ガイドラインID |
2008-E-DE-004 |
発出年月日 |
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発出番号 |
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WG名 |
ナビゲーション医療分野 開発 WG |
制度名 |
医療機器等開発ガイドライン策定事業(開発ガイドライン) |
製品区分 |
医療機器 |
分野 |
ナビゲーション医療 |
GL日本語版ファイル |
2008-E-DE-004 骨折整復支援システム開発ガイドライン2008 |
英文タイトル |
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GL英語版ファイル |
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GL:イントロ・スコープ |
1. 序文
「骨折整復支援システム 開発ガイドライン」(以下、本ガイドライン)は、「ナビゲーション医療分野 開発ガイドライン」に以下の変更を加えて適用する。
1.1. 本ガイドラインの適用される医療機器
脚部の骨折整復を行う骨折整復支援システム(受動的モードのみ)であり、X線透視下に医師によって操作されるもの詳細は附録A「システム概要」を参照。
本ガイドラインでは附録Aに述べるシステムを前提としており、異なるシステムでは本ガイドラインの内容をそのまま適用できないこともあり得ることに留意する。
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GL:本体 |
4. 個別リスクマネジメント項目
4.1. 電気的安全性
1) 電気手術器に対する耐性は確認すること。
2) 除細動器に対する耐性を有しなくてもよい。
4.2. 生物学的安全性
患者の固定具(足部固定ブーツ)の健常皮膚への接触に留意する。
4.3. 機械的安全性
特記事項なし(共通部分の記載をそのまま適用する)
4.3.1. 非常停止
過剰な外力、急激な外力に対する保護停止の実装を検討する
4.4. 安定性、耐久性、洗浄・滅菌性
4.4.1. 安定性・耐久性
特記事項なし(共通部分の記載をそのまま適用する)
4.4.2. 洗浄・滅菌性
本体の清拭により必要な清潔さを維持できる構造となっていること。
4.4.3. エミッション
特記事項なし(共通部分の記載をそのまま適用する)
4.5. ソフトウェアの品質管理
特記事項なし(共通部分の記載をそのまま適用する)
4.6. 治療目的で放射するエネルギー
特記事項なし(共通部分の記載をそのまま適用する)
5. 臨床研究の実施前までに試験評価すべき項目
5.1. 安全性試験評価
5.1.1. 電気的安全性
1) 骨折整復支援システムと患者の間に患者接続部が存在しない場合は、漏れ電流による電撃、患者測定電流、接触部の温度に関する試験は省略してもよい。
2) 絶縁抵抗の計測、耐圧試験を行うことを検討する。
3) 電気手術器に対する耐性は試験を実施すること。
5.1.2. 生物学的安全性
患者への装着部が健常皮膚への接触のみであること、その部分に特殊な新規材料を用いていないことを前提として、試験を省略できる
5.1.3. 機械的安全性
特記事項なし(共通部分の記載をそのまま適用する)
5.1.4. 洗浄性・滅菌性
滅菌を要する部位を持たず、また体液汚染する部位を持たない場合は、滅菌バリデーション、洗浄に関する試験を省略できる。
5.2. 性能試験評価
本機器を臨床使用するまでに確認すべき性能として、以下を試験評価すること。
1. ヒトに対して安全に使用できる動作範囲であること
2. 骨折整復を行うために十分な牽引力及び回旋トルクを有していること
3. 操作者の動作に追随して十分な応答時間内に動作すること
4. ヒトに対して安全に使用できる範囲に力・トルクに出力を制限していること
具体的には、以下の方法により試験評価することができる
1. 本機器の可動範囲が設計通りであることを試験によって確認する。
2. 患者下肢の質量に相当する負荷を加えた状態で、本機器の発生出力・トルクが設計通りであることを確認する。
3. 本機器の制御目標値(位置、速度、加速度など)に対する過渡応答を記録して、目標値と計測値の偏差が設定範囲内に収まるまでの時間が許容範囲内であることを確認する。
4. ソフトウェアリミッタ、メカニカルソケットの作動閾値の荷重を与えて、それぞれその作動値にて設計通りの挙動をすることを確認する。
これらの計測に当たっては、以下の点に留意する。
1. 本機器自身が持つセンサを性能試験に用いることは、勧められない。やむを得ずそのセンサを用いるときは、そのセンサが性能試験に十分な精度を持つことを別途試験評価する。
2. 動作範囲が本機器の特異点の近傍である場合は、その近傍点近くで試験を行う
3. その他、荷重条件、負荷条件などが最も厳しくなる点で試験を行う
また、これらに関する許容値、閾値を設定するため、以下を健常被験者実験等により実施することができる。
1. 従来の骨折整復術での患者下肢を動作させる範囲を調査により決定する
2. 従来の骨折整復術で患者下肢に加えている牽引力、回旋トルクをセンサを用いて計測する(予備的な臨床研究)
3. 設定した応答時間で操作者が受忍不可能な不快感を感じないかどうか確認する
