場合には可及的速やかに外科的デブリードマンと抗菌薬による治療を行う。
血管内治療や遠位バイパス術などの適応がない、または治療が困難、血行再建術を行ったが治癒が得られない(臨床的不成功)場合には、補助療法である LDL アフェレーシスや高気圧酸素療法などを行ってもよい。
血行再建術が施行され感染が制御されれば、局所陰圧閉鎖療法などの保存的治療を行って肉芽形成を獲得し、皮膚および軟部組織再建術を行って治癒に導く。血行再建術が施行される、または感染が制御された状態で、免荷装具を着用し、立位・歩行などのリハビリテーションを開始する。治癒が得られたら足部の形態や歩容が変わるので、免荷装具などを使って創傷再発予防を行う。
なお、患者の全身状態及び歩行の可否、歩行補助具など使用の有無、必要な免荷装具の種類の違いなどが異なるため、その状況に応じて治療目標を臨機応変に決定する必要があり流動的に考えるべきである。

2) 症例の選択について
以下に挙げたような、創傷管理が複雑となることが想定される症例は臨床試験の対象の候補としては適さないので避けること。
(ア) 広範囲組織欠損例:創傷治癒に時間を要し、集学的に可能な治療を全て試みる可能性が高いため治療用医療機器の評価に適さない。
(イ) 踵部潰瘍例:創傷治癒が他の部位に比し遅く、同一の評価が困難なため評価に適さない。
(ウ) 多発性潰瘍形成例:多発性潰瘍形成例では個々の創傷の大きさの上限を決めることが望ましい。創部が大きいと創傷治癒に時間を要するため創傷治癒評価による有効性評価には適さない。
(エ) 感染例:fI Grade3 は評価に適さない。

3) 創傷の評価について
創傷の評価は、WIfI ステージの評価に加えて、創傷の大きさ、深さ、感染及び肉芽組織の 4 点の評価が重要である。
(ア) WIfI ステージの評価
虚血、創傷、感染から WIfI ステージを評価する。また、感染の悪化がない症例では、虚血、創傷の両面から経時的な改善、悪化が評価できる。
(イ) 大きさ、深さの評価
創傷の大きさは、デジタルカメラにより撮影された写真を用い、最大径及び直交する最大短径の乗算にて評価する(右図参照)。創傷評価用の機器などを用いた面積評価も考慮されるべき方法である。
創傷の深さは、目視にて確認し、真皮に至る、皮下に至る、筋肉・腱に至る、骨・関節露出、不明(判断不可能な状態)に分類する。
図省略
(ウ) 感染の評価
デジタルカメラにより撮影された写真により発赤や腫脹を観察する。併せて、末梢血検査(CRP、白血球数)、単純 X 線写真による骨破壊像、MRI による骨髄炎の存在を確認する。(なお、MRI 撮像は血行再建術後に実施し、骨髄炎の存在を評価する。)経過中、局所の感染の合併は創傷治癒を妨げる重要な要因である。経時的に観察し記録されるべきである。
(エ) 肉芽組織の評価
創傷全体に対する良性肉芽の面積比(%表示)を写真等で測定する。

6.治療用医療機器の有効性の評価
治療用医療機器の有効性評価は、WIfI ステージの評価、臨床的評価、血管病変に対する評価、初期治療効果の評価、創傷治癒の評価、患者報告アウトカム尺度を用いた評価、及び QOL 評価からなる。
血管病変に対する評価はいずれの Rutherford クラスにおいても可能であるが、創傷評価は Rutherford クラス 4 では不可能である。このため Rutherford クラス 4 症例と 5 症例に対する有効性を同一の評価基準で判定することは困難である。下肢切断回避率や下肢切断回避生存率といった旧来の評価指標では、血流改善が不十分で創傷治癒は得ていないが評価の時点で切断を回避した場合や、下肢切断に至る前に死亡した場合などは下肢切断回避と判断される。逆に、感染例では血行再建術の成否に関係なく下肢切断に至ることもある。したがって、血流改善を目的とした治療用医療機器の評価においては、治療介入前と追跡時の 2 断面のみではなく、経時的な包括的評価が必要であ
る。また、救肢の最終的な目的は、生活の質改善であることから QOL の評価が望ましい。

(1) WIfI ステージの評価
WIfI 分類を用いた患肢の総合的な評価は、臨床試験登録時のみでなく連続的になされるべきである。CLTI 症例の患肢創傷治癒過程は多面的かつ連続的であるからである。血流悪化のみでなく、感染合併などによっても創傷治癒過程は悪化する。連続的に評価することによって、血流以外の要因による創傷治癒遅延などの事象の判定が可能となる。逆に、感染の軽微な症例では創傷を縦軸、虚血を横軸で表現し、治療介入前後をプロットすることで改善の評価が可能となる。
(2) 臨床的評価
臨床的評価項目として、以下のものが考えられる。なお、これらの臨床評価は 1 ヶ月、3 ヶ月、6 か月に実施する。
1) 主要下肢有害事象(MALE:major adverse limb event)
(ア) 血行再建治療前に計画されていない下肢切断の有無
(イ) 以下の基準に基づく臨床的必要性に基づいた再血行再建術の実施の有無
客観的血流評価機器で血流低下が認められる創傷治癒遅延に対する血行再建術の実施
創傷治癒遅延を伴い、定量的血管造影で 70%以上の高度狭窄、閉塞の存在 外科的バイパス術への移行
2) 非切断生存率(AFS:amputation free survival)
死亡の影響を大きく受けるため、評価時にはその点を注意する必要がある。

