1.はじめに
整形外科領域においては、生体植え込み型のインプラントは、薬事法上の医療機器として一定の幅、長さ、厚さ等が規定され、力学的安全性や生物学的安全性が確認された既製品として広く臨床応用され、我が国の医療及び国民の生活の質の向上に貢献している。しかし、患者の骨格及び骨形状には個体差があり、また患者個々の骨格構造及び症状等によっては既製品のインプラントでは対応できない場合がある。このような場合において、優れた個体適応性を有するインプラント、いわゆるカスタムメイドインプラントが必要とされる。カスタムメイドインプラントを臨床応用することは、優れた固定性、機能再建が可能となり手術成績の向上、低侵襲手術の実現、再手術の減少、早期リハビリテーションの実現、早期社会復帰等患者や医療関係者にとって有益である。
骨接合材料カスタムメイドインプラントが求められている背景には、インプラント製品の用途の多様化、開発コンセプトの複合化、製品の構造、表面処理等技術の高度化等から生体親和性の高いインプラントの開発が可能となってきていることがある。また臨床的にも通常のインプラントより医学的に優れた生体適合性を有するインプラントが求められている。特に、症例に応じて個別の要求を満足するインプラント、すなわち症例に必要とされた加工を加えた個体適応性に優れたカスタムメイドインプラントの臨床応用を通じて、患者、医療関係者の必要性を満たすことで、長期にわたり優れた臨床成績を獲得することは、患者及び医療関係者のみならず医療経済上も有益であると考える。
カスタムメイドインプラントの対象としては、骨接合材料、人工関節等が考えられるが、本評価指標におけるカスタムメイドインプラントの範囲は、臨床的必要性が高い骨接合材料を中心に行い、基本的なカスタムメイドインプラントの必要事項を定めた。
また、人工股関節、人工骨頭、人工膝関節、人工肩関節、人工肘関節といった人工関節において様々な関節の骨形状に適応し、重大な骨欠損及び変形骨等に対して最適に成形されたインプラントが必要とされているため、これらの適応範囲、構造学的、力学的観点及び三次元構造等未解決の諸問題について今後さらなる検討が必要であると考えられた。
2.本評価指標の対象
本評価指標は、整形外科用インプラントのうち、金属製骨接合材料(骨プレート、骨端プレート、髄内釘、Compression Hip Screw(CHS)、ショートフェモラルネイル及び骨ねじ等)を対象とする。
本評価指標においてカスタムメイドインプラントとは、患者個々の骨形状にあわせて基礎となる既製品の形状の一部変更したインプラントであって、承認書にその旨が記載されたものを対象とする。したがって、特定保険医療材料として、悪性腫瘍や再置換用等に用いられるカスタムメイド人工関節、カスタムメイド人工骨とは異なるものである。
なお、製造方法が基礎となる既製品と異なる場合については、本評価指標の対象としない。
3.本評価指標の位置づけ
本評価指標は、技術開発の著しい整形外科用インプラントを対象とするものであることを勘案し、問題点、留意すべき事項を網羅的に示したものではなく、現時点で考えられる点について示したものである。よって、今後の更なる技術革新や知見の集積等を踏まえ改定されるものであり、申請内容等に関して拘束力を有するものではない。カスタムメイドインプラントの評価にあたっては、個別の製品の特性を十分理解した上で、科学的な合理性を持って柔軟に対応することが必要である。
また、本評価指標の他、国内外のその他の関連ガイドラインを参考にすることも考慮すべきである。 |