三次元積層造形技術を用いた椎体間固定デバイスの開発ガイドライン2018(手引き)

ガイドラインID 2018-E-DE-042
発出年月日
発出番号
WG名 体内埋め込み型材料 積層造形医療機器開発WG
制度名 医療機器等開発ガイドライン策定事業(開発ガイドライン)
製品区分 医療機器
分野

体内埋め込み型材料

GL日本語版ファイル

2018-E-DE-042 三次元積層造形技術を用いた椎体間固定デバイスの開発ガイドライン2018 手引き

英文タイトル
GL英語版ファイル

GL:イントロ・スコープ

1. 序 文
三次元積層造形技術は、製造技術の急速な進展に伴い、従来の鋳造技術等に代わる新たな製造技術及び患者の骨格構造に最適な製品(カスタムメイド製品)の製造技術として期待されている。カスタムメイドインプラントに関しては、「三次元積層技術を活用した整形外科用インプラントに関する評価指標」、「患者の画像データを用いた三次元積層技術によるカスタムメイド整形外科用インプラント等に関する評価指標」等が策定されており、医療機器の開発及び製造販売承認申請の助けとなっている。また、開発の効率化・迅速化の観点からは、開発の手引きとして、高生体適合性(カスタムメイド)脊椎インプラントの開発ガイドライン 2015(手引き)が作成されている。
本ガイドラインは、製造技術が新しく、三次元積層造形技術に関する基礎データが不足していることを考慮して、新規性の高い製品開発に参考となる力学的安全性データの取得方法等を一例として示し、患者の脊椎の構造等に最適な高生体適合性脊椎固定デバイスの開発・製造の迅速化・効率化に役立つことを目的として作成した。

2. 適用範囲
椎体間固定用デバイス向けの三次元積層造形用材料としは、チタン材料(工業用純チタン及び Ti 合金)、ASTM F2026 及び ASTM F2820 に規定されている Polyetheretherketone (PEEK) 及び Polyetherketoneketone (PEKK)等が期待されている。人工椎体及び椎体間スペーサー(ブロック及びケージ)等の椎体間固定デバイスの臨床的な使用のイメージを図 1 に示す。図 2 に椎体間固定デバイスのカスタム化のイメージを示す。腫瘍脊椎骨全摘出術及び腰椎後方椎体間固定術の例を附属書 A に示す。三次元積層造形技術を用いて、患者の脊椎の構造に最適な高生体適合性椎体間固定デバイスの開発・製造の迅速化・効率化を目的として、力学的安全性評価等を中心に例示する。椎体間固定デバイスのカスタム化に関しては、高生体適合性(カスタムメイド)脊椎インプラントの開発ガイドライン2015(手引き)が参考となる。
脊椎ロッド、プレート、スクリュー、フック等との組み合せに関しては、脊椎内固定器具の審査ガイドラインが有用となる。さらに、積層造形医療機器開発ガイドライン 2015(総
論)(手引き)が参考となる。
なお、本開発ガイドラインは、製品開発の迅速化・効率化を目的としており、本ガイドラインを基に実施予定の試験方法等について、医療機器製造販売承認申請に利用する場合には、独立行政法人医薬品医療機器総合機構の対面助言等を通じて、その妥当性や治験の要否を確認することが推奨される。

図 1 椎体間固定デバイスのイメージ

(a) 胸椎腫瘍に対するケージを用いた椎体置換術、(b)腰椎圧迫骨折に対するケージを用いた椎体置換術、(c) 腰椎すべり症に対するケージを用いた椎体間固定術

図 2 椎体間固定デバイスのカスタム化のイメージ

(a) 頚椎椎間板ヘルニアに対するカスタム化(インプラントデザイン、術前、術後)、
(b) 人工椎体のカスタム化、(c) 腰椎変形に対するカスタム化 (術前、術中、術後)

GL:本体

3. 三次元積層造形プロセス
3.1 三次元積層造形プロセス
三次元積層造形技術を用いてインプラントを製造する場合のプロセスの例を図 3、図 4 及び図 5 に示す。

① 目的とするインプラントの三次元形状設計
・ CT、或いは MRI 等のデータから骨形状データをコンピュータ上に構築し、骨形状に最適なインプラントの三次元形状を設計
② 積層造形前の形状データの処理
・ 形状データの修正、造形時の配置・姿勢の決定、サポート生成などの造形に必要な前処理
・ 多孔体構造、三次元網目構造など積層造形で実現する形状の最適化
③ 積層造形装置にて造形
④ 表面研磨や熱処理等の仕上げ処理

図 3 三次元積層造形技術のプロセスの例

図 4 三次元積層造形技術の工程

図 5 椎体間固定デバイス(ケージ及びスペーサー)のカスタム化プロセスの例

3.2 患者データの取得から積層造形までの造形プロセスにおいて考慮すべき項目
患者の画像データを用いた三次元積層技術によるカスタムメイド整形外科用インプラント等に関する評価指標(平成 27 年 9 月 25 日付け薬食機参発 0925 第 1 号厚生労働省大臣官房参事官通知「次世代医療機器・再生医療等製品評価指標の公表について」別紙 3)、及び 三次元積層技術を活用した整形外科用インプラントに関する評価指標(平成 26 年 9 月 12 日付け薬食機参発 0912 第 2 号厚生労働省大臣官房参事官(医療機器・再生医療等製品審査管理担当)通知「次世代医療機器・再生医療等製品評価指標の公表について」別紙 3 等を参考とした場合の、患者データの取得から積層造形プロセスまでの造形プロセスにおいて、考慮すべき項目を表 2 に示す。CT, MRI 等を用いた撮影条件の例は、三次元積層造形技術を用いたコバルトクロム合金製人工関節部材の開発ガイドライン 2017(手引き)附属書 B が参考となる。

