5章 関連資料
PDT 機器に関連する資料を以下に示す。
JIS T 0601−1:2017 医用電気機器−第1部:基礎安全及び基本性能に関する一般要求事項、日本規格協会(2017)
JIS T 0601-1-2:2018 医用電気機器−第1−2部:安全に関する一般要求事項
−電磁両立性−要求事項及び試験、日本規格協会(2018)
JIS T 14971:2012 リスクマネジメントの医療機器への適用、日本規格協会(2012)
JIS Q 13485:2018 医療機器−品質マネジメントシステム−規制目的のための要求事項、日本規格協会(2018)
JIS T 2304:2017 医療機器ソフトウェア−ソフトウェアライフサイクルプロセス、日本規格協会(2017)
JIS C 6802:2014 レーザ製品の安全基準、日本規格協会(2014)
IEC 60601−2−22 Ed. 3.1:2012(b) Medical electrical equipment - Part 2-22: Particular requirements for basic safety and essential performance of surgical, cosmetic, therapeutic and diagnostic laser equipment, International
Electrotechnical Commission(2012)
http://www.jslsm.or.jp/main/guideline/index.html(以下、ガイドラインは日本レーザー医学会 安全ガイドラインとして掲載されている)
早期肺癌を対象とした PDT 施行の安全ガイドライン
原発性悪性脳腫瘍患者に対する光線力学的療法施行の安全ガイドライン
化学放射線療法または放射線療法後の局所遺残再発食道癌患者に対する光線力学的療法施行の安全ガイドライン
消化器疾患を対象とした PDT 施行の安全ガイドライン
早期子宮頚癌を対象とした PDT 施行の安全ガイドライン
皮膚疾患を対象とした PDT 施行の安全ガイドライン
加齢黄斑変性症に対する光線力学的療法のガイドライン
付録 本ガイドラインの使用例と解説
以下、4章の各項目について、例および解説を示す。光線力学的療法 (Photodynamic Therapy)(以下 PDT と略す)機器を対象に、照射するレーザ光の強度変動が生体内での光強度分布に及ぼす影響を数値計算で調べるという課題を例として挙げる。
1. 課題の抽出
(どのような対象に対し、どのような目的で、どのような内容の数値計算を行って、in silico 評価を行うのかを記述する。)
PDT は、悪性腫瘍などに薬剤を蓄積させ、腫瘍に適当な波長と強度の光を照射することにより、蓄積された薬剤が活性酸素を発生し腫瘍細胞を死滅させるという機序に基づく悪性腫瘍の治療法である。より正確には、腫瘍に蓄積した光感受性物質が光を吸収すると、励起一重項状態となり項間交差を経て励起三重項状態となる。励起三重項分子は基底三重項である酸素分子(O2)にエネルギーを移動させ、自身は初期状態へ戻ると同時に酸素分子を一重項状態へ励起する。一重項酸素は極めて反応性が高く、細胞内物質を無差別に酸化することで、癌細胞を死滅させる。PDT 機器は、レーザ光源、レーザ光を導く光路、照射エネルギーを規定するタイマー、不要なレーザ光の暴露を防止するシャッター等からなる。PDT の効果は照射したレーザ光の強度と持続時間の積(光照射エネルギー:光ドース light dose)と薬剤濃度、酸素分圧に依存し、光ドースの精密な制御が
PDT の効果を適切に発揮させるのに欠かせない。
PDT 機器からのレーザ光の強度は規定値(仕様値)に対し、±20%の公差を含んでいる。従って、公差の範囲内でレーザ光の強度、すなわち光ドースが変動した場合に、PDT の効果が現れる生体組織内の領域がどのように変化するかを知ることは PDT の治療効果の推定に極めて重要である。一方、薬剤濃度、酸素分圧は個人差の大きな現象であり、制御が難しい。将来的にはなんらかのモニタリング方法と PDT 機器を併用して、個人に合わせた光ドースの制御が可能になると考えるが、現状で PDT 機器が担保しうるのは、レーザ光照射における組織内光強度分布を公差の範囲でほぼ一定に保つことである。そこで組織内光強度分布について評価する系を検討すると、in vitro 評価では組織構造を有するような摘出臓器を対象にした際、組織内に配置する検出器の位置、数および感度の影響、また実験手技としての煩雑さが予想される。また、レーザ光の強度を変化させ、領域の変化を動物実験で実施(in vivo 評価)しても、in vitro 評価と同じ懸念に加えて、時間と費用の面から容易ではない。そこで、数値計算を行って組織内光強度分布を推定する in silico 評価が結果の質、時間および費用の面から望ましい評価手法となる。
