疾患治療用の家庭用プログラム医療機器

ガイドラインID 2025-HN-DE-054
発出年月日 2025-08-08
発出番号 令和7年8月8日 医薬機審発0808第1号
WG名 家庭用プログラム医療機器 審査 WG
制度名 次世代医療機器・再生医療等製品評価指標(審査ガイドライン)
製品区分 医療機器
分野

医療機器

GL日本語版ファイル

2025-HN-DE-054-疾患治療用の家庭用プログラム医療機器

英文タイトル
GL英語版ファイル

GL:イントロ・スコープ

1. はじめに
プログラム医療機器の更なる実用化促進と国際展開の推進に向けて「プログラム医療機器実用
化促進パッケージ戦略2(DASH for SaMD:DX (Digital Transformation) Action Strategies in
Healthcare for SaMD (Software as a Medical Device) 2)」1)が公表されている。この中では、萌芽的シーズの早期把握と審査の考え方を公表することを目標に掲げ、製造販売承認審査の考え方を公表する具体例として、医療現場向けプログラム医療機器からの転用を含む、家庭(一般)向けプログラム医療機器が挙げられている。
これを踏まえ、次世代医療機器・再生医療等製品評価指標作成事業では、評価指標作成テーマとして疾病治療用の家庭用プログラム医療機器を採択し、ワーキンググループを立ち上げ、評価指標の検討を実施することとした 2)。本ワーキンググループでは、我が国の医療環境の特徴を考慮した上で、疾病治療用の家庭用プログラム医療機器に求められる有効性、安全性等に関する評価における留意点を検討し、評価指標を取りまとめた。本評価指標により家庭用プログラム医療機器の開発が活発になることで、国民の選択の幅の拡大や国民健康の向上等が期待される。
なお、本評価指標は、承認申請資料の収集やその審査の迅速化等の観点から、製品の評価において着目すべき事項(評価項目)を現時点で考えられる範囲にて示したものであり、製品の特性に応じて、評価指標に示すもの以外の評価が必要である場合や評価指標に示す評価項目のうち適用しなくてもよい項目があり得ることに留意すること。

2. 本評価指標の対象
本評価指標は、類別が疾病治療用プログラムに該当するプログラム医療機器のうち、医療機関への受診や医師の指示・処方がなくても、使用者の選択により使用が可能な家庭用プログラム医療機器を対象とする。医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 3)における規制対象となるプログラム医療機器は、医療機器としての目的性を有しており、かつ、意図したとおりに機能しない場合に使用者の生命及び健康に影響を与えるおそれがあるプログラム
(一般医療機器(クラスⅠ)に相当するものを除く)であることに留意すること。

3. 本評価指標の位置づけ
デジタル技術の進歩は著しく、家庭用プログラム医療機器の開発を取巻く状況も日々変化しており、本評価指標も、現時点で重要と考えられる事項を示したものである。今後の技術革新や医療現場での知見の集積等を踏まえて改訂されていくべきものであり、製造販売承認申請の内容に対して、拘束力を持つものではない。本評価指標が対象とする製品の評価にあたっては、個別の製品の特性を十分に理解した上で、科学的な合理性に基づき、妥当かつ柔軟に対応する必要がある。なお、家庭用プログラム医療機器の開発や製造販売承認申請にあたっては、本評価指標の他、国内外のその他の関連ガイドライン等 4)も参考にすること。

GL:本体

4. 用語の定義
本評価指標における用語の定義は、以下のとおりとする。
(1) 医療機器プログラム、SaMD(Software as a Medical Device)医療機器のうちプログラムであるものをいう。

(2) プログラム医療機器
医療機器プログラムに加えて、プログラムを記録した記録媒体も含むもの。

(3) 医療現場向けプログラム医療機器
医師の指示・処方により患者が使用するプロブラム医療機器。医療現場で使用されるプログラム医療機器に加えて、もっぱら家庭で使用するプログラム医療機器も含む。

