整形外科用骨接合材料カスタムメイドインプラント

ガイドラインID 2010-HN-DE-010
発出年月日 2010-12-15
発出番号 平成22年12月15日付薬食機発1215第1号
WG名 カスタムメイド分野 審査WG
制度名 次世代医療機器・再生医療等製品評価指標(審査ガイドライン)
製品区分 医療機器
分野

体内埋め込み型材料

GL日本語版ファイル

2010-HN-DE-010 整形外科用骨接合材料カスタムメイドインプラント

英文タイトル
GL英語版ファイル

GL:イントロ・スコープ

1.はじめに
整形外科領域においては、生体植え込み型のインプラントは、薬事法上の医療機器として一定の幅、長さ、厚さ等が規定され、力学的安全性や生物学的安全性が確認された既製品として広く臨床応用され、我が国の医療及び国民の生活の質の向上に貢献している。しかし、患者の骨格及び骨形状には個体差があり、また患者個々の骨格構造及び症状等によっては既製品のインプラントでは対応できない場合がある。このような場合において、優れた個体適応性を有するインプラント、いわゆるカスタムメイドインプラントが必要とされる。カスタムメイドインプラントを臨床応用することは、優れた固定性、機能再建が可能となり手術成績の向上、低侵襲手術の実現、再手術の減少、早期リハビリテーションの実現、早期社会復帰等患者や医療関係者にとって有益である。
骨接合材料カスタムメイドインプラントが求められている背景には、インプラント製品の用途の多様化、開発コンセプトの複合化、製品の構造、表面処理等技術の高度化等から生体親和性の高いインプラントの開発が可能となってきていることがある。また臨床的にも通常のインプラントより医学的に優れた生体適合性を有するインプラントが求められている。特に、症例に応じて個別の要求を満足するインプラント、すなわち症例に必要とされた加工を加えた個体適応性に優れたカスタムメイドインプラントの臨床応用を通じて、患者、医療関係者の必要性を満たすことで、長期にわたり優れた臨床成績を獲得することは、患者及び医療関係者のみならず医療経済上も有益であると考える。
カスタムメイドインプラントの対象としては、骨接合材料、人工関節等が考えられるが、本評価指標におけるカスタムメイドインプラントの範囲は、臨床的必要性が高い骨接合材料を中心に行い、基本的なカスタムメイドインプラントの必要事項を定めた。
また、人工股関節、人工骨頭、人工膝関節、人工肩関節、人工肘関節といった人工関節において様々な関節の骨形状に適応し、重大な骨欠損及び変形骨等に対して最適に成形されたインプラントが必要とされているため、これらの適応範囲、構造学的、力学的観点及び三次元構造等未解決の諸問題について今後さらなる検討が必要であると考えられた。

2.本評価指標の対象
本評価指標は、整形外科用インプラントのうち、金属製骨接合材料(骨プレート、骨端プレート、髄内釘、Compression Hip Screw(CHS)、ショートフェモラルネイル及び骨ねじ等)を対象とする。
本評価指標においてカスタムメイドインプラントとは、患者個々の骨形状にあわせて基礎となる既製品の形状の一部変更したインプラントであって、承認書にその旨が記載されたものを対象とする。したがって、特定保険医療材料として、悪性腫瘍や再置換用等に用いられるカスタムメイド人工関節、カスタムメイド人工骨とは異なるものである。
なお、製造方法が基礎となる既製品と異なる場合については、本評価指標の対象としない。

3.本評価指標の位置づけ
本評価指標は、技術開発の著しい整形外科用インプラントを対象とするものであることを勘案し、問題点、留意すべき事項を網羅的に示したものではなく、現時点で考えられる点について示したものである。よって、今後の更なる技術革新や知見の集積等を踏まえ改定されるものであり、申請内容等に関して拘束力を有するものではない。カスタムメイドインプラントの評価にあたっては、個別の製品の特性を十分理解した上で、科学的な合理性を持って柔軟に対応することが必要である。
また、本評価指標の他、国内外のその他の関連ガイドラインを参考にすることも考慮すべきである。