本 in silico 評価においては、以上のように、PDT 機器を対象とし、照射するレーザ光の強度が規定値から±20%の公差内で変動した時に生体組織内で光強度分布がどのように変化するのかを調べることを目的に、生体内の光伝播に関する数値計算を行い、組織内光強度分布を評価することを内容とする。
解説:本 in silico 評価における対象機器、目的、内容を記述する。
2. 課題達成の目標設定
(課題達成の可否を判断する目標を、自身の知見や、公的規格、学会標準、文献等を参考にして設定する。)
レーザ出力が規定値の+20%と−20%に変動した場合に、組織内光強度分布が規定値のレーザ出力の場合と同程度であること。
解説:必ずしも数値として目標が設定出来るわけではない。また、出版されていないが、医療機器が使用される分野では広く認識されている情報が有用な場合もある。目標設定では、広く情報収集を行うことが望ましい。
3. 数値計算対象の構成要素の列挙
(数値計算を行う対象の構成要素を列挙する。PDT 機器の場合、例えば、生体組織、レーザ、および組織とレーザ射出端の間に存在する空気が考えられる。薬剤濃度、酸素分圧等も対象になる場合がある。)
生体組織内の光伝播の数値計算を行うにあたり対象となる構成要素は、レーザ、正常脳白質組織、レーザと脳組織の中間の空気層の3個である。解説: ここでは、実施する数値計算に必要な構成要素を列挙する。
4. 数値計算の物理現象とそれを表す数学モデルの記述
(数値計算の基礎となる物理現象とそれを表す数学モデルを記述する。PDT 機器の場合、例えば主に生体内の光伝播が対象となることが考えられ、決定論的モデルとして、光輸送方程式およびその近似である拡散方程式か、また確率論的モデル(主にモンテカルロ法で計算される)を3次元で解くことが考えられる。また、薬剤濃度、酸素分圧の変化に関する物理現象と数学モデルを光伝播と連成させる場合もある。)生体組織内の光伝播現象は、生体組織による光の散乱と吸収に支配される物
理現象であり、この現象を表す数学モデルとしては決定論的モデルと確率論的モデルが存在する。決定論的モデルとしては光輸送方程式が最も厳密と考えられ、それに対応する確率論的モデルとしてはモンテカルロ法がよく用いられる。決定論的モデルとしては、光輸送方程式を近似して計算を容易にした拡散方程式がよく用いられるが、レーザ光の照射部位付近での精度が悪いため、本数値計算では光輸送方程式と同等の結果が得られる確率論的モデルを用いる。また、3次元の生体組織に点光源に近い連続光を照射することから、3次元空間で定常状態の計算を行う。
解説:数値計算を行う対象の物理現象を述べ、その現象を表す数学モデルを説明し、使用する数学モデルを選択した論拠を明らかにする。対象とする物理現象および数学モデルが2次元空間あるいは3次元空間で時間に依存するかどうかを目的との整合性に留意して記述する。
5. 数学モデルの各種パラメータ設定
(数学モデルで必要となる各種パラメータを記述する。)
(1) 数値計算を行う対象の形状、寸法:(数値計算を行う対象の形状、寸法を記述する。)光伝播現象の数値計算を行う対象の生体組織は図1のように直径 d = 20 mm、厚さ l = 10 mm の円板であり、上面の中心にレーザ光が照射される。臨床で想定される照射対象の表面(腫瘍除去後の臓器露出面)が凹凸を有していても、照射するレーザ光の大きさがその凹凸の大きさに対して十分小さければ、照射面は平面と考えても良い。また、組織内光強度分布も臨床的知見としてほぼ定まっているので、実際の組織形状ではなく、単純形状を設定した。
解説:実物の形状、寸法を実測し使用する場合もあるが、単純な形状、寸法(単純な形状、寸法であれば、結果確認が容易になることが多い)を用いる場合もある。単純な形状、寸法を使う場合には、その単純化、単純化の前提条件が臨床使用状況を模擬していることを説明する。