(4) 家庭用プログラム医療機器
医療機関への受診や医師の指示・処方がなくても、使用者の選択により使用が可能なプログラム医療機器。医師が指示・処方し、もっぱら在宅で使用する医療現場向けプログラム医療機器は含まない。

(5) スイッチ家庭用プログラム医療機器
製造販売承認実績がある医療現場向けプログラム医療機器の全て又はその一部の機能を転用又は改良することにより開発された家庭用プログラム医療機器。

(6) ダイレクト家庭用プログラム医療機器
医療現場向けプログラム医療機器としての製造販売承認実績のない家庭用プログラム医療機器。

(7) 使用者
疾病や症状の有無にかかわらず、家庭用プログラム医療機器を用いて治療を受けようとする者、並びに家族や介護者といった家庭用プログラム医療機器とやり取りをする者。

(8) 医療者
医師、歯科医師、薬剤師、看護師、臨床工学技士、理学療法士、作業療法士、保健師、公認心理師、臨床心理士、認定心理士等。

(9) シャムアプリ
一般に臨床試験等において心理的影響を検証する目的に用いられる、医薬品の開発において使用されるプラセボ薬に相当するソフトウェア。

5. 疾病治療用の家庭用プログラム医療機器の特徴と要件
(1) 家庭用プログラム医療機器の特徴
① 想定される使用者
家庭用プログラム医療機器は、以下に挙げるような様々な状況の者に使用されることが想定される。
⮚ 受診等を積極的に行うべきと想定されず、無症状又は症状が軽度である者
⮚ 過去に特定の疾病への罹患の診断や検診結果等における指摘がない者
⮚ 健康診断の結果等において、要注意等が指摘されている者
⮚ 疾病への罹患の有無が判断されていない者
⮚ 過去に疾病への罹患が診断されている者
⮚ 過去に疾病の治療が完了している者
⮚ 過去に治療を実施したが、治療が完了していない者又は治療が中断されている者

② 家庭用プログラム医療機器の使用により想定されるリスク
医療現場向けプログラム医療機器と異なり、疾病や症状への対処に必要な医学的知識を持たない使用者が、医療機関への受診や医師の指示がなくても、自己責任で使用が可能であり、医療者はその使用状況を把握できない。これらのことから、診断や治療の遅れ、並びに医療上の観点から不適切な治療が行われ、症状が悪化したり、治療効果が得られないまま使用期間が漫然と長期化したりするリスクがある。

(2) 家庭用プログラム医療機器の特徴を踏まえた要件
家庭用プログラム医療機器の特徴を踏まえ、家庭用プログラム医療機器としては、以下の要件を満たす必要がある。ただし、症状や状態によっては、家庭用プログラム医療機器の使用目的又は効果、リスク、適正な使用法に関する知見が十分に蓄積されていない場合や使用者のリテラシーが不十分である場合があるため、特に注意が必要である。
① 使用者が症状から使用の可否を判断することが可能であること。あるいは使用者のみでは使用可否の自己判断が難しい症状であっても、医師による診断、健康診断の結果等を受け、使用者の判断に基づき購入し適正に使用できること。
② 医療者による指導監督がなくても、使用により重篤な状態になるおそれのないこと。
③ 十分な医学的知識を持たない使用者による不適切な使用等があった場合でも、重大なリスクをもたらすことがないこと。
④ 人体に対する作用が著しくないものであって、長期に使用する場合においても使用者の状態やその変化に応じた、医療者による調整等を必要としないこと。
⑤ 使用者の判断が間違っていた場合に重症化する等、医療機関への受診が遅れることによって生じるリスクについて、講じる対策によりリスクが許容可能であること。
⑥ 習慣性、依存性及び耽溺性(夢中になりすぎる特性)のリスクが許容可能であること。

