ナビゲーション医療分野共通部分 開発ガイドライン 2008

ガイドラインID 2008-E-DE-005
発出年月日
発出番号
WG名 ナビゲーション医療分野 (手術ロボット)開発WG
制度名 医療機器等開発ガイドライン策定事業(開発ガイドライン)
製品区分 医療機器
分野

ナビゲーション医療

GL日本語版ファイル

2008-E-DE-005 ナビゲーション医療分野共通部分開発ガイドライン2008

英文タイトル
GL英語版ファイル

GL:イントロ・スコープ

1. 序文

この文書は、ナビゲーション医療分野共通部分 開発ガイドライン(以下、本ガイドライン)の第二版である。第一版は本ガイドラインにより置き換えられる。(以下、下線部は第一版から更新された部分である)

【解説】
本ガイドライン(手引き)は、手術マニピュレータシステムの国内への導入、国際規格の動向、医療機器開発ガイドラインの充実などの最新の情勢に対応するものである。2008 年の第一版公表後の以下の動きに対応した。

1) IEC60601 シリーズが更新され、特に PEMS (programmable electric medical systems)とユーザビリティに関する事項が整理された。具体的には、IEC 60601-1-6:2010 は全体が医用電気機器のユーザビリティに関する内容となり、IEC 62366:2007「医療機器へのユーザビリティエンジニアリングの適用」を引用し、これを補うものに書き換えられた。IEC 60601-1-6 の旧版の骨子は、IEC 60601-1:2012 では 14 章に PEMS のリスクマネジメントとして組み込まれた。
2) 2012 年に「トレーニングシステム開発ガイドライン 2012」(経済産業省)[87]が公表された。
このガイドラインは、トレーニングカリキュラムの開発のガイドラインとなっている。
ナビゲーション医療分野の医療機器では、ユーザビリティエンジニアリングとこれを補うトレーニングが一体となって、機器(インフラ)と医療(ヒト)を包含する大きなシステムを成すと考えられる。そこで、本ガイドラインではリスクマネジメント、ユーザビリティエンジニアリングの各プロセスと、トレーニング開発プロセスの間の著しい関連性に着目し、これらを一連のプロセスとして行うことを提案している。
ナビゲーション医療分野では、ユーザビリティが他の医療機器にも増して重要となっている。手術ナビゲーション分野の医療機器の開発とは、ユーザビリティの開発と言い換えても過言ではない。ユーザビリティ開発は後付けではできないと断言できる。本ガイドラインでは開発プロセスの初期からユーザビリティエンジニアリングを開始することを提案している。
一方、第一版以来、本ガイドラインでは、開発から廃止までの機器のライフサイクルのなかで、リスクマネジメントを段階的に導入することを提案してきた。第二版ではユーザビリティエンジニアリング、トレーニング開発プロセスも同様に段階的に行うことを提案している。一方、革新的な医療機器を生み出す役割を担う大学などの研究機関では、厳密なマネジメントプロセスを常時運用することは現時点では困難であることが指摘されており、その配慮もおこなっている。
3) 2014 年に「ヘルスソフトウェア開発に関する基本的考え方 開発ガイドライン 2014」(経済産業省)及びこれを具体化した「ヘルスソフトウェア開発ガイドライン」((一社)ヘルスソフトウェア推進協議会)が公表された。医療機器におけるソフトウェアの設計管理の考え方が平易に示されており、本ガイドラインでもこれを取り入れた。
4) 機械的安全性については、JIS T0601-1 (IEC 60601-1) への準拠を求め、ISO 10218-1 あるいは ISO 13482 等の非医療用途のロボット関連規格は設計時の参考にできることに記載を整理した。2014 年に発行された ISO 13842 “Robots and robotic devices - Safety requirements for personal care robot”[86]の適用範囲は非医療用途に限定されており、ナビゲーション医療分野の医療機器には適用できない。しかしその内容はこのガイドラインの 4.3 節「機械的安全性」及び 4.6 節「ソフトウェアライフサイクル管理」で扱う事項、及び医療機器に適用される IEC 60601-1 の 9 章及び 14 章等と重複がある。国際規格の中で、機械安全関連規格と医用電気機器関連規格の間の重複については、ISO と IEC の医療ロボットの安全性に関する規格化検討ワーキンググループ(ISO TC184 SC2 IEC TC62 SC62A JWG9)の中で議論された。その結果、医療機器として準拠すべきは医用電気機器関連規格であること、その内容が、機械安全関連規格の内容を基本的に網羅しているとの結論に至った。市販の手術マニピュレータでも医用電子機器関連規格にのみ適合しているとされる。
そこで、このガイドラインの第一版では医用電子機器関連規格と機械安全関連規格を両論併記していたところを、前者への準拠,後者は参考とすることを明確にした。同様に、後者にのみ存在する機能安全に言及していた部分を改めた。
なお、薬事法が「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(以下、薬機法)に改正されたことに伴う、本ガイドラインの内容上の変更点は存在しない。

1.1. 目的

本ガイドライン(手引き)は、ナビゲーション医療分野における医療機器の開発過程の迅速化を図るための基本的な考え方を示したものである。

【解説】
本ガイドライン(手引き)では特に、基本設計段階から行うべきリスク解析及びその対策の基本的な考え方と、製品の開発に当たって開発者が検討しておくべき評価項目の考え方について、執筆の段階で考えられる項目ごとに述べている。本ガイドラインに沿って資料収集、検討を重ねることで開発工程における時間的ロスを減らし、適正なリソース配分計画がなされることを期待する。
また本ガイドラインは、現時点で考えられる国際的な整合性も満たしている。
本ガイドラインは万能の正解を示すものではなく、原則的な考え方とその応用の仕方、より詳しい情報の入手の仕方を示すことに重点を置いて作成した。本ガイドラインの対象とする分野は広い工学技術及び医学技術にまたがること、また本分野は発展途上であり、諸外国にも類似のガイダンスや規格類が存在しない。そこで本分野に共通する工学的及び医学的な原則の明文化に重点を置いた。今後、具体的な適用方法を示す目的で幾つかの機器の事例に当てはめていく。

本ガイドライン(手引き)は薬機法上の承認基準や認証基準のように、基準に適合することで承認等を約束するものではない。また、開発した精密手術用機器が本ガイドラインに適合することで、その機器の有効性や安全性を保証するものではない。また、本ガイドラインは臨床研究などの倫理上の指針を示したり、既存の倫理指針類を置き換えたりするものでもない。しかし、本ガイドラインに沿って開発を行えば、臨床試験を行うために必要な倫理審査委員会(IRB)における審査の参考や必要な技術的評価項目の洗い出しやデータ収集に役に立つはずである。
なお、薬機法上の承認申請に必要な承認申請資料の収集については、本ガイドラインと平行して検討された次世代医療機器評価指標「骨折整復支援装置に関する評価指標」「関節手術支援装置に関する評価指標」(H22/1/18 付 薬食機発 0118 第 1 号)及び「軟組織に適用するコンピュータ支援手術装置に関する評価指標」(H22/5/18 付薬食機発 0528 第 1 号)で述べられている。

1.2. 想定する利用者

本ガイドライン(手引き)は、精密手術用機器の製品化を企画する企業技術者、その基礎的研究を行う研究者及び大学専門課程以上の学生、大学や医療機関において、臨床研究を企画する研究者、臨床研究を行うための審査を行う倫理審査委員を想定する利用者とする。

【解説】
本ガイドライン(手引き)を理解して実施するには、設計者にあっては、汎用の産業用ロボットの製品設計の経験(高い信頼性、可用性、メンテナンス性の実現と安全対策)、医用電気安全、生物学的安全性、洗浄性・滅菌性に関する医療機器の設計開発の経験があれば有用であろう。基礎研究者にあっては、安全性に関する制限事項を念頭に置きつつ機器と人間(医師)の役割分担を最適化する高いバランス感覚を持つことで優れた機器の創案をリードする役割を期待する。臨床研究の倫理審査の委員にあっては、開発・設計途中の医療機器を対象としたものであり、個々の機器に固有の判断もあることから、本ガイドラインの厳格な適用は困難であるとしても、審査
において目標とする技術の水準の参考として、本ガイドラインを活用されることを期待する。

1.3. 本ガイドラインの適用される医療機器

精密手術用機器のうち、革新的なもの。

1.4. 本ガイドラインの適用される開発段階

精密手術用機器の着想・開発から薬機法上の承認申請(治験を要さない場合)若しくは治験を行う前(治験が必要な場合)の段階まで、 又は臨床研究を行う前までの開発段階で本ガイドラインを用いることができる。

