標準化資料案 DNAチップを用いた医療用診断装置の性能評価法に関する指針

ガイドラインID 2014-E-DI-023
発出年月日
発出番号
WG名 テーラーメイド医療用診断機器分野 DNA チップ開発 WG
制度名 医療機器等開発ガイドライン策定事業(開発ガイドライン)
製品区分 医療機器
分野

テーラーメイド医療用診断機器

GL日本語版ファイル

2014-E-DI-023 標準化資料案 DNAチップを用いた医療用診断装置の性能評価法に関する指針

英文タイトル
GL英語版ファイル

GL:イントロ・スコープ

まえがき

この文書は,工業標準化法第 3 条の規定に基づいて、日本工業標準調査会の審議を経て、厚生労働大臣及び経済産業大臣が公表する標準仕様書 (TS)の作成に向けた指針である。

標準仕様書 (TS)は、著作権法で保護対象となっている著作物である。
標準仕様書 (TS)の一部が、技術的性質をもつ特許権、出願公開後の特許出願に係る権利、実用新案権、又は出願公開後の実用新案登録出願に係る権利に抵触する可能性があることに注意を喚起する。厚生労働大臣、経済産業大臣及び日本工業標準調査会は、このような技術的性質をもつ特許権、出願公開後の特許出願、実用新案権、又は出願公開後の実用新案登録出願にかかわる確認について、責任をもたない。


DNA チップを用いた医療用診断装置の評価法に関する指針
A guidance for evaluation of medical diagnostic devices equipped with DNA microarrays

序文
この仕様書は、経済産業省から公表された「テーラーメイド医療用診断機器(DNA チップ)開発ガイドライン 2007−遺伝子型(ジェノタイピング)検定用 DNA チップに関して−」(平成 19 年 5 月)、及び、「テーラーメイド医療用診断機器分野 遺伝子発現解析用 DNA チップ開発ガイドライン 2012」(平成 24 年 8 月)に基づき、医療用診断装置としての DNA チップの評価を可能にする評価法に関する指針を規定する。DNA チップは遺伝子の情報をもとにしてがんなどの疾患の診断の補助を行う次世代医療機器として開発が進んでおり、一部の疾患に関しては国内外においてすでに薬事承認例がある。近年は遺伝子発現解析用 DNA チップの開発が進んでおり、個別化医療の進展とともにその役割は益々拡大するものと期待されている。そこで、この仕様書は DNA チップを組み込んだ装置の医療への応用を目的とした場合の性能や安全性について、参考となるような評価方法を規定し、その実用化の促進に資することを目的とする。


1.適用範囲
この仕様書は、DNA チップを用いた医療用診断装置のうち遺伝子発現解析を利用するもの(以下
“DNA チップを用いた医療用診断装置”という)の評価方法について規定する。

GL:本体

3.用語及び定義
この仕様書で用いる主な用語及び定義は、JIS Q 13485、ISO 17511:2003 及び IEC62304 によるほか、次による。

3.1 DNA チップ
DNA チップは DNA マイクロアレイとも呼ばれ、あらかじめ塩基配列の明らかな数万から数十万種類の 1 本鎖 DNA をスライドガラス、シリコンや樹脂などの基板あるいはビーズなどの表面上に高密度に配置した分析器具のことである。基板上に固定した DNA(プローブ)に対して、測定する検体から調製したDNA(ターゲット)或いはRNAをハイブリダイズすることで検体中のDNA あるいは RNA を定量する。DNA チップは、使用する目的により遺伝子型判定(ジェノタイピング)用と遺伝子発現解析用に大きく分かれる。遺伝子型判定用 DNA チップはウイルスや細胞のゲノム DNA/RNA の変異や多型などを調べるために用いられ、CGH(Comparative Genomic Hybridization)解析や SNPs(Single Nucleotide Polymorphisms)解析用 DNA チップが開発されている。一方で、遺伝子発現解析用 DNA チップは、遺伝子の機能状態を分析するために遺伝子発現を測定する DNA チップで、細胞から抽出したメッセンジャーRNA(mRNA)を逆転写酵素で相補的 DNA(cDNA)或いは相補的 RNA(cRNA)に変換して DNA チップにハイブリダイズさせる。ターゲット DNA を様々な蛍光色素などで標識することにより簡便で複数のターゲット DNA を同時に定量する方法が開発されている。用途は、基礎研究だけでなく、がん細胞ゲノム DNA の変異解析や、薬物分解酵素の多型解析、病態解析のためのマーカー遺伝子の発現情報や細胞内シグナル伝達情報の取得など様々な利用法が開発されている。