6. 疾病治療用の家庭用プログラム医療機器の製造販売承認申請時に明示すべき事項
(1) 設計開発の経緯、品目の仕様、開発機器の原理(アルゴリズムを含む)、対象となる症状や状態、使用目的又は効果、類似品の国内外での使用状況、使用場所、使用方法等を明らかにすること。具体例を以下に列挙する。
① 使用に適する使用者、想定される使用者の範囲とその要件 対象とする症状や状態並びにその重篤度等 使用者の要件
② 使用に適さない使用者 症状や状態とその重篤度
使用者が有している基礎疾患
③ 使用目的又は効果
④ 開発コンセプト 当該製品が介入し解決する課題及びその達成手段 介入内容及び介入頻度
上述の項目も考慮した上で、症状や状態に対する現状の対応手段と当該製品との差分
⑤ 使用方法 プログラム医療機器の構成
プログラム医療機器の提供方法 使用者に提示される情報
操作マニュアル等の文書化とその内容(故障時の対応を含む)
⑥ プラットフォームとなるOS、製造販売業者により開発されたソフトウェア部品以外の使用するアプリケーションソフトウェア及びソフトウェア部品
⑦ 共存するその他のソフトウェアとの干渉の有無
⑧ モバイル機器等の併用する機器の要件、OS等を含む使用環境等
⑨ 想定されるリスク
⑩ 併用禁忌薬や併用禁忌プログラム医療機器等
⑪ 医療現場向けプログラム医療機器を家庭用プログラム医療機器に転用する場合、以下の点に
ついても明らかにすること。
国内外での使用状況、使用成績評価結果、不具合・有害事象の発生状況等
医療現場向けプログラム医療機器における医師向けアプリ等の一部の構成品を、家庭用プログラム医療機器に転用する際に構成品に含めない場合、構成品を変更することに伴う有効性への影響

(2) 製造販売承認申請する家庭用プログラム医療機器については、以下の事項を参考として、有効性及び安全性に影響する項目を明示する必要がある。それぞれの項目について、具体的なデータ又はその他の科学的根拠等をもって明らかにすること。
① 提示される指示等の根拠 これまでに有効性について検証されたことのない新規手法が含まれる場合その手法を用いることの適切性について説明すること。文献報告がある場合にはそれも提示すること。
学会等が発行するガイドラインに基づく場合
学会等が発行するガイドラインに基づく場合であっても、サロゲートエンドポイントを使用して評価する際は、その適切性を示すこと。確立していないパラメータを使用する場合は、その適切性の科学的根拠を明示すること。
検証的な臨床試験で有効性が確認されている場合
学会等が発行するガイドラインには記載されていないものの、既に認知されている方法がある場合や、有効性についての検証的な臨床試験が行われている場合は、その文献情報もしくは臨床試験成績に関する資料を提示すること。
② 提示される指示の仕様 ユーザインターフェース 出力するメッセージの表現
提示する情報の選択や表示のアルゴリズム
③ 開発時に当該製品の機能設計・性能評価・検証等に用いられたデータ
開発時に当該製品の機能設計・性能評価・検証等に用いられたデータについて説明すること。製品の目的に合致しない、偏った使用者、網羅性に欠ける方法で収集されたデータ等を用いた場合は、汎化性に欠けるプログラムとなる可能性があることに留意すること。

7. 非臨床試験に関する事項
機能、安全性等について、以下の事項を参考として評価すること。
(1) 機能に関する評価
意図したとおりにプログラムが動作することを評価すること。