【解説】
本ガイドライン(手引き)は、大学又は医療機関の倫理審査委員会が臨床研究の実施の可否を判断する際に、技術の到達目標の参考として用いられることが期待されている。また、学会などにより、中央倫理審査的な機能として Academic review board (ARB)を組織された場合には、そのような場での倫理審査等においても同様に用いられることが期待されている。

GL:本体

2. 定義
2.1. ナビゲーション医療(navigated surgery)

精密手術用機器を治療の主要なあるいは重要な手段として用いる医療。

【解説】
精密手術(precision surgery)と実質的に同義。

2.2. 精密手術用機器 (devices for precision surgery)

計測、解釈、情報提示あるいはエネルギー作用を行う処置あるいは治療用システム(あるいはその一部)で、その主要機能が位置及び/又は時間情報に関連付けられていることを特徴とし、主要機能を位置/時間情報に関連付けて記録可能で、精密・迅速・高品質の手術支援を行うことを目的とするもの[73]。

2.3. 試験評価

試験あるいは文献、文書の調査によって、仮説検証すること。

【解説】
わざわざこの語を定義したのは、仮説の検証をするためには試験よりも設計書などの文書の確認により行うほうが合理的な場合があるためである。
3. ナビゲーション医療分野の基本的考え方

3.1. 精密手術用機器の研究開発者の行うリスク等のマネジメントに関する基本事項
1. 研究開発の初期段階から製品開発まで、研究開発者が段階を追ってシステム的にマネジメントすべき事項が幾つか存在する。すなわち
(ア) リスクマネジメント
(イ) ソフトウェアライフサイクル
(ウ) ユーザビリティ
(エ) 使用説明書及びトレーニング開発プロセス
2. 研究開発者は、設計段階から遅くとも臨床研究に供する試作機を開発する段階において、当該機器に関する上記のマネジメントを実施すること。
3. リスクマネジメントの体制及び方法は ISO 14971 (JIS T14971)[26]を参考とすることができる。リスクマネジメントするべき項目については、次章以降及び附録Bを参考として、研究開発者が自ら決定する。
4. ソフトウェアライフサイクルのマネジメントの方法は JIS T2304 (IEC 62304)[27]を参考とすることができる。研究段階におけるソフトウェアライフサイクルのマネジメントは、作業速度を重視する観点から、アジャイル型の開発方針を採ることができる [84]。
5. リスクマネジメントに当たっては、基本性能(Essential Performance)と基礎安全(Basic
Safety)の同定を最初に行う。その実施に当たっては、想定する医療技術、ユーザー特性の検討など、ユーザビリティエンジニアリング及びトレーニング開発プロセスと並行して進めることが効率的である。なお、基本性能及び基礎安全の同定にあたっては、IEC60601-1:2012 (Ed.3.1) [34]で変更された定義を適用すべきである。
6. ユーザビリティに関しては IEC60601-1-6:2010 [35]及び IEC-62366:2007 [83]を参考とすることができる。ユーザビリティエンジニアリングは、デザインプロセスの最初期から取り組む事が重要である。その範囲には、手術中のユーザビリティだけでなく、術前の準備や設置、術後の回収、洗浄・滅菌などの手術環境での使用実態、製品の新規導入、メンテナンス、耐用期限といった製品のライフサイクルに関する事項が含まれる。
7. ユーザビリティエンジニアリングに当たっては、同時にトレーニング開発プロセスを実施することを勧める。トレーニング開発プロセスに関しては、「トレーニングシステム開発ガイドライン 2012」[87]を参考とすることができる。

【解説】
JIS T14971 (ISO14971)は国際整合されており、米国の IDE 制度が要求する design control にも用いることができる。リスクマネジメントの対象とする検討項目(=ハザード)の抽出は、基本的には開発する機器の特性、使用形態を考慮して開発者自らが考える事項であるが、
- 本開発ガイドライン及び次世代医療機器評価指標
- 既存の工業規格、規制事項など
- FDA の不具合情報データベース MAUDE に寄せられる、関連する機器の情報を参考とすることができる。

なお、 JIS T14971 に厳密に適合するリスクマネジメントを実施、運用することは大きな労力を要する。リスクマネジメントは一度リスクアセスメントを行ってそれで終わりではない。機器の改良や使用を予定する環境の変化などに応じて定期的な点検を行うなど、継続的な運用の努力が大事である。とくに開発途上の機器であれば、改良によってリスクアセスメントの結果もどんどん変化する。従って、大学などの研究機関でリスクマネジメントを行う際は、規格の遵守にこだわってリスクアセスメントで力尽きることがないように、独自の簡素化を工夫することにも留意する。

残留リスクと未知リスクは混同されやすい。残留リスクとは、本質安全設計及び防護手段が合理的なリスク対策として用いることができないハザードによる既知のリスクを指す。その様なリスクは、そのリスクが効用を下回っていると判断されたときのみ許される。一方、未知リスクとはこれまで世に知られていないリスクのことで、予め対策を準備することはできない(別の既知のリスクへの対策として準備した対策が偶然有効に作用することはあり得る)。

残留リスクに対しては、設計者が使用者(医師など)に対して、注意喚起を行うことで対応を依頼する。このとき、注意喚起により危害を回避することが合理的であると受け入れられるものでなければならない。すなわち、残留リスクを受け入れるには、
1. そのリスクに対する本質安全設計及び防護手段が、合理的に実施可能なものでないこと、
2. そのリスクについて使用者の注意喚起により対応することが、使用者の技術水準、医療の水準や慣行に照らして合理的であること、の2点を示す必要がある。例えば、本ガイドラインでは、手動の手術用顕微鏡に取り付けた精密手術用機器が手術用顕微鏡の高さを下げすぎることで患者の開頭部に衝突するリスクは、これを回避するための技術的防護手段が合理的に実施可能なものを超える一方、医師の注意義務により回避することが、従来の臨床手技の水準や慣行と照らし合わせて十分合理的なもの として、注意喚起で受容可能なものとしている。
なお、受容可能か否かの基準は、時代の要請の変化や新技術の登場により変わっていく。JIS T14971 のステップ 13 では製造後の情報によるリスクマネジメントの継続的実施を求めている。

ソフトウェアのライフサイクルマネジメントで最低限必要なことは、開発体制としてソフトウェアの作成と変更の履歴とバリデーションを研究開発者の決定した方法と頻度で実施することである。現在では、git などの履歴管理ツールやユニットテストなどを自動的かつ定時に実行する ctest (cmake)などのツールが利用可能である。
リスクマネジメント、ユーザビリティエンジニアリング、そしてトレーニングプログラム開発は相互に関連している。どのような知識とスキルを持ち、あるいは持たない使用者がどのようなタスクに使うのかといったユーザープロファイルに関する事項を明らかにした上で、どのような予見可能な誤使用や意図的な誤使用が想定されるか、などをシステムの開発を始める前に想定しておくことが望ましい。これらを行うために必要な知見や経験が不足する場合、それを補うための基礎的な研究が必要になる可能性がある。
逆に、システムの開発を漫然と開始した後で下記の検討を始めると、部分的な修正では回避できない、コンセプトの練り直しに匹敵する大きな変更を強いられる可能性がある。
なお、IEC 62366:2007 [83]を改訂する作業が進められており、ISO 14971 との整合が進められる予定である。

リスクマネジメント、ユーザビリティエンジニアリング、トレーニングプログラム開発のフローの相関図。IEC 62366:2007 [83]の図 A.1 の邦訳版(日本規格協会発行)をもとに作成。

3.2. 臨床研究時の試作品の実現過程における要求緩和

臨床研究時の試作品の実現過程における要求事項は、普及製品の実現過程の要求事項と比較して、緩和することができる事項及び注意深く行うべき事項が存在する。
1. 設計管理(design control)を行なうこと。これは、米 IDE の要求でもある。
2. ソフトウェア開発にあたっては、医療機器開発ガイドライン「ヘルスソフトウェア開発に関する基本的考え方 開発ガイドライン 2014」[88]あるいは(一社)ヘルスソフトウェア推進協議会「ヘルスソフトウェア開発ガイドライン」[89]を参考にすることが望ましい。
3. ユーザビリティエンジニアリングにおける、用途仕様から主操作機能の同定まで(IEC62366 [83] 5.1 から 5.4 節まで)を実施することが望ましい。
4. トレーニングシステム開発ガイドライン[87]を参考に、臨床研究に参加が予想されるスタッフにトレーニングすべき事項を抽出し、トレーニング教程を作成すること。臨床研究の研究責任者をその責任者とする。
5. 試作品の試作を行う工場は有効な QMS[75]への適合が確認されていなくてもよいが、ISO13845[25]あるいは ISO9001 に準じた品質管理体制を運用することができる。
6. 必要な安全性評価試験を行って、臨床研究の実施上問題がないことを確認すること。
ただし、ISO や JIS などの認証取得は要さず、生物学的安全性の評価についてはGLP[76]への適合を保有する実験施設で実施しなくてもよい。
7. 臨床研究を実施する医師が臨床試験の際に視覚その他の感覚によって気づかないハザード(例:電磁波、温度)、及び気づいても有効な回避行動を取ることが困難なハザードによる受容困難なリスクに関しては、安全性評価試験によってリスクコントロールされていることを確認すること。
8. 規格類で定められている試験方法は一般的な使用条件を想定したものであるので、試作品とそれが試用される環境に限定した、より簡易な試験方法で代えることができる。
9. 安全性試験、性能試験のうち、部品や材料の供給者が医療機器分野などにおいて実績を有し、その部品や材料の特性及び品質管理に関して信用できると判断した場合は、その特性等に関する標榜を受け入れて試験評価に代えることができる。
10. 代替治療法への切り替え(コンバージョン)条件を設定して、コンバージョンをリスクコントロールの方法として活用することができる。
11. 臨床研究に参加が予想されるスタッフへのトレーニング(座学を含む)の実施により、リスクマネジメントにおける注意情報の提供と見なすことができる。
12. 具体的な安全性試験項目、性能試験項目等に関しては、5 章に述べる。