表 2 患者データの取得から積層造形までの造形プロセスにおいて考慮すべき項目

3.3 積層造形材の安全性評価のポイント
三次元積層技術を活用した整形外科用インプラントに関する評価指標(平成26年9月 12 日付け薬食機参発 0912 第 2 号 厚生労働省大臣官房参事官(医療機器・再生医療等製品審査管理担当)通知「次世代医療機器・再生医療等製品評価指標の公表について」別紙 3)を参考とした場合の椎体間固定デバイスに対する安全性評価のポイントを表 3 に示す。なお、表 3 B に示した力学的評価方法は、JIS T 7401 シリーズ、ASTM F 2077 及び ASTM F2820 等を参考としている。

表 3 椎体間固定デバイスの安全性評価のポイン

4.力学的安全性等の評価の一例
製品開発等の促進のため、力学的安全性評価等に関する考え方及び事務局が中心となり実施した実証試験結果を以下に示す。現状の技術水準での結果を例示したもので、積層造形技術の進歩により特性は向上する。

(1) 積層造形用粉末
チタン材料等の金属粉末粒子は、造形装置と造形物によって異なるが、レーザー積層造形の場合の球形粉末粒子径では、60 μm 以下が主に用いられている。金属粉末の粒度分布の表記例を表 4 に示す。種々の表記方法があるが、d10, d50, d90 の代表値表記が推奨される。また、レーザー積層造形用チタン粉末粒度径分布の測定例を図 6 に示す。 Ti-15%Zr-4%Nb-1%Ta 合金を用いて、レーザー積層造形に最適な粒子径以外の残粉末を使い、電子ビーム積層造形に最適な粒子径分布に再分級した場合の粒子径分布を図 7 に示す。さらに、積層造形用金属粉末粒子径分布の測定方法を附属書 B に示す。
PEEK 材では、ポリマー粉末を用いた積層造形となる。

表 4 レーザー積層造形用金属粉末の粒子径分布の記載例

図 6 レーザー積層造形用 Ti-6Al-4V 合金粉末のイメージ及び粒子径分布の例

図 7 電子ビーム積層造形用に再分級した Ti-15Zr-4Nb-1Ta 合金粉末粒子径分布の例

(2) チタン材料の化学成分
JIS T 7401 シリーズでは、チタン材料(チタン及び Ti 合金)の化学組成が示され、積層造形材でも同等の化学成分であることが期待される。表 5 に JIS T 7401-1 に規定されたチタンの化学成分を示す。また、JIS T 7401-2 及び EN 10204 に規定された Ti-6Al-4V 合金展伸材の化学成分を表 6 に示す。チタン積層造形材での酸素の上限値は、0.4%以下が目安となる。表 7 に Ti-6Al-4V 合金積層造形の化学成分の例を示す。イオンの細胞毒性が強い V と Al を含まない Ti-15Zr-4Nb-1Ta 合金粉末の化学成分の例を表 8 に示す。いずれも展伸(鍛錬)材の化学成分の範囲内となっている。

表 5 工業用純チタンの化学成分

表 6 Ti-6Al-4V 合金展伸材の化学成分

表 7 レーザー積層造形 Ti-6Al -4V 合金の化学成分の測定例

表 8 レーザー積層造形 Ti-15Zr-4Nb-1Ta 合金粉末の化学成分の測定例

PEEK 材等の成分分析では、赤外吸収スペクトル及び熱分解 GC/MS 等が有用となる。

(3) ミクロ構造
積層造形技術では、転位等の欠陥密度及び内部エネルギーが高い状態となる場合が多い。
チタン合金積層造形材の横断面及び縦断面の光学顕微鏡組織を図 8 に一例として示す。図中の積層造形材(a)及び(b)は、JIS T 7401-1 に規格化されている Ti-6Al-4V 合金のレーザー積層造形材及び電子ビーム造形材の光学顕微鏡組織(400 倍)を示している。図 8 には、横断面と縦断面が比較して示されているが、類似の組織であり横断面の組織が基本となる。図中(c)は、Ti-15Zr-4Nb-1Ta 合金(JIS T 7401-4)粉末を用い、三次元積層造形した結果を示している。いずれも微細な針状組織を示している。比較のため、人工股関節ステムで見られる針状組織の例を図 8 (d)に示す。展伸(鍛造)材の光学顕微鏡組織を図 9 に示す。展伸材は、α+βの二相組織となっている(参考文献 1)。透過電子顕微鏡観察例を図 10 に示す。
Ti-6Al-4V 合金のレーザー積層造形材の文献報告(参考文献 2)では、層状の針状組織となっている。電子ビーム造形材では、Ti-6Al-4V 合金及び Ti-15Zr-4Nb-1Ta 合金のどちらも層状組織内に黒く見える転位線が多い組織となっている。繰り返し溶融による熱応力の蓄積の影響と考えられる。積層造形条件の改善及び熱処理等により、内部応力の緩和が期待される。

図 8 積層造形材(a)~(c)、鍛錬材(d)の光学顕微鏡組織の比較例

図 9 チタン合金鍛錬材の光学顕微鏡(a), (c)及び透過電子顕微鏡組織(b), (d)の例
(a), (b): Ti-6Al-4V 合金展伸材、(c), (d): Ti-15Zr-4Nb-1Ta 合金展伸材

