高生体適合性(カスタムメイド)人工足関節 開発ガイドライン 2015

ガイドラインID 2015-E-DE-029
発出年月日
発出番号
WG名 体内埋め込み型材料分野 高生体適合性(カスタムメイド)他関節インプラント開発 WG
制度名 医療機器等開発ガイドライン策定事業(開発ガイドライン)
製品区分 医療機器
分野

体内埋め込み型材料

GL日本語版ファイル

2015-E-DE-029 高生体適合性 カスタムメイド 人工足関節の開発ガイドライン2015 手引き

英文タイトル
GL英語版ファイル

GL:イントロ・スコープ

1. 序 文
人工足関節置換術の臨床的なニーズは、今後増加することが予測されているが、現時点では、製品の種類が少なく、その適応が制限されている。
本ガイドライン(手引き)は、足関節の形状、骨格などに理想的な適合を図った高生体適合性(カスタムメイド)インプラントの開発を目的としている。


2. 適応範囲
このガイドライン(手引き)は、高生体適合性(カスタムメイド)人工足関節を開発する際に有用な開発指針を示すことを目的とし、開発可能なカスタムメイド製品の種類、力学的安全性の考え方に関して記述する。人工足関節の適応症例および代表的な人工足関節の種類を附属書 A に示す。また、開発に有用となる情報を附属書(附属書 B および附属書 C)に記述する。

3. 引用通知
医療機器製造販売申請に関しては、以下のいずれかによる。なお、通知に記載されたカスタム化の項目を人工足関節に適応する。
(1) 平成 22 年 12 月 15 日 薬食機発第 1215 第 1 号次世代医療機器評価指標の公表について(別添 3 整形外科用骨接合材料カスタムメイドインプラントに関する評価指標)
(2) 平成 23 年 12 月 7 日 薬食機発第 1207 第 1 号次世代医療機器評価指標の公表について(別添 2 整形外科用カスタムメイド人工股関節に関する評価指標)
(3) 平成 24 年 11 月 20 日 薬食機発第 1120 第 5 号次世代医療機器評価指標の公表について(別添 1 整形外科用カスタムメイド人工膝関節に関する評価指標)

GL:本体

4. 用語および定義
本ガイドライン(手引き)で用いる主な用語および定義は次のとおりである。

4.1 高生体適合性(カスタムメイド)人工足関節(custom-made artificial ankle joints)
医師との連携により、基本性能を維持しつつ、骨形状に応じて不適合な部分が存在する場合に必要最小限の改善(ミニマリーモディファイド)を加え、生体適合性、固定性などを向上させた人工足関節(附属書 B 参照)。
特に、附属書 C に示す症例において効果的となる。類義語として、テーラーメイド
(tailor-made)およびオーダーメイド(order-made)がある。
5. 高生体適合性(カスタムメイド)人工足関節の種類
表 1 に開発可能な高生体適合性(カスタムメイド)製品の例を示す。骨形状に最適化させるための 3 次元方向のカスタム化を示しており、摺動部の組合せに関しては、基本製品と同一の組合せを基本とする。人工足関節には、2 コンポーネントおよび 3 コンポーネント(モバイル)がある。

表 1 高生体適合(カスタム)化の項目

高生体適合(カスタム)化の項目

1.脛骨コンポーネント(部分的な形状付与・最適化)
① 骨との接触面形状(前方、後方、内側、外側、厚さ)
② ステム(長さ、太さ、形状)
③ ポリエチレンインサート(前方、後方、内側、外側、厚さ)
④ スクリューホール(位置、大きさ)
2.距骨コンポーネント(部分的な形状付与・最適化)
① 骨との接触面形状(前方、後方、内側、外側、厚さ)
② ステム(長さ、太さ、形状)
③ ペグ(長さ、太さ、数、位置、形状)
3.ポリエチレンインサート(部分的な形状付与・最適化)
①ポリエチレンインサート(前方、後方、内側、外側、厚さ)

6. 製造可能な条件
製造可能な条件としては、以下を満たす必要がある。
① 基本となるインプラント製品の製造販売承認を有する。
② 医師との連携により、骨格構造および症例などに応じて、高生体適合性(カスタムメイド)製品を製造できる技術を有する。
③ 製品の力学的安全性(機械的性質)の検証(確認)および品質を検査できる技術を有する。
④ 必要とする期間内に製品を製造できる。