【解説】
保険診療体制下で使用される医療機器は、広く一般に普及することを前提に、それを使用するユーザ(医療者)の持つ技術、それが使用される医療環境などを勘案した要求を満たさねばならない。また、使い捨て(単回使用)でない機器の場合、その製品寿命の間は標榜する性能を維持することを保証しなければならないし、必要ならばメンテナンス方法とその妥当性を保証しなければならない。薬事承認審査はこれらを含めた医療機器の有効性、安全性及び品質を確認する作業である。一方、臨床研究ではその様な幅広い利用者層、使用環境、製品寿命、使用形態を仮定すべきケースはまれである。

精密手術用機器の臨床研究における試作品の使用は、普及製品の使用とは以下の点で異なる。
- トップクラスの高い技術を持つ少数の医師と、同様に高い医療水準を持つ少数の医療機関における医療を仮定できる。
- 少数の試作品を製造するので、量産体制を必要とせず、量産体制の品質管理手法を適用することが適当でない。
- 設計が確立しておらず、設計変更を繰り返すことが前提である、設計プロセス管理、試作機の品質管理が重要である。
- 繰り返し使用を行う試作品であっても、長期間(数年以上)の製品寿命を仮定する必要が(普通は)ない。

革新的な精密手術用機器を実用化するには、臨床現場にて試用してそのフィードバックをかけてよりよい物としていくことが最も効率的で迅速で、倫理的にも受容できる方法として行われてきた。また世界的にもこの方法が採られ、関連する科学の研究開発の促進を併せて実現してきた。
そのための要求緩和と効率化をはからない限り、研究を行う者のインセンティブを生みだし、投資を行う者の投資リスクを適正化することができない。一方で被験者となる患者及び医療スタッフの安全の確保が前提となることは言うまでもない。

6.の例として EMC 試験が挙げられる。EMC 試験では一般的な医療環境を想定した試験方法、基準値を設定しているため、電波暗室内で漏洩電界強度を測定することで試験評価するが、臨床研究を行う特定の手術室で特定の周辺機器に対する影響だけを評価する目的であれば、それらの機器を実際に動作させて影響がないことを確認すれば十分である。

コンバージョン条件の考え方は、平成 17 年度ナビゲーション医療分野開発 WG 報告書 4.3.2 節に述べられている。

精密手術用機器の機能はソフトウェアがその本質である。医療機器のソフトウェアに関して、国際規格では IEC60601-1[34]と、ここで引用される IEC60601-1-6[35]及び IEC62304[27]への適合が求められている。また、IEC60601-1-6 が引用する IEC62366[83]に沿ったユーザビリティエンジニアリングの実施も求められている。しかしこれらの諸規格は要求仕様を開発の最初期に同定(固定)することを前提としている。この点は、新機能を創発的に追加していく研究プロセスとなじまない。また、大学などの研究機関でソフトウェアのライフサイクル管理を同規格通りに実行することは、リスクマネジメントを規格通りに実行すること以上に多大な労力を必要である。しかし、自動ドキュメント生成システム、バージョン管理システム、試験プロセスの自動化、バグトラッキングシステムなどの活用により、ルーチン化、省力化が可能であり、アジャイル型の開発方針を採ることも可能である[84]。

よって研究開発段階では JIS T2304 を厳格に実施する必要はない。ただし、臨床研究に供する試作機の設計では、用途仕様から主操作機能を同定(固定)して、それに基づいて設計管理を行うことが望ましい。その実施に当たっては、医療機器開発ガイドライン「ヘルスソフトウェア開発に関する基本的考え方 開発ガイドライン 2014」[88]を参考とすることを推奨する。同ガイドラインは医薬品医療機器等法の規制対象外のヘルスソフトウェアを主な対象としており、その様なヘルスソフトウェアの実現にあたって必要最小限の事項を抽出している。また、(一社)ヘルスソフトウェア推進協議会はこれを更に具体化した「ヘルスソフトウェア開発ガイドライン」[89]を公表している。

4. 個別リスクマネジメント項目
前章で示した考え方に基づき、精密手術用機器の設計開発者が実施するリスクマネジメント項目を示す。

4.1. 電気的安全性

1) 精密手術用機器の電気的安全性に関しては、JIS T0601-1:2014[30]及びその副通則[32] に適合すること。
2) 開発しようとする精密手術用機器が、電気手術器、除細動器など強い電磁気的雑音を発生する手術用機器と同じ室内で動作可能な状態に置かれる可能性がないか、検討すること。その際、機器の使用目的、使用方法など設計者が想定する状況以外に、医療現場でその様な状況に置かれる*可能性がないか、検討すること。
特に、電気手術器の場合は、隣室で使用する電気手術器からの電磁ノイズによる画像機器等への影響があり得ることも知られている。
その上で、開発しようとする精密手術用機器に電気手術器、除細動器などへの耐性を持たせるかどうかを決定すること。

* ここで言う「置かれる」には文字通り、使用を意図しない状態で置かれている状態も含んでいる。

【解説】
医療機器の電気的安全性に関しては、医療機器特有の技術要求があるので、注意すること。センサ、アクチュエータなどの電気安全は、それらの機能と設置位置に直結することから、初期段階から設計目標に含めること。
また EMC 適合性調査は、試験そのものに数百万円の費用を要する上に、対策は経験に依るところが大きい点に留意する。

電気手術器、除細動器に対する耐性を持たせる場合は、以下を参考に試験を行い確認することができる。
- 電気手術器への耐性の確認方法の一例を附録 A に掲載する。
- 除細動器への耐性の確認方法は、JIS T0601-1-2[32]の相当する項目を参考とすることができる。
除細動を要する状況では、精密手術用機器の操作手順のことを考えている余裕など無いことも想定すること。

なお、精密手術用機器と併用が想定される強い電磁気的雑音を発する医療機器として、MRI 装置がある。MRI 装置の発する RF パルスは、共鳴周波数の高周波で数キロワットのパルス状の電磁波であることから、センサその他の電気回路に影響を与えることが予想される。しかし、RF パルスに対する耐性の確認方法は参考になる方法が存在しない。

4.2. 生物学的安全性

1) 使用される材料の生物学的安全性は、ISO10993 シリーズ[33]及び厚生労働省の関連通知等[77]に従って評価する。
2) 体液接触部で使われる全ての材料について、材質や組成、又はその出所を明らかにすること。
3) 使用する材料が、医療用として安定的に供給され続けられるかどうかについて、設計段階で留意する。具体的には以下のような調査をすることができる。
(ア) その材料、部品は代替品を容易に見つけることができるか。
(イ) その材料、部品を生産・販売している企業は複数社あるか。
(ウ) その材料、部品を生産・販売している企業からその材料を医療用途に使用することに同意を得る見込みはありそうか。
(エ) その企業のその材料、部品につき、既承認の医療機器で同等の接触の性質及びその継続時間の使われ方をしている事例があるか。
(オ) その企業のその材料、部品につき、「メディカルグレード」など医療分野での使用を想定したグレードが設定されていないか。そのグレードの材料について、生物学的安全性に関する試験結果を提供してもらえるか否か。

【解説】
使用する材料の選択は、医療機器の機能に大きな影響を与える。特に機能性の材料であれば、その材料が使用できない場合は設計の初期段階からやり直しになりかねない。材料の生物学的安全性(細胞毒性など)については、設計における材料の選択段階から留意する。
また、材料を医療機器に使用することを拒否する素材メーカーも存在することから、機能上重要な材料については安定供給を受けられるかどうか確認を取ることを留意する。

