活動機能回復装置

ガイドラインID 2013-HN-DE-019
発出年月日 2013-05-29
発出番号 平成25年5月29日付薬食機発0529第1号
WG名 活動機能回復装置審査WG
制度名 次世代医療機器・再生医療等製品評価指標(審査ガイドライン)
製品区分 医療機器
分野

神経機能修飾装置/活動機能回復装置

GL日本語版ファイル

2013-HN-DE-019 活動機能回復装置

英文タイトル
GL英語版ファイル

GL:イントロ・スコープ

1. はじめに
ロボット機器をリハビリテーション分野における活動機能回復に用いる試みは世界中で行われている。我が国の得意分野であるこうしたロボット技術が実用化され、広く普及して人々に恩恵を与えるためには、新規技術面の研究成果にとどまらず、装置としての安全性と臨床医学的有効性も併せて評価されなければならない。
リハビリテーション分野における活動機能回復をめざした装置導入の狙いは、装置の作業理論に基づきながら、従来、セラピストの訓練された感覚に依存していた活動機能に関する知識を定量的な情報とすること、また、その情報に基づいて装置の定量的な出力を実現することにより、リハビリテーションの再現性・正確性を高め効率化を図るとともに、セラピストら医療従事者への負荷を低減することにある。
本評価指標は、活動機能回復装置について安全性と有効性を科学的根拠に基づいて適正かつ迅速に評価するために留意すべき事項を示すものである。

2. 本評価指標の対象
本評価指標は、疾患により低下した活動機能を回復させるハードウエアとソフトウエアを含んだ活動機能回復装置に適用されるものである。先行している神経機能修飾装置に関する評価指標(平成22年12月15日付け薬食機発1215第1号厚生労働省医薬食品局審査管理課医療機器審査管理室長通知別添 2)と関連はあるが、本評価指標の対象は周辺環境及び自身のセンシングをもとにアクチュエータを介して運動出力をもたらすものとし、最終的に四肢体幹の運動制御を中心に活動機能改善を期待するものとする。
本評価指標における活動機能回復装置とは、基礎的な作業理論を組み立て、活動情報データの定量化を行うもので、身体・認知機能及び身体構造の回復そのものを目的とするだけでなく、最終的に生活の活動、社会への参加を支援し、生活機能を向上させるために、病院・施設・在宅など生活空間で使用する装置等を指す。
開発する活動機能回復装置が医療機器に該当するか判断し難い場合は、必要に応じ厚生労働省医薬食品局審査管理課医療機器審査管理室に相談すること。

3. 本評価指標の位置づけ 本評価指標は、技術開発の著しい医療機器を対象とするものであることを勘案し、留意すべき事項を網羅的に示したものではなく、現時点で考えられる点について示している。よって、今後の更なる技術革新や知見の集積等を踏まえ改訂されるものであり、申請内容に関して拘束力を有するものではない。製品の評価にあたっては、個別の製品の特性を十分理解した上で、科学的な合理性をもって柔軟に対応することが必要である。なお、本評価指標の他、
国内外のその他の関連ガイドラインを参考にすることも考慮すべきである。

GL:本体

4. 評価に当たって留意すべき事項
(1)基本的事項
① 開発の経緯、品目の仕様、国内外での使用状況、設計開発と装置の原理、性能と効果に関する作用機序、意図する使用方法等(機能及び能力を含む)を明確に示すこと。

② 装置の設置場所、運用等を踏まえたリスクアセスメントを行い、以下の項目を参考に、適切な留意事項等を設定すること。

(ア)設置
・質量
・寸法
・装置の転倒防止対策
・身体への接触部位に対する負荷(圧迫、ずれ、やけど等)
(イ)装置の騒音、振動
(ウ)保守点検の必要性とその内容
(エ)トレーニングプログラムの必要性とその内容
(オ)電源、駆動装置の安全対策(予備電源装置の要否、駆動制御装置にかかる負担、連続駆動可能時間、患者への装着に要する時間等)
(カ)周辺環境対策(電磁波、温度等)
(キ)使用環境(病院、施設、在宅等)

