整形外科用カスタムメイド人工膝関節

ガイドラインID 2012-HN-DE-016
発出年月日 2012-11-20
発出番号 平成24年11月20日付薬食機発1120第5号
WG名 カスタムメイド分野審査WG
制度名 次世代医療機器・再生医療等製品評価指標(審査ガイドライン)
製品区分 医療機器
分野

体内埋め込み型材料

GL日本語版ファイル

2012-HN-DE-016 整形外科用カスタムメイド人工膝関節

英文タイトル
GL英語版ファイル

GL:イントロ・スコープ

1・.はじめに
整形外科領域において、体内埋め込み型のインプラント(薬事法上の医療機器)は、 広く臨床応用され、我が国の医療及び国民の生活の質の向上に貢献している。しかし、 臨床的に既製品インプラントでは対応できない様々な関節の骨形状、重大な骨欠損、変 形骨、再置換などが報告されている。これらの臨床的ニーズと問題点を解決する手段として、いわゆるカスタムメイドインプラントが必要とされている。
カスタムメイドインプラントは、患者個人に対して優れた適合性を有することから、骨温存治療の実現、適合性と固定性の獲得、低侵襲手術の実現、優れた機能再建、耐用年数の向上、早期リハピリテーションと早期社会復帰及び再手術の減少などの利点が期 待される。特に、膝関節は、人の生活の基礎となる体幹の支持、歩行確保などに欠かせない身体組織であるため、カズタムメイドインプラント人工膝関節により優れた臨床成績を得られれば、患者及び医療関係者を含め医療経済上においても有益と考え・られる。
またカスタムメイドインプラント人工膝関節を製造可能とする技術の著しい進歩に より、より安全かっ優れた生体親和性インプラントの製造が可能となってきている。
本評価指標においては、臨床的必要性が高い人工膝関節について、カスタムメイド人工膝関節の品質、有効性及び安全性に関する必要事項及び承認申請に際し留意すべき事項を定めた。
2 .本評価指標の対象
本評価指標は、整形外科用インプラントのうち、人工膝関節を対象とする。ただし、片側型人工膝関節は対象としない。本評価指標におけるカスタムメイド人工膝関節 (custom-made artificialしe joint pvosthesis)の定義は、既製品を基礎として患者個々の骨形状に応じて不適合な部分が存在する場合に必要最小限の形状付与(ミニマリーモデイファイド)することによって生体適合性、固定性などを向上させた人工膝関節とする。
ただし、摺動面の形状変更は既製品との形状の相似を保つ場合を除き対象としない。
3.本評価指標の位置づけ
本評価指標は、技術開発の著しい整形外科用人工膝関節(片側型人工膝関節を除く。) を対象とするものであることを勘案し、問題点、留意すべき事項を網羅的に示したものではなく、現時点で考えられる点について示したものである。よって、今後の更なる技 術革新や知見の集積等を踏まえ改定されるものであり、申請内容等に関して拘束力を有するものではない。
カスタムメイド人工膝関節の評価にあたっては、個別の製品の特性を十分理解した上 で、科学的な合理性をもって柔軟に対応することが必要である。
また、本評価指標の他、国内外のその他の関連ガイドラインを参考にすることも考慮すべきである。

GL:本体

4 .カスタムメイド人工膝関節の承認申請書の記載事項
製造販売業者は基礎となる既製品(既承認品及び同時申請品を含む。)を基にカスタムメイド人工膝関節を作製し得る範囲を指定して申請すること。
( 1 )形状、構造及び原理
「形状、構造及び原理」に、カスタムメイド人工膝関節を作製し得る範囲を基礎となる既製品と区別し、明確に記載すること。
( 2 )使用目的、効能又は効果
カスタムメイド人工膝関節は、次の場合に使用することができることとする旨を「使 用目的、効能又は効果」に記載しておくこと。
①医師が、既製品では不適合な部分が存在するため十分な治療効果が得られない と判断した場合
②医師が、既製品を使用した場合に比べ、より大きな治療効果(生体適合性や固 定性の向上)が得られると判断した場合
' ( 3 )品目仕様
製品の製造方法と構造に関して、基礎となる既製品と同等の又は基礎となる既製品を上回る性能を有することを示す製造技術基準を記載すること。
( 4 )その他
①カスタムメイド人工膝関節の基礎となる既製品のデータを記載すること。
②医師が作成する仕様書の様式(案)を添付すること。