図 10 積層造形材の透過電子顕微鏡観察例
(a) Ti-6Al-4V 合金のレーザー積層造形材の文献報告、(b) Ti-6Al-4V 合金電子ビーム造形材
(c) Ti-15Zr-4Nb-1Ta 合金電子ビーム造形材

参考文献 (1) Y. Okazaki, E. Gotoh: Comparison of fatigue strength of biocompatible Ti-15Zr-4Nb-4Ta alloy and other titanium materials, Mater. Eng. C (31)
(2011) 325-3233.
(2) M. Simonell, Y. Y. Tse, C. Tuck: Microstructure of Ti-6Al-4V produced by selective laser melting, J. Phys.: Conf. Ser. 371(2012) 012084

(4) チタン材料等の耐食性
内部欠陥等を含み、金属イオンの溶出量が上昇することが懸念されるため、加速試験溶液を用いた評価が推奨される。積層造形材の評価では、ミクロボイドやボイド内の粉末の残留等の観点からは、溶出試験が有用となる。
(a) 金属材料の溶出(静的浸漬)試験
溶出(静的浸漬)試験は、JIS T 0304 等により規格化され、生体内の模擬環境下で、金属材料から溶出する金属イオンの定量的なデータを提供することを目的とした試験である。苛酷抽出条件の一例を以下に示す。
· 試 験 溶 液 :1 mol/L 塩酸+0.9%塩化ナトリウム(pH=2.0)
· 試 料 の 数 :3 枚以上
· 環境及び期間:37±1 ℃等、7 日間±1h
· 浸漬溶液量:例えば、試験片(幅:2 cm、長さ:4 cm、厚さ:0.1 cm)1 枚当たり
50 mL
· 元 素 分 析 :化学組成が 1 質量%以上の元素の定量分析
· 溶出イオン量(μg/cm2/7d)の測定

(b) 金属材料の耐食性の電気化学的評価試験
生体内で使用する金属材料の耐食性を、電気化学的に評価する方法には、主に以下の 2 つの試験がある。その中では、アノード分極試験が広く行われている。
1) 動電位測定(アノード分極測定): JIS T 0302
2) 交流インピーダンス測定 電気化学的評価方法の詳細は、三次元積層造形技術を用いたコバルトクロム合金 製人工関節部材の開発ガイドライン 2017(手引き)が参考となる。

(c) PEEK 材等の溶出試験
1 g/10 mL でアセトンを加えて、室温で 24 時間等、振とうした抽出液を用いて、 HPLC, 及び GC/MS プロファイリング等により、クロマトグラム等を測定して溶出パターンを既承認品等と比較する。


(5) 積層造形材の機械的性質
(a)チタン材料の機械的性質
チタン材料では、JIS T 7402 シリーズに適合することが推奨される。実証試験で用いた力学試験片を図 11 に示す。積層造形方向は、縦方向とした。積層造形材(As built) での室温引張り試験結果及び JIS T 7402 シリーズの規格値を表 9 に示す。Ti-6Al-4V 合金レーザー積層造形材及び電子ビーム積層造形材の機械的性質は、どちらも比較的良好な値を示すことがわかる。さらに、図 7 に示した Ti-15Zr-4Nb-1Ta 合金粉末の電子ビーム積層造形材の機械的性質が示されているが、同様に比較的良好な強度と延性バランスを示している。高融点金属である Ta の量に関しては、部材製造コスト低減の観点から Ta 無添加の Ti-15Zr-4Nb 合金でも同様となる。

図 11 力学試験片の形状
試験速度:0.2%耐力測定まで、0.5 %/min (ひずみ制御)
以降破断まで、3 mm/min (ストローク制御)

表 9 室温引張試験結果(n=3~4)

(b) PEKK 材の機械的性質
PEKK 積層造形材の機械的性質は、ASTM F2820 が参考となる。表 10 に室温引張試験及び圧縮曲げ試験のイメージを示す。曲げ強さ及び曲げ剛性は、ASTM F2820 の規定値より僅かに低いが、引張り破断伸びが低い値となっている。一方、椎体間固定デバイスでは、圧縮環境下で使用されるため、引張破断伸び 80%は、かなり高い値であり、附属書 C 1 に示した圧縮試験条件下での静的試験及び疲労試験の結果がより重要と考えられる。図 12 に PEKK 材の力学試験片及び曲げ試験のイメージを示す。

表 10 室温引張試験及び圧縮曲げ試験結果のイメージ (n=3)

図 12 PEKK 材の力学試験片及び 3 点曲げ試験のイメージ

(6) 異方性
三次元積層造形材の品質は、粉末が溶解する際の溶解プールの制御により変化する。溶解プールの模式図を図 13 に示す。最適な積層条件が、材料・粉末毎に異なることが考えられ、特に、データの構築が期待される。溶解プールが適切となるようなエネルギー密度で三次元方向に積層造形することで、機械的性質を向上させ、異方性等を少なくすることができる。三次元積層造形材のエネルギー密度は、次式で求められる。
単位体積当たりのエネルギー密度 E(J/mm3) =出力(W)/{スキャン速度(mm/s) × X-Y 方向の走査間隔(mm) × Z 軸方向の積層間隔(mm)}
金属術語辞典によると、異方性とは、 縦方向と横方向で機械的性質等が異なることと定義されている。異方性評価の模式図を図 14 に示す。積層造形材の異方性は、(縦方向造形材の 0.2%耐力)/ (横方向造形材の 0.2%耐力)の値で評価できる。45 度方向の積層造形材では、引張り試験でのすべり方向と一致している。

