ハイブリッド型人工骨・骨補填材 開発ガイドライン 2008

ガイドラインID 2008-E-DE-006
発出年月日
発出番号
WG名 体内埋め込み型材料(ハイブリッド型人工骨・骨補填材) 開発WG
制度名 医療機器等開発ガイドライン策定事業(開発ガイドライン)
製品区分 医療機器
分野

体内埋め込み型材料

GL日本語版ファイル

2008-E-DE-006 ハイブリッド型人工骨 骨補填材 開発ガイドライン 2008

英文タイトル
GL英語版ファイル

GL:イントロ・スコープ

1.序文
人工骨・骨補填材の開発において、前臨床試験の役割は大きく、安全性・有効性に関する材料学的な評価基準の策定が不可欠となる。わが国では、先進的な材料技術を保有しており、様々な機能を付与した人工骨・骨補填材を開発する技術的ポテンシャルは、世界のトップレベルにある。現在、臨床に使用されている人工骨・骨補填材の多くは、生体活性・生体適合性・骨伝導性を有する。また、ヒト由来成分を含まない合成材料であるため、感染のリスクがなく、供給量に制限がない。しかし、自家骨に比べて骨誘導性等に欠ける特徴がある。このため、構造体としての人工骨と BMP(Bone Morphogenetic Protein)等の成長因子或いは薬理作用のある物質(抗生物質等)とを組み合わせたハイブリッド人工骨・骨補填材は、次世代型人工骨として開発の推進が望まれている。

2.開発ガイドライン策定の目的
本開発ガイドライン策定の目的は、わが国におけるこの分野の研究開発を活性化し、早期に多品目の製品を実用化することで、国民に高度な医療を提供することにある。
ハイブリッド人工骨・骨補填材の応用例として、BMP、ペプチド、b-FGF(塩基性線維芽細胞増殖因子; basic-Fibroblast Growth Factor)及び VEGF(血管内皮細胞増殖因子; Vascular Endothelial Growth Factor)などの骨形成促進作用が期待できる物質と組み合わせたもの、或いは抗生物質と組み合わせたものなどが想定される。人工骨・骨補填材そのものの機能を発揮すると同時に、組み合せた物質による補助作用によって、種々の機能が促進されるハイブリッド人工骨・骨補填材を開発するための評価項目を示すことが、本ガイドラインの目的である。

3.人工骨・骨補填材の付け
骨関節領域における生体材料の用途別の分類は、以下のとおりである。
(1) 人工骨・骨補填材: 骨の空隙部の補填又は骨の増量に用いる。
金属、バイオイナートセラミックス、バイオアクティブセラミックス、複合材料、骨セメントなど
(2) 骨折治療材料: 骨折部の骨接合に使用する。
髄内釘、プレート、ねじなど
(3) 人工関節: 関節の再建に使用する。
(4) 関節治療材: 関節疾患の治療に使用する材料で、人工関節以外のもの。
人工靭帯、人工椎間板など

GL:本体

4.人工骨・骨補填材の分類
人工骨・骨補填材は、骨の欠損部・空隙部や骨の連続性のない部分を補填する用途で用いられる。これらに求められる性能は、使用場所によって異なり、使用目的に応じた評価が重要となる。
4.1 使用目的からの分類
(1) 骨内の骨欠損部の補填: 良性骨腫瘍の治療等
(2) 外形が骨形状を持つ骨欠損部の補填: 広範囲の切除を要する腫瘍の治療等
(3) 人工骨による骨同士の連結: 椎体間補填、椎弓形成等
(4) 自家骨や同種骨移植の際に不足する骨量の補助(主に顆粒の場合)
(5) 内固定材により荷重を支た状態で、骨折部もしくは骨折部に生じた欠損部の補填
(6) 人工骨による骨の造成: 上顎洞挙上等
4.2 使用部位による分類
(1) 荷重がほとんど加わらない部分: 大腿骨海綿骨の補填、脊椎椎体内海綿骨の補填、腸骨に生じた骨欠損 (自家骨採骨部を含む)の補填、頭蓋骨に生じた骨欠損部の補填、手指骨内部の海綿骨の補填等
(2) 荷重が加わる部分: 椎体間、長管状骨の皮骨の欠損補填等
4.3 形状からの分類
(1)緻密体ブロック (2) 多孔体ブロック (3) 顆粒状 (4)ペースト状
4.4 生体活性からの分類
(1) 骨と化学的に結合しない材料: 金属、アルミナ、コニアセラミックス等
(2) 骨と化学的に結合する材料: ハイドロキシアパタイト、生体活性ガラス
(3) 骨と置換される材料: β型リン酸三カルシウム(β-TCP)等
(4) 生体に吸収される材料: ポリ乳酸、コラーゲン等
(5) 複合化材料: (1)~(4)を組み合わせた複合材料
(6) 薬理物質(骨形成因子、抗生物質等)を含有する材料: 人工骨+Bone Morphogenetic
Protein(BMP)、人工骨+生理活性ペプチド、人工骨+抗生物質等