4. 健常者に対して本機器を用いて下肢への牽引・回旋動作などの整復動作を加えて、違和感や疼痛を感じる牽引力および回旋トルクを計測して、作動閾値を決定するなお、整復に必要な牽引力・回旋トルク、最大の牽引力・回旋トルクを決定する際は、被験者の体格、性別、年齢による違いにも留意する。
5.3. 手術室での動作試験
特記事項なし(共通部分の記載をそのまま適用する)
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GL:付属資料 |
解説
以下、見出し番号はガイドライン条項に対応する。解説はガイドライン本文ではない。
1. 序文
1.1. 本ガイドラインの適用される医療機器
骨折整復支援システムは、骨折整復支援ロボット、X 線透過性カーボンファイバー製手術牽引台、術中画像撮影装置からなる。画像撮影装置は不特定の既存の製品を組み合わせて使用することができる。また、X線透過性カーボンファイバー製手術牽引台はX線透過性を除いて汎用の手術牽引台と同等であり、またX線透過性については技術的に確立されておりガイドラインでは扱わない。すなわち、システムのうちガイドラインで取り上げるのは骨折整復支援ロボットである。手術牽引台に横たえた患者脚部を医師が用手的に動かしていた作業を力補助(パワーアシスト)するものである。
整復支援ロボット機構は、上下、左右、前後の直進3軸、屈曲伸展、内転外転、内旋外旋の回転3軸の合計6軸の自由度のある整復動作が可能となっている。足部固定ブーツとロボット機構は力センサを介しているため、過度の力がかからないように設計され、非常停止やロック解除などソフトウェア制御に加えてメカニカルクラッチによる安全機構を備えている。
なお、最適な整復位置を呈示する機能を持つ、半自律動作が可能なシステムが研究されているが、本ガイドラインではその機能はカバーしない。
4. 個別リスクマネジメント項目
4.1. 電気的安全性
本機器を使用する際は、電気手術器をその治療で併用することはごく少ないと考えられる。しかし、本機器が複数の手術室を持つ医療機関で使用される場合は、隣室で使用する電気手術器の影響を受けないことを確認する必要がある。
除細動器の影響は、除細動器と併用される可能性は高くないこと、本機器が患者接続部を持たないことを勘案して、不必要である。
4.3.1. 非常停止
ソフトウェア的な保護停止の実装を検討する。
4.4.3. エミッション
摩耗と耐久性、本体からのエミッションが問題となる機器ではなく、また滅菌を要する機器でもないことから、バリデーションなどを必要としない。
4.5. ソフトウェアの品質管理
IEC62304:2006 に準拠した開発・品質管理工程を導入することができる。力フィードバックはソフトウェア的な機能により実現されるため、ソフトウェアの品質管理は重要である。
4.6. 治療目的で放射するエネルギー
併用される医療機器などとの相互作用、手術場環境での影響について検討すべき特別な特性はない。
5. 臨床研究の実施前までに試験評価すべき項目
5.1.1. 電気的安全性
患者への装着部は、足部固定ブーツおよびカーボンファイバー製手術牽引台である。いずれも絶縁体であり生きた部分を持たない。したがって骨折整復支援システムと患者の間には患者接続部が存在しない。その場合は、電撃および患者測定電流の試験は省略しても構わない。
また骨折整復支援システムの所与の目的のためだけであれば、外装部まで高温になることは考えにくい。よって定性的に高温にならないことを確認することで試験に代えることができる。
絶縁抵抗、耐圧計測は、操作する術者を保護するために行うことが望ましい。
電気手術器に関しては整復中に利用することはないが、隣接する手術室での使用が想定できるので、試験により耐性を確認する。除細動器に関しては整復中に利用されず、また別室での使用の影響はごく小さいと予想されるので、臨床研究段階では省略できる。
5.2. 性能試験評価
これらの試験項目の設定にあたっては、ナビゲーション医療開発WG平成17年度報告書を参考にした。
附録A. システム概要「骨折整復支援システム」
高齢化により増加している大腿骨近位部骨折などの下肢の骨折は、自立性を喪失しうる重要な外傷で、低侵襲で正確に治療することが求められている。下肢骨折の治療において、低侵襲に金属固定材料で強固に固定できれば早期離床が可能で、合併症を防ぎ自立性を維持でき医療経済的にも財源を大いに節減できる。しかしながら、内固定材も骨折整復が不完全であれば決して固定力は十分でなく、三次元的に正確な骨折部の整復が治療成功の基本である。
そこで、少人数の医療チームでも下肢骨折の整復が画像誘導下に正確に行うことを支援する骨折整復支援ロボットシステムが提案された。骨折した2つの骨片をもとの位置に復元するには、適切な方向に適切な力を骨片に加えることが必要である。また、通常の二次元X線画像からだけでは復元位置に関する正確な情報を得ることが難しい場合があり、また患者にも外科医にも相当なX線被曝を伴うことがある。