図1.数値計算対象。直径 d = 20 mm、厚さ l = 10 mm の円板。
(2) 数値計算の境界条件:(数値計算を行う際に必要な境界条件を記述する。)円板状の生体組織において、レーザ光が照射される上面では生体組織と空気との屈折率の違いにより光の反射と屈折が生じる境界条件を採用し、上面以外の面は生体組織が連続しているものと考え、光の反射が生じない境界条件を採用する。
解説:臨床使用を考慮した境界条件(形状、寸法が臨床での形状を用いる場合と、臨床の形状とは全く異なる単純な形状、寸法である場合では異なることが多い。)を明らかにする。この際、単純化、単純化するための前提条件を用いる場合、その論拠を明らかにする。
(3) 数値計算の初期条件:(非定常の数値計算を行う際に必要な初期条件を記述する。)連続光を照射し、その光強度分布から PDT の効果を推定することができることから定常状態の計算を行うため、初期条件は不要である。
解説:非定常計算を行う際には初期条件を記述する。臨床使用を考慮した初期条件であることを説明する。特に複数回手技を繰り返す想定の機器の場合、最終的な現象を計算するのに、それまでの効果が累積していることが既知であるなら、累積効果を初期条件として与えても良い。その場合は、単純化、前提条件を使用することの論拠を明らかにする。
(4) 対象への外部からの入力:(数値計算を行う際に必要な対象への外部からの入力を記述す
る。PDT 機器では、例えば入射するレーザの強度が考えられる。また、薬剤、酸素を運搬する血流を考える場合もある。)対象である円板上面の中心に照射されるレーザ光の波長は
664 nm で固定され、レーザ光の照射パワー(P)の規定値は P0 = 150 mW/cm2、レーザ光の強度分布は半値幅が 6 mm のガウス分布とする。既定の照射継続時間(t0)は t0 = 180 s であるため、既定の光照射エネルギー(E0)は E0 = 150 mW/cm2×180 s = 27 J/cm2である。レーザ光を導く光路の射出端が対象に接触する場合には、射出端でのレーザ光強度が設定された強度になるようにレーザ光源の出力を調整する。レーザ光強度の空気中での減衰や広がりが既知である場合には、光路の射出端の表面からの高さにおけるレーザ光強度を求め、その強度が得られるようにレーザ光源の出力を調整する。
解説:必ずしも、実際の状況を模擬する必要はなく(例えば、臨床では脳組織に接触しないよう対象表面から 10 mm 程度離してレーザを照射するが、空気層でのレーザの減衰、拡散が既知であるなら、表面上 1 mm の場所からのレーザ照射に換算し計算する等、数値計算のコストを低減させる)、単純化、前提条件を用いて簡素な計算を行うこともある。その場合は、単純化、前提条件を使用することの論拠を明らかにする。
(5) 数学モデルに現れる特性値:(数学モデルに現れ、数値計算に不可欠な特性値を記述する。)数学モデルに現れる特性値は、照射するレーザ光の波長における対象組織の散乱係数 µs、吸収係数 µa、異方散乱パラメータ g、および屈折率 n であり、多くの研究で引用され妥当性確認がされている文献値を採用した(S. L. Jacques: Phys. Med. Biol. 58 (2013) R37.)。なお、空気については、散乱および吸収が無く、屈折率は 1 とした。
解説:数式モデルで必要となる各種パラメータについて、値、取得方法および選択した理由を明らかにする。取得方法は例えば、自身の実験結果、論文、各種データベース等が考えられる。選択した理由として、例えば、対応した実験結果であること、多くの研究で引用され精査された結果であ
ること、多くの情報を統合して作成した結果であること、等が考えられる。
(6) 数値計算の単位系:(形状、寸法、特性値、外部入力などに使用する単位系を記述し、単位の整合性を確認する。PDT と PDD を効率よく行う機器の場合、例えば波長の設定が必要な場合があるが波長の代わりに波数を用いていることもあるので、特性値がいずれであるか留意すること。)SI 単位系を使用した。具体的には、長さには mm と cm、エネルギーには J、パワーには mW、散乱および吸収係数には mm-1を用いた。