5.前臨床試験項目
人工骨・骨補填材の分類に応じて、表1の項目に関して評価することが推奨される。ただし、荷重部と非荷重部によって力学特性が異なる。

5.1 原材料
原材料の記載に関しては、平成16年11月15日付け医療機器審査No.19 厚生労働省医薬食品局審査管理課医療機器審査管理室事務連絡別添の「医療用具の製造(輸入)承認申請書における原材料記載について」を参考とする。


5.2 原材料の生物学的安全性試験
JIS T 0993-1に準じることとする。

5.3 母材の性能評価試験

表1 母材の性能評価試験項目

(1) 構成成分: 最終製品で構成元素の量と不純物量を同定
不純物量の例: Pb≦30 ppm Hg≦5 ppm Cd≦5 ppm As≦3 ppm
(ASTM F 1185及びASTM F 1088に準拠)
(2) 気孔率: 体積、重量と密度測定等により計測
細孔径分布: 水銀圧入法等により計測
緻密体の場合は、気孔率の代わりに、相対密度をアルキメデス法等で計測する。
(3) 組織又は形態観察: 走査電子顕微鏡等を用い
気孔の連通性を求める材料では、走査電子顕微鏡等で観察する。
(4) 圧縮強度評価試験
多孔体での寸法の例: 10 mm×10 mm×10 mm
(5) 曲げ強度評価試験
3 点曲げ試験を基本とし、適切な寸法の試験片を用い、荷重-変位曲線から曲げ強度を計測する。
緻密体セラミックスの寸法例: 3 mm×3 mm、支点間距離: 30 mm 例: 3 mm×4 mm、支点間距離: 30 mm 例: φ5 mm、支点間距離: 25 mm
多孔体セラミックスの寸法例: 8 mm×8 mm、支点間距離: 20 mm
例: 10 mm×10 mm、支点間距離: 25 mm 例: 7 mm×6 mm、支点間距離: 30 mm クロスヘッドスピードは、0.5 mm/minを基本とする。
試料数: 3以上
(6) 硬化特性は、硬化曲線(硬度の時間変化)及び硬化後の圧縮強度特性を基本に測定する。その際、測定雰囲気は、適切に選択する。
(7) 動物実験
・主にラット及びウサギを用いる。
・試験片形状及び埋植場所に関しては、期待される性能に応じて適切に選択する。
・試料の数: 埋植期間当り3以上
・観察期間は、4週、12週、24週を目安とする。
・観察項目: インプラント材料と骨界面の形態観察、線維性組織の有無の観察。

6.ハイブリッド人工骨の前臨床試験項目
人工骨の構造体としての機能に加え、ハイブリッド物質(薬理物質等)の補助作用によって、機能が促進される。
なお、感染に対する徐放作用等のハイブリッド材料自身に対する評価項目は、適宜選択することとする。
(1) ハイブリッドによる化学的な評価
・第 3 成分の生成がないことを確認: X 線回折、IR 吸収、液体クロマトグラフなどを用いて確認する。ただし、骨組織内または肝臓での通常の代謝過程で生成する薬理物質等の代謝中間物は、当該第3成分には含まれない。
判定基準: <例えば>それぞれ単体で測定したスペクトルで帰属が分かっているピーク以外のピークがないことを確認する。
・放出性の評価: 0.9%NaCl 中に浸漬して、液体クロマトグラフ等で液中の放出濃度を計測する。
(2) ハイブリッドによる物理的な評価
ハイブリッドによって、5.3項 表1に示した評価項目に照らして実用上問題がないことを確認する。
(3) ハイブリッドによる有効性の評価
有効性の評価は、5.3項 表1に示した動物試験項目に対して、比較評価を行うこととする。