(2) 安全性等に関する評価
開発機器の特性を踏まえて、適切に評価すること。
① リスクマネジメント
リスクマネジメントの実施にあたっては、ISO 14971又はJIS T 149715)を参考に実施すること。製造販売承認申請にあたっては、リスクマネジメントの概要を、平成27年1月20日付け薬食機参発 0120 第 9 号「医療機器の製造販売承認申請書添付資料の作成に際し留意すべき事項について」の別添1の66)を参考にして説明すること。
② ソフトウェアライフサイクルプロセス、ユーザビリティエンジニアリング
ソフトウェアライフサイクルプロセス 7),8)、ユーザビリティエンジニアリングプロセス 9),10) について評価すること。その際には、平成29年5月17日付け薬生機審発0517第1号「医療機器の基本要件基準第 12 条第 2 項の適用について」11)、令和 4 年 9 月 30 日付け薬生機審発 0930第1号・薬生監麻発0930第1号「医療機器のユーザビリティエンジニアリングに係る要求事項に関する日本産業規格の改正の取扱いについて」12)等を参考にすること。
③ サイバーセキュリティ 13),14)
開発機器の特性に応じて、想定されるサイバーリスクを明確化し、最新のセキュリティ基準や規格に応じた適切な対策が講じられていること。使用者のデータを保管するためにサーバーやクラウド等を利用する場合は、最新の技術に照らし合わせ、情報漏洩対策や、データ欠落の回避、同一性の確保といった適切なサイバーセキュリティ対策がなされていること。また、情報取扱についての社内ルールを規定し徹底すること。また、市販後の脅威の監視と対応体制が明記されていることが望ましい。その際には、令和5年5月23日付け薬生機審発0523第1号
「医療機器の基本要件基準第12条第3項の適合性の確認について」15)を参照すること。
④ 個人情報保護
臨床情報を取得する機器にあっては、個人情報の保護に関する法律 16)や関連するガイドライン 17)等を踏まえて、取得する情報の範囲や目的等に応じた適切な対応を実施すること。臨床情報を保存する機能を有する機器にあっては、情報の保管や廃棄の際の取り扱いについても考慮されていることが望ましい。

8. 臨床評価に関する留意事項
(1) 臨床試験(治験)の必要性の考え方
家庭用プログラム医療機器については、その有効性及び安全性を非臨床試験のみで評価することが難しいことから、想定される使用者における有効性及び安全性が確保されていることを検証的治験により確認することが必要である。

(2) 臨床試験(治験)のデザイン
スイッチ家庭用プログラム医療機器及びダイレクト家庭用プログラム医療機器に共通する臨床試験のデザインに関する留意点を以下に示す。
臨床試験の計画にあたって、まずは二重盲検ランダム化比較試験の実施の必要性を検討し、実施困難と判断される場合には、家庭用プログラム医療機器の有効性及び安全性を評価するために必要な試験計画について、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(以下「PMDA」という。)の相談を活用すること。また、優越性又は非劣性の検証を選択した理由の適切性について十分に確認すること。なお、外部対照を用いる際の考え方は、PMDAから発出されている事務連絡「「外部対照試験に関する留意事項」について(Early Consideration)」18)も参考にすること。
対照群の設定にあたっては、既存の家庭用プログラム医療機器やシャムアプリ等の要否を十分に検討した上で、臨床的な有効性が確認可能な臨床試験を計画すること。
効果の持続性について評価する必要がある場合は適切な観察期間と評価項目を設けること。
評価項目の設定にあたっては、有効性の指標として臨床的に意義があり、かつ可能な限り広く認知された標準的な客観的指標を用いること。対象とする症状や状態等によっては、主観的な評価指標を用いざるを得ない場合があるが、その際は評価すべき内容に応じて可能な限り信頼性や妥当性が検証されている、又は開発分野において標準的に広く受け入れられている適切な指標を選択すること。主観的な評価指標を用いて評価する際は、臨床試験全体のデータの質を向上させるために適切なトレーニングや回答方法の説明等を実施し、意図したデータが収集されるよう工夫するとともに、得られた成績の正確性、再現性、妥当性等について注意深く検討する必要がある。可能であれば、副次評価項目において客観的な指標を用いた評価を実施することが望ましい。評価項目に変化量等を設定する場合には、臨床的に意義のある変化量等について十分に検討すること。
家庭用プログラム医療機器は、医薬品のプラセボ効果等と同様に使用者に心理的な影響を与えることによって効果をもたらす可能性が考えられる。ホーソン効果やプラセボ効果と言われるような心理的な影響のみの効果を評価する目的で、対照群においてシャムアプリの使用を考慮する必要がある。検証的治験においてシャムアプリを使用する場合には、パイロットスタディ等でシャムアプリの盲検性や試験全体での盲検性の確保が適切に評価されていることが理想である。その結果等から、検証的治験における二重盲検ランダム化比較試験の実施可能性やシャムアプリの効果量の影響等についても考慮すること。盲検性を保ちつつ効果のないシャムアプリを作成することには困難を伴うことが考えられ、二重盲検ランダム化比較試験の実施自体が難しいことも想定される。この場合は可能な限り、ホーソン効果やプラセボ効果といった使用者の心理的な影響を受け難い評価方法及び評価項目を選択すること。
これらの事項を含めた具体的な試験プロトコルについては、PMDAの相談を活用して検討することを推奨する。