4.3. 機械的安全性

1) 精密手術用機器の機械的安全性に関しては、JIS T0601-1:2014[30]に記載されている機械的安全に関する要求事項を満たすよう設計する。また、ロボットに適用される機械安全規格 ISO 13482(生活支援ロボットの安全規格)[86]、ISO10218-1(産業環境ロボットの安全規格)[24]及びこの規格の上位規格[3-5]、「次世代ロボット安全性確保ガイドライン」[79]を参考に設計を行うことができる。
2) 規格の適用にあたって,以下に留意すること。
(ア) 本質的安全設計及び/又は、安全防護及び付加保護方策を検討すること。本質的安全設計を行った後に、なお残留するリスクに対して安全防護及び付加保護方策を検討する。
(イ) JIS T 0601-1 において、ME 機器は単一故障状態において受容できないリスクを生じない(単一故障安全)ように設計・製造すると規定されている。
(ウ) 安全防護の手段として制御を用いる場合は、機械安全規格の安全関連制御システムに関する要求事項を参照して、適切な安全機能を実現するよう設計する。
3) ISO10218-1 の「減速制御」(250mm/sec 以下の速度で動作させること)は適用しなくてもよい。
4) 精密手術用機器のソフトウェアの開発プロセスは、JIS T 2304[27](IEC 62304)に従って実施する。
5) この他に対応すべきハザードとして以下を含めること。
(ア) 停電に対するリスクコントロール:使用する外部電源が途絶した場合に受容できないリスクを呈さないこと。復電した場合に意図しない動作などの受容できないリスクを呈さないこと。また、復電後すみやかに動作復帰できるよう留意する。
(イ) JIS T0601-1[30]に定められた「患者の解放」を満たすこと。

【解説】
設計にあたっての基本の考え方は日本ロボット工業会「高齢者等福祉用ロボットの標準化に関する調査研究報告書」、経済産業省「次世代ロボット安全性確保ガイドライン」などを参考にすることができる。

工学的には、ISO10218-1[24]等の要求する安全対策を検討することができる。ただし、産業分野での安全対策は医療用途では必ずしも常に有効に機能するものでないので、独自の安全対策を盛り込む必要がある。すなわち、ISO10218-1 の中で適用困難な場合を生じうるのは以下の点である。
- 安全防護物(柵及びセンサなど)で作業者とロボットを隔離すること: 人間共存ロボットでは隔離は合理的な安全防護とならない。なぜなら、隔離は「機械の使いやすさを損なわず、かつ機械の意図する使用する目的を妨げないことが重要である」(ISO12100:2010 (JIS B9700:2013) [3])に反するためである。隔離に代わる本質安全設計及び/又は、安全防護及び付加保護方策を検討すること。トルクリミッタなどを用いて作用力の上限を設けて、傷害に至る過大な負荷を加えない、衝突回避の余裕を与えるなどが考えられる。
- 異常時にアクチュエータを非常停止させること: 「止まらずに動き続けねばならない」動作モードにある場合は、非常停止はリスク低減策として採用できない。この動作モードにある場合には、高い信頼性を持たせることでハザードが発生することを極力回避するほかに対策は存在しない。設計者は、本当にこのようなモードに依存しないと想定する治療法が実現できないのか(非常停止しても良い実現手段、手動等の代替手段が存在しないか? 非常停止すると姿勢を維持できない機械は、姿勢を保持するように設計できないか?)、そのリスクを負ってもそれを上回るベネフィットがその治療法に存在するのかを検討すること。

3): ISO10218-1 [24] 5.6 節 「減速制御」で定める、250mm/sec という速度は、健常な工場作業者が産業用ロボットのエンドエフェクタが自分に向かって運動している際に回避可能な速度を実験的に求めるなどして決定している。精密手術用機器に対してこの仮定をそのまま適用することはできない。

5): IEC60601-1 [34] 9.2.5 節「患者の解放」では、「故障又は停電、保護手段の動作又は非常停止時に、患者を迅速かつ安全に救出する手段を備える」としている。

なお、機械安全関連の国際規格は非常に数が多く、最新版の翻訳 JIS が発効していない物が多い。最新版の国際規格を入手して対応をはかることが望ましい。邦文の参考書[47-49]も出版されている。

4.3.1. 非常停止

1) 緊急停止装置を設ける場合、JIS T 0601-1[30]に定められた要件を満たす様に設計する。
2) 非常停止の実施が新たなハザードとなる可能性がある場合には、以下のように非常停止の方法とその妥当性を検討すること。
- 非常停止する条件(ユーザの意図に反する誤動作、安全機構作動時等)
- 非常停止中の状態表示
- 採用する停止カテゴリ
- 停止中の患者及び医療従事者への安全性の確保
- 非常停止後装置の再稼働の迅速性

【解説】
非常停止の設計にあたっては、機械安全関連規格が参考となる。ISO10218-1 [24]では、「保護停止」という概念を導入して、非常停止と区別している。非常停止(emergency stop) 次のことを意図する機能
- 人に対する危険源を又は機械類若しくは工程中のワークへの損害を避けるか又は低減する。
- 人間の単一の動作によって停止指令を出す。
保護停止(protective stop) 安全防護のために動作を整然と中断でき、再始動を容易にするプログラムロジックを含む運転中断の種類。

非常停止は真の意味の危険時の使用を目的とする、まれに使用されるものであることを想定している。非常停止及び非常停止後の復帰(再起動)に関しては、ISO13850[7、13]及び ISO14118[10] に規定されている。産業機械などの分野では非常停止後の復帰(再起動)に起因する事故事例が多いことから、これらの規格では再起動の手順などを規定している。
例:
- 動作復帰する場合は、IEC60204[14、15]の停止カテゴリ 0 あるいは 1(非常停止状態)から一旦停止カテゴリ 2(サーボ制御により静止した状態)を経てから動作開始しなければならない。(JIS B9714 [10] 6.3.2 節)
- 非常停止の解除は、これを作動させた非常スイッチを解除することなしに行われてはならない(JIS B9714[10] 6.3.2 節)。

これに対し、ISO10218-1 では、「保護停止」を規定している。保護停止は場合によっては使用の都度発動されることも想定している。本来は、作業者が作業空間内の一定の距離に近づいた際にシステムを停止させるものである。すなわち、システムが正常動作している時にシステム以外の環境要因により発生するハザードを防ぐためのものである。精密手術用機器の安全方策として保
護停止を利用する場合は、保護停止を発動させる条件につき検討すべきである。

4.4. 安定性・耐久性、洗浄・滅菌性
4.4.1. 安定性・耐久性

精密手術用機器の研究開発では、可動部品や使用ごとに汚損する部位の耐用期限の設定について、設計段階から検討すること。

【解説】
耐久性は、メンテナンス性などと関連するので、設計段階からメンテナンスの際の交換部分へのアクセス、誰がそれを行うか、どれくらいの頻度で行うかについて留意する。
安定性とは、薬学に由来する概念であり、化学物質の経時変化に対する変化の無さを指す。精密手術用機器の場合、滅菌済みで出荷される部品の滅菌度やシールの維持などに関して安定性が問題となりうることに留意する。

安定性及び耐久性の評価には経時変化など長い期間を要することから、設計開発段階の適切な時期に開始しないと、全体の開発工程を遅延させることもありうることに留意する。またこれらを加速試験で行うことは、加速の方法の妥当性の説明が求められることに留意する。

なお、動作に伴い摩耗粉などが発生する場合については、4.5 節にて扱っている。

4.4.2. 洗浄・滅菌性

洗浄・滅菌性に関しては主として、1)機器を介して手術野を汚染するハザード、2)洗浄・滅菌によって機器が損傷するハザード、3)いったん洗浄・滅菌したものが使用までに再汚染されるハザード、4)洗浄・滅菌の工程残留物によるハザードがある。
1. 開発しようとする精密手術用機器が、滅菌状態の部位に接触する可能性があるかどうか、検討すること。
2. その可能性がある場合は、滅菌を行う部位と、行わない部位の区画を行い、前者を滅菌する方法を決定すること。
3. さらに、滅菌を行う部位を単回使用とするか再利用を許容するかを決定すること。再利用を許容する場合、必要な洗浄方法やオーバーホールの方法、再利用可能かどうかの判定方法と、それらを誰が行うかを決定すること。
4. 洗浄・滅菌の効果については、ISO 等の定めるバリデーション方法に従って検証することができる。
5. 洗浄・滅菌による機器の損傷についても留意する。
6. 試験方法は、AAMI TIR12:2010 “Designing, testing, and labeling reusable medical devices for reprocessing in health care facilities: A guide for medical device manufacturers” [85]などを参考にすることができる。