図 13 積層造形に及ぼす溶解プールの影響

図 14 異方性評価の模式図

(7) 積層造形材の疲労特性
(a) チタン材料
局所的な応力集中や内部欠陥等が含まれるため、疲労特性の把握が推奨される。大気中での疲労試験により得られた、チタン材料の積層造形材及び鍛造材の S-N 曲線(縦軸に最大負荷応力(S)を等間隔目盛で、横軸に破断までの繰り返し数(N)を対数目盛で表示した曲線)の比較を図 15 に示す。S-N 曲線において、疲労強度は、横軸に水平となる場合の最大負荷応力の値か、或いは 107回の繰り返し数における最大負荷応力となる。JIS T 7401-2 及び JIS T 7401-4 に準じたインプラント用チタン材料展伸(鍛錬)材の結果を○及び■で示している。Ti-15Zr-4Nb-1Ta 合金展伸材の疲労強度が Ti-6Al-4V 合金に比べて、高くなっているのは、合金ビレットを用いた丸棒圧延プロセスの高度化の効果で、Ti-6Al-4V 合金等他のα+β型のチタン合金でも可能となる。
繰り返しの急冷効果のみでは、鍛錬の効果が十分ではないため、鍛錬材よりは疲労強度が低くなる。Ti-15Zr-4Nb-1Ta 合金の電子ビーム積層造形材は、室温引張り試験の結果(表 7)は良好であったが、疲労強度は低めになっている。これは、Ti-6Al-4V 合金の積層条件に準じて造形しており、積層条件が合金組成に最適化されていないためで、今後の積層条件の改善が期待される。
積層造形材は、直径 9 mm、長さ 50 mm の丸棒試料を縦方向に造形し、図 11 に示した同一形状の引張及び疲労試験片を作製した。疲労試験の条件は、JIS T 0309 に準じ、大気雰囲気中、サイン波を用いて、負荷応力(最小/最大)比=0.1、周波数 10 Hz の条件とした。

図 15 チタン材料の疲労特性(S-N 曲線)の測定結果

(b) PEKK 材料
PEKK 積層造形材の疲労試験のイメージを図 16 に示す。疲労試験は、JIS K 7118 に準じている。

図 16 PEKK 材の疲労特性(S-N 曲線)のイメージ

(8) 椎体間固定デバイスの力学的安全性評価
ASTM に規定されている椎体間固定デバイスの力学的安全性評価方法を附属書 C に示す。附属書 C には、多くの試験方法が規定されているが、附属書 C 1 に示した圧縮試験が基本となる。附属書 C は、全ての試験の実施を意図したものではなく、材質、形状、臨床使用条件等により、必要な試験を適宜選択して実施することが望ましい。

(9) 生物学的安全性
整形インプラント分野の生物学的安全性の評価試験の項目を表 11 に示す。積層造
形材の生物学的安全性の評価試験データは少なく、データの構築が待たれる。
「医療機器の生物学的安全性試験法ガイダンス 第 2 部 感作性試験」(平成 24 年 3 月1日付け薬食機発0301第20号厚生労働省医薬食品局審査管理課医療機器審査室長通知「 医療機器の製造販売承認申請等に必要な生物学的安全性評価の基本的考え方について」別添)において、金属材料等を構成する金属のイオンとしての感作性が、適切な感作性試験によって既に確認されている場合には、あらためて試験を実施する必要はないとされている。また、加速試験の例として、酸(希塩酸など)による苛酷条件で抽出し、中和して(水酸化ナトリウムなどによる中和)pH を中性付近にした金属イオンと金属沈殿物微粒子から成る懸濁液について、感作性の強さを評価することが示されている。
金属イオンの溶出量及び耐食性の電気化学的評価等により、既承認品に比べて、溶出量及び耐食性が同等以上で、微量元素の著しい増加がなく、化学成分の量が規格値を満足する場合には、既承認品に比べて非劣性を示すことはなく、生物学的安全性は、許容範囲内にあると考えられる。

表 11 生物学的安全性の評価項目

5. 関連する次世代評価指標、審査ガイドライン及び開発ガイドライン等
参考となる次世代評価指標、審査ガイドライン及び開発ガイドライン等を下記に示す。
(1) 整形外科用カスタムメイド人工股関節に関する評価指標(平成 23年 12月 7日付け薬食機発 1207 第 1 号厚生労働省医薬食品局審査管理課医療機器審査管理室長通知)別添 2
(2) 整形外科用カスタムメイド人工膝関節に関する評価指標(平成 24 年 11 月 20 日付け薬食機発 1120 第 5 号厚生労働省医薬食品局審査管理課医療機器審査管理室長通知) 別添 1
(3) 三次元積層技術を活用した整形外科用インプラントに関する評価指標(平成 26 年 9 月 12 日付け薬食機参発 0912 第 2 号厚生労働省大臣官房参事官(医療機器・再生医療等製品審査管理担当)通知「次世代医療機器・再生医療等製品評価指標の公表について」別紙 3
(4) 患者の画像データを用いた三次元積層技術によるカスタムメイド整形外科用インプラント等に関する評価指標(平成 27 年 9 月 25 日付け薬食機参発 0925 第 1 号厚生労働省大臣官房参事官(医療機器・再生医療等製品審査管理担当)通知「次世代医療機器・再生医療等製品評価指標の公表について」別紙 3
(5) 脊椎内固定器具の審査ガイドライン(平成 21 年 3 月 6 日)薬食機発第 0306007 号(厚生労働省医薬食品局審査管理課 医療機器審査管理室長)
(6) 積層造形医療機器開発ガイドライン 2015(総論)(手引き)平成 27 年 12 月公表
(7) 高生体適合性(カスタムメイド)脊椎インプラントの開発ガイドライン 2015(手引き) 平成 24 年 8 月公表