解説:数値計算で認識されている打ち切り誤差、まるめ誤差、桁落ち等が生じないよう、適宜、形状、寸法、物理特性の定数の夫々について整合性を確認しながら与える数値の桁に留意し、必要なら用いる数値の単位系を変換する。
6. 数値計算の手法の説明
(有限要素法、有限境界法、差分法、モンテカルロ法など、数学モデルの数値計算を行う方法について詳細に説明する。空間的、時間的離散化を行った場合には、その方法および要素についても、記述する。)確率論的数学モデルのうち、得られる結果が統計的に決定論的モデルの光輸送方程式と同等であることが知られており、光伝播解析に頻繁に用いられているモンテカルロ法を用いた。モンテカルロ法のプログラムとしては、公開されているプログラムである MCML (Monte Carlo Simulation Package, “Modeling of Photon Transport in Multi-layered Tissues,” http://omlc.org/software/mc/ or http://oilab.seas.wustl.edu/mc.html)を基本として用い、適宜、本件の内容に沿うように修正した。射出する光子の数は統計的に十分な精度が得られる 104 とし、対象とした円板を 100×100×100(数値はダミー)の格子に分割した。光伝播に伴う各光子の位置とエネルギーの変化からそれぞれの格子中の光のエネルギー密度分布(J/cm3)を求め、対象円板内の光強度分布を得た。
解説:数学モデルで必要とする各種パラメータ以外で数値計算に必要なパラメータを含む場合(収束条件探索に最尤法を用いる場合等)は、可能な限りそれらを明らかにする。数学モデルを計算モデルで表現する際に、単純化、その前提条件を用いる場合がある。単純化、前提条件を使用する場合は、その論拠を明らかにする。
7. 数値計算結果の記述
(数値計算で得られた結果を、図、表、あるいは画像などを用い、課題を解決し、目的が達成されたかどうかを判断できるように分かり易く表現する。)
照射パワーが規定値 P0 = 150 mW/cm2、および規定値の+ 20 % (P1 = 180 mW/cm2), - 20 % (P2 = 120 mW/cm2)で照射時間が規定値 t0 = 180 s のとき、つまり、照射エネルギーが E0 = 27.0 J/cm2、E1 = 32.4 J/cm2、E2 = 21.6 J/cm2のときの対象組織内の光強度分布を図2に示す。
図2.照射エネルギーが E0 = 27.0 J/cm2、E1 = 32.4 J/cm2、E2 = 21.6 J/cm2のときの組織内エネルギー密度分布(この図はダミー) この結果より、レーザ光の照射パワーに規定値に対して±20 %の変動が生じても、組織内のエネルギー密度分布の変化は小さい。
8. 数値計算の適合性確認
(数値計算が適切に実行されて、数学モデルを正しく解いているかどうかを、数値計算手法と数値計算結果から判断し、数値計算の適合性確認を行って、結果を記述する。)
レーザ照射による生体組織内光伝播を計算したソフトウェアは、L.-H. Wang らにより作成された Monte Carlo 法による生体組織内光伝播現象の simulation code である(L.-H. Wang, S. L. Jacques, and L.-Q. Zheng, "MCML - Monte Carlo modeling of photon transport in multi-layered tissues," Computer Methods and Programs in Biomedicine 47, 131-146 (1995))。得られた組織内光強度分布の計算結果がこのソフトウェアを正しく用いて得られた結果かどうかを確認する方法としては、その結果を光輸送方程式の解析解と比較して一致するかどうかを確認することが最も良い。しかし、光輸送方程式の解析解は一般には得られていないため、その近似としての光拡散方程式の解析解と比較する。4.(5)項で与えた光学特性値を持つ半無限媒体の表面に連続光を照射したとき、媒体中の光強度分布φ(ρ, z)に対する光拡散方程式の解析解は次のように与えられる。(T. J.
Farrell, et al., Medical Physics, Vol. 19, pp. 879-808, (1992).)
