血流シミュレーションソフトウェア

ガイドラインID 2019-HN-PR-033
発出年月日 2019-05-23
発出番号 令和元年5月23日付薬生機審発0523第2号    
WG名 血流解析シミュレーションソフトウェア 審査WG
制度名 次世代医療機器・再生医療等製品評価指標(審査ガイドライン)
製品区分 プログラム・AI
分野

プログラム

GL日本語版ファイル

2019-HN-PR-033 血流シミュレーションソフトウェア

英文タイトル
GL英語版ファイル

GL:イントロ・スコープ

1.はじめに
計算機及び計算技術の発展と共に数値流体計算が汎用の計算機で簡便に行えるようになり、血流シミュレーションも一部の工学研究者が使用するばかりでなく、医療従事者も使用するようになってきた。血流シミュレーションは、血行動態に関する医学的情報を提供するものであり、今後、様々な形で臨床応用が期待される技術である。
本邦においては、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律の改正が施行され、疾病の治療、診断、予防を目的に使用される医療機器プログラムが医療機器の範囲に含められた。医療機器プログラムに該当する血流シミュレーションソフトウェアについては、臨床上必要な性能を確保するために、評価の考え方、評価方法等の整理が求められている。
本邦のみならず米国や欧州においても、医療機器としての血流シミュレーションの精度や妥当性について、公的な指針や指標は存在しない。以上から、本評価指標においては、製造販売業者による申請の準備、並びに医薬品医療機器総合機構による審査の迅速化に寄与することを目的として、血流シミュレーションソフトウェアの品質・有効性・安全性に関する必要事項及び承認申請に際し留意すべき事項を定めた。

2.本評価指標の対象
本評価指標では、対象とする血流シミュレーションソフトウェアを、「医療機器プログラムに該当するものであって、かつ、医用画像データを使用して血管又は心臓の内腔形状を仮想的に構築し、その情報に従って物理学的法則に基づく方程式を解くことによって、血管又は心臓内の血液の流れを計算・提示し、臨床診断及び治療につながる情報を提供するもの」と定義する。また、付帯する人為的な作業を含めた工程も本評価指標の対象とする。
医用画像データとしては、超音波、CT、MRI、血管造影等が挙げられる。物理学的法則とは、一般的に流れの支配方程式として認識される連続の式及び Navier-Stokes 方程式であり、 Boltzmann 方程式等それらの派生式を含む。血管及び心臓内の血流の提示には、流線やコンター図等の可視化技術の他、血流に係る物理情報を数値的に提供するものも含まれる。血流シミュレーションソフトウェアの使用目的は、病態の診断、治療法の決定、治療デバイスの決定、治療効果の予測等である。計測データに基づいて血流を可視化する方法として、ドップラ法、PC-MRI、 perfusion CT 等造影剤の流動を追跡する方法等があるが、流れの支配方程式を解かずに、血流情報を提供する範囲においては、本評価指標で定義する血流シミュレーションソフトウェアには含めない。但し、医療機器に該当すると考えられる場合には、本評価指標の利用可能な部分の活用について使用を妨げるものではない。
医療機器プログラムの関連文書として、「プログラムの医療機器への該当性に関する基本的な考え方について」(平成 26 年 11 月 14 日付け薬食監麻発 1114 第 5 号厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課長通知)、「医療機器プログラムの取扱いについて」(平成 26 年 11 月 21 日付け薬食機参発 1121 第 33 号、薬食安発 1121 第 1 号、薬食監麻発 1121 第 29 号厚生労働省大臣官房参事官(医療機器・再生医療等製品審査管理担当)、厚生労働省医薬食品局安全対策課長、厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課長連名通知)、「医療機器プログラムの承認申請に関するガイダンスの公表について」(平成 28 年 3 月 31 日付け厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器・再生医療等製品担当参事官室事務連絡)等の関連通知等を参考にすること。
医療機器への該当性、クラス分類の判断については、「プログラムの医療機器への該当性に関する基本的な考え方について」等を参照して検討し、必要に応じて厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課に相談すること。