4.評価方法
DNA チップを用いた医療用診断機器の評価方法は、次のものが考えられる。また、DNA チップを用いた医療用診断装置の原理、構造等を附属書 A に、また、標準物質については附属書 B に示す。

4.1 他の発現解析手法との比較による評価
DNA チップの評価にあたっては、他の遺伝子発現の解析法と比較検討すること。比較は診断上重要な遺伝子について重要性を言及した後、当該遺伝子を対象に、少なくとも 1 種類の同一と見なされる RNA を鋳型にして定量する方法により行い、両者の一致率を評価に用いる遺伝子ごとに検討すること。遺伝子定量法としては、当該プラットフォーム以外の一般的な手法(例えばリアルタイム RT-PCR 法)、もしくは性能が確認されている承認済みの他の DNA チップ等を用いることができる。

4.2 データ解析及び解析ソフトに関する評価
解析ソフトについては、用途に対して十分であることに関して、適切に妥当性が検討され、同一データから同一の結果が得られること。その再現性を保証するためには、アルゴリズムを明確に記載する。具体的には正規化の手法、データ補正の方法、マーカー遺伝子の抽出方法、判定の方法などを数式等で表し、数値化したデータに基づき判定されること。

4.3 評価方法の妥当性
評価方法の妥当性の検討にあたっては、各方法の良否の確定に用いる手法について、コスト、リスクおよび技術的可能性のバランスを十分に検討し、次の事項のうちの一つ、またはそれらの組合せであることが望ましく、客観的な結果を残すこと。
・他の解析法で得られた結果との比較
・試験所間での比較
・結果に影響する要因の系統的な評価
・方法の原理の科学的理解および実際の経験に基づいた有意性の評価
また失敗事例(判定不能、器具の故障、試薬の不具合等に起因するもの)に関しても分析すること。

4.4 臨床性能試験
本項目については、平成 24 年 11 月 20 日付薬食機発 1120 第 5 号通知別添 2「RNA プロファイリングに基づく診断装置の評価指標」を参照のこと。

4.5 判定アルゴリズム
DNA チップを用いた診断においては、複数遺伝子の発現パターンよりアルゴリズムで判定を行う。
アルゴリズム作成に必要な検体数について規定はないが、アルゴリズムの検証のための試験は、一般の既存の体外診断薬に関する基準に基づき、複数施設から収集したサンプルを用いた統計的有意差を示すデータの提出が要求される。ただし、患者数が限られている場合や、より少ない症例数で有効性が十分に示される場合は、その科学的根拠に基づいて説明すること。

4.6 データの管理
原則として試料の種類、試料数、試料の調製法あるいは起源、試料の使用目的(特異性など)の記録を残すこと。最終的な結果の出力だけではなく、結果出力前の画像ファイルや数値データ等を保存する。なお信号の検出・分析、データ保存については、プライバシーとセキュリティを十分に確保すること。また結果に疑問が生じた場合には、データ処理段階毎に確認が可能となること。

4.7 安全性
交差汚染を評価するための試験を実施して結果を残すとともに、判定に失敗した場合、あるいは判定結果の解釈に失敗した場合のリスクも評価し、その際に用いたリスク分析手法についても検討すること。