これらの問題を解決するために、力と正確さを兼ね備えたロボットによる骨折整復支援システムの開発が考案された[1、 2]。ロボットは大きな力で正確に動作することが可能であるが、このとき重要となるのが、ロボット動作のプログラミング(手術計画)、及びプログラムされた手術計画の物理空間への正確な写像(手術計画座標系と物理空間座標系の正確な位置あわせ)[3]である。実際のシステム設計のために、最も頻度の高い大腿骨近位部骨折を治療対象に設定した。従来の手術法で骨折牽引台のブーツを介して足にかかる力を計測することで、ロボットに搭載する力センサ及びモータ出力のスケールを決定した。骨折患者のデータから下肢の解剖学的計測と手術位置の高さなどの条件を計測した。
骨折整復操作をロボットで誘導するための動作プログラムは、骨折部位の転位の状態から整復位までのマトリックスにより作成することにした。従って、骨折部位の三次元的形状把握を前提として、画像誘導下に骨折整復できるナビゲーションシステムを構築した。三次元画像データとしては、術中に3D画像を撮像する方法(未来型)と術前にCTを撮像しておく方法(現在型)をデザインした。術中の3D 画像を撮像する方法は、コストや時間の点で優れているが、手術計画を手術室で準備するため様々な計算の高速化を要するため未来型とした。本ガイドラインでは現在型のみを対象としている。
本システムの概観を図(次ページ)に示す。従来の下肢骨折の手術において用いられる牽引手術台と基本的には同じ構成で、従来法の足部ブーツを機械式に牽引したり、徒手的に回旋力をかけて整復する機構部分にセンサ及びモータをつけて同様の整復操作をロボットで行う。骨折整復支援ロボットシステムの概観。骨折整復支援ロボット、X 線透過性カーボンファイバー製手術牽引台(現在型)、画像誘導システム(Navigator)(未来型;本ガイドラインではこれを含まない)からなる。
整復支援ロボット機構は、上下、左右、前後の直進3軸、屈曲伸展、内転外転、内旋外旋の回転3軸の合計6軸の自由度のある整復動作が可能となっている。足部固定ブーツとロボット機構は力センサを介しているため、過度の力がかからないように設計され、非常停止やロック解除などソフトウエア制御に加えてメカニカルクラッチによる安全機構を備えている。
患者への装着部は、足部固定ブーツとカーボンファイバー製手術牽引台のテーブル部分である。いずれも、絶縁体で構成されていて電気的に生きた部分、高温になる部分はない。また、いずれもカーボンファイバー強化樹脂など汎用的な樹脂を用いており、健常皮膚への接触のみとなっている |
引用関連規格 |
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国内関連GL |
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海外関連GL |
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WG開始年月 |
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WG終了年月 |
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WGメンバー |
委員 (※は座長,五十音順,敬称略)
生田 幸士 日本生体医工学会代表/名古屋大学大学院工学研究科 マイクロシステム 工学専攻 教授
石原 謙 日本生体医工学会代表/愛媛大学大学院医学系研究科 医学専攻 生命環境情報解析部門 教授
伊関 洋 日本コンピュータ外科学会代表/東京女子医科大学大学院 先端工学外科学分野 教授
大森 繁 開発企業/テルモ(株)研究開発センター
菅野 伸彦 日本整形外科学会代表/大阪大学大学院医学系研究科 器官制御外科学 准教授
勝呂 徹 日本整形外科学会代表/東邦大学医学部整形外科学教室 教授
高山 修一 METIS推薦/オリンパス(株)研究開発センター 研究開発統括室長
千葉 敏雄 日本コンピュータ外科学会代表/国立成育医療センター病院 特殊診療部 部長
※土肥 健純 東京大学大学院情報理工学系研究科 知能機械情報学専攻 教授
友田 幸一 日本耳鼻咽喉科学会代表/金沢医科大学感覚機能病態学耳鼻咽喉科 教授
中澤 東治 開発企業/THK(株)MRCセンター 所長
森川 康英 日本内視鏡外科学会代表/慶應義塾大学医学部外科 教授
渡辺 英寿 日本脳神経外科学会代表/自治医科大学脳神経外科 教授
開発WG事務局
鎮西 清行 (独)産業技術総合研究所 人間福祉医工学研究部門治療支援技術グループ長
山内 康司 (独)産業技術総合研究所 人間福祉医工学研究部門治療支援技術グループ主任研究員 |
報告書(PDF) |
2008-E-DE-004-H19-報告書 |
報告書要旨(最新年) |
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承認済み製品(日本) |
(医療機器クラスⅢ) ①関節手術支援装置「ROBODOC」(Integrated Surgical System社) ②直達式骨折整復支援装置「FRAC-Robo」(東大、阪大、大阪南医療センター) |
承認済み製品(海外) |
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製品開発状況 |
製品に関連する規格:IEC 80601-2-77:2019(経済産業省 工業標準化推進事業テーマ) |
Horizon Scanning Report |
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