3.評価指標の位置づけ
本評価指標は、技術開発の著しい機器を対象とするものであることを勘案し、現時点で必要と思われる事項を示したものである。今後の技術革新や知見の集積等を踏まえて改訂されるものであり、承認申請内容等に対して拘束力を持つものではない。本評価指標が対象とする製品の評価にあたっては、個別の製品の特性や使用される臨床現場の状況を十分に理解した上で、科学的な合理性を背景にして、柔軟に対応する必要がある。なお、本評価指標の他、国内外のその他の関連ガイドライン等を参考にすることも考慮すべきである。

GL:本体

4.評価にあたって留意すべき事項
血流シミュレーションソフトウェアは、通常の医療機器とは異なり、物理的、化学的特性及び形状等で性能を担保することが難しいため、性能に影響する要素、効果の確認できる範囲や限界等を予め規定すること。診断に関する情報等を導き出すための理論及びアルゴリズム注1をそれぞれで明確にし、その妥当性を評価すること。以下、評価にあたって留意すべき事項を例示する。すべての項目について、必ず評価が必要とは限らないが、評価が不要と判断した場合は、その妥当性を科学的根拠により説明する必要がある。

(1)品目の概要に関する事項
1) 臨床的意義
診断、診断支援、治療計画支援といった使用目的や、適用患者、疾病の種類及び重症度、使用する治療のフェーズといった対象範囲を明確に定義し、その臨床的意義を明らかにすること。提供する情報の妥当性及び臨床成績との関係について根拠をもって明確に示すこと。一方、その臨床的意義が確立された情報を提供し、既承認の医療機器に比して新たな機能が付与されない範囲のものについては、数値の同等性評価等で検証が可能な場合もある。効果の妥当性に関しては、既存の製品・方法との違いを踏まえ、リスク・ベネフィットのバランスに基づいて総合的に判断すること。

2) データの入出力と処理工程
医用画像データの入力から血流指標の出力に至るまでの一連の流れ及び流れを構成する各工程の内容を詳らかにすること。また、各工程における基本原理及びアルゴリズムをそれぞれ示すこと。工程は可能な限り詳述すること。
申請が想定される血流シミュレーションソフトウェアは、血管または心臓の内腔形状構築と血流計算の二つの工程に大別されると考えられる。
内腔形状構築の工程として、入力される医用画像データのフォーマット適合性及び画像の品質を判断する工程、画像から内腔形状を抽出する工程、抽出された内腔の表面を平滑化する工程、内腔形状を修正する工程、医用画像データの画質が不十分である場合に対処する工程等が挙げられる。データの入出力として、内腔形状構築に使用する入力データのフォーマットを明らかにすること。画像から内腔形状を抽出する工程や抽出された内腔の表面を平滑化する工程等において、閾値等のパラメータ設定が必要な場合は、その設定原理、理由、学術的背景を記述すること。内腔形状の修正を許す場合は、修正方法や処理工程を示すこと。外部からの形状データ入力を許す場合は、入力される内腔形状データのフォーマット適合性及び品質を判断する方法を含めること。 血流計算の工程は、主に、内腔形状の計算格子分割、血液物性設定、境界条件設定、流体計算、血流指標の出力又は結果の可視化によって構成される。内腔形状の計算格子分割においては、使用する計算格子の種類及び処理工程を示すこと。血液物性の設定においては、使用する密度、粘度等の物性値の一覧を示すこと。密度については、圧縮性流体とするか非圧縮性流体とするかの取り扱い方法も示すこと。粘度については、ニュートン流体とするか非ニュートン流体とするかの取り扱い方法を記した上で、非ニュートン流体とする場合は、使用するモデルを示すこと。境界条件は、解析対象の入口、壁面、出口の領域毎に、その設定法を詳述すること。Windkessel モデル等の低次元血流モデルと組み合わせて境界条件を設定する場合には、流体計算部分との連成方法について示すこと。流体計算法においては、支配方程式の定式化法のみでなく、空間離散化法、層流モデルか乱流モデルかといった流体モデル、行列方程式解法、収束判定法を記述すること。また、非定常解法の場合は、時間進行法や CFL 条件に対する対処法を示すこと。計算が収束しない場合の処理法も示すこと。結果として出力する血流指標については、その計算法を示すこと。結果の可視化に際して、壁面せん断応力や流線等、結果の演算が必要な場合は、その演算方法を示すこと。
工程中、データベースを参照する場合においては、そのデータベースの出典等を明らかにすること。また、工程の一部において医用画像解析ソフト、数値流体解析ソフト、可視化ソフト等汎用のソフトウェアを流用する場合は、ソフトウェアのバージョンを明記すると共に、申請する血流シミュレーションソフトウェアにおける使用方法について詳細に記述すること。