GL:本体

4.カスタムメイドインプラントの承認申請書の記載事項
(1)形状、構造及び原理
「形状、構造及び原理」に、カスタムメイドインプラントを作成し得る範囲を基礎となる既製品と区別し、明確に記載すること。
(2)使用目的、効能又は効果
カスタムメイドインプラントは、次の場合に使用することができることとする旨を「使用目的、効能又は効果」に記載しておくこと。
① 医師が、既製品では十分な治療効果が得られないと判断した場合
② 医師が、既製品を使用した場合に比べ、大きな治療効果が得られると判断した場合
(3)その他
備考欄に「カスタムメイドインプラントを含む」と記載すること。
5.カスタムメイドインプラントの評価
(1)製造技術の評価
基礎となる既製品での製造方法により製造可能であることを示すこと。
(2)安全性の評価
カスタムメイドインプラントに必要な素材の基礎的な安全性(生物学的安全性等)を示すこと。既承認品のデータを用いることで省略する場合はその旨を説明すること。
(3)力学的安全性の評価
力学的安全性は、基礎となる既製品に比べて劣らないことを示すこと。その方法として、以下に事例を示す。
① 各製品のガイドライン等に従い、力学試験又はFinite Element Analysis(FEA)により力学的安全性を示す。
② カスタムメイドインプラントの寸法が基礎となる既製品の範囲内である場合は、その旨を説明することにより、力学的安全性に関する資料は省略できる。
③ カスタムメイドインプラントが基礎となる既製品より、力学的に安全側への変更であることが明らかである場合は、その旨を以下の事例を参考に説明することにより、力学的安全性に関する資料は省略できる。
a)骨プレート
イ 幅の増加
ロ 厚さの増加
ハ 長さの変更
ニ 穴数の減少
ホ 穴位置の変更(長軸方向の変更は、両端方向。短軸方向は、中心へよせる。穴間距離は変更しない。)
b)骨端プレート
イ 幅の増加
ロ 厚さの増加
ハ 長さの変更
ニ 穴数の減少
ホ 穴位置の変更(長軸方向の変更は、両端方向。短軸方向は、中心へよせる。穴間距離は変更しない。)
c)髄内釘
イ 長さの減少
ロ 直径の増加
ハ 湾曲の曲率の減少
ニ 回旋防止横止めスクリュー穴の減少
d)CHS
イ 幅の増加
ロ 厚さの増加
ハ 長さの変更
ニ 穴数の減少
ホ 穴位置の変更(長軸方向の変更は、両端方向。短軸方向は、中心へよせる。穴間距離は変更しない。)
e)ショートフェモラルネイル
イ 長さの減少
ロ 直径の増加
ハ ネイル部の曲率の減少(最大適合)
ニ 回旋防止横止めスクリュー穴の減少
6.製造販売業者による準備と対応
製造販売業者は、医療機器及び体外診断用医薬品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令(平成16 年厚生労働省令第169 号、QMS 省令)、医薬品、医薬部外品、化粧品及び医療機器の品質管理の基準に関する省令(平成16 年厚生労働省令第136 号、GQP 省令)、医薬品、医薬部外品、化粧品及び医療機器の製造販売後安全管理の基準に関する省令(平成16 年厚生労働省令第135 号、GVP 省令)又は医療機器の製造販売後の調査及び試験の実施の基準に関する省令(平成17 年厚生労働省令第38 号、GPSP省令)に基づく文書に、以下の事項を適切に記載し、これを遵守すること。
(1)カスタムメイドインプラントの設計
製造販売業者は、医師が作成した仕様書に基づいて承認の範囲内でカスタムメイドインプラントの設計を行うこと。
(2)製造販売業者が保管すべき資料
製造販売業者は、カスタムメイドインプラントを製造し、仕様を作成した医師に販売・授与するに当たり以下の資料を保管しておくこと。
① 仕様を作成した医師名
② 医師が作成した仕様書(患者の骨形状のデータを含む。)
③ 骨形状のデータに適合した設計になっていることを確認できる資料
④ 設計段階又は最終製品において、製品の形状が仕様書を満たすことを医師が
確認したことを示す資料
(3)有効性の評価
製造販売業者は、医師が作成した仕様書に基づきカスタムメイドインプラントを臨床応用するにあたり、使用の前後において、医師の協力を得て設計したカスタムメイドインプラントと患者の骨形状を比較検討し、臨床的有効性について評価すること。
(4)市販後調査
製造販売業者は、医師の協力を得てカスタムメイドインプラントの臨床使用後、その適応性の評価及び不具合情報等を収集し、必要に応じて承認事項一部変更承認申請や安全対策措置等を行うこと。
7.使用上の注意
製造販売業者は、使用上の注意等に以下のことを記載すること。
① カスタムメイドインプラントは、既製品では十分な治療効果が得られない又は既製品を使用した場合に比べ、大きな治療効果が得られると医師が判断した場合のみに使用できること。
② カスタムメイドインプラントを使用する際にはあらかじめ担当医が仕様書を作成すること。
③ 医師は、仕様書を作成する際には、承認の範囲内で骨形状に適合させることで、カスタムメイドインプラントが軟部組織(神経、血管、筋肉等)と干渉しないよう及び関節周囲では関節の可動域制限の原因とならないよう考慮すること。
④ 医師は、仕様書を製造販売業者に提供すること。
⑤ 医師は、カスタムメイドインプラントを使用する前に、設計段階及び最終段階において、当該カスタムメイドインプラントが仕様書の内容を満たしていることを確認すること。
⑥ 医師は、製品の不具合や術中の臨床上の問題等により、カスタムメイドインプラントが使用できない事態に備え、既製品での対応を考慮した手術計画を準備する等あらかじめ対策を施すこと。
⑦ カスタムメイドインプラントは、患者個々に適合するよう設計されているため、使用しなかった場合でも他の患者に流用しないこと。
⑧ 医師は、カスタムメイドインプラントを使用するにあたり、使用の前後において、設計したカスタムメイドインプラントと患者の骨形状を比較検討し、臨床的有効性について評価すること。
⑨ 医師は、カスタムメイドインプラントの臨床使用後、その適合性の評価及び不具合情報等を収集し、製造販売業者に速やかに報告すること。
⑩ 医師は、仕様書を診療録等の患者記録とともに適切に保管すること。