【解説】
洗浄・滅菌性のために設計変更するのは大きな時間のロスとなりうることに留意する。
鋭角の角を持つめくら穴や狭い隙間は洗浄しにくい。洗浄のしやすさについては、規格など成文化された規範がないが、現場を知る人にアドバイスをもらうことができる。

機器を介して手術野を汚染するハザードを検討する際は、機器の清潔領域以外の部分からの飛散物(エミッション)や、そこを伝って流れてくる液体(洗浄用の生理食塩水など)による汚染も考慮すべきである。

JIS T0601-1 [30]の 11.6 節において清掃、滅菌、消毒が取り扱われているが、それが扱うハザードは、機器が破損するハザードのみである。なお、JIS T0601-1 の旧版(2005 年版)では試験方法として洗浄や滅菌の反復回数を具体的に 20 回と定めているが、最新の JIS T0601-1:2014 [30] 及び IEC60601-1:2012[34]では洗浄条件などはリスクマネジメントによって個別の事情を勘案して決定すべきであるとしている。

滅菌の妥当性検証(バリデーション)に関しては、JIS T0801-1[38、39、80]などで述べられている。また残留エチレンオキサイドガスの濃度に関しては、JIS T0993-7[81]に試験方法が述べられている。医療機器の滅菌と滅菌バリデーションに関しては、附録の参考書[67-72]も参考にできる。

洗浄・滅菌が困難なものに対しては、滅菌ドレープによって覆う方法がある。ただし、この方法はドレープの端部分からの汚染物の術野への流入、ドレープの破損(ロボットなどの可動部に挟まって破損しうること)、不透明のドレープで覆うと内側が観察困難となること、ドレープが大きな感染性医療廃棄物となることに留意する。


4.5. エミッション

1. 精密手術用機器から外部環境に放散する物理化学的影響につき影響評価すること。特に以下のエミッションについては必ず評価すること。
(ア) 動作により生じる摩耗粉、潤滑剤
(イ) 振動、騒音
2. 術野洗浄等の目的で注入した生理食塩水などの液体が、術野に再流入しうる場合、その液体による術野汚染が起こりうることに留意する。

【解説】
精密手術用機器から外部環境に放散する物理化学的影響としては、粉塵、摩耗粉その他機器から放出される物質、振動、騒音、電磁波や放射線がある。騒音に関しては、JIS T0601-1[30]及び JIS B9700-1[3]で言及されている。電磁気的エミッションについては、電気安全性の項目でカバーされている。

エミッションによるハザードの対象は、患者の他に術者もなりうる。騒音、振動などは術場のアラーム音などを遮蔽して潜在的な危険源となるほか、手術スタッフの労働安全上の保護が必要となる。また、患者体液などの飛散物により手術スタッフが感染するハザードがあり、これが疑われる例が報告されている。

動作により生じる摩耗粉、潤滑剤に関しては、術場環境の汚染、粉塵による毒性などのハザードがある。どれくらいの量の摩耗粉までなら許容できるという基準を一律に定めることは困難である。

ワイヤ伝達機構部などでは、以下に留意する
- 発生した摩耗粉が機械内部などに蓄積して、一度に放出される可能性(溜まりやすい構造は避ける)
- 生理食塩水などが流れて摩耗粉が術野に達する可能性

また、流体圧アクチュエータの伝達物質が漏れ出して術野を汚染するハザードにも留意する。生理食塩水を用いることは、その食塩水の清潔性が保証されない限り、汚染防止の根本的な対策とならず、また貯留した液体の清潔性を保ちこれを保証することは簡単ではないことに留意する。

4.6. ソフトウェアライフサイクル管理

遅くとも臨床研究に供する試作機を開発する段階以降で JIS T2304[27] 「医療機器ソフトウェア―ソフトウェアライフサイクルプロセス」に準拠したソフトウェアライフサイクル管理工程を導入することができる。

【解説】
医療機器ソフトウェアは、医療機器の安全性に直結する重要な要素である。ソフトウェアの品質はその開発工程と維持工程の管理(ライフサイクル管理)に他ならず、米国では FDA ガイダンスにより規制されていることに留意する。これらを総合した JIS T2304 を開発段階から導入することができる。
なお、IEC62304 の改訂版の審議が進んでおり、IEC82304-1 “Health Software – Part 1: General requirements for product safety”として、法上の医療機器だけでなくヘルスケア関連ソフトウェア全体を包含し、リスクマネジメントを含むより包括的な規格となる見込みである。

4.7. 治療目的で放射するエネルギー

そのエネルギーが生体に与える影響の他に、併用される医療機器などとの相互作用、手術場環境での影響についても検討すること。

【解説】
「治療目的で放射するエネルギー」には、力学、電流、電磁波、超音波、レーザーなどが含まれる。
5. 臨床研究の実施前までに試験評価する項目

臨床研究を実施するに当たっては、倫理審査委員会等からその臨床研究を実施しても差し支えないことを示すための試験評価結果を求められることがある。どの項目につきどのような試験評価が必要であるかについては、個々の精密手術用機器のリスクマネジメントにより決定すべきであるが、本ガイドラインでは一般的な考え方を示す。

試験評価は以下の3つに分類される。
1) 安全性試験評価
2) 性能試験評価
3) 手術室での動作試験

これらにつき、臨床研究までに試験評価して妥当性を確認しておく代表的項目を挙げる。

5.1. 安全性試験評価

臨床研究の際には、認証機関による規格適合調査にかえて、開発者自らあるいは認証機関以外の試験機関で試験評価をおこなうことができる。

【解説】
安全性試験については、JIS などの規格によって試験法が定められている項目が多い。さらに、 GLP のように試験実施の基準を求められるものもある。本ガイドラインでは、3.2 「臨床研究における要求緩和」の原則に従って、JIS 等の認証取得、規格の定めるとおりの試験法、その試験に必要な実施の基準の適用を必須としないこととした。

5.1.1. 電気的安全性

1) 漏れ電流による電撃に関しては、患者接続部 をもつ場合は試験を実施すること。
2) 患者測定電流 をもつ場合は試験を実施すること。
3) 絶縁抵抗の計測、耐圧試験についても留意する。
4) 装着部 の温度が許容範囲内であることを確認すること。
5) EMC 試験評価は、IEC60601-1-2 の規定する試験に代わり手術室での動作試験で行うことができる。
6) 電気手術器からの作用など、4.1 節で述べる「強い電磁気的雑音」の影響に関して手術室内で試験を実施すること。

【解説】
1), 2)…漏れ電流による電撃、患者測定電流を持つ場合のリスクは、視覚その他の感覚によってその危険性を認知できない上、ハザードが発生した場合に危害を回避する余裕がないので試験を実施することを基本とする。ただし、リスク評価の結果、構造的に患者接続部をもたず、患者に電流が流れることが起こらないと判断された場合はこれらの試験を省略することができる。
3) …絶縁抵抗計測、耐圧試験は測定器があれば簡単に実施することができる。
4) …接触部が急激に温度上昇すると、これを医師が目視などで発見することができない可能性がある。温度の許容値はリスクマネジメントにより定める。JIS T0601 では接触部の温度の許容値を具体的に定めているので、参考にすることができる。測定方法は部位や目的により適切に定める。危害を及ぼす温度に対する余裕が確認できることが重要である。
5) …EMC 試験は試験に要するコストが大きいこと、臨床研究の場合は特定の使用環境(手術室)における特定の周辺装置との相互干渉が無いことが確認できれば十分であることから、手術室での動作試験の際に実施することで代えることができる。
6) …試験方法は附録 A を参考にすることができる。附録 A では 400W の定格出力を持つ電気手術器を使用するように述べているが、その出力を持つ電気手術器は一般的ではない。5)の考え方に沿って、臨床研究を実施する手術室で用いられている電気手術器の最大出力を用いて試験を行えば十分である。

5.1.2. 生物学的安全性

1) 体液接触部で使われる全ての材料の材質や組成、あるいはその出所を明らかにすること
2) 体液接触部で使われる全ての材料につき、JIS T0993-1[33]に従って試験すること。ただし、必ずしも GLP 省令に準拠しなくてもよい。
3) 2)項において次に挙げるいずれかに該当する場合は、試験を省略することができる。
(ア) メディカルグレードを標榜する材料で、適切な安全性試験結果が添付されていて、信頼ある業者から納入された場合
(イ) JIS 規格に適合する組成のアルミ合金、鉄系合金、チタン合金あるいはセラミックスで、信頼ある業者から納入された場合
(ウ) 既承認の医療機器で、同等の接触の性質及びその継続時間の使われ方をしている材料
4) 1)項において出所が不明の材料は、2)項に従って試験を行うこと。