GL:付属資料

附属書 A
(規定)
DNA チップを用いた医療診断用装置の原理、構造等

序文
この附属書は、DNA チップを用いた医療診断用装置の原理、構造等について規定する。

A.1 目的
遺伝子発現解析用 DNA チップを医療応用する場合に参考となるであろう要件を示し、その実用化の促進に資することを目的とする。

A.2 原理と構造
A.2.1 RNA の検出原理
サンプルの調製方法、標識方法、検出方法などについて詳細に検討する。
A.2.1.1 サンプル調製方法
・cDNA 法:mRNA を逆転写反応して得られた cDNA をそのままハイブリダイゼーション用のサンプルとする方法。
・cRNA(aRNA)法:mRNA の逆転写とインビトロ転写反応を組み合わせた、RNA 増幅を含むサンプル調製方法。
A.2.1.2 標識方法
・直接標識法:cDNA 合成あるいは cRNA(aRNA)合成時に、蛍光色素などで標識された核酸を直接取り込ませることによって標識する方法。
・間接標識法:cDNA 合成あるいは cRNA(aRNA)合成時に、Digoxigein などのハプテンやビオチン標識された核酸を取り込ませ、後から蛍光色素などと結合または置き換えることで標識する方法。
A.2.1.3 検出方法
・1 色法:ターゲットサンプル 1 とターゲットサンプル 2 をどちらも同じ蛍光色素などで標識し、それぞれ別々の DNA チップでハイブリダイゼーション反応を行う方法。
・2 色法:ターゲットサンプル 1 とターゲットサンプル 2 をそれぞれ別々の蛍光色素などで標識
し、サンプルを混合後、1 枚の DNA チップでハイブリダイゼーション反応を行う方法。

A.2.2 チップと装置の構造
基板やプローブ DNA などチップを構成する主要素の仕様や形状・サイズ・構造などについて検討する。特にプローブ DNA に関しては、Tm(melting temperature)値、GC(グアニン・シトシン)比、配列の特異性や長さなど、プローブ設計の要件について検討する。また、PNA や LNA などの人工核酸を用いる場合はその化学的性質についても検討すること。また装置に関しては、
装置本体の構成、装置を構成する各構成要素の仕様、機能の概略などについて検討すること。

A.3 方法
A.3.1 検出の概要
プロトコル、即ち検体の準備から、検出・判定に至る全工程の流れ、特に検体採取後の処理、保存方法、RNA 抽出・RNA 増幅・標識等のチップ・装置に導入する前工程、チップ・装置へのセッティング、装置での処理手順(処理条件)、信号から判定を導く工程等について技術的に詳細に検討すること。装置での処理は、マニュアル操作と自動操作の区別も明記し、操作におけるリスクについても評価すること。

A.3.2 装置の機能
信号検出特性に影響を与える可能性の高い温度制御機構、試薬送液機構、測定機構、機械動作機構などは、各機構の動作、性能、役割を技術的に評価すること。また標準物質(附属書 B 参照)を用いて測定装置の評価や基準光源などの基準信号源による測定装置自体の校正を行うこと。

A.4 特異性、感度・ダイナミックレンジ及び再現性
A.4.1 特異性
他の手法の解析により配列や濃度が既知である試料を用いて、実験的に DNA チップの特異性を検討すること。実験での評価が困難な場合は、DNA プローブの選定プロセスを詳細に説明すること。また、目的遺伝子以外と交差反応する可能性がある場合は、そのリスクについても検討すること。

A.4.2 感度・ダイナミックレンジ
標準物質などを用いて、DNA チップ及び検出系の検出限界濃度やダイナミックレンジを検討すること。この際、使用した DNA チップと検出装置、反応プロトコル、検出条件などを明記すること。

A.4.3 再現性
DNA チップ、および検査システムによって得られるデータの再現性は十分に検証すること。再現性試験は、以下の項目について行うこと。
a) 有意な再現性を統計学的に判断するため、同一と見なされる試料に対し、少なくとも3つ以上の測定データを得ること。
b) 検体は、複数の施設から収集すること。
c) 再現性試験で使用される手順が、添付文書に記載される予定の手順と同様であること。
d) 複数の製品ロットを使用すること。

A.4.4 検査の品質管理適切な陽性対照、陰性対照を設け、各種対照の意義、それらの結果がもたらす管理項目について技術的に検討すること。また、検査機器の設定条件に対するモニタリング方法及びフィードバック方法を検討し、所定の条件で検査が実施されていることがどのように管理されているか説明すること。各対照、モニタリング、フィードバックにより得られる情報から、異常データとその管理方法を想定すること。