(2)非臨床試験
以下に示す各事項等を通して、装置の性能及び安全性の評価を適切に行うこと。

① 性能に関する評価 以下の各事項中、該当する項目について、それぞれ具体的なデータをもって明らかにすること。
(ア)可動部分の性能
・駆動方式(アクティブシステム、パッシブシステム等)
・制御方式(力制御、位置制御、インピーダンス制御、コンプライアンス制御、提示制御等)
・バックドライブ性(把持部/アクチュエータ間の駆動力伝達機構等)
・動作精度(位置・空間的な精度、時間的な精度(時間遅れを含む)、再現性、バリデーション方法等)
・センサー(位置、角度及び生体信号等)の構造と機能
・精度の妥当性(適応症例に要求される動作精度との相関性等)
・動作距離、速度
・アクチュエータ等の出力(上限を含む)
・運動の自由度
・空間的配置(他機器、使用者、患者との干渉等)
(イ)装置の動作状況の表示
(ウ)耐久性(腐食対策、発熱対策等を含む)
(エ)ソフトウエアのライフサイクル管理
(オ)自己診断機能(上述の動作精度のバリデーションを含む)

② 安全性・品質に関する評価 次の設計管理に該当する事項を必要に応じて適用すること。
(ア)一般的要求事項
・電気的安全性
・機械的安全性
・生物学的安全性
・品質マネジメント
・リスクマネジメント
(イ)仕様(駆動装置を含む)
・設計要求事項(ユーザ、規格、規制、標準)
・インプット及びアウトプット(種類、方法、手段等)
・ユーザビリティ
・起動、中断及び終了
(ウ)開発・設計計画
・開発プロセス(リスクアセスメントを含む)
(エ)文書化
・ユーザ向け文書(機器の作用機序、操作及び保守マニュアル等)
(オ)安全機構・制御の種類、構造及び妥当性
・アラーム(種類、表示等)(参考:IEC60601-1-8等)
・非常停止対策(参考:ISO10218-1、ISO13850、JIS T2304等)
・非常停止装置及びその構造
・非常停止する条件(ユーザの意に反する誤動作、安全機構作動時等)
・非常停止中の状態
・停止中の患者及び医療従事者への安全性の確保(装置姿勢保持等)
・非常停止後装置の再稼働の容易性
・誤動作予防対策(ユーザーインターフェイス)
・患者又は医療従事者の転倒又は転落・落下防止対策
・フェイルセーフ
・フールプルーフ
(カ)ソフトウエア制御の頑健性
(キ)装置固有のリスクマネジメント
・正常であるが、思いがけない動作
・使用環境下での人間、動物、その他の予期しない動き
・予期しない走行面の状態(Mobile robot等)
・扱う対象物の不確実性(Mobile servant robot等)
・人間の解剖学的構造及びその多様性に対する適合(Physical assistant robot 等)
・その他、必要な項目

(3)臨床試験(治験) (参考:平成20年8月4日付け薬食機発第0804001号)
① 治験の要否について
医療機器の臨床的な有効性及び安全性が性能試験等の非臨床試験成績又は既存の文献等のみによっては評価できない場合に臨床試験(治験)の実施が必要となり、臨床試験成績に関する資料の提出が求められる。また、その使用目的、性能、構造等が既存の医療機器と明らかに異なる場合については、原則として臨床試験の試験成績に関する資料の提出が必要である。

②有効性及び安全性の評価 非臨床試験において、装置の性能、安全性及び品質が十分に確認された製品を対象として治験を実施すること。
治験を行う場合においては、対象とする活動機能の回復又は支援が十分期待されることを示すと共に、以下の項目に留意して実施計画を立案し、装置の有効性と安全性を評価すること。予想される使用環境にも配慮すること。