【解説】
生物学的安全性は臨床研究であることを理由に要求緩和することが一般的には容易でない。これは、物質が体内に拡散すると、回収が困難であること(医薬品と同様の性質)、それが危害を生じうるか否かはその毒性等を定量的に評価しないと判断困難であることによる。

しかし、材料の生物学的安全性試験は初期の研究開発段階では大きなコストと長い評価時間を要することから対策が必要である。また手術機器の場合、長くても数時間の使用であること、手術器具に利用される材料には生体への影響がないことが知られている実績のある物もある。すなわち、精密手術用機器の場合、JIS T0993-1[33] 4 章の「医療機器のカテゴリー」は、身体への接触として「組織/骨/歯質」への「一時的接触」(24 時間以内)になるものが多い。その様な接触形態を仮定して、さらに手術器具で多用される合金、セラミックスで規格により組成を同定できる場合は、リスクは受容できる。

また、メディカルグレードを標榜する材料の場合は、その材料の身体接触の性質及びその継続時間に関して必要な試験項目に相当する安全性試験結果が添付されている場合は同じ試験を繰り返す必要はない。

5.1.3. 機械的安全性

1) 機械的安全性は、設計時にリスクマネジメントすべき事項(4.3 節)である。
2) 非常停止など、設計した機能が意図通りに動作するかを試験すること。動作試験は実験室だけでなく、非患者環境下の手術室内でも実施すること(5.3 節)。

5.1.4. 洗浄・滅菌性

1) 繰り返し使用する部分について、臨床研究を実施する間の使用期間・使用回数を定めること。
2) 定められた使用期間内において、洗浄・滅菌性が担保されるか 4.4.2 節に従って検証すること。
3) 定められた使用期間内において、洗浄・滅菌による機器の性能への影響を評価すること。

5.2. 性能試験評価

機器の性能試験評価項目は、その機器の目的、特性などに応じて設定すること

【解説】
精密手術用機器の多くに共通して検討される試験評価項目として、位置精度、時間遅れ、外乱要因が挙げられる。

5.3. 手術室での動作試験
実際の患者の存在下で機器の評価を実施する前に、実施しようとする試験項目が、本当に患者存在下でないと有効なデータが得られないのかどうか、今一度検討すること。
ここでは、実際に臨床研究を実施する予定の手術室において、患者のいない状態(患者以外の機器が存在する、あるいは患者ダミーを用いてもよい)で評価・確認可能な試験項目について述べる。発見された問題点を解決してから臨床研究に進むこと。

1. 患者のいない状態で以下の項目を実施(ドライラン)すること。
2. 開発した機器を、実際の手術で運用した状況をイメージし、手術工程を見積もる。
3. 医療機関にて滅菌する部位については、その医療機関で用いている滅菌器で滅菌できること(滅菌トレイなどに収まること、など)を確認する。
4. 患者以外の全ての機器、スタッフを実際の手術に沿って術室内に配置して、機能させ、撤去する。動作に必要なスタッフが足りているかを確認する。また、ケーブル類が足を引っかけたりしない様に配置できること、非常停止スイッチの配置が適正であるかを確認する。
5. 術室内の他の機器に受容できない影響がないことを確認すること。影響を確認すべき装置としては例えば、
(ア) 生体計測装置(心電モニタなど)
(イ) 麻酔器
(ウ) 術室内の空気圧、吸引圧を利用する場合は、それらに過大な負荷とならないこと
(エ) 術室内の空調、空気流に大きな影響を与えないこと
6. 術室内の他の機器から受容できない影響を受けないことを確認すること。
7. 術室内にて非常停止、保護停止などの安全機能、復帰動作が設計通りに動作することを確認すること。
8. 性能試験のうち、術場環境の影響を受けることが予想されるものは、性能試験を術室内にて行い、実験室などで行った結果と同等の成績となることを確認すること。

【解説】
1… 術室内でのドライランにより、設計上の不備などを洗い出して、適切な対策を講ずることは非常に重要である。そのためには、ドライランをいかにして実際の手術に近づけるかが重要で、麻酔医、看護師などを含むチームとして取り組むことが望ましい。
実際の手術に近づけるために動物実験を実施することもできる。ただし動物愛護法の規定するところに沿って実施すること。動物実験は、ファントム実験、仮想現実感を用いたシステム、各種計算機シミュレーションなどで代替可能となる場合もあることに留意する。大型動物を用いた実験は、多額の費用を要することにも留意する。その様な実験を行う環境を提供する施設が国内に数カ所あるが、一件あたり 100 万円弱を要する。

5… 術室内の他の機器との相互作用の確認は、実際の術場環境で試験することで、患者さんのいる手術で問題にぶつからないための確認をすることができる。また、医用画像計測装置(特に MRI など)など据え付けられていて実験室に持ち出して試験することが困難なもの、放射線源やX線装置のように法規制により実験室に持ち出して試験することが容易でないものについては術室内で試験評価を行うことができる。

6… 術場環境の影響を受けることが予想されるものの例としては、ナビゲーションで用いる位置計測器があり、光学式の位置計測器では手術照明の影響や、レイアウトの影響、磁気式の位置計測器では手術台、手術器具など周囲の磁性体の影響について留意する。なお、影響因子とその対象が明らかである場合(手術照明の光学式位置計測器への影響など)は、その因子と対象のみについて試験を行えばよいことに留意する。

8… 術室内の機器機具類と組み合わせて性能を発揮する機器については、実験室で性能評価した結果が術場環境だと異なる可能性のある場合は、性能について再評価する必要が生じることに留意する。

GL:付属資料

附録

附録A: 電気手術器に対する電磁両立性の試験方法

本試験に使用する電気手術器は、以下の仕様を満たすこと。
1. IEC60601-2-2 に適合し、
2. 定格出力 インピーダンス300-500オームにおいて300W以上の矩形波の出力モードを有し、
3. ピークトゥピーク電圧 10000V以上のスプレーモード出力モードを有し、
4. 搬送波周波数は 400kHz から 1MHz である。
なお、2 と 3 については、異なる2台の電気手術器であっても良い。

放電電極及びそのコードはそれぞれ、その精密手術用機器と電気手術器の想定される使用条件に沿って配置させる。コードが精密手術用機器に接触若しくは接近する可能性のある場合は、その様に配置する。

精密手術用機器は、静止状態及び動作中のそれぞれに付き、以下の条件で精密手術用機器が意図しない動作をしないことを確認すること。
1. 出力設定: 300W 出力、及び最大出力のスプレー出力モード
2. 動作状況: 以下の場合につき試験する
3. 電気手術器を開いた回路に対して動作させた場合
4. 電気手術器の両電極を短絡させた状態で動作させた場合
5. 精密手術用機器が患者身体及び電気手術器を経由する閉回路を構成する可能性のある露出金属部分を有する場合は、その露出金属部分に一方の電極を接触させて電気手術器を動作させた場合。
併用される周囲の他の機器(把持している硬性内視鏡、機器の固定されている手術台など)などを介して閉回路を構成する可能性も検討すること。
6. 記録項目: 試験結果の他、電極及びコードの配置の様子、負荷抵抗(使用した場合)についても記録する。

なお、短絡保護機能を持つ電気手術器を用いる場合は、人体組織を模した負荷抵抗を導通させることで実施する。

【解説】
精密手術用機器は電気手術器と併用した際にハザードを呈してはならない。電気手術器との併用を想定しない精密手術用機器であっても、少し離れた場所(隣の手術室など)で電気手術器を出力させたことにより誤動作する可能性、及び開発者の想定しない状況で併用された際の誤動作の可能性を排除する必要がある。

電気手術器が発生させる電磁ノイズに対する耐性試験を含む規格として、IEC 60601-2-46:2010[37] (手術台の電気安全の個別要求事項)がある。しかしそのまま精密手術用機器に適用可能ではない。手術台は、手術室内で使用する大型のメカトロニクス製品として、精密手術用機器に近い特性をもつ機器である。上記の実験条件はそこで同規格 36.101 項を参考に定めた。

ロボティック機器の場合は、各種センサへの偽信号の混入による誤動作も予想される。この場合、電力とともに、誘導する電圧も問題となりうる。従ってスプレーモードのように高電圧を出すモードについても対策が必要である。ただし、スプレーモードでの出力電圧や波形については上限や規格が存在しない。2007 年 12 月現在、国内で製造販売されている電気手術器のスプレーモードのピークトゥピーク電圧の最大値が 10000V であったことから、この電圧値を目安とした。これよりも高い電圧値の電気手術器が入手できる場合、その使用を勧める。