A.4.5 その他、性能特性に影響する要因
DNA チップを含めた測定における交差汚染には、別検体・別試料の混入の二者があり得るが、それぞれの予防策としてとるべき操作環境・設備・手順について技術的に検討し、また、交差汚染を評価するための試験を実施しその結果を残すこと。
検体に含まれる潜在的な干渉物質は、必ずしも試料の調製によって除去できるとは限らず、試料の調製、または DNA チップでの検出に干渉する場合もある。したがって、干渉物質が検出性能に及ぼす影響について特性評価をすること。なお検査中の各種条件について、その設定根拠、特に RNA の定量法の安定性について検討すること。

A.5 必要とする検体・サンプル、サンプルの前処理、保存、試薬等
A.5.1 検体・サンプル
検体中の RNA は検体採取直後から分解が始まることを十分認識した対処が必要である。検体の品質が RNA の品質や RNA 増幅・標識に大きく影響するため、RNA を得る検体の種類(例えば血液、組織)およびその採取方法、採取量及び採取直後の処置について検討すること。また検体の管理・保管方法について検討すること。

A.5.2 サンプルの前処理
検体から RNA を抽出・精製する方法について検討すること。また RNA の分解を防ぐための留意点を記すとともに、使用する RNA の品質の評価法について明記して、測定結果を保証できる RNA の品質基準を設定すること。なお RNA をなんらかの増幅法で増幅した上で用いる場合には、その増幅法(増幅効率の判定方法などを含む)と使用する試薬について検討すること。増幅した RNA を標識した上で後段の反応に使用する場合には、その処理法と使用する試薬について検討すること。また、評価に使用するサンプルに対しては、前処理が適切に行われたか標準物質などを用いて確認すること。

A.5.3 サンプルの保存
検体、精製 RNA、増幅 RNA、標識 RNA、といったすべての段階のサンプルについて、保管法及び輸送法について検討すること。すなわち、保管・輸送に適した温度と性能を維持できる期間について明記すること。また、評価に使用する検体やサンプルに対しては、保存が適切に行われていたか標準物質などを用いて確認すること。

A.5.4 試薬
RNA の抽出・検査など各工程で使用される試薬について、その種類・濃度などに関して検討すること。試薬を DNA チップと共に提供する場合、再現性、精度等に対する試薬の影響について、プロセスの各段階で検証した結果を残すこと。試薬を DNA チップと共に提供しない場合には、 DNA チップ使用者が適切な試薬を選択できるよう、必要な試薬の仕様および RNA の品質と量を評価するための方法・仕様を技術的に検討すること。

A.5.5 試薬の保存性・安全性
各工程の反応に使用される試薬の保管法・輸送法についても検討すること。また各工程で使用される試薬の安全性、および安全な取り扱いに必要な注意事項を検討すること。

A.5.6 自動化
サンプル調製に関して人為的要因による差異、施設間の差異を回避するために、自動化の導入が考えられる。自動化する際は、分注精度、温度制御精度を明記すること、試料間の交差汚染を防御できる構造、機構であること、環境からの汚染、例えば、空気中に浮遊している反応阻害物質、 RNA 分解酵素等の汚染物質の混入を防止できる構造であること、トレーサビリティを確保可能な機構であること、人的過誤を回避するための工夫が施され、作業者への安全性が確保できること等を考慮すること。また、自動化が導入された場合も、その結果の再現性等、妥当性を確認すること。

A.6 ソフトウェア
A.6.1 装置を構成するソフトウェアの概要
装置のソフトウェア構成、その機能、関係性について技術的に検討すること。その際、ユーザが直接操作する部分、機器を制御する部分、データの解析を行う部分、データの管理を行う部分等について、項目に分けて文書化されていること。特にデータの処理、解析ソフトウェアについては、詳細を記した説明書を作成すること。また、更にはユーザが操作ミスをした場合の動作、機器に異常が発生した場合の動作、停電発生時・停電復帰時の動作等、正規の操作・動作以外の状況発生時の対応についても検討すること。ソフトウェアの開発・設計に関しては国際規格(例えば IEC 62304:2006)などを参照すること。

A.6.2 判定アルゴリズムの原理と概要
判定アルゴリズムについて、少なくとも判定に用いるプローブ DNA の種類、各プローブの重複数、判定に用いる測定値の定義、各プローブの測定値から判定を行うためのアルゴリズム、判定に必要な基準値の定義とその設定における統計学的な根拠、最終的な判定結果とその信頼度が十分な詳しさで文書化されていること。