(3) スイッチ家庭用プログラム医療機器に関わる留意事項
スイッチ家庭用プログラム医療機器の製造販売承認申請時に、医療現場向けプログラム医療機器としての製造販売承認を得るために実施した臨床試験成績や使用成績評価の結果に対して、当該家庭用プログラム医療機器の使用者と想定される集団における有効性及び安全性を追加解析した結果を提出することも可能である。その場合、追加解析の結果が医療現場向けプログラム医療機器としての有効性及び安全性と同様の傾向を示していることを確認する必要がある。例えば、医療現場向けプログラム医療機器の家庭用プログラム医療機器への転用を計画している場合、家庭用プログラム医療機器の想定使用者が含まれるように、医療現場向けプログラム医療機器に関する検証的治験をあらかじめ設計しておくことで、医療現場向けプログラム医療機器の製造販売承認時の臨床試験成績をスイッチ家庭用プログラム医療機器の承認申請に活用できる場合がある。一方で、「5.家庭用プログラム医療機器の特徴と要件」に示されている内容から、上述の検証的治験の設定が困難であることも想定されるため、検証的治験の目的を考慮し、対象者を慎重に検討する必要がある。なお、医療現場向けプログラム医療機器としての製造販売承認以降に臨床試験等が実施されている場合には、必要に応じて参考資料等として提出すること。
医療現場向けプログラム医療機器を家庭用プログラム医療機器に転用する際、使用者に理解されやすくするため等の理由により、提示される指示等の表現やキャラクター、コンテンツ等を変更する可能性がある。変更の程度によっては、医療現場向けプログラム医療機器の製造販売承認時に使用した臨床試験成績の追加解析では、製品としての有効性及び安全性を評価できなくなる可能性がある。変更後の製品を用いた臨床試験の必要性については、変更による有効性及び安全性への影響を整理した上で、PMDAの相談等を活用すること。

(4) 安全性に関わる留意事項
臨床上許容できないハザードが存在し得る製品に関しては、アウトカムとリスクの確実な評価が必要となる。例えば、高齢者に対する過度の運動、食事制限がある使用者に対する不適切な食事指導等、使用者に対する不適切な介入によるリスクについて検討し、製品の仕様や注意喚起の方法等も踏まえたリスクアセスメントを実施することが重要である。

(5) その他の留意事項
① 人種や社会的背景の影響
海外における使用実績や臨床試験成績がある製品であっても、人種差のみならず、生活環境、医療環境等の社会的背景が有効性に影響し得る場合は、必要に応じて国内において臨床試験を実
施すること。また、世代の違いや地域性の影響についても評価することが望ましい。

② 開発時期や臨床試験が実施された年代の影響
評価された時代背景が有効性・安全性へ与える影響について評価すること。例えば、10年前に開発された製品を製造販売承認申請する場合や、プログラム医療機器が提示する指示等の根拠となった学会等が発行するガイドライン等が改訂された場合は、プログラム医療機器の機能の見直しが必要となり、機能の変更が性能、有効性及び安全性に及ぼす影響の有無について再評価する必要がある。