なお、スプレーモードの影響に関しては、精密手術用機器に限らずいまだ十分な検討がなされているとは言えないので、継続的に調査する必要がある。


附録B: リスクマネジメントにて対策すべきハザードを抽出する際に参考となる規格類

ISO 14971 (JIS T14971)「医療機器のリスクマネジメント」附属書 A, D
ISO 14121 (JIS B9702) 「機械類の安全性-リスクマネジメントの原則」附属書 A
ISO 10218-1 (JIS B8433-1)「産業用ロボット―安全要求事項」本文及び附属書 A
ISO 13842:2014 “Robots and robotic devices - Safety requirements - Non-medical personal care robot”
(パーソナルケアロボットの安全要求事項)医療機器を対象としないが、参考となる経済産業省「次世代ロボット安全性確保ガイドライン」 (2007)
GHTF 文書「医療機器の基本要件」(“Essential Principles of Safety & Performance of Medical Devices” SG1-N68:2012) 、又は「薬機法第四十一条第三項の規定により厚生労働大臣が定める医療機器の基準」(平成 17 年 3 月 29 日付厚生労働省告示第 122 号) 及び薬事法第四十一条第三項の規定により厚生労働大臣が定める医療機器の基準の一部を改正する件」(平成 26 年 11 月 5 日厚生労働省令第 403 号)
IEC60601-1:2012「医用電気機器-基礎安全及び基本性能に関する一般要求事項」
FDA MAUDE (Manufacturer and User Facility Device Experience)データベース http://www.accessdata.fda.gov/scripts/cdrh/cfdocs/cfMAUDE/search.cfm

対策すべきハザードは、ここに挙げた規格類の述べるものに限定されない。最終的には個々の開発事例毎に開発者が関連する情報を幅広に収集して、予防的な観点からハザードを列挙していく努力が必要である。