A.7 データ処理
本装置を用いて取得したデータについてデータを保護するための手順が確立され、トレーサビリティの観点から、検査日時、検体 ID、DNA チップ及び試薬ロット、検査プロトコル、測定装置の対応が付けられるようにデータ管理されていること。

A.8 品質管理
A.8.1 DNA チップ
保存方法、保存期間、安定性など、DNA チップの品質に関わる基本情報、チップに固定するプローブ DNA の品質管理について検討すること。特に DNA チップの品質管理に関連しては、 ISO/DIS16578 規格名称「マイクロアレイを用いた特定核酸配列の検出に関する一般的定義と要求事項」や GMP/QMS(ISO13485)などの製造管理/品質管理体制を検討すること。
A.8.2 検査装置
装置の校正方法、校正(検査)頻度、校正に用いる標準物質、合格規格、交換部品など、検査装置の品質に関わる基本情報、検査装置の品質管理に関連した GMP/QMS(ISO13485)などの製造管理/品質管理体制に関して、検討すること。


附属書 B
(規定)標準物質

序文
この附属書は、仕様書における評価法に用いる標準物質について規定する。

B.1 目的
遺伝子発現解析用 DNA チップ開発の各フェーズに応じて標準物質に求められる要件を示し、当
該開発品を用いた遺伝子発現解析データなどの信頼性を向上させることを目的とする。

B.2 標準物質に求められる要件
DNA チップ開発に用いられる標準物質には、特性の異なる様々なアレイ技術の精密性評価・正確性評価・結果表示のためのアルゴリズム検討に用いるもの(測定対象標準物質)や、当該開発品製造時の品質管理やルーチン検査における精度管理に用いるもの(精度管理用標準物質)がある。また、これらには測定結果のトレーサビリティの確認にも適用可能な性能が求められる。従って当該開発品製造における標準物質の選定に当たっては以下の方法論的課題を考慮すべきである。
B.2.1 標準物質の選定
a)測定対象標品の選定
遺伝子発現解析データなどの信頼性を向上させるためには、検出対象とする遺伝子について、その遺伝子の発現量を他のサンプルと比較することによる評価が求められる。これらの被検対象への値付けや当該開発品の校正を行うため、測定対象標品には対象遺伝子を含む複数のヒト RNA サンプルや遺伝子発現量の相対比較に使用される内在遺伝子や人工的な対照塩基配列を含むサンプルを使用することを推奨する。また、測定対象と同じ塩基配列を有する標準物質(認証標準物質など)を用いて被検対象の値付けをすることによって、測定結果のトレーサビリティを確認することもできる。
b) 精度管理用標準物質の選定解析対象の特定遺伝子を検出できることが開発の過程で確かめられている当該開発品を市販のために製造する場合、当該開発品が正確な測定値を示すよう調整するために精度管理用標準物質を使用する。精度管理用標準物質には対象遺伝子や人工的な非遺伝子塩基配列のうち、ヒトゲノム DNA よりも安定性に優れ、増産が可能である合成 RNA や cDNA 或いはその鋳型として用いられるプラスミド DNA が適用され、当該開発品の性能評価が可能な部分の遺伝子塩基配列或いは任意の非遺伝子塩基配列が含まれていれば良い。塩基配列長等の仕様は被評価対象開発品の特性に合わせて開発者により決定されて差し支えないが、統一された測定条件(細胞溶解用緩衝液、プロテアーゼ、制限酵素等、抽出試薬に関する品質管理方法及び RNA の標準処理手順マニュアル)が設定されるべきである。