3) 使用方法
血流シミュレーションソフトウェアの解析結果は、その性能の他、使用する医用画像データの質や解析時の処理条件等に影響されるため、医用画像データの取得から診断等の結果が得られるまでの、入力データの標準化、ユーザの介在、プラットフォームや使用環境の要件等を含む全工程を記載すること。

4) 適応範囲 対象疾患に加え、患者の状態を含めて、製品が効果を発揮できる範囲(適応範囲)を明記すること。

5) 解析装置の仕様
使用する PC に必要な仕様を明らかにすること。その際、共存するその他のソフトウェア等との干渉についても評価すること。

6) トレーニング計画や取扱い資格制度の必要性とその内容(品質維持)
ユーザの介在を完全に排除することが困難な血流シミュレーションソフトウェアにおいては、適切なユーザによって使用されない場合や、ユーザの介在があるために十分な性能が発揮できない場合が考えられる。従って、ユーザの要件を考慮した上で臨床上十分な性能が確保できることを評価することが望ましい。また、ユーザの教育は目的を明確にし、習熟度及び達成度について評価することが望ましい。例えば、セグメンテーションにおいてユーザが介在し、技術レベルを一定水準以上に維持する必要がある場合、適切なセグメンテーションが可能となるように、ユーザを対象とした教育システムを構築し、評価、認定による運用等が想定される。

(2)品質と安全性に関する考え方 注2
血流シミュレーションソフトウェアでは、入力画像の品質、血管等の内腔形状の構築、血流計算アルゴリズムの各品質が計算される血流指標に影響を及ぼすため、各工程の品質評価が必要となる。品質が担保されていない血流シミュレーションソフトウェアによる解析結果は、誤った医学的指標値を提示することにつながり、安全性に影響を及ぼすことから、製品が自動で実行する工程において解析精度を維持できない事象が発生した場合には、適切に解析フローを停止すること及び使用者へ解析フローが停止したことを表示することができるアルゴリズムを含むことに加え、以下に留意して品質評価を行うこと。

1) 入力画像の品質
解析のために入力する医用画像データに求められる仕様及び品質について明らかにすること。仕様については、撮影用装置の要件、解像度、推奨する撮像条件等が考えられる。また、品質に影響を与える因子として、造影効果、石灰化の程度、撮像時のアーチファクト等が考えられる。要求品質に満たない画像が入力された場合の、ソフトウェア及びユーザの対応について記載すること。ソフトウェアの対応であれば、例えば、計算が先に進まないような対策が考えられる。ユーザの画像品質に対する判断能力を涵養するような教育システムを構築する等の対策を開発側が整える場合、教育システムの質を確認すること。

2) 形状の構築
セグメンテーション方法、解析領域の設定法、形状の平滑化法、端面処理法等、医用画像データから数値流体計算に使用する血管形状の構築方法について詳述すること。形状の構築において、ユーザの介在を許可する場合は、介在によって血管形状を計算に不適切な程大幅に変更できないような仕組み等を用意すること。セグメンテーション及び平滑化については、デジタルファントムあるいは物理的ファントムを用いた試験を通じて、形状の再現精度を示すこと。解析領域の設定法及び端面処理法については、形状の再現精度ではなく、血流シミュレーションを行った際の解の不確かさの観点から、その妥当性を確認すること。

3) 計算格子生成
血流シミュレーション結果の格子依存性がないように、計算格子が生成されることを確認すること。特に、壁面せん断応力やそれに関連するような値を出力する場合、計算格子の質が結果に大きく影響するため、計算格子の生成法とその影響を十分に確認すると共に、性能が担保できないような格子生成が行われた場合の対応策を明示すること。