GL:付属資料

参考規格
(1) JIS T 7401-1 外科インプラント用チタン材料-第1部:チタン
(2) JIS T 7401-1 外科インプラント用チタン材料-第 2 部:チタン 6-アルミニウム 4バナジウム合金展伸材
(3) JIS T 7401-1 外科インプラント用チタン材料-第 4 部:チタン 15-ジルコニウム 4ニオブ 4-タンタル合金展伸材
(4) JIS T 0302 金属系生体材料のアノード分極試験方法
(5) JIS T 0304 金属系生体材料の溶出試験方法
(6) JIS T 0309 金属系生体材料の疲労試験方法
(7) JIS Z 8825 粒子径解析-レーザ回折・散乱法
(8) JIS K 7118 硬質プラスチック材料の疲れ試験方法通則
(9) JIS K 7161 プラスチック−引張特性の求め方−第 1 部
(10) JIS K 7181 プラスチック−圧縮特性の求め方
(11) JIS K 7110 プラスチック−アイゾット衝撃強さの試験方法
(12) JIS K 0129 熱分析通則
(13) JIS Z 8807 固体の密度及び比重の測定方法
(14) ISO 16428 Implants for surgery -- Test solutions and environmental conditions for static and dynamic corrosion tests on implantable materials and medical devices
(15) ISO 5832-2 Implants for surgery - Metallic materials - Part 2: Unalloyed titanium
(16) ISO 5832-2 Implants for surgery - Metallic materials - Part 3: Wrought titanium 6-aluminium 4-vanadium alloy
(17) ASTM F2026-16 Standard specification for polyetheretherketone (PEEK) polymers for surgical implant application
(18) ASTM F2820-12 Standard specification for polyetherketoneketone (PEKK) polymers for surgical implant application
(19) ASTM D638 Standard test method for tensile properties of plastics
(20) ASTM D790 Standard test tethods for flexural properties of unreinforced and reinforced plastics and electrical insulating materials
(21) ASTM D695 Standard test method for compressive properties of rigid plastics
(22) ASTM D256 Standard test tethods for tetermining the Izod Pendulum impact resistance of plastics, impact resistance, Izod impact, notch sensitivity, notched specimen, reverse notch impact
(23) ISO 178 Plastics - Determination of tensile properties−Part 1: General principle
(24) ISO 527 Plastics - Determination of flexural properties
(25) ISO 604 Plastics−Determination of compressive properties
(26) ISO 180 Plastics−Determination of Izod impact strength
(27) EN 10204 Metallic products: Types of inspection documents
(28) ISO 1183 Plastics—Methods for determining the density of non-cellular plastics—Part 1: immersion method, liquid pyknometer method and titration method

引用関連規格

参考規格
(1) JIS T 7401-1 外科インプラント用チタン材料-第1部:チタン
(2) JIS T 7401-1 外科インプラント用チタン材料-第 2 部:チタン 6-アルミニウム 4バナジウム合金展伸材
(3) JIS T 7401-1 外科インプラント用チタン材料-第 4 部:チタン 15-ジルコニウム 4ニオブ 4-タンタル合金展伸材
(4) JIS T 0302 金属系生体材料のアノード分極試験方法
(5) JIS T 0304 金属系生体材料の溶出試験方法
(6) JIS T 0309 金属系生体材料の疲労試験方法
(7) JIS Z 8825 粒子径解析-レーザ回折・散乱法
(8) JIS K 7118 硬質プラスチック材料の疲れ試験方法通則
(9) JIS K 7161 プラスチック−引張特性の求め方−第 1 部
(10) JIS K 7181 プラスチック−圧縮特性の求め方
(11) JIS K 7110 プラスチック−アイゾット衝撃強さの試験方法
(12) JIS K 0129 熱分析通則
(13) JIS Z 8807 固体の密度及び比重の測定方法
(14) ISO 16428 Implants for surgery -- Test solutions and environmental conditions for static and dynamic corrosion tests on implantable materials and medical devices
(15) ISO 5832-2 Implants for surgery - Metallic materials - Part 2: Unalloyed titanium
(16) ISO 5832-2 Implants for surgery - Metallic materials - Part 3: Wrought titanium 6-aluminium 4-vanadium alloy
(17) ASTM F2026-16 Standard specification for polyetheretherketone (PEEK) polymers for surgical implant application
(18) ASTM F2820-12 Standard specification for polyetherketoneketone (PEKK) polymers for surgical implant application
(19) ASTM D638 Standard test method for tensile properties of plastics
(20) ASTM D790 Standard test tethods for flexural properties of unreinforced and reinforced plastics and electrical insulating materials
(21) ASTM D695 Standard test method for compressive properties of rigid plastics
(22) ASTM D256 Standard test tethods for tetermining the Izod Pendulum impact resistance of plastics, impact resistance, Izod impact, notch sensitivity, notched specimen, reverse notch impact
(23) ISO 178 Plastics - Determination of tensile properties−Part 1: General principle
(24) ISO 527 Plastics - Determination of flexural properties
(25) ISO 604 Plastics−Determination of compressive properties
(26) ISO 180 Plastics−Determination of Izod impact strength
(27) EN 10204 Metallic products: Types of inspection documents
(28) ISO 1183 Plastics—Methods for determining the density of non-cellular plastics—Part 1: immersion method, liquid pyknometer method and titration method