③ 使用継続性への影響
疾病治療用プログラム医療機器は、継続的に使用することで効果を発揮するものもあると考えられることから、使用継続率に影響し得る要素も、当該機器の臨床試験成績に影響する可能性があることに留意すること。例えば、以下のような項目が考えられる。
フォントや背景色等、グラフィカルなユーザインターフェース 出力するメッセージの表現
方言やキャラクター等、嗜好に依存する事項

④ ユーザインターフェースのカスタマイゼ-ション
使用者がカスタマイズできる仕様を含む場合はその範囲を明らかにするとともに、その影響について評価すること。

⑤ 第三者との比較や交信の取扱い
プログラム医療機器上で使用者が他の使用者と交信したり、達成状況等を比較したりする機能を含む場合は、その有効性だけでなく、安全性や適切性についても検討すること。ピアサポートは、属する集団によって有効性・安全性に差が生じ得ることにも留意すること。

9. 製造販売承認申請書及び注意事項等情報提供に関する事項
(1) 販売名
医療現場向けプログラム医療機器を家庭用プログラム医療機器に転用する場合、医療現場向けプログラム医療機器との混同や誤用による危険を避ける必要があることから、販売名は医療現場向けプログラム医療機器と明確に区別できる必要がある。また、家庭用プログラム医療機器であることに鑑みて、使用者に対して本来の位置づけや有効性の範囲を超える印象を与える販売名とならないよう十分に検討すること。

(2) 使用目的又は効果
疾病治療用の医療現場向けプログラム医療機器を、症状の改善を目的とした家庭用プログラム医療機器に転用する場合、医療現場向けプログラム医療機器の使用目的又は効果の範囲で、家庭
用プログラム医療機器として使用者が理解しやすい説明に置き換える必要がある。

(3) 使用方法
使用者が誤解なく理解でき、間違うことなく使用できる表現であること。
製品の使用期間が明示されていること。
製品の使用期間を超えての使用を推奨するものでないこと。

(4) 注意事項等情報提供(使用上の注意)
想定される不具合・有害事象等に関する注意喚起及びその対処方法について、使用者に理解しやすい表現で記載すること。
家庭用プログラム医療機器を使用しても症状等の改善が認められない場合の対処方法等、医療機関への受診が遅れることのないよう、必要な注意喚起を記載すること。
別疾病の治療等のために受診する場合は、医師に家庭用プログラム医療機器を使用している旨を伝えるよう注意喚起すること。
使用者が使用上の注意等の詳細について情報を入手するための情報提供サイト等を明記すること。
製品に関する問い合わせ窓口を明記すること。

10. 市販後に留意すべき事項
当該製品が対象とする症状に関連する疾患や、別疾患を有する使用者が、医療機関への受診や治療と並行して、家庭用プログラム医療機器を使用した場合、当該家庭用プログラム医療機器が提示する内容が、その疾患に対して医学・薬学・看護学・栄養学等の観点から不適切となる可能性がある。また、家庭用プログラム医療機器を使用することで、適切な受診機会を逸するということもあり得る。以上を踏まえて、家庭用プログラム医療機器が提示する内容等について、適切な問い合わせ対応が可能となる窓口の設置が必要となる。
本評価指標は、製造販売承認審査に係る留意事項を取りまとめるものであるが、製造販売承認後に予見されるプログラム医療機器特有の課題として、家庭用プログラム医療機器が提示する指示等の根拠となったガイドライン等の更新が挙げられる。ガイドライン等の更新に伴い新たな臨床評価を必要とする変更を行う場合は、8(1)項「臨床試験(治験)の必要性の考え方」及び 8(2)項「臨床試験(治験)のデザイン」に準じて臨床試験を実施すること。プログラム医療機器の変更に伴う製造販売承認申請に必要なデータパッケージは、変更目的や変更内容により、初回の製造販売承認申請時と異なることもある。