4) 血液の物性値の設定 注3
血液の密度及び粘度等の物性値について、その妥当性を説明すること。非ニュートン流体として設定する場合には、流体モデル及びパラメータ値の妥当性を説明すること。ユーザが血液の物性値を設定できるような機能を備える場合、異常値が入力された際の対応方法を示すこと。物性値については、血流シミュレーションを行った際の解の不確かさの観点から、その妥当性を確認すること。

5) 境界条件
流体を解析する対象領域の境界部における流れの条件(境界条件)を示すこと。領域の境界は、入口、出口、壁面(血管内腔面との境界)に分類される。それぞれにおける条件及びその設定方法について具体的に記述すること。境界条件設定の一例として、入口に流速条件、壁面に滑りなし条件に基づくゼロ速度条件、出口にトラクションフリー境界条件(参照圧力固定値)がある。流速条件を課す場合には、一様流速など空間的な速度分布に関する条件についても記述する必要がある。ユーザが境界条件を決定できる場合、決定指針を示すとともに、異常値が入力された際の対応方法を示すこと。境界条件については、生体内で生じうる範囲内において、流量や境界面での速度プロファイル等の不確定因子について、血流シミュレーションを行った際の解の不確かさの観点から、その妥当性を確認すること。

6) 数値流体計算
必要に応じて、ユーザが計算条件(例えば、離散化手法、行列計算法、収束判定方法(収束判定値を含む))を選択できる場合、それらが数値流体計算の結果に与える影響について確認すること。数値流体計算としての精度確認であれば、理論解及び工学的に広く行われているin vitro試験(backstep 流等)と比較し、数値流体計算結果の品質を確認すること。

表 数値流体計算の精度確認法

7) 血流計算結果の提供方法
数値流体計算の結果が正しく出力されているか確認すること。結果をベクトル、カラーコンター等により可視化して出力する場合、正しく可視化できているか確認すること。数値流体計算の結果から二次的な物理量を算出する際には、計算方法及び計算精度を確認すること。

(3)性能に関する事項
血流シミュレーションソフトウェアでは、血管等の内腔形状構築工程と血流計算アルゴリズム全体で算出される医学的指標の性能を評価する必要がある。以下に示す項目を参考として必要な評価を実施し、血流シミュレーションソフトウェアが適切な性能を有していることを確認すること。なお、補間可能な評価により省略できる場合がある。

1)非臨床試験
①ソフトウェアの動作確認
基本的な入出力が正しく行われるかを確認する。例えば、血管形状構築の工程では、定められたフォーマットの医用画像データを正しく読み込めるかを確認する。また、入力や解析過程、解析結果において異常値が検出された場合の対応の妥当性を評価すること。
計算結果が臨床上使用されるパラメータで示されている場合、そのパラメータが正しく計算されているか評価すること。また、解析が適切に行われなかった場合、その結果を利用できないように対策されているか確認すること。

②モデルを用いた評価
非臨床における評価試験は、あらかじめ正解あるいはそれに準ずるものを想定し、血管や心臓等の形状構築工程、数値流体計算アルゴリズム全体で算出される医学的指標の妥当性を評価する。例えば、血管形状構築の工程の場合、in vitro試験系においてあらかじめ形状が定義された模擬血管を臨床で使用することを想定している医用画像診断装置で取得し、模擬血管の実寸とプログラム上で構築された模擬血管の形状を比較することで、血管形状構築の工程の精度を評価し、この差異が血流シミュレーションソフトウェアで計算される医学的指標値に及ぼす影響を評価することが考えられる。
また、血流シミュレーションでは、拍動流等の血流、拍動や呼吸による血管壁の変形等に関して多くの仮定やモデル化をして計算しており、計算アルゴリズムの品質評価とは別に、医学的指標を提示する医療機器として妥当な性能を有しているかを評価する必要がある。例えば、臨床使用環境、対象となる病態等を模擬したin vitro試験での計測値と血流シミュレーションソフトウェアでの計算値を比較し、性能を評価することが考えらえる。