φ(ρ, z)= 41De−rµ1eff r1 −e−rµ2eff r2 π
r1 = [(z−z0 )2 +ρ2 ]1/ 2 , r2 = [(z+z0 + 2zb )2 +ρ2 ]1/ 2
ここで,座標(x, y, z)は図1に示されるように、照射点を原点とし、表面が x-y 平面で z が深さであり、ρは照射点からの半径方向距離でρ = (x2+y2)1/2である.また、D=1/ (3µs' ) =1/ [3µs (1−g)] 、µeff = µa / D = 3µµa s ' 、z0 = 1/µs'、zb = 2AD、
A= 1+r 、r =−1.440n−2 + 0.710n−1 + 0.668 + 0.0636n である。半無限媒体は図1の
1−r
円板とは異なるが、モンテカルロ法による数値計算では対象媒体を半無限体とることはできないので円板で近似した。円板の直径は、その外縁により光伝播が影響を受けない大きさに選ばれている。図3に拡散方程式の解析解の結果を示す。
図3.拡散方程式の解析解による照射エネルギーが E0 = 27.0 J/cm2、E1 = 32.4 J/cm2、E2 = 21.6 J/cm2のときの組織内エネルギー密度分布(この図はダミー)
図3と図2を比較すると、照射点近傍では分布がやや異なるが、照射点から数 mm の領域では拡散方程式の近似度が悪いことが知られており、この差は問題ではない。照射点から数 mm 以上離れた領域ではモンテカルロ法の結果は拡散方程式の解析解と良く一致している。ただし、照射点から遠い領域では、モンテカルロ法の結果が波を打っているが、これは到達する光子数が少なく統計的な誤差が現れているためである。
このようにモンテカルロ法による結果は、拡散方程式の近似度が悪い領域を除いて拡散方程式の解析解と良く一致しており、用いた数値計算手法の適合性が確認(検証)されたと考える。解説:設定された課題の解を得る際に用いた数値計算手法が正しく行われているかどうかを確認するのが適合性確認(検証)である。同じ計算手法を用いて、正しく行われたと確認されている他の計算結果との整合性を確認するのが最も良い。ほかにも適合性確認の方法は個別に異なり、適切な方法を採用することが可能である。
9. 数値計算の妥当性確認
(数値計算で得られた結果が、解決すべき課題にふさわしい解を与え、目的が達成されているかどうかを判断し、結果の妥当性確認を行って、確認の結果を記述する。妥当性確認には、数値計算結果を得るための各種現象の単純化や前提条件などが対象機器の特性に与える影響についての考察も含まれる。)
用いたモンテカルロ法シミュレーションのソフトウェアは、過去の多くの研究で使用されておりその信頼性は十分に確立されている。今回の条件はこのソフトウェアの適用範囲内にあるため、生体組織内の光伝播現象に関する本数値計算の妥当性は確認されていると言える。
解説:過去の研究により、用いた計算手法の妥当性が確立され、その計算手法が適用できる範囲が明確になっている場合には、用いた各種条件がその範囲内であれば、数値計算結果の妥当性は確認されたと考えて良い。あるいは、得られた結果が臨床的知見などと比較して矛盾が無いと客観的に判断することが可能であれば、それにより妥当性が確認されたとしても良い。
10. 医療機器評価の妥当性確認
(妥当性確認のできた数値計算結果が、医療機器の有効性、安全性および品質を直接的に評価していれば、数値計算の妥当性確認を行うことで in silico 評価の妥当性確認も行ったこととなる。数値計算結果が直接的に医療機器の評価になっていない場合、これまでの in vitro、in vivo、in silico の知見を用い、行った in silico 評価の妥当性確認を行う。)
課題である公差±20%における組織内光強度分布は、数値計算の適合性および妥当性確認をした中で、既定値のレーザ出力の場合と同程度であることが示され、その結果で妥当性確認されたと言える。
解説:数値計算の妥当性確認は医療機器の有効性、安全性および品質を直接評価してないので、医療機器の in silico 評価の妥当性を確認する。直接評価していない場合は、臨床との関係を、これまでの in vitro、in vivo、in silico の結果を用いて検討し、臨床的に受け入れられる知見があるか、その知見は医療機器の評価として妥当かを判断する。直接評価していない場合、医療機器評価として妥当と言える範囲は、数値計算の条件と異なると考えられるので、その範囲を適切に設定することが必要である。 |