(3) 血管病変に対する評価
1) 開存性評価
開存性評価としては血管造影が最適である。なお、血管造影による評価は 6 か月の臨床的評価を実施した後に実施されるべきである。
現状エビデンスとしては十分といえないが Duplex ultrasound など客観的血流評価機器による評価は開存性評価の代替となりえる。ただし、膝下動脈は径が細く、超音波検査による再狭窄や狭窄率の評価法は確立していないが、再閉塞の有無を評価することは可能である。客観的血流評価機器を使用する場合には、治療部位の血流を連続して評価することが望ましい。
2) 血行動態指標の評価
感染や浮腫が強い症例などでは血行動態指標の測定値が不安定になることに留意する必要があるが、SPP、足趾血圧による血行動態指標の経時的な評価は、直接的な開存性評価ではないものの血流改善を評価する代替指標として参考になる。また、同一患者における血行動態推移の評価にも適する。

(4) 初期治療効果の評価
評価項目として、以下のものが考えられる。
1) 血管造影における残存狭窄度、造影遅延の有無、及び血管合併症の有無(血管穿孔、末梢塞栓、血流遅延を伴う動脈解離)
2) 30 日以内の院内合併症(全死亡、心筋梗塞、脳卒中、計画外の下肢切断、出血性合併症など)

(5) 創傷治癒の評価
創傷治癒は独立した第三者が評価することを基本とし、下記 2 つの主要評価指標の達成期間を評価する。なお、創傷治癒評価のための写真を適宜撮影する(例えば 2 週間毎)。
1) 評価開始時点の設定について
血行再建術施行日を創傷治癒評価の起点とする。
2) 主要評価指標
(ア) 上皮化:完全上皮化を示す。即ち実際に手術を施行し、抜糸され滲出液がなく、皮膚欠損もなくなった状態とする。
(イ) 肉芽形成:植皮術または縫縮術、断端形成術、皮弁術で創が閉鎖可能と評価した時期を評価する。
3) その他の評価指標
血行再建術施行後、定期的(1、3、6 か月)に実施し、下記指標を評価する。
(ア) 創傷の面積縮小率
(イ) 計画された切断レベルでの最終治癒率

(6) 患者報告アウトカム尺度(PROMs: patient reported outcome measures)を用いた評価
Pain scale などの患者報告アウトカム尺度を用いた評価も検討されることが望ましい。利用可能な指標の例としては以下が挙げられる。
1) Support Team Assessment Schedule 日本語版(STAS-J)
2) Numerical Rating Scale(NRS)
3) Verbal Rating Scale(VRS)
4) Faces Pain Scale(FPS)
5) Visual Analogue Scale(VAS)

(7) QOL の評価
治療前後における歩行能力(自力歩行、杖歩行、自力車椅子、介助車椅子、寝たきり)、VascuQOL などの QOL 評価を行うことが望ましい。

7.安全性の評価について
安全性評価は有害事象評価によって行われる。なお、周術期有害事象は、手技に関連するものと治療用医療機器に起因するものに大別される。
(1) 設定された評価期間における有害事象
1) 死亡率
2) 下肢切断率(大切断)
3) 主要心血管事故(死亡、心筋梗塞、脳卒中、不安定狭心症、心不全)
4) MALE
5) 臨床所見に基づく再血管内治療

(2) 手技に関連するもの(術後 30 日間における評価項目の発生)
1) 全死亡
2) MALE
3) 臨床所見に基づく再血管内治療
4) 周術期心血管事故(死亡、心筋梗塞、脳卒中、不安定狭心症、心不全)
5) 血管合併症(穿孔、末梢塞栓、血流の悪化を伴う解離、急性血管閉塞など)
6) 穿刺部合併症(輸血を要する血腫、仮性動脈瘤、動静脈瘻など)

(3) 治療用医療機器に起因するもの
1) 治療用医療機器固有の合併症
2) その他

8.終わりに
LEAD による CLTI に対する血行再建治療のための医療機器の臨床評価において考慮されるべき項目や評価の考え方を示した。本評価指標の作成においては人種差を含めた本邦の特徴が加味されている一方、踵に創傷を有する例、足関節以遠に標的血管がない no-option 例、複雑な創傷管理を要する症例などを標的とした医療機器に対する評価は包含されていない。こうした症例に対する医療機器の有効性評価においては異なった視点が必要であろう。しかし、この場合にも患者評価、病変評価、創傷評価の基本は変わるものではなく、本評価指標を参考に対象となる医療機器の特徴を考慮した評価系を新たに構築することが必要であろう。