7. 製品化のプロセス
製造は、医師と連携して行い、その手順は次による。
① X 線写真、CT、MRI などの製造に必要な骨格構造の情報を入手する。
② 骨格との適合性、患者に最適な製品デザイン案および製造方案などを作成する。医師と連携し検討を加え、医師の確認を得る。
③ 製造方法は、基本製品と同等とする。カスタムメイド人工足関節が、基礎となる既製品より力学的に安全な方向への形状等の変更である場合は、その旨、表 2 等を参考に記載することにより、機械的安全性に関する試験を省略することが可能である(既に承認を取得した自社製品の試験データを用いることも可能)。ただし、基本製品の最小サイズ以下のサイズを必要とする場合、コンポーネントの強度が低下する可能性がある場合等には、力学的安全性を確認する。
④ 最適なインプラントを製造する。
⑤ 製造された製品と設計デザインの整合性(一致性)を医師とともに確認し、確認データを保管する。

表 2 高生体適合(カスタム)化の項目および力学的安全性に対する考え方

GL:付属資料

引用関連規格

附属書 A
人工足関節の適応症例および人工足関節の種類

A.1 人工足関節の適応症例
人工足関節の適応症例としては、末期変形性足関節症(OA)と関節リウマチ(RA)が主である。

A.2 人工足関節の種類
足関節の構造を図 A.1 に示す。人工足関節置換例を図 A.2 に示す。

図 A.1 足関節の基本構造 図 A.2 人工足関節置換例
図 A.3 人工足関節のタイプ

附属書 B
高生体適合(カスタム)化の考え方

B.1 高生体適合(カスタム)化の範囲
社会的ニーズが増加している高生体適合(カスタム)化の臨床的必要性の分類を図 B.1 に示す。さらに、基本性能を維持しつつ、骨格構造および症例などに応じて、不適合な部
分に最小限の改善(ミニマリーモディファイド)を加える場合の考え方を図 B.2 に示す。

図 B.1 高生体適合(カスタム)化の分類
図 B.2 高生体適合(カスタム)化の考え方

附属書 C
高生体適合性(カスタムメイド)人工足関節を必要とする症例

C.1 必要とする症例
下記に示す要因などにより、骨形態および骨質が正常と異なる症例において、高生体適合性(カスタムメイド)人工足関節が必要となる。
Ⅰ.先天異常 Ⅱ.外傷 Ⅲ.疾病
骨・関節疾患
①関節リウマチ
②変形性関節症等 Ⅳ.再手術
①先行する骨切り手術後の再手術
②人工関節再置換

C.2 人工足関節の高生体適合(カスタム)化の臨床的ニーズ
日本整形外科学会、日本足の外科学会、日本人工関節学会、日本関節病学会、整形外科バイオマテリアル学会等の協力を得て、人工足関節のカスタム化の臨床的必要性を把握するために行ったアンケート調査結果(約 800 件)を図 C.1 に示す。人工足関節全体の必要性については 80%以上の方が増すと回答している。また、高生体適合(カスタム)化脛骨コンポーネントおよび距骨コンポーネントで要望が強いことがわかる。

関図 C.1 人工足関節の高生体適合(カスタム)化の臨床的ニーズ(アンケート調査)

関連する開発ガイドライン
(1) 体内埋め込み型材料分野(カスタムメイド骨接合材料)開発ガイドライン 2010
(2) 体内埋め込み型材料分野(カスタムメイド人工股関節)開発ガイドライン 2011
(3) 体内埋め込み型材料分野(カスタムメイド人工膝関節)開発ガイドライン 2012

国内関連GL

海外関連GL

WG開始年月

WG終了年月

WGメンバー

座長 勝呂 徹 一般社団法人 日本人工関節研究所リウマチ治療研究所 所長
石坂 春彦 ナカシマメディカル株式会社 薬事品証部 次長
伊藤 泰之 東海部品工業株式会社 専務取締役
伊藤 由美 日本ストライカー株式会社 薬事・臨床開発統括本部 薬事部 部長
上野 勝 京セラメディカル株式会社 品質保証統括部長
小川 哲朗 オリンパステルモバイオマテリアル株式会社 代表取締役社長
齋藤 知行 横浜市立大学大学院 医学研究科 運動器病態学 教授
佐藤 徹 株式会社 オーミック 取締役副社長
鈴木 昌彦 千葉大学 フロンティア医工学センター 教授
関口 昌之 東邦大学 医学部 整形外科学教室 准教授
田中 康仁 奈良県立医科大学 整形外科教室 教授
藤田 正弘 瑞穂医科工業株式会社 五泉工場 技術部技術二課 課長
松下 隆 帝京大学 医学部 整形外科 主任教授
龍 順之助 総合東京病院顧問(日本大学名誉教授)
若 林 尚伸 バイオメット・ジャパン株式会社 研究開発部 部長

報告書(PDF)

2015-E-DE-029-H25-報告書
2015-E-DE-029-H24-報告書

報告書要旨(最新年)

承認済み製品(日本)

承認済み製品(海外)

製品開発状況

Horizon Scanning Report