5 .カスタムメイド人工膝関節の評価
( 1 )製造技術の評価
基礎となる既製品と同一又は自社が既に承認を得ている既製品との比較において同等以上の製造技術であることを示すこと。
( 2 )物理的、化学的特性及び生物学的安全性の評価
カスタムメイド人工膝関節に使用する材料の生物学的安全性等は、既製品と同等以上 であることを示すこと。なお、既製品のデータ及び科学的根拠を示すことで、当該試験 の実施を省略することも可能である。また:臨床的に高機能性や耐久性などが必霻と判断される場合には、人工膝関節製品で承認されている同種の生体材料のデータ及び科学的根拠を示すこと。
( 3 )機械的安全性の評価
カスタムメイド人工膝関節の寸法が基礎となる既製品の範囲内、又は力学的強度が劣らない旨を示すことにより、機械的安全性に関する試験の実施を省略することも可能で一ある。
既製品に比べ力学的強度が劣らないことを示す方法は以下の通り。
①カスタムメイド人工膝関節が、基礎となる既製品よりカ学的に安全な方向への形状等の変更である場合は、その旨を別表を参考に記載することにより、機械的安全性に関する試験を省略することが可能である(既に承認を取得した自社

製品の試験データを用いることも可能。)。
②カスタムメイド人工膝関節で構造的に負荷がかかる部位の改良が必要とされる場合は、ガイドライン等に従い、力学的強度が担保可能であるどとを力学的試

験等にて示すこと(既に承認を取得した自社製品の試験データを用いることも 可能。)。
別表カスタム化の項目
Fixed CR (cruciate retaining)型とPS (posterior stabilized)・型で直接固定型(セメントレス)と間接固定型(セメント)に適応する。
なお、M。bⅡe型人工膝関節は、本評価指標には含まれない。
また、Hⅲg。型人工膝関節のヒンジ部分は含まれない。

関節摺動面の形状変更は含まない。
1 .大腿骨コンポーネント
大腿骨コンボーネントの形状付与(骨欠損等に対する付加構造で、骨形状との適合性を改善するための部分的な形状付与を目的とする) 骨との接触面形状付与
①骨との接触面形状(前方、前方フランジ、後方、近位形状)の最適化

②ステム(長さ、太さ、形状)の最適化

③ペグ(長さ、太さ、数、形状、位置)の最適化
④直接固定型(セメントレス)における裏面の表面処理範囲の最適化



2 .脛骨コンポーネント骨との接触面形状付与
① 骨との接触面形状(前方、後方、内側、外側、遠位)の最適化
② ステム(長さ、太さ、形状)の最適化
③ ペグ・フィン(長さ、太さ、数、形状、位置)の最適化
④ スクリューホール(数、位置)の最適化
⑤ 直接固定型(セメントレス)における裏面の表面処理範囲の最適化
⑥ ポリエチレンインサートの最適化
3 .膝蓋骨コンボーネント
骨との接触面形状(厚さ、ペグ数、ペグ位置)の最適化
4 .金属補填部品
骨欠損部位を金属素材にて補填する形状付与を目的とする。
①骨との接触面形状の最適化
②直接固定型(セメントレス)における裏面の表面処理範囲の最適化


6 .製造販売業者による準備と対応
製造販売業者は、次の( 1 )から( 4 )に定めた事項を遵守すること。
( 1 )カスタムメイド人工膝関節の設計
製造販売業者は、医師が作成した仕様書に基づいて承認の範囲内でカスタムメイド人工膝関節の設計を行うこと。
( 2 )製造販売業者が保管すべき資料
製造販売業者は、カスタムメイド人工膝関節を製造し、仕様を作成した医師に販売 授与するに当たり、医療機器及び体外診断用医薬品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令(平成16年厚生労働省令第169号、QMS省令)、医薬品、医薬部外品、化粧品及び医療機器の品質管理の基準に関する省令(平成16年厚生労働省令第136号、GQP 省令)、医薬品、医薬部外品、化粧品及び医療機器の製造販売後安全管理の基準に関する省令(平成16年厚生労働省令第135号、GVP省令)又は医療機器の製造販売後の調査及び試験の実施の基準に関する省令(平成・17年厚生労働省令第38号、Gpsp省令)に基づく文書として、以下の資料を保管しておくこと。
①仕様を作成した医師名
②医師が作成した仕様書. (患者の骨形状のデータを含む。)
③骨形状のデータに適合した設計になっていることを確認できる資料
④設計段階又は最終製品において、製品の形状が仕様書を満たすことを医師が確認したことを示す資料
( 3 )有効性の評価
製造販売業者は、医師が作成した仕様書に基づきカスタムメイド人主膝関節を臨床応・用するにあたり、使用の前後において、医師の協力を得て設計したカスタムメイド人工膝関節と患者の骨形状を比較検討し、臨床的有効性について評価すること。
( 4 )市販後調査
製造販売業者は、医師の協力を得てカスタムメイド人工膝関節の臨床使用後、その評価及び不具合情報等を収集し、必要に応じて承認事項一部変更承認申請や安全対策措置等を行うこと。
7 .使用上の注意
製造販売業者は、使用上の注意等に以下のことを記載すること。
①カスタムメイド人工膝関節は、既製品では不適合な部分が存在するため十分な 治療効果が得られない又は既製品を使用した場合に比べ、より大きな治療効果

