脳腫瘍焼灼レーザスキャンシステム 開発ガイドライン 2008

ガイドラインID 2008-E-DE-003
発出年月日
発出番号
WG名 「ナビゲーション医療」分野 開発 WG
制度名 医療機器等開発ガイドライン策定事業(開発ガイドライン)
製品区分 医療機器
分野

ナビゲーション医療

GL日本語版ファイル

2008-E-DE-003 脳腫瘍焼灼レーザスキャンシステム開発ガイドライン2008

英文タイトル
GL英語版ファイル

GL:イントロ・スコープ

1. 序文
「脳腫瘍焼灼レーザスキャンシステム 開発ガイドライン」(以下、本ガイドライン)は、
「ナビゲーション医療分野 開発ガイドライン」に以下の変更を加えて適用する。

1.1. 本ガイドラインの適用される医療機器
脳腫瘍焼灼レーザスキャンシステム(レーザ部を除く)であり、医師によって操作されるもの。詳細は附録A「システム概要」を参照。
本ガイドラインでは附録 A に述べるシステムを前提としており、異なるシステムでは本ガ
イドラインの内容をそのまま適用できないこともあり得ることに留意する。

GL:本体

4. 個別リスクマネジメント項目

4.1. 電気的安全性
1) 電気手術器に対する耐性は確認すること。
2) 除細動器に対する耐性を有しなくてもよい。

4.2. 生物学的安全性
患者と接触する部分を有さないことを前提に、省略することができる。

4.3. 機械的安全性
特記事項なし(共通部分の記載をそのまま適用する)

4.4. 安定性、耐久性、洗浄・滅菌性

4.4.1. 安定性・耐久性
特記事項なし(共通部分の記載をそのまま適用する)

4.4.2. 洗浄・滅菌性
1. 本体の清拭により必要な清潔さを維持できる構造となっていること。
2. レンズおよびレーザヘッドが清拭により必要な清潔さを維持できる構造であること。


4.4.3. エミッション
特記事項なし(共通部分の記載をそのまま適用する)
4.5. ソフトウェアの品質管理
特記事項なし(共通部分の記載をそのまま適用する)

4.6. 治療目的で放射するエネルギー
特記事項なし(共通部分の記載をそのまま適用する)

5. 臨床研究の実施前までに試験評価すべき項目

5.1. 安全性試験評価
5.1.1. 電気的安全性
1) 患者接続部を持たない場合は、漏れ電流による電撃、患者測定電流、接触部の温度に関する試験は省略できる。
2) 絶縁抵抗の計測、耐圧試験を行うことを検討する。
3) 電気手術器に対する耐性は試験を実施する。

5.1.2. 生物学的安全性
特記事項なし(共通部分の記載をそのまま適用する)

5.1.3. 機械的安全性
特記事項なし(共通部分の記載をそのまま適用する)

5.1.4. 洗浄性・滅菌性
特記事項なし(共通部分の記載をそのまま適用する)

5.2. 性能試験評価
本機器を臨床使用するまでに確認すべき性能として、以下を試験評価する。
1.レーザ焼灼を実施するに十分な位置決め精度を有すること
2.位置決め、オートフォーカスの時間遅れが許容範囲内であること
3.外乱要因(レーザヘッドへの体液付着)による影響を確認すること

具体的には、以下の方法により試験評価することができる。
1.位置精度駆動軸の位置決め精度について、2次元閉曲線駆動実験により確認する
オートフォーカス(AF)精度については、後述の時間遅れ(応答性)と統合して評価する
2.時間遅れレーザ装置との通信遅れについては、RS-232Cの通信遅れなどから推定する。
レーザのオートフォーカスの応答性については、摘出組織(あるいはファントム)を用いて、組織の上下運動に対する応答性を評価する。制御目標値に対する過渡応答を記録して、両者の偏差が許容範囲内であるか確認する。
3.外乱要因レーザヘッドに体液が付着した場合に、オートフォーカス性能が担保されるかどうかを、実際にヘッドに体液を付着させて確認する。