B.2.2 標準物質の管理
a) 品質管理
標準物質は選定時に DNA シークエンシング等の方法によって配列を確認すること。標準物質を酵素合成等によって複製する場合は、複製ロット毎に遺伝子配列の確認を行うことによって相同性を担保すること。また、電気泳動や HPLC などを用いた塩基鎖長評価を行うことで、宿主由来塩基配列の混入や目的とする塩基配列の純度を確認すること。精度管理用標準物質は酵素合成法による増幅を経て使用されるが、増幅を行う場合には適切な頻度で遺伝子配列が確認されなければならない。
b) 純度
複製の鋳型などに用いるDNA の合成については、ホスホアミダイト法等の一般的な方法を行い、目的とした遺伝子配列が合成されていることを DNA シークエンシング法、質量分析(TOF-MS)、
HPLC や電気泳動法などによって確認すること。
c) 濃度単位
標準物質を感度試験に用いる場合には、核酸定量法によって求められた既知濃度の標準物質を用いて希釈検体を作製し、検出感度の検定を行う。なお、核酸定量は吸光度法(OD260)によって実施する場合、260nm に吸収を持つ不純物が含まれていないことを確認する必要がある。また、可能な場合、濃度値が付与された認証標準物質によって値付けした標準物質を用いることで、トレーサビリティの確認を行うこともできる。

B.2.3 標準物質の入手
測定対象となる塩基配列については、CDC(アメリカ疾病予防管理センター)の Genetic Testing Reference Material Coordination Program1)において reference material として確立された細胞株を、国内公的機関、例えば独立行政法人 産業技術総合研究所などが Coriell 医学研究所などを通じて入手し、保存及び管理を行い、当該開発品の機能評価を受託業務として実施するので、それらを利用することができる。なお、ヒトゲノム CDC サンプルの保存中又は培養による後天的変異を監視するための定期的な検査も管理業務に含めるものとする。精度管理用標準物質としては、産業技術総合研究所が頒布するトレーサビリティが確立された認証標準物質を利用することができる。
注1) Genetic Testing Reference Material Coordination Program (GeT-RM)は、遺伝子検査における
QC、研究、検定試験や測定データの検証に適した標準物質を研究者が利用できるよう、CDC 主導のもとに設立された綱領である。

引用関連規格

2.引用規格
次に掲げる日本工業規格及び国際規格は、この仕様書に引用されることによって、この仕様書の規定の一部を構成する。これらの引用規格のうちで、西暦年を付記してあるものは、記載の年の版を適用し、その後の改正版(追補を含む。)には適用しない。西暦年の付記がない引用規格類は、その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS Q 13485 医療機器−品質マネジメントシステム−規制目的のための要求事項
ISO 17511:2003 体外診断用医薬品・医療機器−生物試料の定量測定−校正物質と管理物質の表示値の計量学的トレーサビリティ
IEC62304 医療機器ソフトウェア

国内関連GL

海外関連GL

WG開始年月

WG終了年月

WGメンバー

座長 久原 哲 九州大学大学院 農学研究院 教授
秋山 英雄 東レ株式会社 新事業開発部門 主席部員
   油谷 浩幸 東京大学 先端科学技術研究センター 教授
岡村 浩 東洋鋼鈑株式会社 技術企画部 技術企画グループ グループリーダー
楠岡 英雄 国立病院機構 大阪医療センター 院長 桑 克彦 (社)臨床検査基準測定機構 会長
住谷 知明 プレシジョン・システム・サイエンス株式会社 事業開発担当 部長
橋本 幸二 株式会社東芝 部品材料統括部 DNAチップ事業推進統括部
DNAチップ技術・開発担当 グループ長
森 康晃 早稲田大学大学院 創造理工学研究科 経営デザイン専攻 教授

報告書(PDF)

2014-E-DI-023-H24-報告書

報告書要旨(最新年)

承認済み製品(日本)

(医療機器クラスⅠ・Ⅲ) 遺伝子多型解析キット「AmpliChip CYP 450」(ロッシュ社) チップ:体外診断用医薬品(クラスⅢ)、解析装置:医療機器(クラスⅠ) 日本申請日:2007年2月、日本承認日:2009年5月 ヒトパピローマウイルス核酸タイピングキット「クリニチップHPV」(第一化学薬品㈱、㈱東芝、東芝ホクト㈱) 日本申請日:2007年5月31日、日本承認日:2009年7月30日

承認済み製品(海外)

製品開発状況

製品に関連する規格:ISO 21474-1:2020(医療用バイオチップ実用化促進に向けたヒト核酸の測定プロセスに関する国際標準化((特非)バイオチップコンソーシアム))

Horizon Scanning Report