附録C: 関連規格,文献集
国際規格と JIS 規格の間に対応関係がある場合(JIS が国際規格の翻訳規格である場合)は両方の規格番号を記載した。翻訳 JIS 規格の元版の国際規格よりも新しい国際規格がある場合、※印を付している。
[1] ISO/IEC Guide 51:2014 Safety aspects-Guidelines for their inclusion in standards (安全側面―安全面を規格に含めるための指針)※Guide 51 は 2014 年に大きく改正された.
Guide 51 は ISO, IEC 規格とその翻訳 JIS 規格の根幹をなすものであるが,それら規格は今後Guide 51 の変更点を反映する予定.
[2] ISO/IEC Guide 63:2012 Guide to the development and inclusion of safety aspects in International Standards for medical devices
(医用機器の国際規格への安全面の開発及び取込みのためのガイド)
[3] JIS B9700-1:2013 機械類の安全性-設計のための一般原則-リスクアセスメント及びリスク低減 (ISO 12100:2010)
[4] (削除)
[5] (削除)
[6] JIS B9705-1:2011 機械類の安全性―制御システムの安全関連部―第 1 部:設計のための一般原則(ISO 13849-1:2006)
[7] JIS B9703:2011 機械類の安全性―非常停止―設計原則(ISO 13850:2006)
[8] JIS B9712:2006 機械類の安全性―両手操作制御装置―機能的側面及び設計原則 (ISO 13851:2002)
[9] JIS B9711:2002 機械類の安全性―人体部位が押しつぶされることを回避するための最小すきま(ISO 13854:1996)
[10] JIS B9714:2006 機械類の安全性-予期しない起動の防止 (ISO 14118:2000)
[11] (削除)
[12] JIS B9705-1:2011 機械類の安全性―制御システムの安全関連部―第 1 部:設計のための一般原則 (ISO 13849-1:2006)
[13] (削除)
[14] JIS B9960-1:2008/AMENDMENT1:2011 機械類の安全性―機械の電気装置― 第 1 部:一般要求事項(追補 1)(IEC 60204-1 Amd.1 Ed.5.0:2008)(※IEC 60204-1 Ed. 5.1:2009)
[15] IEC 60204-1 Ed. 5.1:2009 Safety of machinery - Electrical equipment of machines - Part1: General requirements (※JIS B9960-1:2008/AMENDMENT1:2011)
[16] IEC/TR 61508-0:2005 Functional safety of electrical/electronic/programmable electronic safety-related systems - Part 0: Functional safety and IEC 61508
[17] JIS C0508-1:2012 電気・電子・プログラマブル 電子安全関連系の機能安全―第 1 部:一般要求事項(IEC 61508-1 Ed.2.0:2010)
[18] JIS C0508-2:2014 電気・電子・プログラマブル電子 安全関連系の機能安全―第 2 部:電気・電子・プログラマブル電子安全関連系に対する要求事項(IEC 61508-2 Ed.2.0:2010)
[19] JIS C0508-3:2014 電気・電子・プログラマブル電子 安全関連系の機能安全-第三部:ソフトウェア要求事項(IEC 61508-3 Ed.2.0:2010)
[20] JIS C0508-4:2012 電気・電子・プログラマブル電子 安全関連系の機能安全―第 4 部:用語の定義及び略語(IEC 61508-4 Ed.2.0:2010)
[21] JIS C0508-5:1999 電気・電子・プログラマブル電子 安全関連系の機能安全-第五部:安全度水準決定方法の事例 (IEC/FDIS 61508-5:1998) (※IEC 61508-5 Ed.2.0:2010)
[22] JIS C0508-6:2000 電気・電子・プログラマブル 安全関連系の機能安全-第六部:第二部及び第三部の適用指針 (IEC/CDV 61508-6:1998) (※IEC 61508-6 Ed.2.0:2010)
[23] JIS C0508-7:2000 電気・電子・プログラマブル電子安全関連系の機能安全-第七部:技術及び手法の概観 (IEC/CDV61508-7:1998) (※IEC 61508-7 Ed.2.0:2010)
[24] ISO 10218-1:2011 Robots for industrial environments - Safety requirements - Part 1: Robot (※JIS B8433-1:2007 産業用ロボット−安全要求事項−第1部:ロボット)
[25] ISO 13485:2003 Medical devices-Quality management systems-Requirements for regulatory purposes (JIS Q13485:2005 医療機器―品質マネジメントシステムー規制目的のための要求事項)
[26] JIS T14971:2012 医療機器―リスクマネジメントの医療機器への適用(ISO 14971:2007)
[27] JIS T 2304:2012 医療機器ソフトウェア―ソフトウェアライフサイクルプロセス (IEC 62304:2006 Medical device software - Software life cycle processes)
[28] USFDA CDRH, General Principles of Software Validation; Final Guidance for Industry and FDA Staff.
[29] USFDA CDRH, Guidance for Industry, FDA Reviewers and Compliance on Off-The-Shelf Software Use in Medical Devices.
[30] JIS T0601-1:2014 医用電気機器―第 1 部:基礎安全及び基本性能に関する一般要求事項(追補1) (IEC 60601-1 Ed. 3.1:2012)
[31] JIS T0601-1:2012 医用電気機器―第 1 部:基礎安全及び基本性能に関する一般要求事項 (IEC 60601-1 Ed.3.0:2005) (※IEC 60601-1 Ed. 3.1:2012)(注:[30]と併せ読むべき)
[32] JIS T0601-1-2:2012 医用電気機器―第 1-2 部:安全に関する一般要求事項―電磁両立性 ―要求事項及び試験((IEC 60601-1-2:2001, Amd.1:2004 ) (※IEC 60601-1-2 Ed. 4.0:2014)
[33] JIS T0993-1:2012 医療機器の生物学的評価―第 1 部:リスクマネジメントプロセスにおける評価及び試験(ISO 10993-1:2009)
[34] IEC 60601-1:2012 Medical electrical equipment - Part 1: General requirements for basic safety and essential performance (Ed. 3.1)(医用電気機器―第 1 部:基礎安全及び基本性能に関する一般要求事項)
[35] IEC 60601-1-6:2010 Medical electrical equipment-Part 1-6: General requirements for safety-Collateral standard: Usability(医用電気機器―第 1-6 部:基礎安全及び基本性能に関する一般要求事項―副通則:ユーザビリティ)
[36] IEC 60601-1-8 Ed.2.1:2012 Medical electrical equipment-Part 1-8: General requirements for safety-Collateral standard: General requirements, tests and guidance for alarm systems in medical electrical equipment and medical electrical systems (医用電気機器−第 1-8 部:基礎安全及び基本性能に関する一般要求事項−副通則:医用電気機器及び医用電気システムの警報システムの一般要求事項,試験及び指針)(※JIS T60601-1-8:2012)
[37] IEC 60601-2-46 Ed.2.0:2010 Medical electrical equipment-Part 2-46: Particular requirements for the safety of operating tables(医用電気機器―第 2-46 部:手術台の基礎安全及び基本性能に関する特定要求事項)
[38] JIS T 0816-1:2010 ヘルスケア製品の滅菌−湿熱−第1部:医療機器の滅菌プロセスの開発,バリデーション及び日常管理の要求事項(ISO 17665-1:2006)
[39] ISO 11135-1:2014 Sterilization of health care products - Ethylene oxide - Part 1: Requirements for development, validation and routine control of a sterilization process for medical devices
[40] JIS B7440-2:2013 製品の幾何特性仕様(GPS)-座標測定機(CMM)の受入検査及び定期検査-第 2 部:寸法測定 (ISO 10360-2:2009)
[41] JIS B8431:1999 産業用マニピュレーティングロボット-特性の表し方 (ISO 9946:1999)
[42] JIS B8432:1999 産業用マニピュレーティングロボット-性能項目及び試験方法 (ISO 9283:1998)
[43] (削除)
[44] JIS B8437:1999 産業用マニピュレーティングロボット-座標系及び運動の記号 (ISO 9787:1998) (※ISO 9787:2013)
[45] JIS Z8101-2:1999 統計-用語と記号-第 2 部:統計的品質管理用語
[46] JIS Z8103:2000 計測用語
[47] 向殿 政男, 安全の国際規格 / 安全設計の基本概念. 2007; ISBN 978-4-542-40405-2, 日本規格協会
[48] 向殿 政男, 安全の国際規格 / 機械安全. 2007; ISBN 978-4-542-40406-9, 日本規格協会
[49] 向殿 政男, 機械・設備のリスク低減技術−セーフティ・エンジニアの基礎知識. 2013; ISBN 978-4-542-30701-8, 日本規格協会
[50] 杉本 旭, 中災防新書 / 機械にまかせる安全確認型システム. 2003; ISBN 4-8059-0894-7, 中央労働災害防止協会
[51] 杉本 旭, サービスロボットの安全と技術者の責任 -安全の“State of the arts”の要求と Stewardship の責任原則について-. 日本ロボット学会誌, 2004; 22(7):860-3
[52] 杉本 旭, グローバルな安全とリスクアセスメントの構造. 日本ロボット学会誌, 2007; 25(8):1146-50
[53] 木村 哲也, サービスロボットのリスクアセスメントとその課題. 日本ロボット学会誌, 2007; 25(8):1151-4
[54] 草田 晃司, 堀野 正也, 人間と共存するロボットの安全性 / -NEDO ロボット開発プロジェクトでの取り組み-. 日本ロボット学会誌, 2007; 25(8):1172-5
[55] 山田 陽滋, サービスロボットに関する安全規格の現状と課題. 日本ロボット学会誌, 2007; 25(8):1176-9
[56] 新薬事法研究会, カラー図解 よくわかる改正薬事法 医療機器編. 2007; ISBN 978-4-8408-0871-2, 薬事日報社(※旧法の解説書)
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[58] 手島 邦和, 志村 紀子, 医療機器の薬事申請入門. 2007; ISBN 978-4-8408-0999-3, 薬事日報社(※旧法の解説書)
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[60] 日本医療機器関係団体協議会, ISO/TC210 国内対策委員会, 対訳 ISO13485 / 医療機器における品質マネジメントシステムの国際規格. 2003; ISBN 4-542-40217-7, 日本規格協会
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[62] Ask Per, (福本 訳) 医用安全工学. 1990; ISBN 4-7653-0562-7, 金芳堂
[63] 渡辺 敏, 阿岸 鉄三, 許 俊鋭, どう防ぐ?医療機器使用中のヒューマンエラー / -人工呼吸器・血液浄化装置・人工心肺装置-. 2005; ISBN 4-87962-289-3, 秀潤社
[64] Capers Jones, ソフトウェア品質のガイドライン. 1999; ISBN 4-320-09726-2, 共立出版株式会社
[65] 長尾, 真, 松尾 正信, ソフトウェア・テストの技法 第 2 版. 2006; ISBN 978-4-7649-0329-6, 近代科学社
[66] 山田 茂, 高橋 宗雄, ソフトウェアマネジメントモデル入門 / -ソフトウェア品質の可視化と評価法. 1993; ISBN 4-320-02635-7, 共立出版株式会社
[67] 小林 寬伊, 消毒と滅菌のガイドライン. 1999; ISBN 4-89269-333-2, へるす出版
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[69] 長谷川 良人, 特集 滅菌・消毒. The Japanese journal of Infection Control, 1993; 2(1)
[70] 小林 寛伊, 手術室で働く人のための手術医学テキスト. 1997; ISBN 4-7532-1656-X, 医薬ジャーナル社
[71] 新谷 英晴, 医薬品,医療用具製造の滅菌バリデーション. 1998; ISBN 4-8407-2323-0, 薬事時報社
[72] 四病院団体協議会医療安全管理者養成委員会, 医療安全管理テキスト. 2005; ISBN 4-542-30632-1, 日本規格協会
[73] 日本コンピュータ外科学会, 定義および有効性・安全性の基本的考え方. 2006, 2006/12/20
[74] (削除)
[75] 厚生労働省令第 169 号, 医療機器及び体外診断用医薬品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令. 2004/12/17;
[76] 厚生労働省令第 37 号, 医療機器の安全性に関する非臨床試験の実施の基準に関する省令. 2005/3/23;
[77] 薬食機発0301第20号, 医療機器の製造販売承認申請等に必要な生物学的安全性評価の基本的考え方について. 2012/03/01;
[78] (削除)
[79] 経済産業省 産業機械課, 次世代ロボット安全性確保ガイドライン. 2007/7/9; http://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/robot/pdf/guideline.pdf
[80] JIS T 0801-1:2010 ヘルスケア製品の滅菌―エチレンオキサイドー第 1 部:医療機器の滅菌プロセスの開発、バリデーション及び日常管理の要求事項 (ISO 11137-1:2006)
[81] JIS T0993-7:2012 医療機器の生物学的評価−第7部:エチレンオキサイド滅菌残留物 (ISO 10993-7:2008)
[82] (削除)
[83] IEC 62366:2007 Medical devices – Application of usabiIity engineering to medical devices (医療機器―医療機器へのユーザビリティエンジニアリングの適用)
[84] AAMI TIR45:2012 Guidance on the use of AGILE practices in the development of medical device software
[85] AAMI TIR12:2010 Designing, testing, and labeling reusable medical devices for reprocessing in health care facilities: A guide for medical device manufacturers
[86] ISO 13482:2014 Robots and robotic devices -- Safety requirements for personal care robots (ロボット及びロボティックデバイス−生活支援ロボットの安全要求事項)
[87] 経済産業省「トレーニングシステム開発ガイドライン 2012」2012/08; http://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/service/iryou_fukushi/downloadfiles/201208-2.pdf
[88] 経済産業省「ヘルスソフトウェア開発に関する基本的考え方 開発ガイドライン 2014」2014/07; http://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/service/iryou_fukushi/downloadfiles/201407-1.pdf
[89] (一社)ヘルスソフトウェア推進協議会「ヘルスソフトウェア開発ガイドライン」2014/08; http://good-hs.jp/pdf/GHS_DevelopmentGuideline_VER1_00.pdf

引用関連規格

国内関連GL

海外関連GL

WG開始年月

WG終了年月

WGメンバー

座長 伊関 洋 東京女子医科大学 先端生命医科学研究所 教授
池田 徳彦 東京医科大学 外科学第一講座 主任教授
大西 公平 慶應義塾大学 理工学部 システムデザイン工学科 教授
高橋 誠也 オリンパス株式会社 研究開発センター
医療技術開発本部 開発1G グループリーダー
中島 淳 東京大学 医学部附属病院 呼吸器外科 教授
藤江 正克 早稲田大学 創造理工学部 総合機械工学科 教授
森川 康英 国際医療福祉大学病院 小児外科 教授

報告書(PDF)

改訂版あり 2015-E-DE-024 ナビゲーション医療分野共通部分 改訂 開発ガイドライン2015
2008-E-DE-005-H19-報告書
2008-E-DE-005-H18 報告書
2008-E-DE-005-H17-報告書

報告書要旨(最新年)

承認済み製品(日本)

(医療機器クラスⅢ) 手術用ロボット手術ユニット「Makoシステム」(日本ストライカー株式会社) 日本承認日:2017年10月  (医療機器クラスⅢ) 手術用ロボット手術ユニット「da Vinciサージカルシステム」(Johnson & Johnson社) 日本申請日:2008年12月22日、日本承認日:2009年11月18日

承認済み製品(海外)

製品開発状況

製品に関連する規格:IEC 80601-2-77:2019(経済産業省 工業標準化推進事業テーマ)

Horizon Scanning Report