附属書 A
腫瘍による脊椎骨全摘出術及び腰椎後方椎体間固定術の例

腫瘍脊椎骨全摘出術(TES: Total en bloc spondylectomy)の例を図 A. 1 に示す。

図 A. 1 腫瘍脊椎骨全摘出術の例

腰椎後方椎体間固定術(PLIF: Posterior lumbar interbody fusion)の例を図 A. 2 に示す。

図 A. 2 腰椎後方椎体間固定術の例

附属書 B
積層造形用金属粉末 粒子径分布測定方法

金属粉末の集合体の中でどのくらいの大きさの粉末粒子がどのような割合で含まれているのかという情報が、粒子径(あるいは粒度)分布である。金属粉末は、その製造方法や雰囲気によりさまざまな形状となるため、測定する基準(例えば長軸、短軸の概念) によって大きさが違ってくる(図 B.1)。

図 B.1 金属粉末粒子の形状と粒子径の例

そのため、金属粉末の粒子形状や大きさによって、その粒子径分布測定方法に種類がある。一般的に使用されている粒子径分布測定方法を表 B.1 に示す。

積層造形用金属粉末では、上記表 B.1 に示したレーザー回折散乱法が、粒子径分布測定法として使用されている。これは、レーザー回折散乱式の装置が、サブミクロン領域から 1 mm 程度までの幅広い粒子径領域に適用でき、積層造形用金属粉末の粒子径に最適なスペックであること並びに高い分解能と再現性を有し、短時間で効率良く測定可能であることなどによる。
レーザー回折散乱式測定装置では、乾式と湿式のどちらも可能であるが、一般的には湿式で使用されることが多い。湿式法では、測定サンプル粉末を水や有機溶媒に分散し、その分散液を装置内で循環させ、レーザー光を照射して得られた回折散乱光の強度パターンと同じパターンを示す球形粒子に相当する粒子径の分布状態を表す。分布状態の比率は、体積分布基準、面積分布基準、個数分布基準などがあるが、主に体積分布基準が使用されている。
図 B.2 に体積分布基準のレーザー回折散乱粒子径測定データの例を示す。ある粒子径よりも小さい粒子径の存在割合の分布を示したものが累積分布量であり、一定幅の粒子径(例えば 10μm から 20μm)の全体に対する存在割合の分布を示したものが頻度分布量である。累積分布量が 50%の粒子径をメジアン径(平均粒子径)と呼び d50(又は D50)で表記される。

d10、 d90 は同様に 10%、90%の粒子径である。また、モード径は、出現頻度の最も大きい粒子径を指す。

図 B.2 粒子径分布データの例

積層造形用金属粉末の粒子径分布表記は、上述の体積分布基準のレーザー回折散乱粒子径測定データを用いて行われており、主な表記を表 B.2 に示す。種々の表記方法が示されているが、d10, d50, d90 の代表値表記が推奨される。具体的な数値は、積層造形機と粉末の種類により変化する。

表 B.2 積層造形用金属粉末の主な粒子径分布の表記例

さらに、流動度や形状観察(SEM 観察)などと複合して検討するが、実際はその使用する積層造形装置において操作してみないと判断できず、各装置で操作できるように粒子径調整が実施される。

附属書 C

ASTM に基づく脊椎間固定デバイスの力学的評価

本附属書では、ASTM を参考に脊椎間固定デバイスの力学的評価のポイントを説明する。
詳細に関しては、関連する ASTM を参照頂きたい。
試験の座標系の選択は、ASTM F1582 が参考となる。椎体間固定デバイスの幾何学的中心を座標の中心とし、X 軸が人体前後方向、Y 軸が横方向、Z 軸が人体の上下方向なる。
試験試料の数としては、静的試験(圧縮試験、圧縮せん断試験、押出し試験、沈降試験及びねじり試験)では、5 個以上、動的試験(疲労試験)では、6 個以上での試験が推奨されている。