2)臨床試験
血流シミュレーションソフトウェアの示す結果の臨床的な有効性及び安全性が性能試験、動物試験等の非臨床試験成績又は既存の文献等のみでは評価できない場合に臨床試験(治験)の実施が必要となり、臨床試験成績に関する資料の提出が求められる。その使用目的、手術手技、性能、構造等が既存の医療機器と明らかに異なる場合については、原則として臨床試験の試験成績に関する資料の提出が必要である。(参考:「医療機器に関する臨床試験データの必要な範囲等について」(平成 20 年 8 月 4 日付け薬食機発 0804001 号厚生労働省医薬食品局審査管理課医療機器審査管理室長通知))臨床試験で評価すべき内容については、個々の医療機器の特性、既存の医療機器との同等性、非臨床試験の試験成績等により総合的に判断されることから、治験プロトコルに
ついては、医薬品医療機器総合機構の対面助言等の相談を利用することを推奨する。

5.その他の留意すべき事項
(1) 適正使用指針 必要性に応じて関連する学会と連携し、適正使用指針を事前に定める等、対策を講じること。
指針においては、既知のエビデンスに基づいた対象、運用方法等を記載すること。

(2) 使用データ及び計算条件の保存
データの保管方法、保管期間及びデータの破棄方法を明示すること。解析が再現可能な状態を確保するため、血液の密度や粘度の数値等を含む計算条件、血管形状のモデルや計算格子、解析結果等を必要な期間保存する教育又はソフトウェア上での管理等の仕組みや対策を講ずること。

(3) 個人情報の保護対策
計算結果及びそれに連結された個人情報の流出対策を実施すること。オフサイトで解析を行う場合は、データ送受信及び保管にも留意すると共に、匿名化処理したデータのみを使用することが望ましい。

(4) サイバーセキュリティ対策
必要なサイバーセキュリティ対策を行うこと。

(5) ソフトウェアの管理
適切なバージョン管理を行うこと。オンサイト利用のソフトウェアの場合は、ユーザが設定すべき項目以外、変更できない仕様にすること。

(6) 改定・改良した場合の取り扱いについて
ソフトウェアを変更する場合は、変更の度合いにより変更手続きが必要な場合がある。必要な手続きについては、申請者自身で判断するのではなく、審査における現行での判断状況を確認するためにも、医薬品医療機器総合機構の相談制度を利用することを推奨する。

注 1
アルゴリズムとは、血流解析シミュレーションソフトウェアにおける処理手順や数式を含む計算手順のことをいう。

注 2
血流シミュレーションの品質と安全性を考える上では、精度と不確かさの 2 点を確認しておくことが必要である。精度とは、真値(正解)に対してのずれを言う。例えば、10 kg であると分かっている物体があるとする。この質量をある測定器で測った時、測定値が 9.8 kg であったする。このときの真値 10 kg と 9.8 kg の差を精度と呼ぶ。一方、不確かさは、その解がもつ値のぶれ幅のことである。血流シミュレーションにおいて、多くの場合、患者個人の血液の粘度は不明である。この場合、生理学的データに基づいて、標準的な値を入れることになるが、標準値にも幅がある。標準の幅の中で、値をふった際に得られる解の振れ幅が不確かさに該当する。血流シミュレーションにおいて、精度や不確かさに影響を与える因子は多くあり、それらは非線形的な相互作用によって影響を及ぼす。従って、それらの影響を個々に評価しても、必ずしも最終的な品質や安全性の評価につながらない場合があることに留意すること。

注 3
血液の密度は 1,000~1,100 kg/m3 程度とされる。また、血液をニュートン流体とみなした場合、壁面上でのせん断速度が十分に大きい流れでは、粘度を 0.003~0.006 Pa・s 程度に設定することが多い。せん断速度が十分に大きいとは、研究者によって認識に差があるが、せん断速度が 20 s1~200 s-1 以上のことをいう。せん断速度がこれよりも小さい場合には、非ニュートン性を考慮する必要がある。