5.3. 手術室での動作試験
特記事項なし(共通部分の記載をそのまま適用する)  
解説

以下、見出し番号はガイドライン条項に対応する。解説はガイドライン本文ではない。

1. 序文
1.1. 本ガイドラインの適用される医療機器
脳腫瘍焼灼レーザスキャンシステムは、(1)治療用レーザヘッド、(2)観察用カメラ、
(3)AF(オートフォーカス)ユニット、(4)XY駆動ステージ、(5)制御用PCからなる。
本システムでは(1)~(4)を対象術野上に設置するが、手術用顕微鏡にマウントされるので、患部組織には接触しない。したがって電気的な患者接続部も存在しない。また、治療領域の指定、およびレーザ照射は医師の判断と入力によるものであり、自動・半自動を意図しない。将来においては、患者と接触する部分を有するシステムや、治療領域を自動で決定するシステムが開発される可能性があるが、本ガイドライン(差分部分)ではその機能はカバーしない。
本ガイドラインではレーザの位置駆動について考察したものである。レーザスキャンシステム全体としてはレーザの安全性・性能を含めた評価が必要となるが、医療用レーザそのものの開発上の要点は既に確立されていることと、本ガイドラインの適用される医療機器で用いられているレーザが特段の留意点がない手術用レーザ(波長2.8μm、最大出力0.6W)
ことから、レーザ部については本ガイドライン(差分部分)では扱わない。

4. 個別リスクマネジメント項目
4.1. 電気的安全性
本機器を使用する際は、電気手術器をその治療で併用するので、電気手術器の影響を受けないことを確認する必要がある。
除細動器の影響は、本機器が患者接続部を持たないことを前提に、不必要である。

4.4.2. 洗浄・滅菌性
本機器は患者と接触する部分は有しないが、滅菌状態の部位(術者を含む)に接触する可能性があるため、ドレーピングなど代替手段を確認する必要がある。
洗浄については、レーザの性能(オートフォーカスを含む)を担保するために、レンズおよびレーザヘッドをクリーニングできる構造とする。分解できる構造であればベストであるが、そうでない場合、目視できない場所も洗浄できる設計が必要である。
洗浄性のバリデーション方法としてはタンパク質定量法があげられる。

4.4.3. エミッション
摩耗と耐久性、本体からのエミッションが問題となる機器ではなく、また滅菌を要する機器でもないことから、バリデーションなどを必要としない。

4.6. 治療目的で放射するエネルギー
レーザについては、併用される医療機器などとの相互作用、手術場環境での影響について検討すべき特別な特性はない。

5. 臨床研究の実施前までに試験評価すべき項目
5.1.1. 電気的安全性
患者接続部を持たない場合は、電撃および患者測定電流の試験は要さない。絶縁抵抗、耐圧計測は、操作する術者を保護するために行うことが望ましい。

5.2. 性能試験評価
本機器の性能・安全性への時間遅れの影響であるが、オートフォーカスが遅延した場合、
焼灼が不十分になる可能性があるが、過剰焼灼にはならず、安全側に作用する。