11. その他
本評価指標に関連する製造販売承認審査等における留意点を以下に示す。
開発予定又は開発中の製品の医療機器該当性については、ガイドライン19)を参考にした上で開発者の見解を整理し、PMDA に設置された SaMD 一元的相談窓口(医療機器プログラム総合相談)を通じて、厚生労働省医薬局監視指導・麻薬対策課に確認すること。
ダイレクト家庭用プログラム医療機器は、本邦における使用実績は検証的治験等に限定されていることから、使用成績評価の対象となる可能性があることに留意すること。
家庭用プログラム医療機器が不適切な介入を行う可能性に留意すること。以下に例示するような疾病や事例等において、不適切な介入の結果として、生命に関わる重篤な事態が生じうる。また、家庭用プログラム医療機器による介入による効果が、重大な生命リスクに直結する疾患が存在するため、対象とする症状や状態だけでなく関連する合併症等を含めて配慮する必要がある。
⮚ メンタルヘルスの不調への不適切介入事例
気分の落ち込みや抑うつ状態の緩和を目的とした製品の場合、不適切な介入により、自殺念慮の深化、自殺企図といった生命に関わる事態を招く可能性がある。
⮚ 慢性疾患に対する生活指導の不適切介入事例(特に多併存疾患や高齢者の場合に多い)
糖尿病患者への過度な介入により、低血糖発作を惹起し、生命に関わる事態を招く可能性がある。
⮚ 重篤な疾病の診断遅延に関わる事例
悪性腫瘍に罹患しており、病的な体重減少が生じているにも関わらず、家庭用プログラム医療機器による体重減少の効果が得られていると考えて使用し続けた結果、悪性腫瘍の検査及び診断が遅れ、治療の機会を逃す可能性がある。

GL:付属資料

参考資料
1) 令和5年9月7日付け厚生労働省医薬局医療機器審査管理課及び経済産業省商務・サービスグループヘルスケア産業化医療・福祉機器産業室事務連絡「「プログラム医療機器実用化パッケージ戦略2」の公表について」 (https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/001142990.pdf)
2) 令和6年度 次世代医療機器・再生医療等製品評価指標作成事業 家庭用プログラム医療機器審査ワーキンググループ報告書 令和7年3月
3) 昭和 35 年法律第 145 号「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」
4) 令和4年6月9日付け薬生機審発0609第1号別紙2「行動変容を伴う医療機器プログラムに関する評価指標」
5) ISO 14971:2019 Medical devices ― Application of risk management to medical devices / JIS T 14971:2020 医療機器-リスクマネジメントの医療機器への適用
6) IEC 62304:2006/Amd 1:2015 Medical device software ― Software life cycle processes
7) JIS T 2304:2017 医療機器ソフトウェア―ソフトウェアライフサイクルプロセス
8) IEC 62366-1:2015+AMD1:2020 Medical devices ― Part 1: Application of usability engineering to medical devices
9) JIS T 62366-1:2022 医療機器 ― 第1部:ユーザビリティエンジニアリングの医療機器への適用
10) 平成27年1月20日付け薬食機参発0120第9号別添1の6「医療機器の製造販売承認申請書添付資料の作成に際し留意すべき事項について」
11) 平成29年5月17日付け薬生機審発0517第1号「医療機器の基本要件基準第12条第2項の適用について」
12) 令和4年9月30日付け薬生機審発0930第1号・薬生監麻発0930第1号「医療機器のユーザビリティエンジニアリングに係る要求事項に関する日本産業規格の改正の取扱いについて」
13) 令和3年12月24日付け薬生機審発1224第1号・薬生安発1224第1号厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課長・医薬安全対策課長通知「医療機器のサイバーセキュリティの確保及び徹底に係る手引書について」
14) 令和2年5月13日付け薬生機審発0513第1号・薬生安発0513第1号厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課長・医薬安全対策課長通知「国際医療機器規制当局フォーラム (IMDRF)による医療機器サイバーセキュリティの原則及び実践に関するガイダンスの公表について(周知依頼)」
15) 令和5年5月23日付け薬生機審発0523第1号「医療機器の基本要件基準第12条第3項の適合性の確認について」
16) 平成15年法律第57号「個人情報の保護に関する法律」
17) 「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」、平成28年11月(令和6年12月一部改正)、個人情報保護委員会
18) 令和 7 年 3 月 24 日付け事務連絡「「外部対照試験に関する留意事項」について(Early Consideration)」
19) 令和3年3月31日付け薬生機審発0331第1号・薬生監麻発0331第15号厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課長・監視指導・麻薬対策課長通知「プログラムの医療機器該当性に関するガイドラインについて」