GL:付属資料

引用関連規格

国内関連GL

海外関連GL

WG開始年月

WG終了年月

WGメンバー

H28年度
委員(◎:座長 ○:副座長)
岩﨑清隆   早稲田大学理工学術院 先進理工学研究科 共同先端生命医科学専攻 教授
太田 信   東北大学 流体科学研究所 流動創成研究部門
       生体流動ダイナミクス研究分野 准教授
庄島正明   東京大学医学部附属病院 脳神経外科 特任講師
冨永悌二   東北大学病院 脳神経外科 教授
○ 中村正人  東邦大学医療センター 大橋病院 内科学講座 循環器内科 教授
中村匡徳   埼玉大学 大学院理工学研究科 機械科学系専攻 准教授
◎ 松本洋一郎 国立研究開発法人 理化学研究所 理事
横井宏佳   医療法人社団高邦会 福岡山王病院 循環器病センター長

厚生労働省
磯部総一郎  医薬・生活衛生局 医療機器審査管理課長
柳沼 宏   医薬・生活衛生局 医療機器審査管理課 再生医療等製品審査管理室長
川嶋 実   医薬・生活衛生局 医療機器審査管理課 医療機器審査調整官
小西昭英   医薬・生活衛生局 医療機器審査管理課 先進医療機器審査調整官
石川 由   医薬・生活衛生局 医療機器審査管理課 主査
藤本尚弘   医薬・生活衛生局 医療機器審査管理課 医療機器係長

独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
石井健介   医療機器審査第二部 部長
岡崎 譲   医療機器審査第三部 審査役
横山敬正   医療機器審査第三部 審査専門員
宮崎生子   規格基準部 部長
水上良明   規格基準部 医療機器基準課 課長
目黒 勉   規格基準部 医療機器基準課 テクニカルエキスパート

事務局
蓜島由二   国立医薬品食品衛生研究所 医療機器部長
宮島敦子   国立医薬品食品衛生研究所 医療機器部 室長
岡本吉弘   国立医薬品食品衛生研究所 医療機器部 室長
迫田秀行   国立医薬品食品衛生研究所 医療機器部 主任研究官

H29年度

委員(◎:座長 ○:副座長)
岩﨑清隆   早稲田大学理工学術院 先進理工学研究科 共同先端生命医科学専攻 教授
太田 信   東北大学 流体科学研究所 流動創成研究部門
       生体流動ダイナミクス研究分野 教授
庄島正明   埼玉医科大学 総合医療センター 脳神経外科 教授
陣崎雅弘   慶応義塾大学医学部 放射線科学教室 放射線診断科 教授
冨永悌二   東北大学病院 脳神経外科 教授
○ 中村正人  東邦大学医療センター 大橋病院 内科学講座 循環器内科 教授
中村匡徳   名古屋工業大学 電気・機械工学科 教授
◎ 松本洋一郎 国立研究開発法人 理化学研究所 理事
横井宏佳   医療法人社団高邦会 福岡山王病院 循環器病センター長

厚生労働省
中井清人   医薬・生活衛生局 医療機器審査管理課長
柳沼 宏   医薬・生活衛生局 医療機器審査管理課 再生医療等製品審査管理室長
青栁ゆみ子  医薬・生活衛生局 医療機器審査管理課 医療機器規制国際調整官
独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
石井健介   医療機器審査第二部 部長
鈴木友人   医療機器審査第二部 審査専門員
藤原考壱   医療機器審査第三部 審査専門員
横山敬正   医療機器審査第三部 審査専門員
宮崎生子   規格基準部 部長
水上良明   規格基準部 医療機器基準課 課長
望月修一   スペシャリスト
遠藤 健   規格基準部 医療機器基準課 主任専門員

事務局
蓜島由二   国立医薬品食品衛生研究所 医療機器部長
宮島敦子   国立医薬品食品衛生研究所 医療機器部 室長
岡本吉弘   国立医薬品食品衛生研究所 医療機器部 室長
迫田秀行   国立医薬品食品衛生研究所 医療機器部 主任研究官

報告書(PDF)

2019-HN-PR-033-H28-報告書

2019-HN-PR-033-H29-報告書

報告書要旨(最新年)

承認済み製品(日本)

承認済み製品(海外)

製品開発状況

Horizon Scanning Report