参考文献
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(2) ASTM F2193 Standard Specifications and Test Methods for Components Used in the Surgical Fixation of the Spinal Skeletal System.
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pathomechanism of apophyseal bony ring fracture. Sairyo et al. et al. Eur Spine J.
2006,15:923-9.
関連する開発ガイドライン
(1) 体内埋め込み型材料分野(カスタムメイド骨接合材料)開発ガイドライン 2010
(2) 体内埋め込み型材料分野(カスタムメイド人工股関節)開発ガイドライン 2012
(3) 体内埋め込み型材料分野(カスタムメイド人工膝関節)開発ガイドライン 2012
(4) 体内埋め込み型材料分野(カスタムメイド人工足関節)開発ガイドライン 2015
附属書 A
脊椎の構造および脊椎インプラントの例
A.1 脊椎インプラントの開発に必要となる脊椎の構造を下図に示す。
A.2 代表的な前方側インプラント及び後方側インプラントのイメージを下図に示す。
1.前方側インプラント
a) 人工椎体および椎体間スペーサー(ブロック,ケージ)
附属書 B
脊椎インプラントの分類
B.1 脊椎インプラントの分類
脊椎インプラントの分類を下記に示す。また、この脊椎インプラントの分類に従いアンケート調査を実施した(附属書 F 参照)。
脊椎インプラントの分類
前方側インプラント
頚胸椎(中位胸椎から上)と胸腰椎(中位胸椎から下)に分類
1.人工椎体(ブロック、ケージ)
2.椎体間スペーサー(ブロック、ケージ)
3.椎体プレートおよび椎体スクリュー
4.ワッシャー
5.前方ロッド間コネクター
6.前方ロッド
後方側インプラント
頚胸椎(中位胸椎から上)と胸腰椎(中位胸椎から下)に分類
1.後頭骨プレート及びスクリュー
2.後方スクリュー
①ラテラルマススクリュー 頚椎用
②べディクルスクリュー
③マゲールスクリュー
④腸骨スクリュー
3.後方ロッド
①ロッド
②コンプレッション用ロッド
③テイパーロッド
4.後方ロッドコネクター(ロッドスクリューコネクター)
①ロッド・スクリュー間コネクター
②ロッド間コネクター
③延長用コネクター
5.フック
①椎弓用フック
②横突起用フック
③椎弓根用フック
6.椎弓下ワイヤーおよびテープ
7.脊椎プレート
8.ワッシャー
9.棘突起間スペーサー
10.椎弓スペーサー
附属書 C
高生体適合性脊椎インプラントを必要とする症例
C.1 必要とする症例
欧米の骨格構造に基づき設計された脊椎インプラントでは、小柄な体格の患者には大きすぎたり、サイズバリエーションが少ない。手術時において、患者の骨格構造に最適なインプラントの必要性を経験することが多い。
附属書 D
高生体適合性(カスタムメイド)脊椎インプラントの適応症例
D.1 必要とする症例
下記に示す要因などにより、骨形態および骨質が正常と異なる症例において、高生体適合性(カスタムメイド)脊椎インプラントが有用となる。なお、この分類は、基本製品にも適応できる。
附属書 E
高生体適合(カスタム)化の考え方
E.1 高生体適合(カスタム)化の範囲
社会的ニーズが増加している高生体適合(カスタム)化の臨床的必要性の分類を図 E.1 に示す。さらに、基本性能を維持しつつ、骨格構造および症例などに応じて、不適合な部分に最小限の改良(ミニマリーモディファイド)を加える場合の考え方を図 E.2 に示す。本ガイドラインでは、基本製品を改良することで適合性が向上する場合を対象としている。
図 E.1 高生体適合(カスタム)化の分類
図 E.2 高生体適合(カスタム)化の考え方
附属書 F
脊椎インプラントの高生体適合(カスタム)化の臨床的ニーズ
F.1 アンケート調査の実施
日本脊椎インストゥルメンテーション学会、日本脊椎脊髄病学会、日本側彎症学会、日本整形外科学会基礎学術集会等の協力を得て、脊椎インプラントのカスタム化の臨床的必要性を把握するためにアンケート調査を行った。具体的なアンケート調査は、附属書 B の分類項目に準じて、中位胸椎(およそ第 7 胸椎高位)を境に頚椎用・胸椎用と胸腰椎・腰椎用に分けて行った。頚椎用・胸椎用は、中位胸椎より頭側、胸腰椎・腰椎用は、中位胸椎よりも尾側に使用するインプラントとなる。分類項目のに対して、インプラントを使用する際に生体との適合性に関して不便を感じた項目(カスタム化が求められる項目)にチェックする形式で行った。また、各項目においてその他の項目を設けて幅広く意見を求めた。