GL:付属資料

参考文献
1. 日本循環器学会 / 日本血管外科学会合同ガイドライン 2022 年改訂版末梢動脈疾患ガイドライン JCS/JSVS 2022 Guideline on the Management of Peripheral Arterial Disease.
2. Conte MS, GVG Writing Group. Global vascular guidelines on the management of chronic limb-threatening ischemia. J Vasc Surg 2019; 69 Suppl: 3S-125S.
3. Conte MS et al. Global Vascular Guidelines on the management of chronic limb-thretening ischemia. Eur J Vasc Endovasc Surg 2019; 58: S1-S109.
4. 重症化予防のための足病診療ガイドライン、日本フットケア・足病医学会/編集、南江堂、東京、
2022 年 9 月

引用関連規格

国内関連GL

海外関連GL

WG開始年月

2024-03-01

WG終了年月

2025-03-01

WGメンバー

令和5年度
座長 中村 正人   東邦大学 医学部 循環器疾患低侵襲治療学講座 教授(日本循環器学会推薦)

委員(五十音順)
   東 信良    旭川医科大学 外科学講座 血管・呼吸・腫瘍病態外科学分野教授(日本血管外科学会推薦)
   飯田 修    大阪警察病院 循環器内科 部長(日本心血管インターベンション治療学会推薦)
   大浦 紀彦   杏林大学 医学部 形成外科・美容外科 教授(日本形成外科学会推薦)
   小林 修三   医療法人徳洲会 湘南鎌倉総合病院 院長・湘南先端医学研究所センター長(日本透析医学会推薦)
   寺師 浩人   神戸大学大学院 医学研究科 形成外科学 教授(日本フットケア・足病医学会推薦)
   横井 宏佳   福岡山王病院 病院長・循環器センター長(日本心血管インターベンション治療学会推薦)

厚生労働省
   中山 智紀   医薬局 医療機器審査管理課 課長
   井上 大輔   医薬局 医療機器審査管理課 課長補佐(再生医療等製品審査管理室長)
   安藤 麻里子  医薬局 医療機器審査管理課 先進医療機器審査調整官
   高橋 彩来   医薬局 医療機器審査管理課 革新的製品審査調整官
   西川 玄希   医薬・生活衛生局 医療機器審査管理課 医療機器審査調整官

独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)
   矢花 直幸   医療機器審査第二部 部長
   白土 治己   医療機器審査第二部 審査役
   森川 華子   医療機器審査第二部 主任審査員
   野呂 英理香  医療機器審査第二部 審査専門員
   小川 将仁   医療機器調査・基準部 部長
   郭  宜    医療機器調査・基準部 医療機器基準課長
   岡本 はる奈  医療機器調査・基準部 医療機器基準課 基準専門員

国立医薬品食品衛生研究所(事務局)
   山本 栄一   医療機器部 部長
   中岡 竜介   医療機器部 室長
   植松 美幸   医療機器部 主任研究官
   迫田 秀行   医療機器部 主任研究官

令和6年度

座長 中村 正人   東邦大学 医学部 循環器疾患低侵襲治療学講座 教授(日本循環器学会推薦)

委員(五十音順)
   東 信良    旭川医科大学 外科学講座 血管・呼吸・腫瘍病態外科学分野 教授(日本血管外科学会推薦)
   飯田 修    大阪警察病院 循環器内科 部長(日本心血管インターベンション治療学会推薦)
   大浦 紀彦   杏林大学 医学部 形成外科・美容外科 教授(日本形成外科学会推薦)
   小林 修三   医療法人徳洲会 湘南鎌倉総合病院 院長・湘南先端医学研究所センター長(日本透析医学会推薦)
   寺師 浩人   神戸大学大学院 医学研究科 形成外科学 教授(日本フットケア・足病医学会推薦)
   横井 宏佳   福岡山王病院 病院長・循環器センター長(日本心血管インターベンション治療学会推薦)

厚生労働省
   高江 慎一   医薬局 医療機器審査管理課 課長
   水谷 玲子   医薬局 医療機器審査管理課 プログラム医療機器審査管理室 室長
   牧野 友彦   医薬局 医療機器審査管理課 参与
   高橋 彩来   医薬局 医療機器審査管理課 プログラム医療機器審査調整官
   沼館 彗剛   医薬局 医療機器審査管理課 医療機器審査調整官

独立行政法人 医療品医療機器総合機構(PMDA)
   白土 治己   医療機器審査第二部 部長
   森川 華子   医療機器審査第二部 主任審査員
   野呂 英理香  医療機器審査第二部 審査専門員
   石井 健介   医療機器調査・基準部 部長
   郭  宜    医療機器調査・基準部 医療機器基準課 課長

国立医薬品食品衛生研究所(事務局)
   山本 栄一   医療機器部 部長
   中岡 竜介   医療機器部 室長
   植松 美幸   医療機器部 主任研究官
   迫田 秀行   医療機器部 主任研究官

報告書(PDF)

2025-HN-DE-053-R5-報告書
2025-HN-DE-053-R6-報告書

報告書要旨(最新年)

承認済み製品(日本)

承認済み製品(海外)

製品開発状況

Horizon Scanning Report