7.その他の基礎的な事項
平成12年3月28日付け医薬審第526号 厚生省医薬安全局審査管理課長通知「整形インプラント製品の承認申請に係る取扱いについて」、平成12年12月28日付け医療機器審査No.29 厚生省医薬安全局審査管理課事務連絡「整形インプラント製品の承認申請に係る取扱いに関するQ&Aについて」、平成17年2月16日付け薬食機発第0216001号 厚生労働省医薬食品局審査管理課医療機器審査管理室長通知「医療機器の製造販売承認申請に際し留意すべき事項について」、平成17年2月16日付け薬食機発第0216003号 厚生労働省医薬食品局審査管理課医療機器審査管理室長通知「医療機器の製造販売承認申請書添付資料概要作成の手引きについて」、平成17年3月31日付け薬食発第0331038号 厚生労働省医薬食品局長通知「医療機器の安全性に関する非臨床試験の実施の基準に関する省令の施行について」、平成15年2 月13日付け医薬審発第0213001号 厚生労働省医薬局審査管理課長通知「医療用具の製造(輸入)承認申請に必要な生物学的安全性試験の基本的考え方について」、及び平成15年3月19 日付け医療機器審査No.36 厚生労働省医薬局審査管理課事務連絡「生物学的安全性試験の基本的考え方に関する参考資料について」等を参考に行うこととする。

GL:付属資料

8.関連通知
(1) 平成16年11月15日付け医療機器審査No.19 厚生労働省医薬食品局審査管理課医療機器審査管理室事務連絡「医療用具の製造(輸入)承認申請書における原材料記載について」
(2) 平成12年3月28日付け医薬審第526号 厚生省医薬安全局審査管理課長通知「整形インプラント製品の承認申請に係る取扱いについて」
(3) 平成12年12 月28 日付け医療機器審査No.29 厚生省医薬安全局審査管理課事務連絡
「整形インプラント製品の承認申請に係る取扱いに関するQ&Aについて」
(4) 平成17年2月16日付け薬食機発第0216001号 厚生労働省医薬食品局審査管理課医療
機器審査管理室長通知「医療機器の製造販売承認申請に際し留意すべき事項について」
(5) 平成17年2月16日付け薬食機発第0216003号 厚生労働省医薬食品局審査管理課医療機器審査管理室長通知「医療機器の製造販売承認申請書添付資料概要作成の手引きについて」
(6) 平成17年3月31日付け薬食発第0331038号 厚生労働省医薬食品局長通知「医療機器の安全性に関する非臨床試験の実施の基準に関する省令の施行について」
(7) 平成15年2月13日付け医薬審発第0213001号 厚生労働省医薬局審査管理課長通知「医
療用具の製造(輸入)承認申請に必要な生物学的安全性試験の基本的考え方について」
(8) 平成15年3月19日付け医療機器審査No.36 厚生労働省医薬局審査管理課事務連絡「生物学的安全性試験の基本的考え方に関する参考資料について」

引用関連規格

国内関連GL

海外関連GL

WG開始年月

WG終了年月

WGメンバー

飯田 寛和  関西医科大学 主任教授
上野 勝   日本メディカルマテリアル株式会社 統括部研究部長
藏本 孝一 ナカシマプロペラ株式会社 メディカル事業部長
高取 吉雄 東京大学医学部整形外科学准教授
○中村 孝志 京都大学大学院 医学研究科教授
水野 均 オリンパステルモバイオマテリアル株式会社 代表取締役社長
松下 富春 中部大学 生命健康科学研究所教授
村上 輝夫 九州大学大学院 工学研究院教授
安永 裕司 広島大学大学院 医歯薬学総合研究科教授
龍 順之助 日本大学医学部 主任教授
○・・・座長

開発WG・TF1委員
大槻 主税 名古屋大学大学院 工学研究科教授
中島 武彦 ペンタックス株式会社
服部 昌晃 日本特殊陶業株式会社
井村 浩一 コバレントマテリアル株式会社
渡辺 一博 オリンパス株式会社
杉野 篤史 ナカシマプロペラ株式会社

経済産業省
渡辺 弘美 経済産業省 商務情報政策局医療・福祉機器産業室長
竹廣 克 経済産業省 商務情報政策局医療・福祉機器産業室 室長補佐
小林 秀司 経済産業省 商務情報政策局医療・福祉機器産業室 技術係長
島 真一朗 経済産業省 商務情報政策局医療・福祉機器産業室 担当官

事務局
岡崎 義光 独立行政法人産業技術総合研究所 人間福祉医工学研究部門
本間 一弘 独立行政法人産業技術総合研究所 人間福祉医工学研究部門

オブザーバー
土屋 利江 国立医薬品食品衛生研究所 療品部長

報告書(PDF)

2008-E-DE-006-H19-報告書

報告書要旨(最新年)

承認済み製品(日本)

承認済み製品(海外)

製品開発状況

Horizon Scanning Report