F.2 アンケート調査で聞かれた全体意見
約 700 件の回答において得られた約 600 件の意見の中で、特に、多く聞かれた意見を政策面および開発の方向性に分けて以下に示す。
全体に対する意見(多く聞かれた意見)全体および各製品毎で総計約600件の多くの意見(抜粋)
1. 政策的意見
・日本人の体形に合った日本製インプラントの開発がもっと必要、欧米のものは大きすぎる。日本メーカーが参入しやすい環境整備、メーカーの創意工夫及び使用しやすいインプラント、手術器具の開発が必要。国産のインプラントの開発には大賛成、デザイン的にも洗練された形状で機能美を実感できるインプラントの開発を希望。 メイドインジャパンインプラント認可を早く。
・医師のインストゥルメントに対する意見を簡単に、かつ直ちに反映し、改良できる制度を作るべき→今回の高生体適合性(カスタムメイド)脊椎インプラントの開発ガイドラインの趣旨と同じ
・インプラントの強度の基準の制定
・3Dプリンタ技術の活用
・インプラントの値段が高価すぎる印象があり、ある程度の規制が必要なのでは。
2. 開発の方向性
・今までと違い高齢者や骨粗しょう症等の脆弱骨に使用できるインプラント。硬すぎない、強すぎないもの、柔軟性のあり折れないロッド、弾力のある椎体間スペーサーやリフトが必要。後方からの後弯矯正の症例が増えており、椎体間スペーサーのバリエーションを増やしてほしい。
・ロッドの工夫は必要で、 低侵襲・高剛性を両立できるインプラントが望ましく、強度の高いロッドがあればよい、緩みの少ない(骨質にあった生体親和性の高い)インストゥルメントの開発を希望。
・アレルギーがなく感染対策(抗菌作用)のあるインプラントの開発
・可動性を残して再建できるインプラント或いは制動機能を有する後方インプラントの開発→審査基準が平成26年度に通知化「平成26年9月12日 薬食機参発0912 第2号 次世代医療機器・再生医療等製品評価指標の公表について
(別紙2) 可動性及び安定性を維持する脊椎インプラントに関する評価指標」
・ドライバーホールの大きさ、深さ、形状をメーカーで統一すべきでは。
・MRIでアーチファクトの少ない素材の開発、および高強度で吸収性のあるケージの開発
3 アンケートの集計結果
項目毎のアンケートの集計結果(約 700 件)を多く聞かれた意見とともに以下にまとめて示す。
4 アンケートの集計結果のまとめ
前方側と後方側で生体との適合性に関して改善を希望する項目(カスタム化の項目)をまとめると以下となる。前方側インプラントでは、人工椎体および椎体間スペーサーで生体適合化の要望が強く、後方側では、べディクルスクリュー、フック、ロッドコネクター等で生体適合化(カスタム化)の要望が強いことが明らかとなった。
5 実施したアンケート調査の内容
前方および後方に分けて実施したアンケートを以下に参考として示す。
6 第 23 回日本脊椎インストゥルメンテーション学会でのアンケート調査
第 23 回日本脊椎インストゥルメンテーション学会特別企画において実施したスマートフォンを用いたアンケートの内容とその結果を示す。F.1~F.4 に示したアンケート結果を裏付ける結果となった。
附属書 G
小柄なインプラントの力学的安全性評価の考え方
アンケート調査でも要望が多かった脊椎ロッド径を細くする場合など小柄なインプラントに対して、ロッドとスクリューを組み合せた耐久性試験等を実施する場合の力学的安全性評価の考え方を示す。実際の評価においては、その妥当性を含め適切な説明及び根拠が提供できるようにしておく必要がある。
G.1 脊椎ロッドに負荷される曲げモーメント
脊椎ロッドに負荷される曲げモーメントは、JIS T 0312(1)或いは ASTM F2193(2)に規定されている 4 点曲げ試験を用いると、以下となる。