引用関連規格

国内関連GL

海外関連GL

WG開始年月

WG終了年月

2025-03-01

WGメンバー

座 長:佐久間一郎   東京大学大学院工学系研究科附属医療福祉工学開発評価研究センター
            東京大学大学院工学系研究科バイオエンジニアリング専攻 教授

委 員(五十音順):
   菊地俊暁    慶應義塾大学医学部 精神・神経科学教室 准教授
   鈴木孝司    公益財団法人医療機器センター 認証事業部 審査役
   冨岡 穣    国立研究開発法人国立がん研究センター東病院 医工連携支援室 室長
   宮川政昭    公益社団法人日本医師会 常任理事
   吉田 伸    日本プライマリ・ケア連合学会 理事
   渡邊大記    公益社団法人日本薬剤師会 副会長

厚生労働省:
   高江慎一    医薬局医療機器審査管理課長  
   水谷玲子    医療機器審査管理課 プログラム医療機器審査管理室長
   牧野友彦    医療機器審査管理課 参与
   平野孝典    医療機器審査管理課 革新的製品審査調整官
   高橋彩来    医療機器審査管理課 プログラム医療機器審査調整官

独立行政法人 医薬品医療機器総合機構:
   石井健介    執行役員(機器審査等部門担当)
           医療機器安全対策・基準部長
   岡崎 譲    プログラム医療機器審査部長
   小池和央    プログラム医療機器審査部 審査役補佐
   郭 宜     医療機器安全対策・基準部 医療機器基準課長
   森下裕貴    医療機器安全対策・基準部 医療機器基準課 基準専門員

国立医薬品食品衛生研究所(審査WG事務局):
   山本栄一    医療機器部 部長
   岡本吉弘    医療機器部 性能評価室長
   迫田秀行    医療機器部 性能評価室 主任研究官
   坪子侑佑    医療機器部 性能評価室 主任研究官

経済産業省 商務情報政策局 商務・サービスグループ(オブザーバー):
   高山真澄     ヘルスケア産業課 医療・福祉機器産業室 室長補佐
   山根史帆里   ヘルスケア産業課 医療・福祉機器産業室 室長補佐
   十河 友    ヘルスケア産業課 医療・福祉機器産業室 室長補佐
   泉水優祐     ヘルスケア産業課 医療・福祉機器産業室 係長
   重本達哉     ヘルスケア産業課 医療・福祉機器産業室

日本医療研究開発機構(オブザーバー):
   佐野祐子    医療機器・ヘルスケア事業部 医療機器研究開発課 主幹
   熊谷康顕    医療機器・ヘルスケア事業部 医療機器研究開発課 主幹
   松田岳彦    創薬事業部 規制科学推進課 主査
   堀切陽介    創薬事業部 規制科学推進課 主査

産業技術総合研究所(オブザーバー)
   鎮西清行     健康医工学研究部門 首席研究員

日本医師会(オブザーバー)
   山本 学    医療技術課 課長
   木内咲来     医療技術課 係員

日本薬剤師会(オブザーバー)
   岡田隆一     情報管理部 職員
   吉田明生     医薬情報管理部 職員

報告書(PDF)

2025-HN-DE-054-R6-報告書

報告書要旨(最新年)

承認済み製品(日本)

承認済み製品(海外)

製品開発状況

Horizon Scanning Report