GL:付属資料

附録A. システム概要

術中 MRI の導入により、悪性脳腫瘍および周辺の構造、特に錐体路(運動神経束)などの機能情報を含む神経線維の位置関係を明確に可視化し、ナビゲーションすることにより、悪性脳腫瘍の摘出の際に永年脳外科医を悩ませてきた脳の移動(ブレインシフト)問題も解決され、機能領域を温存することによる合併症の低減と摘出率の最大化が可能となった。悪性脳腫瘍の切除率を平均 93%まで向上させ、全摘出率を 46%(全日本脳腫瘍統計では 8%) まで高めた。しかし、残存腫瘍を低侵襲で正確に摘出する精密治療の実現には、コンピュータを使った迅速な医療情報処理と可視化技術にもとづいて手術戦略を構築する低侵襲手術治療を推進し、外科医の技能の限界を超える微細操作・狭隘空間操作のための手術器具が不可欠である。画像誘導下手術は、機能領野を把握しながらの集学的手術で、悪性脳腫瘍の体積摘出率を95%程度に高めることに成功している。悪性脳腫瘍の5年生存率は95%除去時に22%程度である一方、100%除去時には40%超と倍増することから、残り5%の除去が重要である。ところが、残存腫瘍は切除部断面に薄く散在する形でごく少量の組織が残るのみである。浸潤性の悪性脳腫瘍の場合、術中に通常利用可能な観察手段、計測手段で腫瘍と正常組織を弁別することは困難であり、その位置の把握が難しい。術中 MRI が利用可能であっても、検出の可否は腫瘍の体積に依存するため困難である。さらに位置が把握できた場合も、機能領野の損傷を防ぎつつ用手的にこれを除去するのは、安定した治療成績を挙げることが難しい作業である。
これらの問題を解決するために、残存腫瘍をレーザスキャンにより蒸散させるシステムを開発した。
本システムの外観を図に示す。脳腫瘍焼灼レーザスキャンシステムは、(1)治療用レーザヘッド、(2)観察用カメラ、(3)AF(オートフォーカス)ユニット、(4)XY 駆動ステージ、(5) 制御用PCからなる。
(1)治療用レーザヘッドと(2)観察用カメラは、(3)AF ユニット上に設置され、AF ユニットの上下動(Z 方向)により治療用レーザの焦点はつねに治療対象組織の表面上に位置される。(1)(2)(3)の3要素は(4) XY駆動ステージ上に設置され、2次元平面駆動が可能である。
(5)制御用PC画面には(2)観察用カメラにて取得した顕微鏡的術野映像が表示される。
本システムの使用にあたっては、まずシステム((1)~(4))を対象術野上に設置する。次に(5)制御用 PC の術野映像上に、マウス等入力装置を用いて、意図する治療領域の描画を行う。治療領域を確認した上で治療を開始すると、XYステージ駆動によりレーザヘッド(+
AF カメラ)が入力領域(面)上をラスタスキャン駆動する。このとき治療用レーザを照射し、治療領域の組織表面を蒸散する。

引用関連規格

国内関連GL

海外関連GL

WG開始年月

WG終了年月

WGメンバー

委員 (※は座長,五十音順,敬称略)
 生田 幸士  日本生体医工学会代表/名古屋大学大学院工学研究科 マイクロシステム 工学専攻 教授
 石原 謙   日本生体医工学会代表/愛媛大学大学院医学系研究科 医学専攻 生命環境情報解析部門 教授
 伊関 洋   日本コンピュータ外科学会代表/東京女子医科大学大学院 先端工学外科学分野 教授
 大森 繁   開発企業/テルモ(株)研究開発センター
 菅野 伸彦  日本整形外科学会代表/大阪大学大学院医学系研究科 器官制御外科学 准教授
 勝呂 徹   日本整形外科学会代表/東邦大学医学部整形外科学教室 教授
 高山 修一  METIS推薦/オリンパス(株)研究開発センター 研究開発統括室長
 千葉 敏雄  日本コンピュータ外科学会代表/国立成育医療センター病院 特殊診療部 部長
※土肥 健純 東京大学大学院情報理工学系研究科 知能機械情報学専攻 教授
 友田 幸一  日本耳鼻咽喉科学会代表/金沢医科大学感覚機能病態学耳鼻咽喉科 教授
 中澤 東治  開発企業/THK(株)MRCセンター 所長
 森川 康英  日本内視鏡外科学会代表/慶應義塾大学医学部外科 教授
 渡辺 英寿  日本脳神経外科学会代表/自治医科大学脳神経外科 教授

開発WG事務局
 鎮西 清行 (独)産業技術総合研究所 人間福祉医工学研究部門治療支援技術グループ長
 山内 康司 (独)産業技術総合研究所 人間福祉医工学研究部門治療支援技術グループ主任研究員

報告書(PDF)

2008-E-DE-003-H19-報告書

報告書要旨(最新年)

承認済み製品(日本)

承認済み製品(海外)

製品開発状況

Horizon Scanning Report