脊椎ロッドの耐久性は、(2)式より疲労強度 σ の高いロッド部材を用いることで増加する。また、小柄な場合には、負荷荷重 P,荷重ローラ間距離 k および支持ローラ間距離 s が小さくなる。荷重ローラ間距離 k と支持ローラ間距離 s の比は、1:3 或いは 1:2 が基本となるが、細いロッドの場合には、k:s の比を 1:2 とした方が安定した耐久性試験となる場合が多い。ASTM F2193 では、腰椎と胸椎では、k=h=76 mm となり、隣接椎の椎弓根間距離の 2 倍(図 G5 参照)を基礎としている。頚椎で 35 mm と、いずれの値も東洋人に比べてかなり大き目の値となっている。特に、ロッド径が 4 mm 以下の小さい場合には、ロッド自身の剛性が小さくなるため、経験的には荷重ローラ間距離 k を隣接椎の椎弓根間距離とした方が安定した 4 点曲げ耐久性試験となる。これらの考え方を参考に脊椎の解剖学的データ(3)-(7)から、小柄な場合の試験条件(荷重 P,k および s)は、G.4 を参照に寸法を縮小することで算出可能となる。
図 G1 に JIS T 0312 に準じた 4 点曲げ試験により得られた耐久性試験を行った結果を示す。縦軸には、(1)式より算出した最大曲げモーメントを、横軸には、破断までの繰り返し数を示し、矢印は破断しなかった結果を示している。ロッド径 3.5 mm では、k=30 mm、k:s=1:2、ロッド径 6.5 mm では、k=36 mm、k:s=1:3 の条件とし、いずれも周波数 3 Hz、荷重比(最小/最大荷重)=0.1、安定した耐久性試験条件とするため、隣接椎の椎弓根間距離を基礎としている。横軸を対数表示することで、105 から 107 回の曲げ破断強度の予測が可能となる。
図 G1 脊椎ロッドの 4 点曲げによる耐久性試験結果
G.2 脊椎ロッドの高耐久性化
金属製脊椎ロッド部材選択の考え方と部材の疲労特性の関係を図 G2 に示す。ステンレス鋼においては、クロム(Cr)やモリブデン(Mo)などの元素の量を増加することで、生体内での耐食性と生体適合性が向上する。また、溶体化(固溶化)処理に比べ、窒素(N)の添加および 20%冷間加工を加えるとチタン(Ti)合金と同レベルの疲労強度を達成できる。
Co-28Cr-6Mo 合金では、鍛造技術或いは N の微量添加などにより、素材の疲労強度が向上する。ステンレス鋼と Co-Cr-Mo 合金に比べて、生体適合性が優れる工業用 Ti 材料では、酸素(O) や鉄(Fe)などの微量元素の増加に伴い、疲労強度は増加し、4 種純Ti では、20%冷間加工を加えることで、Ti 合金の疲労強度に近づく。Ti 合金では、モリブデン(Mo)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)などを添加することで、工業用純 Ti に比べ、耐食性と生体適合性が高くなる。さらに、熱処理(過時効処理など)や熱間鍛造プロセスの条件を僅かに変化させることで、素材の疲労特性が増加する。図 G3 に JIS T 0309(8)に準じた疲労試験結果を示す。疲労強度の高い Co-28Cr-6Mo 合金および Ti 合金製脊椎ロッドが製造できることがわかる。これらの熱処理や鍛造プロセスの変化では、生物学的安全性は低下しない。
図 G2 脊椎ロッド部材選択の考え方および部材の疲労特性の関係
図 G3 Co-Cr-Mo および Ti 合金の疲労強度の製造プロセスおよび熱処理による変化
G.3 スクリューの耐久性試験
JIS T 0311 金属製骨ねじの機械的試験方法に準じたスクリューの強度および耐久性は、図 G4 のように谷径の大きさによって変化する。特に、チタン製の耐久性は、谷径3 mmと3.5 mmの間で変化する。
図 G4 スクリューの谷径の違いによる強度と耐久性の変化
G.4 ロッドとスクリューを組み合わせた耐久性試験
ロッドとスクリューの組合せ試験である ISO 12189(9)を中心に ASTM F1717(10)と比較しつつ、小児脊椎骨の解剖学的データ(7)に基づき、小柄な製品の耐久性試験方法について示す。
1.ロッドとスクリューの組合せ試験治具
ISO 12189 および ASTM F1717 に規定されているポリエチレンブロックのサイズおよびスクリュー間の距離(頭尾側:76 mm,軸位:40 mm)の距離を図 G5 に示す(11)。また、図 G6 に ASTM F1717 に規定されているスクリュー間距離(頭尾側:76 mm、軸位:40 mm)および荷重軸-スクリュー刺入部位間の距離:40 mm の算出の考え方を示す(12)。
附属書 A 図 A1 に示した第 1 腰椎(L1)が解剖学的に最も荷重付加がかかるため、L1 がワーストケースとして選定できることが報告されている(12)。小児脊椎の解剖学的文献データ(7)を図 G7 および図 G8 に示す。欧米人と東洋人の脊椎の大きさを比較した結果(6)を図 G9 に示す。これらのデータを基にスクリュー間の距離(頭尾側:76 mm,軸位:40 mm)および荷重軸-スクリュー刺入部位間の距離:40 mm 等を比例的に縮小する方法を次に示す。
