細胞シート 除染パスボックス設計ガイドライン2010

ガイドラインID 2010-E-RE-012
発出年月日
発出番号
WG名 再生医療分野 細胞シート開発WG
制度名 医療機器等開発ガイドライン策定事業(開発ガイドライン)
製品区分 再生医療・遺伝子治療
分野

再生医療

GL日本語版ファイル

2010-E-RE-012 細胞シート除染パスボックス設計ガイドライン2010

英文タイトル
GL英語版ファイル

GL:イントロ・スコープ

1. 序文
アイソレーターなどの高度な無菌性維持を目的とする無菌チャンバーに資材を搬入する場合は、チャンバー内部の無菌性を維持するために予め除染パスボックスなどで資材表面の除染が必要となる。
また、アイソレーターシステムを再生医療用途に使用する場合にはアイソレーターや無菌チャンバー間の無菌的な接続が必要となり、こうした無菌接続を確実に行なうためには除染パスボックスを使用し、短時間で除染する技術が求められる。
本項では無菌操作用途で使用される除染パスボックスついての除染、オペレータトレーニングおよび日常管理等の要件について記載する。

GL:本体

2. 用語の定義
除染 (decontamination):再現性のある方法により生存微生物を除去し、またはあらかじめ指定されたレベルまで減少させることをいう。
微生物(microorganism):通例、細菌、真菌、原虫、ウイルス等を総称するものであるが、この指針においては細菌および真菌を指す。
無菌(sterile):生育可能な微生物が存在しないことをいう。
滅菌(sterilisation):病原性、非病原性を問わず、全ての種類の微生物を殺滅し、または除去し、対象とする物の中に微生物が全く存在しない状態を得ることをいう。
消毒(disinfection):対象物の表面に付着した微生物を安全なレベルまで減少させまたは除去すること。
無菌操作(aseptic processing):微生物および微粒子を許容レベルに制御するために、供給する空気、原料および資材、構造設備並びに職員を管理した環境下において無菌医薬品に係る製品の無菌充てんその他の作業を行うことをいう。
除染パスボックス(pass-box with decontamination):除染機能を有するパスボックスで異なる空間における物品の移動を行うための機器をさす。
アイソレーターシステム(Isolator system):清浄度がグレードDあるいはそれ以上の部屋にて、アイソレーターおよび除染パスボックスを利用することにより、物資の移動を伴いつつ、グレードAの無菌環境を維持するシステム。

3. 一般的要件
1) 無菌操作を目的とする除染パスボックスを設置する環境の空気の清浄度レベルは、少なくともグレードD(非作業時 ISOクラス8)とすること。
2) 無菌操作で使用する資材の搬入および搬出に用いる除染パスボックスは、アイソレーターまたは無菌チャンバーの機能を維持することができる構造とすること。
3) 除染パスボックスにグローブを装備する場合は除染剤に耐性のある素材を使用すること。
4) 除染パスボックスは外部からの汚染を防ぐことができる構造とし、除染中も適切な差圧を維持すること。
5) あらかじめ定めた基準に基づいてリーク試験を実施すること。
6) 除染パスボックスのドア間にはインターロック機構を設置し、除染工程を経る場合は、工程を完了しないとドアが開かないロック機能を付加すること。
7) 除染パスボックスを接続する場合は、接続後、無菌操作環境を担保すること。また、脱着前後においては、適切なバイオセーフティレベルを担保すること。

4. 除染機能の要件
1) 適用する除染剤に応じた適切なバイオロジカルインジケータを選定し、周辺環境清浄度に合わせ除染強度を実証したものであること。除染の程度は、資材表面のバイオバーデンを考慮して設定すること。
2) 培養液や細胞と直接接触する表面を除染する場合は6ログ以上の除染強度を確保すること。
3) 除染剤は、パスボックスに持ち込む資材等の材質、量および形態、被除染空間(除染パスボックス、アイソレーター、無菌チャンバーなどの内部)のバイオバーデン等を考慮して選定する。除染剤の例として、過酸化水素蒸気のほか、過酢酸のミストまたは蒸気、オゾンガス、二酸化塩素ガス等がある。資材の除染プロセスはバリデートされていなければならない。
4) 除染および接続にかかる時間は、システムの要求に沿ったものであること。
5) 除染パスボックスおよび接続された装置において、除染に昇温が必要な場合、設計された範囲であること。
6) 除染パスボックスおよび接続された装置において、内部の清浄度は、あらかじめ定めたグレードに適合するものであること。
7) 除染工程の確立、あるいは除染工程実施の際には、以下の点を配慮すること。
i) 被除染空間内の表面が洗浄され乾燥していること
ii) 被除染空間および周囲の温度(温度分布確認を含む)が予め定められた範囲であること
iii) 被除染空間の湿度が予め定められた範囲であること iv) 除染剤の暴露時間(除染時間)が予め定められた時間以上であること v) 除染剤の暴露濃度が予め定められた濃度以上であること vi) 予め定められた差圧が保たれていること vii) 除染剤の拡散が均一であること
viii) バイオバーデン(菌種、菌量)が予め定められた範囲であること
8) 除染中および除染後、除染剤の漏出により周囲作業環境の除染剤濃度が許容基準を超えないこと。
9) 除染後、除染剤濃度が直接接触する製品あるいは細胞などに影響のないレベルにまで低下していることをバリデーションで確認しておくこと。
10) 除染に使用するミスト、蒸気またはガスの特性、およびこれらの発生装置の運転を十分に理解した職員が除染作業を行うこと。