GL:付属資料

引用関連規格

国内関連GL

海外関連GL

WG開始年月

WG終了年月

WGメンバー

委員(○:座長)
 飯田寛和  関西医科大学 整形外科学講座 教授
 岡崎義光 (独)産業技術総合研究所 人間福祉医工学研究部門 主任研究員
○ 勝呂 徹  東邦大学医学部 整形外科学教室 教授
 高久田和夫 東京医科歯科大学 生体材料工学研究所 バイオデザイン分野 教授
 堤 定美  日本大学歯学部 特任教授
 東藤 貢  九州大学 応用力学研究所 基礎力学部門 破壊力学分野 准教授
 久森紀之  上智大学理工学部 機能創造理工学科 准教授
 松下 隆  帝京大学医学部 整形外科学教室 主任教授

厚生労働省
 関野秀人  医薬食品局審査管理課 医療機器審査管理室長
 東健太郎  医薬食品局審査管理課 医療機器審査管理室 新医療材料専門官
 秋元朝行  医薬食品局審査管理課 医療機器審査管理室 先進医療機器審査調整官
 牧村知美  医薬食品局審査管理課 医療機器審査管理室 認証係長

独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
 鈴木由香  医療機器審査第一部長
 小笠原弘道 医療機器審査第二部 審査役
 井出勝久  医療機器審査第二部 審査役代理
 田村貴彦  医療機器審査第二部 審査専門員
 小志戸前葉月医療機器審査第二部 審査専門員
 廣田光恵  品質管理部長
 末岡明伯  品質管理部

事務局
 松岡厚子  国立医薬品食品衛生研究所 療品部長
 迫田秀行  国立医薬品食品衛生研究所 療品部 主任研究官
 石川 格  国立医薬品食品衛生研究所 療品部 研究員
 片倉健男  国立医薬品食品衛生研究所 スーパー特区対応部門 特任研究員

報告書(PDF)

2010-HN-DE-010-H21-報告書-目次、委員構成、議事概要、評価指標案、委員報告
2010-HN-DE-010-H21-報告書-資料、文献

報告書要旨(最新年)

承認済み製品(日本)

承認済み製品(海外)

製品開発状況

Horizon Scanning Report