(ア)活動機能回復装置の特性
1)何らかの医療介入技術が有効性を持つことを示すためには、介入群のほかに比較対照群が必要である。対照群を設定できない場合は、ある疾病の罹患後の自然経過を知ることが必要であり、その予想される経過が改善されることで有効性を評価して良い。
また、パイロットスタディを検討しても良い。

2)運動機能の評価は、運動動作パターンを定性的又は定量的に評価する方法や運動動作を遂行する時間等を定量的に評価する方法を用いる。介入前後の定量的評価は改善の指標等に有用である。評価尺度は、一定の感受性、再現性、計測に際しての妥当性等の検証が行われなければならない。

3)上肢運動機能検査として、簡易上肢運動機能検査(simple test for evaluating hand function: STEF)、上肢機能評価(manual function test: MFT)、Fugl-Meyer Assessment
(FMA)、Wolf Motor Function Test (WMFT)等がある。バランスの機能検査として、 functional reach test (FRT)、重心動揺、timed up and go test(TUG)、バーグバランス尺度(Berg Balance Scale : BBS)等がある。歩行能力の検査として、10 m 最大歩行速度、6分間歩行テスト、physiological cost index等がある。また、表面筋電図や三次元動作解析装置等を使用し、介入前後の比較を行うこともある。

4)介入の前後で、患者の日常生活動作(activities of daily living: ADL)の変化も加味することが大切である。機能評価としては、Barthel Indexや機能的自立度評価表
(function independence measure:FIM)等を用いる。また、介入によりQOL(quality of
life)が改善するかどうかをEuroQol(EQ-5D)、SF-36、 visual analog scale(VAS)等で評価することも重要である。

(イ)医療従事者の負担の軽減の評価 活動機能回復装置の有効性評価に際しては、本来の機器自体の有用性を立証する立場のほかに、リハビリテーションにおけるセラピストら医療従事者の負担軽減につながるとの立場もある。装着等に要する時間的問題を検討すると共に、活動機能回復装置を使用することにより、医療従事者のみでは不十分な訓練を提供でき、それが動作や活動の改善にどのようにつながっていくかを明確に示さなければならない。 また、活動機能回復装置の導入により軽減される医療従事者の労力を明確に示すと共に、介入によるQOLの改善状況をEQ-5D、SF-36、VAS等で評価することも重要である。


③ 治験の症例数
臨床試験(治験)を実施する場合の症例数は、臨床試験の目的や主要評価項目等を踏まえ、科学的根拠に基づき、当該医療機器の有効性、安全性の評価に適切な症例数とする。希少疾病用医療機器等、適応疾患の症例自体が少ない等の事情がある場合には、事情を勘案して妥当な治験計画をたて、評価可能で実施可能な症例数を検討すること。
なお、比較対照をおく場合にあたっては、統計学的に症例数を設定する必要があることに留意すること。
また、信頼できる海外データを承認申請の添付資料として使用できることがあるが、そ
れのみで臨床評価を行うことができるかどうかについては十分に検討すること。

④ 評価期間
治験を実施する場合は、対象者の特徴に応じて適切な時期に評価を行うこと。治験期間後も長期に渡って使用する場合には、市販後調査の実施を検討すること。

GL:付属資料

引用関連規格

国内関連GL

海外関連GL

WG開始年月

WG終了年月

WGメンバー

平成23年度
座 長:
赤居 正美  国立障害者リハビリテーションセンター 病院長
副座長:
才藤 栄一  藤田保健衛生大学医学部リハビリテーション医学講座 教授

委 員(五十音順):
安保 雅博  東京慈恵会医科大学附属病院リハビリテーション科 主任教授
井上 勲  福岡青洲会病院脳神経内科・神経リハビリテーション科 部長
佐久間一郎 東京大学大学院工学系研究科精密工学専攻 教授
蜂須賀研二 産業医科大学リハビリテーション医学講座 教授
原 行弘  日本医科大学千葉北総病院リハビリテーション科 部長
藤江正克  早稲田大学理工学術院創造理工学部総合機械工学科 教授
古荘純次  福井工業大学工学部機械工学科 教授