C1. 椎体間固定デバイスの圧縮試験 椎体間固定デバイスの圧縮試験は、ASTM F2077 が参考となる。圧縮試験が基本となる。
1.1 椎体間固定デバイスの固定治具
(1) 図 C.1 に試験治具を示す。力学試験装置の荷重負荷部とユニバーサルジョイントなどを介して接続された丸棒(ロッド)及びロッドに取り付けられた半球状固定具を用いて脊椎間固定デバイスに荷重を負荷する。ロッドは、直径 25 mm のステンレス鋼(引張強度 1310 MPa 以上)製で、ユニバーサルジョイントの中心から脊椎間固定デバイス試料の中心までの距離を 38 cm 以上とする。ロッド先端と半球状固定具の先端は、球面で接触し、椎体間固定デバイスの変形に応じてスムーズに動く構造が推奨される。
固定治具の下部は試験装置に固定する。
(2) 直径 50 mm 以上のステンレス鋼製半球状固定具の内側に試験試料を固定するためのブロックを置き、ステンレス鋼製半球の中心に椎体間固定デバイスを挟み込む。固定ブロックの材質は、静的試験では、ステンレス鋼(引張強度 1310 MPa 以上)、疲労試験では、ポリアセタール(引張強度 61 MPa 以上)を用いる。機械加工により固定ブロックに、椎体間固定デバイスの上下面の形状に合わせた深さ 3 mm 以内の溝を設けることで滑らないで試験が安定する。ブロック間距離 H は、椎体間固定デバイスの高さの半分以上を残す距離(5 mm 程度)を基本とし、破損前に 0 にならない距離とする。ASTM F2077 では、4 mm 以上、18 mm 以下とし、腰椎で 10 mm、胸椎で 6 mm、頸椎で 4 mm が推奨されているが、東洋人では大きすぎる場合もあるので注意を要する。同じ寸法の椎体間固定デバイスでは、同じブロック間距離 H で試験を行う。椎体間固定デバイスの中心(Z)軸は、ロッドの中心、荷重負荷部のロードセルの中心軸と一致するように試験試料を固定する。
1.2 静的圧縮試験
静的圧縮試験では、変位制御により 25 mm/分以下の試験速度で、破損するまで圧縮荷重を与え、荷重-変位曲線を測定する。測定した荷重-変位曲線からブロック間距離 H の 2%変位における降伏荷重、最大荷重及び最大荷重での変位、荷重-変位曲線の傾きから剛性(N/mm)を求める。圧縮変形により断面積が増加し、荷重-変位線図上で荷重の減少が現れない場合には、最大荷重と最大変位の測定が困難となる。
1.3 耐久性試験
耐久性試験は、荷重制御によりクラックが発生するまで繰り返し負荷を与え、縦軸に最大負荷荷重、横軸に破損までの繰り返し数を対数目盛で表示する。最大繰り返し回数は 500 万回とし、耐久限(N)を求める。耐久限より一つ大きい負荷荷重での試験における耐久限との荷重差は、静的圧縮試験より得られた最大荷重の 10%以内とする。
耐久性試験に最初に負荷される荷重は、圧縮試験での最大荷重の 75%、50%及び 25% のいずれかが推奨されている。荷重比 R(最小負荷荷重/最大負荷荷重)=0.1 とする。5 Hz 以下が安定した試験となるが、10 Hz 以上の周波数で試験する場合には、発熱により試験ブロックが融解することを考慮する必要がある。
椎体間固定デバイスの疲労特性が試験溶液の影響を受ける場合には、37℃の生理食塩水中で実施すると良い。

図 C.1 椎体間固定デバイスの圧縮試験用固定治具

2. 椎体間固定デバイスの圧縮せん断試験
椎体間固定デバイスの圧縮せん断試験は、ASTM F2077 が参考となる。
(1) 試験治具は、下側固定具を除いて圧縮試験と同じで試験できる。下側固定具は、椎体間固定デバイスの Z 軸を X 軸方向に傾けるようにする。試験開始時の椎体間固定デバイスの Z 軸は、ロッドの中心軸に対して 27°傾ける(角度 45°の傾斜は、固定ブロックから脱落しやすく不安定な試験となる場合が多い)。半球状固定具を 27°傾けるが、椎体間固定デバイスの中心、半球状固定具の球面中心及びロッドの中心軸は、同一線上にする。
(2) 静的試験及び疲労試験の試験速度、測定項目及び試験の雰囲気は圧縮試験と同様である。周波数の決定には発熱の影響を考慮する必要がある。

図 C.2 椎体間固定デバイスの圧縮せん断試験用固定治具

3. 模擬骨間からの椎体間固定デバイス押し出し試験
椎体間固定デバイスの押し出し試験は、ASTM F-04.25.02.02 (draft) にあるが、臨床的必要性は明確ではない。医療機器製造販売承認申請において有用な場合がある。
(1) 鋼製半球状固定具の球の中心に椎体間固定デバイスを設置する。半球状固定具の内側にはブロックを固定し、椎体間固定デバイスを挟み込む。ブロックの材質はポリウレタンフォーム(ASTM F1839 に準拠する Grade 15、ソーボーンの製品では、Solid rigid polyurethane foam 15 pcf が該当)を用いる。ブロックの溝は、椎体間固定デバイスの形状に合い押し出せる溝形状とする。試験試料固定ブロックは、再使用してはいけないが、一度試験した試料も顕微鏡検査により損傷がなければ再試験に使用して良い。
(2) ブロック間距離 H は、圧縮試験と同じで、押し出す方向は、臨床使用において最も圧出されやすい方向とする。試験装置の荷重負荷部とユニバーサルジョイントなどを介して接続されたロッドにより、半球状固定具に荷重を負荷する。また、別の機構により、押し出し方向に沿って椎体間固定デバイスに一定の変位速度で荷重を付与する。

図 C.3 椎体間固定デバイス押し出し試験用固定治具


4. 模擬骨からの椎体間固定デバイス沈降試験
椎体間固定デバイスの椎体間沈降試験は、ASTM F2267 が参考となる。臨床的必要性は必ずしも明確ではないが、医療機器製造販売承認申請において有用な場合がある。
(1) 圧縮試験と同じ試験治具を用い、鋼製半球状固定具にブロックを固定し、椎体間固定デバイスを挟み込み半球の中心に椎体間固定デバイスを設置する。椎体間固定デバイスを設置した状態で、上部試験ブロックの上面から下部試験ブロックの下面までの距離は、腰椎で 70 mm、胸椎で 60 mm、頸椎で 40 mm とする。椎体間固定デバイスの沈降傾向を測定するため、固定ブロックには、ポリウレタンフォーム製(ASTM F1839 に準拠する Grade 15)を用いる。なお、ポリウレタンフォーム製試験ブロックは、再使用してはいけない。ブロック間距離 H は、圧縮試験と同様である。沈降試験では、一度試験した椎体間固定デバイスも顕微鏡検査により損傷がなければ再使用できる。
(2) 試験は変位制御により 6 mm/分(0.1 mm/秒)の試験速度で負荷を与え、荷重―変位曲線を測定する。腰椎で 2 mm、胸椎で 1.5 mm、頸椎で 1 mm の変位における降伏荷重及び曲線の傾きから剛性(N/mm)を求める。
(3) 金属製ブロックを用いて測定(圧縮試験で測定)した椎体間固定デバイスの剛性の平均値(Kd)とポリウレタンフォーム製固定ブロックの剛性の平均値(Kp)の関係を比較する。