(生体適合性や固定性の向上)が得られると医師が判断した場合のみに使用で

きること。
②カスタムメイド人工膝関節の必要性と臨床効果につき患者に説明し同意を得る
③カスタムメイド人工膝関節を使用する際にはあらかじめ担当医が仕様書を作成すること。
④医師は、カスタム化が必要とされる項目を明確化しだ仕様書を製造販売業者に提供すること。
⑤医師は、カスタムメイド人工膝関節を使用する前に、設計段階及び最終段階に・おいて、一当該カスタムメイド人工膝関節が仕様書の内容を満たしていることを確認すること。
⑥医師は、・ 製品の不具合や術中の臨床上の問題等により、カスタムメイド人工膝 関節が使用できない事態に備え、-既製品での対応を考慮した手術計画を準備する等あらかじめ対策を施すこと。
⑦医師は、臨床的有効性について評価し、不具合情報等を収集し、製造販売業者に速やかに報告すること。
⑧カスタムメイド人工膝関節は、患者個々に適合するよう設計されているため、使用しなかった場合は他の患者に使用しないこと。
⑨医師は、仕様書を診療録等の患者記録とともに適切に保管すること。

GL:付属資料

引用関連規格

国内関連GL

海外関連GL

WG開始年月

WG終了年月

WGメンバー

委員(〇:座長)

岡崎義光  (独)産業技術総合研究所ヒューマンライフテクノロジー研究部門 主任研究員
齋藤知行  横浜市立大学 大学院 医学研究科 運動器病態学 教授
鈴木昌彦  千葉大学 フロンティアメディカル工学研究開発センター  教授
〇勝呂 徹  東邦大学 医学部 整形外科学教室 教授
高井信朗  日本医科大学 医学部 整形外科 教授
高久田和夫 東京医科歯科大学 生体材料工学研究所 バイオデザイン分野 教授
高取吉雄  東京大学 大学院 医学系研究科 関節機能再建学 特任教授
堤定美   日本大学 特任教授
松下隆   帝京大学 医学部 整形外科学教室 主任教授

厚生労働省
浅沼一成  医薬食品局審査管理課 医療機器審査管理室長
東健太郎  医薬食品局審査管理課 医療機器審査管理室 新医療材料専門官
橋本季子  医薬食品局審査管理課 医療機器審査管理室 主査
間宮弘晃  医薬食品局審査管理課 医療機器審査管理室 技官
関野秀人  医政局経済課 医療機器製作室長

独立行政法人 医薬品医療機器総合機構

木下勝美  医療機器審査第一部長
鈴木由香  医療機器審査第二部長
北原淳   医療機器審査第二部 審査役
谷城博幸  医療機器審査第二部 審査役代理 
飛石真太郎 医療機器審査第二部 審査専門員 
鹿野真弓  規格基準部長  
藤井道子  規格基準部 医療機器基準課 テクニカルエキスパート

事務局
松岡厚子  国立医薬品食品衛生研究所 医療機器部長
迫田秀行  国立医薬品食品衛生研究所 医療機器部 主任研究官  
石川格   国立医薬品食品衛生研究所 医療機器部 研究員
片倉健男  国立医薬品食品衛生研究所 スーパー特区対応部門 特任研究員

報告書(PDF)

2012-HN-DE-016-H23-報告書

報告書要旨(最新年)

承認済み製品(日本)

承認済み製品(海外)

製品開発状況

Horizon Scanning Report