厚生労働省:
浅沼一成  厚生労働省医薬食品局審査管理課医療機器審査管理室 室長
東 健太郎 厚生労働省医薬食品局審査管理課医療機器審査管理室 専門官
間宮弘晃  厚生労働省医薬食品局審査管理課医療機器審査管理室 技官
独立行政法人 医薬品医療機器総合機構:
木下勝美  医薬品医療機器総合機構医療機器審査第一部 部長
池田浩治  医薬品医療機器総合機構医療機器審査第一部 審査役代理
金川幸紀  医薬品医療機器総合機構医療機器審査第一部 専門員
鹿野真弓  医薬品医療機器総合機構規格基準部 部長
藤井道子  医薬品医療機器総合機構規格基準部医療機器基準課 テクニカルエキスパート

審査 WG 事務局:
松岡厚子 国立医薬品食品衛生研究所療品部 部長
蓜島由二 国立医薬品食品衛生研究所療品部 第一室長
植松美幸 国立医薬品食品衛生研究所療品部 主任研究官
福井千恵 国立医薬品食品衛生研究所療品部 非常勤職員

平成24年度
座 長: 
赤居 正美 国立障害者リハビリテーションセンター病院 病院長

副座長:
才藤 栄一 藤田保健衛生大学医学部リハビリテーション医学講座 教授

委 員(五十音順):
安保 雅博   東京慈恵会医科大学附属病院リハビリテーション科 主任教授
井上 勲    福岡青洲会病院脳神経内科・神経リハビリテーション科 部長
佐久間一郎   東京大学大学院工学系研究科医療福祉工学開発評価研究センター 教授
蜂須賀研二 産業医科大学リハビリテーション医学講座 教授
原 行弘    日本医科大学千葉北総病院リハビリテーション科 部長
藤江 正克   早稲田大学理工学術院創造理工学部総合機械工学科 教授
古荘 純次   福井工業大学工学部機械工学科 教授

厚生労働省:
浅沼 一成   厚生労働省医薬食品局審査管理課医療機器審査管理室 室長
東 健太郎   厚生労働省医薬食品局審査管理課医療機器審査管理室 専門官
金川 幸紀   厚生労働省医薬食品局審査管理課医療機器審査管理室 医療機器指導官
津田 亮    厚生労働省医薬食品局審査管理課医療機器審査管理室 主査
宮永 敬市   厚生労働省老健局振興課福祉用具・住宅改修係 指導官

独立行政法人 医薬品医療機器総合機構:
木下 勝美   医薬品医療機器総合機構医療機器審査第一部 部長
岡崎 譲    医薬品医療機器総合機構医療機器審査第一部 審査役代理
水上 良明   医薬品医療機器総合機構医療機器審査第一部 主任専門員
鹿野 真弓   医薬品医療機器総合機構規格基準部 部長
藤井 道子   医薬品医療機器総合機構規格基準部医療機器基準課 テクニカルエキスパート

審査 WG 事務局:
松岡 厚子   国立医薬品食品衛生研究所療品部 部長
蓜島 由二   国立医薬品食品衛生研究所療品部 第一室長
植松 美幸   国立医薬品食品衛生研究所療品部 主任研究官
福井 千恵   国立医薬品食品衛生研究所療品部 非常勤職員

報告書(PDF)

H23年度報告書
2013-HN-DE-019-H23-報告書

H24年度報告書
2013-HN-DE-019-H24-報告書

報告書要旨(最新年)

承認済み製品(日本)

(医療機器クラスⅡ) 生体信号反応式運動機能改善装置「HAL 医療用下肢タイプ」(CYBERDYNE㈱) 日本申請日:2015年3月25日、日本承認日:2015年11月25日

承認済み製品(海外)

製品開発状況

製品に関連する規格:IEC 80601-2-78:2019

Horizon Scanning Report