例えば、3~7 歳児の L1 脊椎骨を対象とした場合のペディクルスクリュー間距離(頭尾側)は、 16 (小児 3~7 歳 L1 椎体後面高)÷26(成人 21~35 歳 L1 椎体後面高)×76=47 mm となり、軸位における距離は 31(小児 3~7 歳 L1 椎体上面横径)÷47(成人 21~35 歳 L1 椎体上面横径)×40 =26 mmとなる。同様に荷重軸-スクリュー刺入部位間の距離は、21(小児 3~7歳L1 椎体上面前後径)÷31(成人 21~35 歳 L1 椎体上面前後径)×40=27 mm となり、軸位距離とほぼ同じ値となる。最終的には、さらに、図G9に示した欧米人と東洋人の脊椎の大きさの比(椎弓根長)に応じて、
82%程度の長さに減少する。最終的なペディクルスクリュー間距離(頭尾側)は、40 mm、軸位における距離および荷重軸-スクリュー刺入部位間の距離は20mmと算出でき、これらのサイズの治具を作製して試験を実施する。頚椎等の他の寸法も同様に算出できる。
3~7 歳の小児側弯症を対象として力学試験を行った文献(13)では、ISO 12189 をベースとして小児の体格に合わせてポリアセチレンブロックを用いてサイズダウン(図 G10 参照)し、椎体間バネの代わりにウレタンラバーの椎間板モデルを作製している(13)。また、ASTM F1717 に準じた過酷な環境下での試験として、ストレートのロッドを実際に使用する形状にベンダー等で弯曲させた状態で行った報告もあり(14-16)、ロッドをカスタムメイド化して使用する場合の試験法として有用である。
図 G5 ポリエチレンブロックのサイズおよびスクリュー間の距離(文献 11 より改変)
図 G6 ASTM F1717 に規定されているスクリュー間距離((a)頭尾側:76 mm,(b)軸位:40 mm)および (c)荷重軸-スクリュー刺入部位間距離:40 mm の考え方(文献 12 より改変)
図 G7 腰椎椎体後面高および腰椎椎体上面前後径(mm)の年齢による寸法変化 (平均値±標準偏差) (文献 7 より改変)
図 G8 腰椎椎体横径(上面、中央、下面)(mm)の年齢による寸法変化 (平均値±標準偏差)
(文献 7 より改変)
図 G9 欧米人と東洋人の脊椎の大きさ(椎弓根長)の比較(文献 6 より改変)
図 G10 ISO12189 に準じた小柄な治具の例(文献 13 より改変)
2.負荷荷重および耐久限の選定
ISO 12189 では、脊椎に負荷する荷重に関して、腰椎で、最大荷重:2000 N、最小荷重:600 N、頚椎で、最大荷重:150 N、最小荷重:50 N と規定している。ASTM F1717 では、負荷荷重を規定していないが、圧縮負荷による疲労試験の場合 400~600N 程度の荷重を負荷している報告がある(17)。これは、立位腰椎部にかかる荷重が、体重の 1 倍(体重 70 kg で 70 kg×9.8 m/s2=686 N)であり、これに日常生活動作における腰椎への負荷を考慮し、さらに 40~70%程度に減少している。前後屈、側屈、回旋試験では、100~400N 程度の preload に 6~12 Nm 程度のモーメントを負荷した報告がある(18,19)。これらの情報に基づき、負荷荷重設定の考え方を示す。
小児の脊椎に負荷する荷重は、成人と同様に体重と日常生活動作から算出することが妥当となる。体重に関しては、表 G1 に示す平成 25 年度学校保健統計調査(文部科学省:体重表)が参考となる。日常生活動作に関しては図 G11 が参考となる(20)。仮に 19~30 kg の小児(5~9 歳)では、150~300 N の負荷をかけた疲労試験が目安となる。成人と小児の骨密度と脊椎骨の圧縮強度の比較(20)を図 G12 に示す。小児の脊椎骨の圧縮強度が成人の 66~73%程度であることを考慮すると、耐久限が150~300Nの66~73%程度が目安となる。ISO 12189に規定された負荷条件も同様に縮小できる。
表 G1 平成 25 年度学校保健統計調査(文部科学省:体重表)
図 G11 日常生活動作により脊椎に負荷される荷重(文献 20 より改変)
図 G12 小児および成人の脊椎骨の圧縮強度比較(文献 20 より改変)
その他、有限要素解析 FEA の活用が効果的と考えられ、ISO12189 および ASTM F1717 を FEA と比較した論文(11)が参考となる。脊椎ロッドに負荷される曲げモーメントに関しては、14 歳を対象とした FEA モデルで、最大で 10 Nm を負荷した FEA 解析がある(21)。 |