Kp は、沈降試験により測定した剛性(インプラント+模擬骨)の平均値(Ks)を用い、以下の式で算出できる。

図 C.3 椎体間固定デバイス沈降試験用固定治具

5. 椎体間固定デバイスのねじり試験
椎体間固定デバイスのねじり試験は、ASTM F2077 が参考となる。特に、頸椎用椎体間固定デバイスのねじり試験に有用となる。
(1) 試験治具の構成は、ロッドと上側固定具の接続部を除いて圧縮試験と同じである。試験装置の荷重負荷部とユニバーサルジョイントなどを介して接続されたロッドにより、上側固定具に軸荷重とねじりモーメントを付与する。椎体間固定デバイスの Z 軸が、ロッド、試験装置の荷重負荷部のロードセルの軸が同一線上になるようにする。
(2) 静的ねじり試験では、ブロックが分離しないように 100 N(頸椎)、300 N(胸椎)、
500 N(腰椎)の予備荷重を付与してねじりモーメントを与える。静的試験は角度
変位制御により 60 °/分以下の試験速度で、破損するまでねじりモーメントを与え、モーメント-角度変位曲線から降伏モーメント及び角度変位、最大モーメント及び角度変位、ねじり剛性を読み取る。降伏モーメントは、角度変位(H/サンプル高さ)
×0.1×(180/π)(°)でのモーメントとなる。
(3) 疲労試験は、モーメント制御によりクラックが生じるまで繰り返し負荷を与え、縦軸に最大モーメント、横軸に破損までの繰り返し回数を対数目盛で表示する。最大繰り返し数は、500 万回とし、耐久限を求める。耐久限と耐久限より一つ大きいモーメントとの差は、静的試験より得られた最大モーメントの 10%以内とする。疲労試験開始時に付与するモーメントは、最大モーメントの 75%、50%及び 25%のいずれかである。疲労試験のモーメント比 R(最小モーメント / 最大モーメント)は、 ASTM F2077 では、-1 が推奨されるが、この場合には、周波数を低くする必要がある(1 Hz 程度)。一般的には、モーメント比 R=0.1 の方が安定な試験となる。

図 C.4 椎体間固定デバイス沈降試験用固定治具
(軸荷重とねじりモーメントを複合付与する治具)

ASTM の規格名称:
(1) ASTM F1582 Standard terminology relating to spinal implants
(2) ASTM F2077 Test methods for intervertebral body fusion devices
(3) ASTM F2267 Standard test method for measuring load induced subsidence of intervertebral body fusion device under static axial compression
(4) ASTM F1839 Standard specification for rigid polyurethane foam for use as standard materials for testing orthopaedic devices and instruments
(5) ASTM F-04.25.02.028(draft) Static push-out test method for intervertebral body fusion devices

国内関連GL

海外関連GL

WG開始年月

WG終了年月

WGメンバー

座長 勝呂 徹 一般社団法人日本人工関節研究所リウマチ治療研究所 所長
天谷 浩一 株式会社松浦機械製作所 常務取締役
石井 大輔 JFE テクノリサーチ株式会社 構造材料ソリューション本部 インプラント材料評価センター 主査
石坂 春彦 帝人ナカシマメディカル株式会社 取締役
稲葉 裕 公立大学法人横浜市立大学医学部 整形外科 准教授
上野 勝 京セラメディカル株式会社 メディカル事業部 品質保証部 責任者
大河内 均 福田金属箔粉工業株式会社 技術本部 研究開発部 新商品開発室 室長
楫野 良知 金沢大学附属病院 医療安全管理部 特任准教授
金安 力 愛知産業株式会社 専務取締役 営業本部長
佐藤 徹 株式会社オーミック 取締役社長
鄭 雄一 東京大学大学院 工学系研究科 教授
中村 卓司 東邦大学 整形外科 准教授 人工関節センター長
新野 俊樹 東京大学 生産技術研究所 生産技術研究所 機械・生体系部門(第2部) 付加製造科学研究室 教授
橋口 宏 日本医科大学千葉北総病院 整形外科 部長
橋爪 康晃 株式会社 NTT データエンジニアリングシステムズ カスタマー&サービス事業本部 アディティブ・マニュファクチャリング事業部 事業部長
橋本 淳 独立行政法人国立病院機構大阪南医療センター 免疫疾患センター 部長
林田 大造 JSR 株式会社 イノベーション推進室 3D チームリーダー
藤林 俊介 京都大学大学院 医学研究科 特定教授
眞島 任史 日本医科大学 整形外科・リウマチ外科 臨床教授
宮﨑 美季 株式会社 JSOL エンジニアリングビジネス事業部 CAE 技術 G Simpleware CFE
村瀬 剛 大阪大学大学院 医学系研究科整形外科 准教授
森 重雄 大阪冶金興業株式会社 粉末加工部 造形・メディカル推進室 課長
山本 謙吾 東京医科大学 医学部医学科 臨床医学系整形外科学分野 主任教授

報告書(PDF)

2018-E-DE-042-H29-報告書

報告書要旨(最新年)

承認済み製品(日本)

承認済み製品(海外)

製品開発状況

Horizon Scanning Report