5. 空調システムの要件
1) 除染パスボックス内部への給気、および外部への排気はHEPA規格以上のフィルターを通すこと。
2) 除染パスボックス内部の気流パターンは乱流を採用することができること。

6. 除染実施者のトレーニング
除染パスボックスを使用する実施者に対して、予め少なくとも以下の事項に関する教育訓練を実施すること。
i) 除染パスボックスおよび接続された装置の除染作業手順について
ii) 除染パスボックスおよび接続された装置のリークテスト実施手順について iii) 製品等および資材の搬入および製品の搬出作業手順について
iv) 除染パスボックスおよび接続された装置の運転、監視測定および維持管理について
v) 化学物質等安全データシートに基づいた除染剤の安全管理およびアイソレーター設備との適合性について vi) 工程に特異的な標準作業手順について vii) 除染作業のリスクについて

7. 日常管理
除染パスボックスの日常管理には、少なくとも以下の事項を含むこと。
i) バリデーションの結果に基づいて、除染パスボックスおよび除染接続ポートを運転する標準作業手順書を作成すること。
ii) 一定期間ごと、あるいは除染の都度、除染パスボックスの使用前にリーク試験を行うこと。リーク試験の例としては、圧ホールド試験、ガス検出法があるが、必ずしもこれらの方法に限定するものではない。
iii) 除染パスボックスにグローブが使用されている場合、グローブは毎使用時、目視により破れ等がないことを確認すること。
iv) 維持管理のために、消耗部品について予め更新計画を作成し、交換の時期を明らかにしておくこと。
v) 除染を実施する際には、温度、湿度、ガス濃度等の除染工程が適切に完了したことを確認できる指標について、あらかじめ定めた測定ポイントにおいて精度が確保された計測器により測定し、正確に記録を作成すること。
8. 除染パスボックスの利用
除染パスボックスは、アイソレーター技術との統合により、無菌操作を担保できるCell processing center (CPC)の構築を可能とする。
グレードDもしくはそれ以上の外部環境に設置されたアイソレーターの内部環境は、グレードA での無菌操作を担保でき、更にアイソレーター内への物質移送の際、除染機能の付いたパスボックスを介することで、グレードDからグレードAへの移送が可能となる。一例としてのレイアウトを図1に示す。

図1 除染ボックスが附帯されているアイソレーターを利用したCPCレイアウト例

GL:付属資料

引用関連規格

国内関連GL

海外関連GL

WG開始年月

WG終了年月

WGメンバー

座長 浅野 茂隆  早稲田大学 理工学術院 教授
牛田多加志 東京大学 大学院医学系研究科 教授
梅澤 明弘   国立成育医療センター 研究所生殖医療研究部 部長
小久保 護   渋谷工業株式会社 プラント生産統轄本部 技術本部 再生医療プロジェクト 兼 微生物制御技術部 部長 参与
小寺 良尚   愛知医科大学 教授
菊池 明彦   東京理科大学 基礎工学部 材料工学科 准教授
紀ノ岡正博 大阪大学 大学院工学研究科 教授
高木 睦   北海道大学 大学院工学研究科 教授
田村 知明   オリンパス株式会社 研究開発センター再生医療グループリーダー
西野 公祥 川崎重工業株式会社 技術開発本部 上級専門職
畠 賢一郎  株式会社 ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング 取締役研究開発部長
水谷 学   株式会社セルシード 技術開発部長
山本 宏   三洋電機株式会社 コマーシャルカンパニーバイオメディカ事業部 開発部 部長

報告書(PDF)

2010-E-RE-012-H21-報告書

報告書要旨(最新年)

承認済み製品(日本)

承認済み製品(海外)

製品開発状況

Horizon Scanning Report